ネムネコ式採点法 判別式を使うと減点される5 [高校の微分積分]
ネムネコ式採点法 判別式を使うと減点される5
問題 x≠0である全ての実数をxに対して定義された関数
がとりうる値の範囲を求めよ。
【解答(?)】
0を除く全ての実数の集合をA(関数fの定義域)、関数fによるAの像(fの値域)
とする。
ここでRは実数全体の集合である。
f(x)=k(実数)∈Bとすると、
を満たすx∈Aが存在しなければならない。
xは実数だから、①の判別式をDとすると、
でなければならない。
b≦0のとき
よって、f(x)がとりうる値の範囲は全ての実数。
b>0のとき、(2次不等式)②の解は
したがって、
(解答終)
2次方程式の判別式を使うならば、少なくとも、これくらいきちんと書いてもらわないと、点数はあげられない。
だとしても、この解答、答は間違っている!!
何故ならば、b=0のとき
で、この関数はaの値をとりえないからだ。
もし、f(x)=aという値をとるとすると、
となる!!
b=0のとき、f(x)=aとなるxを定義域Bにもっていないんだね〜。だから、aは関数f(x)がとりうる値とされている全ての実数から除去しないといけないのだ。
ということで、
b<0、b=0、b>0の場合に分け、
b<0のとき、f(x)は実数すべての値
b=0のとき、f(x)<aまたはf(x)>a
b>0のとき、f(x)≦a−2√bまたはf(x)≧a+2√b
となる。
ところで、上の解答(?)で、下線を引き、「xは実数だから」とした。
これは、xに関する2次方程式
が実数解をもつ、つまり、
が空集合でないための条件。
しかし、この問題で求める条件(?)は
や
が空集合でないための条件であり、そして、この問題の場合、D⊂Cであるが、D=Cではない。
現に、b=0のとき、Cにx=0が紛れ込んでいるではないか。
そして、これが原因で上の解答(?)は誤答になっている!!
の2つの式は同値じゃない。
これは、
としないといけない。
しかも、上の解答(?)を作ったヒトは、CとDが同じと錯覚している。
そして、ほとんど全てのヒトがこの間違いに気づかない。高校の数学教師の多くも・・・(^^ゞ
気づいてたら、「ここは間違っている」という指摘が高校の数学教師などからなされ、出版社(某大手教科書メーカー)は解答を訂正しているだろうから。
教科書や問題集の信用に関わり、その高校で教科書や問題集が採用されなくなるかもしれない。
これは教科書メーカーにとって死活に関わる由々しき事態だにゃ(^^)
こういうことが起こることがあるから、
2次方程式の判別式を用いた実数解の条件と問題で求めるべき条件が本当に一致するかの吟味が必要で、そのことを示す、少なくとも確認する必要がある。
こうしたことをよく踏まえた上で2次方程式の判別式を使って解答するのならばいいけれど、実際はそうではないだろう。
受験参考書などに判別式を使って解く解法が示されているので、「このタイプの問題はこうして解くものだ」と鵜呑みにし、その解法を覚えこんで解いているに過ぎないのではないのか。
その点、グラフを用いた解答(?)は強い。自分が何を求めているのかが明確になる。
と変形し、お絵かきをすると、正しい答えまで導いてくれる。
b=0のとき、
右図の白丸◯の点(0,a)は除く。
b>0、x>0のとき、
さらに、
とおけば、
g(x)は、奇関数であり、原点対称だ。
したがって、
等号が成立するのはx=−√b。
よって、
ゆえに、
なんて、すぐに見当がつく。
b<0のとき、f(x)が実数すべての値をとることはグラフから明らか。
このことをまとめた上で、右のグラフを示せば、申し分のない解答になるのではないか(^^ゞ
――「このように図、グラフを頼りにする解法は、厳密でないから、けしからん」と批判するヒトがいるかもしれない。しかし、ネムネコが採点者ならば、満点を付けた上に、大きな花丸まで付けてあげる(^^)――
こういう解答がいいと言っているのではない。
2次方程式の判別式を使ってこの手の問題を解くときには、「自分がいま求めているものは何なのか」という明確な自覚をもったうえで、細心の注意をはらうことが必要だと言いたいのだ。
そうでないと、時に、こういう落とし穴にハマってしまうということがあるのだ。
大学受験や高校の定期試験のときは時間的制約があるのでこういうことはできないだろうけれど、家で勉強するときは、たとえば、a=1、b=1、a=2、b=1、・・・という具体的な値を入れて、
フリーハンドでいいから、実際に、この曲線のグラフをいくつかかいてみることは重要だと思う。
そして、自分の頭で答の予想をし、できるところまで解いてみる。
すくなくとも、方針が立たないから、解法事典のように、すぐに参考書を見るということだけは絶対に止めたほうがいい、と思う。
こんなことをいつまでも繰り返していたら、参考書の(解法の)の奴隷になり、やがて、参考書(の解法)に忠実なイヌに成り下がってしまう。
なお、微分法を使った解答は、おそらく、ddt³さんが送ってくれると思うにゃ。
ネムネコ式採点法 判別式を使うと減点される4 [高校の微分積分]
ネムネコ式採点法 判別式を使うと減点される4
問題 x≠0である全ての実数をxに対して定義された関数
がとりうる値の範囲を求めよ。
f(x)=k(実数)とおくと、
よって、
xは実数だから、①の判別式をDとすると、
でなければならない。
b≦0のとき
よって、f(x)がとりうる値の範囲は全ての実数。
b>0のとき、②より
したがって、
(解答終)
教科書や大学生向けの数学の教科書を出版する、有名な某出版社の解答――4行しかない解答なので、ネムネコが内容を追加しある――である。
正しければ、何とも鮮やかなものだ(^^)
さて、ここで問う。
この解答、ならびに、答は正しいか。
「ネムネコが、わざわざ、こう問うくらいだから、この解答、答は間違っているに違いない。よしんば、間違っていないとしても、解答に不備、言葉足らずの箇所があるに違いない。」
こう勘ぐるヒトもいるかもしれない。
ただこの解答に難癖をつけ、引っ掻き回したいだけかもしれないウサ。
今日のアニソン、「ひなこノート」から『カーテンコール!!!!!!』(夏川くいな ver.) [今日のアニソン]
うまくいかないなぁってことも
たまに あるんだけど
(中略)
変わりたいんじゃなくて 私は
変えたいんだ
第2回 集合の差、補集合 [集合論入門]
第2回 集合の差、補集合
§1 集合の差
A、Bを集合とする。
x∈Aであるがx∈Bでないではないx全体からなる集合、すなわち、
をAとBとの差集合または差といい、記号
または
などであらわす。
差集合の定義から明らかであるが、
【略証】
x∈A−Bとすると、x∈Aかつx∉Bなので、x∈Aである。
故に、
(略証終)
例1 Aを自然数全体の集合、Bを偶数全体の集合とすれば、A−Bは奇数全体の集合
例2
§2 空集合
A={1, 2, 3}、B={1, 2, 3, 4, 5}とする。
このとき、
であるが、AとAの差集合A−A、AとBの差集合は、要素をなにも持たない集合となる。
このように、要素を何ももたない集合を空集合といい、記号
∅または{}
であらわす。
さらに、いかなる集合Aに対して
と定義する。
また、
と定義する。
Aを任意の集合とするとき、次の式が成立することは明らかであろう。
問1 A⊂Bならば、A−C⊂B−Cであることを示せ。
【解】
A−C=空集合ならば、A−C⊂B−Cは明らか。
そこで、A−C≠∅とする。x∈A−Cだから、x∈Aかつx∉C。
A⊂Bだから、x∈Bかつx∉C。したがって、x∈B−C。
ゆえに、
A⊂Bならば、A−C⊂B−C
(解答終)
問2 A−B=∅であるための必要十分な条件はA⊂Bであることを示せ。
【解】
AやBが∅のときは明らか。
A≠∅、B≠∅とする。
A−B=∅は、x∈Aかつx∉Bなるxがないことで、x∈Aならばx∈Bであることに他ならない。
したがって、
(解答終)
§3 補集合
BがAの部分集合である場合、AとBとの差を、BのAに関する補集合(Complementary Set)という。
Aが空集合でない場合、Aの要素は、Bに属するか、A−Bに属するかのいずれか一方だけが成立する。
すなわち、次の関係が成り立つ。
(1) x∈Aならば、x∈Bまたはx∈A−B
(2) x∈Bならばx∉A−B
(3) x∈A−Bならばx∉B
また、
Aに関するAの補集合は空集合∅であり、Aに関する空集合∅の補集合はAである。
定理3 A⊃BならばA−(A−B)=Bである。
【証明】
A−B=Cとする。
まず、A−C⊂Bであることを示す。
A−C=∅であるならば、A−C⊂B。
A−C≠∅のとき、
x∈A−Cとすると、x∈Aかつx∉C、すなわち、x∈Aかつx∉A−B。よって、x∈B。
ゆえに、
A−C=A−(A−B)⊂B
つぎに、B⊂A−Cであることを示す。
B=∅ならばB⊂A−C。
B≠∅のとき、
x∈Bとすると、x∈Aかつx∉A−B、すなわち、x∈Aかつx∉C。ゆえに、x∈A−C。
したがって、
B⊂A−C=A−(A−B)
よって、
A⊃BならばA−(A−B)=B
(証明終)
定理3の逆、
A−(A−B)=BならばA⊃B
が成立するので、
A−(A−B)=BはA⊃Bの必要十分な条件である。
対象となる集合が、固定された集合Xの部分集合であるとき、Xを普遍集合(Universal Set)という。A⊂Xのとき、集合AのXに関する補集合を単に補集合といい、記号
であらわす。
すなわち、
普遍集合Xと空集合∅の補集合は、
となることより、
宿題 定理3の逆
A−(A−B)=BならばA⊃B
を証明せよ。
ネムネコ式採点法 判別式を使うと減点される3 [高校の微分積分]
ネムネコ式採点法 判別式を使うと減点される3
お前ら、次の問題を解くにゃ。
がとりうる値の範囲を求めよ。
見るからに
とすると、
xは実数だから、①の判別式をDとすると、
b<0のとき
だから・・・。
b◯0のとき
・・・
と解いて欲しい問題のようですが(^^)
これだけヒントを出してやったのだから、最後まで解けよな。
そして、きちんと答案を書いて、その答案をコメント欄に書いて送信するように。
なお、この記事のタイトルに注意するように。
ネムネコは、判別式を用いた解答は超〜厳しく採点するので、くれぐれもこの点をお忘れなく(^^)