集積点のよもやま話3 [数学基礎]
集積点のよもやま話3
アルキメデスの公理
任意の正の実数a、bに対して、
となる自然数nが存在する。
定理(有理数の稠密性)
zを1つの実数とすると、任意の正数εに対して、
となる有理数aが存在する。
【証明】
アルキメデスの公理より、任意の正数εに対して、
すなわち、
となる自然数nが存在するので、
を示せば十分。
z≧0とする。
とすると、自然数全体の集合Nは上に有界でないから、A≠∅。
また、Aは自然数全体の集合Nの部分集合だから最小の自然数k∈Aが存在する。
よって、
故に、
よって、とすればよい。
z<0のとき、−z>0とし、上の結果を用いればよい。
(証明終)
この定理は、実数のすぐ近くには有理数が(無数に)存在していることを表しており、この性質を有理数の稠密性という。
と、準備を終えたところで、次の問題の答。
問題 Aを0以上1以下の有理数の集合、すなわち、
とするとき、Aは閉集合かそうでないか、答えよ。
ここで、Qは有理数全体の集まり。
全体集合Xを実数全体の集まりRとし、AをXの部分集合とする。
で、1/√2は無理数だから実数なので、上の定理から、
任意の正数εに対して
である有理数a∈Aが存在する。(a=1/√2でないから、となることに注意)
というわけで、1/√2は集合Aの集積点である。
Aの集積点のすべてをAは含まないので、Aは閉集合でないということになるのであった。
また、Aの集積点の集合、すなわち、Aの導集合は
である。
一般に、有理数全体の集合をQとすると、
という関係が成立する。
集積点のよもやま話2 [数学基礎]
集積点のよもやま話2
集積点 Xを距離空間とし、AをXの部分集合とする。Xの点aがA−{a}の触点であるとき、aをAの集積点という。
すなわち、任意の正数ε>0に対して、
であるとき、aをAの集積点という。
特に、1次元の場合、
任意のε>0に対して、
となるx∈Aが存在するとき、xをAの集積点という。
定理 Aが閉集合である⇔Aの集積点はすべてAに含まれる。
次の集合Aがあるとする。
この集積点は0だけであり、0∈Aだから、上の定理からAは閉集合になる。
一方、
の集積点も0であるが、だから、上の定理よりBは閉集合でないことになる。
問 次の集合は閉集合か。
【解】
A、Bの集積点(の集合)は、ともに、
定理から、
C⊂Aでないので、Aは閉集合でない。
C⊂Bなので、Bは閉集合である。
(解答終)
では、ここで問題。
問題 Aを0以上1以下の有理数の集合、すなわち、
とするとき、Aは閉集合かそうでないか、答えよ。
ここで、Qは有理数全体の集まり。
さあ、この問題を解いてもらおうじゃないか。
できた奴は、Aの集積点全体の集まり、つまり、Aの導集合を求めるよ。
なお、Aの導集合を記号で表すとき、の点をAの孤立点という。
たとえば、
の場合、Aの集積点は0だけなので、Aの導集合
であり、
は、すべて、Aの孤立点である。
また、Aの閉包をで表すとき、一般に、
という関係が成立する。
とするとき、Bの集積点は0のみであるので、Bの導集合
であり、
となり、これはBを包む最小の閉集合、すなわち、Bの閉包になっているだろう。
集積点についてのよもやま話 [数学基礎]
集積点についてのよもやま話
集積点 点aが集合Aの集積点(accumulation point)であるとは、aの任意の近傍の中にaと異なるAの点が少なくとも1つ存在することである。
このことは、次のように言い換えられる。
任意の正数ε>0に対して、
となるx∈Aが存在する。
定理 Aが閉集合である⇔Aの集積点はすべてAに含まれる。
昨日、
の集積点を求めよという問題を出したけれど、この問題を出したのは、上の定理に関わる内容だから。
たとえば、
という1点集合Aがあるとすると、これは閉集合である。
【証明】
1が{1}の触点であることは明らか。
x≠1とし、これがAの触点であるとすると、任意のε>0に対して、
でなければならない。
εは任意の正数なので、
とすると、
となり矛盾。
よって、一点集合A={1}の触点は1のみなので、Aは閉集合である。
(証明終)
ここで、
であり、B(x;ε)はxの(イプシロン)近傍のこと。
あるいは、
【証明】
実数全体の集合Rに対するA={1}の補集合
は、開集合{x∈R|x<1}と開集合{x∈R|x>1}の和(集合)だから開集合。
よって、A={1}は閉集合である。
(証明終)
さてさて、A={1}の集積点は存在しますか。
任意の正数ε>0に対して、
となるx∈{1}は存在しますか?
存在しないとすれば、冒頭に示した定理が揺らぐにゃ。
だって、{1}の集積点は存在しないのだから、{1}の集積点のすべてが{1}に含まれたりしないケロよ。
もちろん、{1)の集積点の集まりは空集合∅だから、
となるので、 「Aの集積点はすべてAに含まれる」が成立すると言えなくもないが、誤解を招く表現であり、読者に要らぬ混乱を招くので、こういう書き方は避けるべきだと思うにゃ。
ところで、
を集合と考えると、この集積点は0のみということになるが、Bを集合ではなく数列、点列と考えると、すこし事情が変わってくる。
定義1 (数列の集積点)
数列の部分列がaに収束するならば、このaを数列の集積点(accumulation point)という。
の部分列
は1に収束するので、1はこの数列の集積点ということになる。
数列の場合、
と書き、普通、
とは書かないという文句が聞こえそうですが、このように書き表す流儀もあるんだにゃ。
たとえば、以下の英語のサイトを参照。
https://solitaryroad.com/c450.html
つまり、
問題 次の集積点を求めよ。
の答は、
これを集合(というか通常の位相)として考えれば、0であり、
数列(の集積点)と考えれば、0と1が答ということになる。
じゃぁ、数列
の集積点はどうなりますか。
なお、この集積点は定義1の意味だにゃ。
お前らに問題 集合の相等と集積点 (3月3日) [数学基礎]
ちょっとお前らに質問
次の2つの集合AとBがあるとする。
Aのすべての元aはBの元であり、同時に、Bのすべての元bはAの元であるので、集合の相等の定義から、
になる。
一方、集合Aの要素の個数(濃度)をn(A)で表せば、n(A)=3、集合Bの要素の個数n(B)=6――誰がなんと言おうが、Bには集合の元が6つ――なので、
になる。
集合の濃度論的には、
になってもらわないと困る。
(1)式が成り立たないと、数学の基礎が揺らいでしまう。これは由々しき問題だケロ(^^ゞ。
この絶体絶命のピンチをどう乗り越えたらいいのか、お前ら、考えるにゃ。
ここまでは前振りなので、真に受けるなよ。
数学には集積点と呼ばれるものがある。
集積点の定義は、たとえば、次のようなものである。
定義 AをXの部分集合であるとする。Xの点xがA−{x}の触点であるとき、xをAの集積点という。
これでは、何を書いてあるかわかりにくいと思うので、改めて、集積点を次のように定義することにする。
任意の正数ε>0に対し、
となるa∈Aが存在するとき、xをAの集積点という。(少しアレンジを加えているが、とある数学の本に出ている定義。)
――なので、x=aではなく、A−{x}を表している。そして、(2)は、点xの近傍の中にxと異なるAの点aが少なくとも1つ存在することを意味している。――
では、この集積点の定義を踏まえて、次の問題を解いてもらおうか。
問題 次の問に答えよ。
(1) の集積点は0だけであることを示せ。
(2) の集積点を求めよ。
この問題の集合の場合、集合A、Bの濃度|A|、|B|はともに可算濃度(アレフゼロ)なので、|A|=|B|となり、問題は発生しない。
しかし、集合Aの任意の元は集合Bの元であり、かつ、集合Bの任意の元は集合Aの元でもあるので、
が成立し、A、Bの集積点はともに0になってしまう。
こんなことをことさら問題で問うとているからには、0以外にBの集積点が存在するに違いない。いやいや、これは引掛け問題で、Bの集積点は0だけかもしれない(^^ゞ。
そして、
不親切きまわりないことに、この問題と集積点の定義(2)が出ている数学の本には、この問題の答が載っていない!! のであった。
ところで、触点って何だ。
任意の正数ε>0に対し、
であるとき、xは集合Aの触点という。
ここで、
なお、Rは実数全体の集まりである。
0.999・・・は1と等しいのか、等しくないのか [数学基礎]
0.999・・・は1と等しいのか、等しくないのか
9が無限に続く小数0.999・・・は1と等しいのか等しくないのか、というお話です。
文系の多くのヒトと理系のごく一部のヒトは
と答えると思うにゃ。
こう答えるごく一部の理系のヒトの中には、二つのタイプが存在すると思うが、ブラゲロ・マムシが息を吹き返す恐れがあるので、この話はしない。寝た子を起こすような危ない真似はしたくないにゃ。
ところで、x=0.999・・・とおくと、
だにゃ。
そこで、②と①の両辺との差を取ると、
ということで、0.999・・・と1は等しいんだケロよ。
この手品のような証明にケチをつけるヒトの口封じのために、次の証明(?)を挙げておこう。
①の両辺を3倍すると、
どうだにゃ、これで文句はないだろう!!
ところで、あなたは、0.333・・・や0.999・・・と延々と数が続くものを、数だと思っていませんか。
厳密なことをいうと、
という永遠に終わることのない足し算ーー永遠に終わることのない足し算なので、(永遠に)足すことによってこの値(そんな値があればだが・・・)を求めることはできない(^^ゞーー、つまり、無限級数を表したものであって、実は、これは数そのものじゃ〜ないんだケロ。
そして、数学の公式から、
となるので、
ってわけですわね〜。
ところで、0.999・・・と延々と終わることなく9が続く無限小数を小数点n位までとった数(?)をと置くことにする。
すなわち、
だにゃ。
1とこのとの差を取ると、
になる。n=1ならばこの差は1/10、n=2ならばこの差は1/10²=1/100、n=3ならばこの差は1/10³=1/1000、・・・とnをドンドン大きしてゆけば、限りなく0に近づいてゆく。
このことを、
と記号であらわすことにするにゃ。
そして、このとき、
とあらわし、は1に収束するといい、1を数列の極限値という。
つまり、
という無限級数は1に収束し、その極限値は1なので、このお約束にしたがって
と表しているんだにゃ。
あるいは、0.999・・・(で表される無限級数)の極限値は1で、この0.999・・・(で表される無限級数の極限値)は1に等しいの意味、なんだケロよ。
てなわけで、0.333・・・や0.999・・・をナマの数だと思っちゃ〜いけないんだケロ。そして、多くの混乱は、0.333・・・や0.999・・・をナマの数だと思っていることに起因していると思う。
さてさて、ネムネコが高校1年のときの数学の教師の一人が「0.999・・・と1は等しくない」と抜かしやがった。そして、この瞬間、ネムネコのこの数学教師に対する評価は下ったのであった。
ところで、
と延々に続く循環小数を、分子が整数、分母が整数の分数に直すことはできるケロか。
いくつかその方法はあるんだけれど、もっとも簡単な方法は
とおき、①の両辺を100倍するにゃ。
すると、
②と①の差を取ると、いい塩梅に小数点以下がすべて0になってくれるにゃ。
つまり、
ネムネコは、4÷33なんて難しい割り算をできないので、電卓でこの計算したところ、どうやら4/33=0.121212・・・となるようだにゃ。
この計算法は極限の公式に則ったもので、やましいところは全くないので、積極的に使うべきだにゃ。中学生数学レベルで解けるのだから、わざわざ難しく解く必要はない!!
一つ言い忘れたけれど、
の右辺のように簡略化して書くにゃ。
なお、
と書くのは間違いなので、気をつけること。繰り返す数字の初めと最後の上に・という記号をつけるんだケロ。
これで、⑨³の解説は終わりだにゃ。
ddt³さんの解答と位相の話を少し [数学基礎]
このブログの共同執筆者のひとりであるddt³さんから、ddt³さん提出の次の問題(7月18日)の回答をいただいたので、これを紹介することにする。
位相をかじってると次のようになります。ただし我慢して定義の連続を読む必要はありますが(^^;)、頭の体操です。
[分離空間の定義]
Xを位相空間とする(位相空間の定義を読む)。
x,y∈Xかつx≠yについて、共通分が空となるxの近傍とyの近傍がある(位相空間の近傍の定義を読む)。
Xを集合,x∈Xとして、(x,x)の形の点全体の集合を、積集合X×Xの対角集合Δと言います。
[定理-1]
Xが分離位相 ⇔ X×XでΔは閉。
[証明]
省略。でも定義だけから示せます。
必要な定義:
分離空間の定義。位相空間の開集合,閉集合,近傍の定義。
[証明終]
[定理-2]
Xを位相空間,Yを分離空間、f,g:X→Yかつ連続とする。f(x)=g(x)となるxの全体Dは、Xで閉。
[証明]
h:X→Y×Yで、x→(f(x),g(x))の形のものを考える。
f,g:X→Yは連続だから、hも連続(積写像と連続写像の定義とそれから導かれる性質)。
Dは、Y×Yの対角集合Δのhによる逆像に一致する。Δは[定理-1]より閉集合なので、連続関数の性質からDは閉。
※もちろんE={(p,q)|f(x)=g(x)となる(p,q)=(f(x),g(x))}は、一般にΔと一致しません。しかしhの定義から、
h(D)=E∩Δ⊂Δ
になるので、特にDの定義から、
D=h^(-1)(E∩Δ)=h^(-1)(Δ)
です。本当は証明すべきですが。
[証明終]
[系-1(等式延長の原理)]
f,g:X→Yかつ連続、Xを位相空間,Yを分離空間とする。
A⊂XがXで密とすれば、A上でf=gならXでf=g。
[証明]
1) Dを[定理-2]の集合とすれば、A⊂D(逆像の定義と性質)。またDは閉集合。
密空間(稠密空間)の定義から、Aの閉包をA’として、
2) 1)からA’⊂D。Dが閉である事と閉集合の定義。
3) A’=X。密空間の定義。
2),3)より、D⊂X=A’⊂Dなので、D=X。
[証明終]
ネムネコの補足
位相の定義を上げると、たとえば、次のようになる。
空でない集合Xに対し、Xの部分集合の集合O(Xのべき集合の部分集合)が
をみたすとき、OをX上の位相、XとOの組〈X, O〉を位相空間という。
さらに、位相空間〈X, O〉の開集合、閉集合、近傍などの用語説明。
位相空間〈X, O〉に対して、
1 Oの元(要素)を開集合という
2 Xの部分集合Aは、その補集合が開集合であるとき、閉集合という。
3 x∈XとXの部分集合Vに対して、x∈U⊂Vとなる開集合Uが存在するとき、Vはxの近傍であるという。
この定義から、Xの補集合は空集合∅、そして、空集合∅の補集合はXだから、Xと∅は、開集合であると同時に閉集合になる。
Xと∅以外に、開集合かつ閉集合である集合が存在しないとき、位相空間〈X, O〉は連結であるという。
そして、分離空間とは、Xの相異なる2点がつねに交わらない2つの開集合によって分離できるハウスドルフ空間のこと。
さらに、分離の定義。
〈X, O〉を位相とする。
Xの相異なる2点a、bが、互いに交わらないXの開集合A、Bで、a∈A、b∈Bとなるものが存在するとき、開集合によって分離されるという。
実数全体の集合Rと、その部分集合である開区間I(条件a<x<bを満たす集合)は、この上の性質を全て有している。
こんなことは知らなくていいことですが、
位相にはT₀、T₁、T₂、T₃、T₄の5種類ほどの分離のタイプがあって、この分離は3番目のもので、これを満たすものをT₂空間と呼ぶことがある。
そして、普通、位相で分離といったら、3番目のものをいう。
というこどで、ハウスドルフ空間といったら、実数全体の集合R、数直線をイメージすれば、大体、間違いがない。
たとえば、a<bのとき、
とすれば、
A⊂R、B⊂R、A∩B=∅、a∈A、b∈B
という条件を満たすので、aとbは交わらない2つの開集合A、B(開区間)で分離できる。
そして、このことから、〈R, O〉はハウスドルフ空間であることを示すことができる。
だって、x≠yのとき、xとyの小さい方をa、大きい方をbをおけばいいのだから。
とを位相空間、とする。
1 すべてのYの開集合Gに対し、Gのfの逆写像の像がXの開集合であるとき、fはからへの連続写像という。
2 Xの元xに対して、f(x)のYにおける近傍Vのfによる逆像がxのXにおける近傍になっているとき、fはxで連続であるという。
で、Xのすべての点xでfで連続であることと、が連続であることと同値である。
そして、次の定理(?)。
定理(?)
〈R, O〉を実数直線とする。関数f:R→Rが連続であることと、
を満たすことは同値である。
ねこさん。《次元》って 何なんですか? [数学基礎]
「ねこさん。《次元》って 何なんですか?」
正確な定義ではないですが、
空間の点を表すのに必要である、最小の、1次独立なベクトルの個数
が、空間の《次元》です。
たとえば、xy平面上の任意の点Pの座標を(x,y)、その位置ベクトルをとします。
基底ベクトルは互いに1次独立であり、xy平面上のすべての点は、
との1次関数(線形写像)で表せるので、xy平面という空間は2次元ということになります。
同様に、3次元空間のすべての点P(x,y,z)は、1次独立なを用いて
と表せるので3次元。
4次元空間のすべての点P(x₁,x₂,x₃,x₄)は、
を用いて、
と表すことができる。
ですから、
空間のすべての点が、互いに1次独立なベクトル
を用いて、
と表すことができるとき、その空間はn次元である
ということができます。
といことで、
空間のすべての点を表すのに必要な、互いに1次独立であるベクトルの最小の個数がその空間の次元です。
うるさいことを言わなければ、
ある空間のすべての点を表すのに必要最小限の座標軸の数といってもいいんでしょう。
ただし、2次元平面上や、3次元空間上にある直線は1次元(の図形)ですよ。
直線上の適当な一点を原点Oに選び、右の図のように大きさ1の基底(基本)ベクトルを定めれば、直線上のすべての点Pは、線分OPの長さx(+、−の符号付きの長さ)と、このを用いて
と表わせますので。
(数学的な)空間には特別な座標軸なんてものはありませんので、どこを原点にとり、どの方向に座標軸を設定するかは決まっていません。まさに、座標系の設定は、任意(そのヒトの意思に任せる)、恣意的なものなんです。
ですから、座標系の設定の仕方によって、空間の次元の数が、2や3といった具合に、1つに定まらないので、この恣意性をなくすために、1次独立、最小の個数という枕詞が必要になります。
ということで、この例のように、数学でいう次元と我々が日常感覚的にとらえる次元とが食い違う場合があります。
この例は直線ですけれど、我々が普通2次元図形と考えている平面上の円も1次元の図形と考えることができます。
だって、円の中心を原点にとれば、半径aの円周上の点はすべて、半径a(定数)と角度θだけで与えられますから。
座標軸は直線でなければならないなんて決まりすら数学にはないんです。例として、極座標などの曲線座標系。
というか、数学の直線は無定義語ですから、直線がウネウネと曲がっていても実は構わないんです(笑)。
どれを直線と呼ぶかは自由。この意味において「数学は自由」です(^^ゞ
まぁ、こっちの方向に進むと非ユークリッド幾何学になり、そして、その先にアインシュタインの一般相対性理論ということになりますが・・・。
特に、こうしたことが問題になるのは物理学の力学でいう運動の自由度でしょう。上で述べた理由から、2次元平面における直線運動や円運動などの自由度は1になります。円運動の場合、半径が一定と運動の条件が制限されているので、運動の自由度は2−1=1になってしまう。
こうした運動の制限を、物理、力学では、束縛条件とか呼ぶんじゃなかったかな。
文学、哲学的にこれを言うと、本来、2次元平面上を自由に運動することができるのに、「お前は直線の上にいろ。円周の上にいろ」という制限、強制が加わり、本来の自由が制限されている状態にある、と表現することもできるのでしょう。
そして、哲学的には、空間の《次元》よりは、こうした(運動の)自由度の方が示唆に富んでいるのではないでしょうか。
物理空間がホニャララ次元であるなんて、認識論の一部を除けば、哲学的には瑣末な話でしょう。自由と制限といった自己と他者との関係の方が重要だと思います。
そして、これらは、《次元》よりも関数や関係を支配する諸《変数》(の個数)といった観点からとらえたほうが筋がよいに違いありません。
――力学でいう運動の自由度、束縛条件などの話は、ddt³さんにお任せします(^^ゞ――
脱線しましたが、
プリミティブな空間の次元の概念自体はそれほど難しいものではないと思います。
難しいのは、空間の次元(の定義)ではなく、3次元を越える4次元、5次元、・・・n次元という空間ならびに3次元以上の図形をアタマなの中にイメージするなのでしょう。
そして、私が考えるに、
地球上に住む生きとし生ける物は、すべて、3次元空間、3次元空間の図形を正確にイメージすることができない!!
左右2つの目それぞれから得られる2つの「2次元の絵」をもとに、脳は擬似的な3次元空間を作ります。脳が作るのは、あくまで擬似的な3次元空間(2次元のモニター画面に描かれる3次元のコンピュータグラフィックスのようなもの、あるいは、ホログラムのようなもの)であって、3次元空間そのものではないですから。
まして、4次元空間、4次元の図形を正確に思い浮かべるなんて絶対にできない。
少なくともヒトは、こうしたことがうまくできないから、上のように、幾何・図形を代数に落とし込み、計算に持ち込みます。こうすれば、誰でも機械的に計算できますから。
座標というアイデアを使って、幾何の問題を代数の問題、計算の問題に変えたのが、デカルトです。
ワンポイントゼミ デデキント切断 [数学基礎]
ワンポイントゼミ デデキント切断
数の集合SをA、Bの2組に分け、A組のすべての数もB組のすべての数より小さくすることができるときとき、この組み分け(A,B)をデデキント切断という。
そして、このデデキント切断による実数Rの連続性の公理。
実数の連続性の公理
Rの切断(A,B)を作るとき、Aの最大数かBの最小数かのいずれか一方だけが存在する。
デデキント切断には次の4つの分割の仕方が考えられる。
(1) A組に最大数が存在し、B組にも最小数が存在する
(2) A組に最大数が存在し、B組に最小数が存在しない
(3) A組に最大数が存在せず、B組に最小数が存在する
(4) A組に最大数が存在せず、B組にも最小数が存在しない
整数全体の集合Zは(1)の分割のタイプ。
仮に、x=n(nは整数)で整数全体の集合Zを切断するとする。
x=nがA組に属している場合
となり、A組の最大数nであり、B組の最小数はn+1になる。
x=nがB組に属している場合
となり、A組の最大数はn−1であり、B組の最小数はnになる。
いずれの場合も、A組に最大数、B組に最小数が存在する。
また、x=1/2と有理数の点でZを切断すれば、
となり、A組には最大値0、B組には最小値1が存在する。
有理数全体の集合Qに関しては、(1)以外のいずれか一方の分割のタイプになる (補足)。
例
(4)には一見最大数が存在しそうですが、√2は無理数でQの要素ではないので、(4)は次のように書き換えることができる
だから、A組に最大値は存在しない。
x=√2の近くには無数の有理数が存在する(有理数の稠密性)けれど、この場合、Aには最大数、Bには最小数は存在しない。
そして、実数全体の集合Rについては(2)、(3)のいずれか一方のタイプのデデキント切断しかない。
(4)の型のデデキント切断が存在しないというところが実数と有理数の決定的な違い。
(補足)
有理数全体の集合Q、実数全体の集合Rは、(1)のタイプのデデキント切断はあり得ない。
もし、Q(またはR)の切断で生じた、A組に最大数α、B組に最小数βがともに存在すると、α<βだから、
一方で
だから、はA組かB組のいずれかに属すはずであるが、属していない。これは(A,B)が切断であることに反する。
よって、有理数全体の集合Q、実数全体の集合Rに(1)のタイプの切断はあり得ない。
デデキント切断の例
正午、つまり、12:00ジャストは、午前に属するのか、午後に属するのか?
1日を午前と午後とに分けて
(午前、午後)
と(デデキント)切断を作ると、正午は午前(A組)の最大数になるか、正午は午後(B組)の最小数になるかのいずれか。
時間は、一般的に、実数と同様に連続的なものと考えられているから、正午は午前に属するか、午後に属するかのいずれか一方としか答えられない。
しかし、これは、「正午は午前か、午後のどちらか一方にすればいいんですよ。あなたのお好きな方を選んでくださいな」という話なのであった(^^)
考えるネムネコ4かな 続・ヒドイ解答 [数学基礎]
続・ヒドイ解答
ddt³さんから次の問題を頂いた。
問題1 x²+2y・x+y=0 (1)
で、xが任意の実数を動く時のyの範囲を求めよ.
http://nekodamashi-math.blog.so-net.ne.jp/2018-03-13
ということで、問題1を掘り下げてすこし考えてみた。
問題2 実数の定数aを含む次の2次方程式がある。
x²+2a・x+a=0 (3)
この方程式が実数解を持つ条件を求めよ。
問題2の場合は、aは実定数で動かないから、判別式を使って
D/4=a²−a=a(a−1)≧0
だから、
a≦0またはa≧1
と解くのはもっともなこと。
しかし、問題2の場合、aは実定数で固定されているけれど、問題1の場合、yはxの値に応じて動きますからね〜。
それに、
x²+2y・x+y=0 (1)
は、xの2次方程式じゃなく、xとyの2次方程式だし(^^ゞ
(1)をxの2次方程式として解くためには、y=a(aは実定数)とyの値をaにひとまず固定し(補足)、
x²+2a・x+a=0 (3)と直してから、(3)が実数解を持つのは、
D/4=a²−a=a(a−1)≧0
∴ a≦0またはa≧1 (4)
と解くのが筋ですわね〜。
そして、{a∈R|a≦0またはa≧1}の任意のaに対して方程式(3)は実数解を持つし、y=aだから、
x²+2y・x+y=0 (1)
が実数解xを持つ条件は
y≦0またはy≧1 (4’)
なんじゃねぇ〜。
(補足)
y=aで固定すると、(1)はx²+2ax+a=0とxの2次方程式になり、この方程式を満足する実数解x₁、x₂(重解のときはx₁=x₂)があれば、求めることができる。右図参照。
「y=aで固定する」ではなく、「yを固定し、(1)をxの2次方程式と考えると・・・」でもいいですが・・・。
「yをひとまず固定し考える」という、この、わずかばかりの文言の使用を惜しむから、何をやっているかわからない解答になるんだケロよ!!
このように2次方程式の判別式を使って解くのであれば、いいと思いますけれど、
パブロフのイヌのように条件反射的に2次方程式の判別式を使って解くのは、いただけませんね〜。
(何より、参考書などの解法に忠実な)イヌだから、少し突っ込まれると、すぐにシドロモドロになり、わけのわからないことを口走ったりする。それで終わればまだ可愛いけれど、「こんなこともわからないのか!」、「理屈じゃない、この問題はこうやって解くんだ」と逆ギレまでする始末。救いようがないケロ(^^ゞ
ちなみに、曲線の正体は双曲線。
単に、この問題を解くだけならば、
y=0のとき、(1)はx²=0だから、x=0
y=1のとき、(1)はx²+2x+1=(x+1)²=0だからx=−1
などと解くことだってできだろう。
――この問題に関しては、2次方程式の判別式なんてそもそも不要!!――
しかし、これじゃ〜、(曲線の)方程式x²+2xy+y=0の具体的なイメージがつかめないから、ダメだと思うにゃ。
だから、ここは泥臭く、(1)をxについて、
と解くのが一番だね。
(高校の数学教師ならば、「yを1や2と同じ数だと思って、xについて解いてご覧」と言うべき)
そうすれば、根号内≧0の条件から
がすぐに出てくる。
(高校の数学教師ならば、「根号内が負になると、xは実数でなくなるよね。だから・・・」と言うべき。そうすれば、質問にきた生徒さんは、「あ〜、なるほど」と納得するに違いない。さらに、「根号内って、判別式と関係があるんじゃなかった?」と言えば、申し分なし。生徒自身にこうしたことを気づかせ、発見させるように、丁寧に、やさしく導くべきだケロ!!)
しかも、具体的なyの値を入れて計算することによって、xがyとともに変わるということだってわかる。
――yについて解く場合については、ddt³さんが書いてあるので、そちらを見るにゃ(^^)――
問題(3月4日)の解答例 [数学基礎]
問題(3月4日)の解答例
問題1 u、vを実数とし、x=u+v、y=uv、u²+uv+v²≦1の3つの式を同時に満たす点(x,y)を図示せよ。
u、vは実数で、方程式t²−xt+y=0の解であるから(註)、
よって、①と②を同時に満たすのは右図の通り。
(解答終)
(註)
u、vを解に持つ2次方程式は、解と係数の関係より、
受験数学のテクニック!!
uとvの対称性、2次方程式の解と係数の関係、そして、判別式をうまく使えますかという問題でした。
この問題は、私の記憶に間違いがなければ、あの大学の問題なので、このあとに、求めた領域の面積を求めよという問題も付いていたのではないか(^^ゞ
問題2 写像f:(x,y)→(x+y,xy)によって、円のx²+y²=1内部はどこに写されるか。
【解】
u=x+y、v=xyとおくと、xとyは実数だから、xとyを解とする2次方程式t²−ut+v=0は次の条件を満たさないといけない。
また
よって、①と②を同時に満たす領域は右図の通り。
(解答終)
あの大学が新しい問題を作り、大学入試の数学の問題として出題すると、すぐに真似をする大学が次々と出てくるようだにゃ。
問題の難易度は下がるけどさ。
――問題1にはuvという項がついたけれど、問題2ではこれに相当する項が落ちていて、楕円から単位円に変わっている!!――
どうやら、数学の大学入試のトレンドは、あの大学が作るらしい(笑)。
伝え聞くところによると、その影響力は、難関私立の中学入試にまで及ぶとか。(小学の算数の範囲で解けるように問題を変える)
そして、受験生は、なぜ、こうなるのか分からぬまま、 「こういう問題はこういう風に解くものだ」と、ひたすら、その解法を憶えることに専念し、その修練に励むのであった。
どうせお前らこんな解答(上の解答のような解答)が好きなんだろう?
xとyは実数だから、x−yも実数。
したがって、x−yの2乗は0以上!!