積分についての簡単な(?)問題 [定積分]
お前らに、積分の簡単な問題を一つ出すにゃ。
問題 a<bとし、関数f(x)、g(x)は閉区間[a,b]で(リーマン)積分可能な関数とする。
であるが、f(x)とg(x)は[a,b]で恒等的に等しくないものとする。すなわち、f≠g。
このとき、
は成立するか。
成立するならば証明せよ。成立しないならば、反例を1つあげよ。
【ヒント】
(リーマン)積分可能な関数は、[a,b]で連続な関数とは限らない!!
では、
関数f(x)、g(x)は閉区間[a,b]で連続な関数としたらどうか。
が成り立つならば、証明せよ。
【ヒント】
f≠gで、
であるとき、
さすがに、
は成立しない。
であるから、この条件のとき、
が成立しないことを示せばよいだろう。
f(x)とg(x)は[a,b]で連続だから、h(x)=f(x)−g(x)も連続で、h(x)は[a,b]で恒等的に0に等しくなく、かつ、
となる。
このとき、
にならないことを示せばいいんじゃなかろうか。
さらに、出血大サービスで、
h(x)は恒等的に0に等しくなく、かつ、h(x)≧0という条件は、
というcが存在すると言い換えることができる。
h(x)は連続なので、cの近傍(cがaまたはbであるときは片側近傍)で
となるにゃ。
なお、δ>0だケロ。
これだけヒントを出してやったのだから、ちゃんと証明しろよな。
第2種楕円積分 [定積分]
第2種楕円積分
楕円
の弧の長さsについて考える。
とおくと、これは上の楕円のパラメータ表示(極座標とは異なるので注意)になるので、弧の長さは次式で与えられる。
ここで、
とおけば、楕円の弧の長さは次式で求められる。
(1)式の右辺に現れる積分を第2種楕円積分といい、次の記号で表す。
φ=π/2までの積分を第2種完全楕円積分といい、であらわす。
すなわち、
楕円の周の全長をLとすると、対称性から、
また、t=sinθとおくと、
なので、
になる。
これをルジャンドルの標準形という。
したがって、第2種完全楕円積分は
問 次の曲線の長さを求めよ。
【解】
この曲線の長さをsとすると、
(解答終)
したがって、
の長さLは
レムニスケート積分 [定積分]
レムニスケート積分
と表される曲線のことである。
デカルト直交座標でこの曲線を表すと、
である。
このレムニスケートの弧の長さを求めることにする。
線素をdsとすると、
である。
r=f(θ)で表される極座標の場合、
なので、
となるので、
となる。
r²=2a²cos2aだから、
したがって、弧の長さは
になる。
ここで、t=tanθとおき、
よって、レムニスケートの一周の長さLをとすると、
になる。
√2a=1のとき、
になる。
つまり、
と広義積分は、レムニスケートr²=cos2θの一周の長さ(全周の長さ?)の1/4ということになる。
さてさて、(1)式のθの範囲は、0≦θ≦π/4なので、
とおくと、0≦φ≦π/2において
となり、(1)は
この右辺の積分はヤコビの楕円積分。
したがって、
となり、レムニスケートr²=2a²cos2θの一周の長さ(全周の長さ?)は
になるというわけ。
まぁ、これはハッキリ言って愚痴なんですが、
をレムニスケートと呼ぶ場合もある。
無用な混乱の原因になるから、定義を統一してもらいたいものである。
お前らに問題(不定積分)の発展問題の解答例 [定積分]
お前らに問題(不定積分)の発展問題の解答例
問題 次の問に答えよ。
(1) 次の極限値を求めよ。
(2) [0,π]上の関数F(x)を次のように定義する。
F(x)はx=π/2で微分可能であることを示し、F'(π/2)を求めよ。
(3) となることを示せ。
【解答例】
(1)
ここで、h≠0、とおくと、
よって、
(2) (1)より、
h≠0とすると、
(3) x≠π/2のとき、
x=π/2のとき、
ゆえに、
(解答終)
ロピタルの定理を使うのであれば、
【別解】
(1)
(2)
(別解終)
上の問題で定義した関数F(x)を使えば、
が成立するので、微積分学の基本定理を使うことができて、
と計算することができる。
ウォリスの公式 [定積分]
ウォリスの公式
問題 次のことを示し、この積分の値を求めよ。
【解】
n=0のときは、右辺、左辺の積分の値は
となり、等式が成立する。
nが正の整数の場合。
x=π/2−tとおくと、x=0、π/2にはそれぞれt=π/2、0が対応し、dx=−dtである。
したがって、
ゆえに、
n=1のとき、
n≧2のとき、
よって、
nが偶数のとき
nが奇数のとき
ゆえに、
nが偶数のとき、
nが奇数のとき
(解答終)
上の結果から、次の公式を得ることができる。
nを正の整数とするとき
この公式(Wallis積分)を用いると、次のWallisの公式を得ることができる。
Wallis(ウォリス)の公式
【証明】
nを正の整数とするとき、0<x<π/2において、
が成り立つ。
したがって、
辺々をで割ると、
ここで、漸化式
を用いると、
になる。
だから、ハサミ打ちの定理より
となる。
(1)、(2)より、
n→∞の極限をとって、
(解答終)
(3)より、
問題の答 [定積分]
楕円
である。
ここで、
このE(k)を第2種完全楕円積分という。
問題 曲線x²+xy+y²=2について、次の問に答えよ。
(1) この曲線が楕円であることを示せ。
(2) この曲線の全長を求めよ。
【解答例】
(1) 点(x,y)を原点を中心に反時計回りにπ/4回転させた点を(x',y')とすると、
これをx²+xy+y²=2に代入すると、
となり、これは楕円である。
(2) a=2、b=2/√3とおくと、
したがって、この楕円の全長Lは
(解答終)
(1)は、
そこで、行列
の特性方程式を解くと、
だから、
・・・
と、線形代数やテンソルなどの知識を使って解くこともできる。
問題 a>0とする。点(a,0)を中心とする半径aの円について次の問に答えよ。
(1) 円の方程式を求めよ。
(2) この円の極座標表示の方程式を答えよ。
【解答】
(1)
(2) として、上の円の方程式に代入すると、
極座標なのでr>0。
したがって、
(解答終)
極座標の場合、θは0≦θ<2πにとるのが一般的ですが、上のようにθの範囲を定めたほうがいいと思います。
(x−a)²+y²=a²を極座標平面に移すと、原点O(0,0)に対応する点が抜け落ちるんだケロよ。
だから、θ=±π/2のときになるので、r=0の場合を含めて
にすればいいなんてことをしてはいけない。
r=2acosθという関係が成立するのは図を見れば明らかでしょう。
面積ですが、
は、極座標変換によって
に移ります。
そして、ヤコビアンJは
だから、
となる。
2重積分ではなく、
という公式を使って面積を求めるならば、
積分の有名問題に挑む [定積分]
積分の有名問題に挑む
次の有名な積分の問題は、広義積分を使うと簡単に解けてしまうんだね〜。
問題 次の積分の値を求めよ。
【解答】
t=tanxとおくと、
x=0→t=0、x=π/2→t=∞(正確には)になるので、
よって、
(解答終)
そして、これから
になる。
何故ならば、
右辺第二項の積分は、x=π−tとおくと、
この手の積分には、多少やましいところがあるくらいで丁度良い(^^ゞ
問題の解答は、t=tanxとおくと、
となることを使って、
としてもよい。
ところで、楕円
の面積Sは、
である。
とおき、代入すると、
と、上の楕円の極座標表示の方程式が得られる。
そして、この楕円の面積Sの1/4は
と、図形的な意味を考えると、積分の計算を一切することなく、この積分の値を求めることができるのであった。
と同時に、
になるのであった。
つまり、この積分は楕円の面積を表すものだったんだね〜。
さらに、あの広義積分の値に迫る [定積分]
さらに、あの広義積分の値に迫る
という積分について考える。
とおくと、
なので、
と、この積分はベータ関数に帰着することができる。
ベータ関数とは
である。
ベータ関数B(p,q)とガンマ関数Γ(s)の間には
という関係があるので、これを用いると
となる。
また、
だから、
となる。
ここで、ガンマ関数Γ(s)とは、
である。
幸い、ガンマ関数は表計算ソフトの組み込み関数にあるので、表計算ソフトを使ってこの値を求めると、
したがって、
となるのであった。
ガンマ関数の次の公式
を用いると、
よって、
また、ガンマ関数の倍角公式
に、x=1/4を代入すると、
これから、
と計算することもできる。
これを用いると、レムニスケート周率ωは
積分を見て、ふと、考える (定積分・広義積分) [定積分]
例題 次の定積分の値を求めよ。
【解】
とおくと
だから、
(解答終)
となり、上の定積分は半径aの円の面積の1/4になるので、図形的な意味を考えて
としてもよいのだそうだ。
さてさて、例題の計算に注目するにゃ。
とおくと
となるだろう。
だから、
となる。
また、正弦関数の倍角公式を用いると、
この結果を①に代入すると、
という不定積分の公式を得ることができる。
問題 次の値を求めよ。
【解答(?)】
とおくと、
【解答(?)終】
という結果は正しいですが、この問題の【解答(?)】は正しいですか?
上の被積分関数はx=aのとき分母がゼロになるので問題の定積分もどきは、
ε>0のとき、
といったような広義積分になりますが、上のように計算して大丈夫ですかね〜。
ですから、ここは
といった不定積分の公式を使って、この広義積分の値を求めたほうが安全かもしれない。
テストなどでこの問題が出題されるときは、広義積分の問題としてなので、これを置換積分の問題と勘違いし【解答(?)】のように解くと、大学の数学の先生はニヤリとほくそ笑み、「引っかかったな」と、減点するかもしれない(笑)。
この問題は、大学の数学の先生が学生を落とし込めるための罠を仕掛けてある、非常に危険な問題なのであった(^^ゞ
宿題 とおいて置換積分をすることによって次の公式が成り立つことを示せ。
【解答(?)】にほとんど答を書いてあるようなものだが・・・。
普通、
と置いて、逆関数の微分を用いて、
と、この不定積分を求めますが、置換積分を用いて求めることもできる。
ヤコビの楕円関数(第一種楕円関数)
で、t=sinθとおくと、
になるんですわね〜。
これを見ていて、ふっと、思ったのさ。
できる奴は、(4)が成立することまで示す。
ヤコビの楕円関数 [定積分]
ヤコビの楕円関数
0<k²<1ならば、次の積分は
は、単調な微分可能なφの関数となる。この積分をヤコビの楕円関数という。
いま、(1)をu=F(φ)とし、この関数のグラフについて考える。
より、0≦φ≦π/2では下に凸、π/≦φ≦πでは上に凸となる。
ここで、
とおけば、次の関係が成立する。
したがって、u=F(φ)のグラフは次のようになる。
問 (3)、(4)が成立することを示せ。
【証明】
(1)
右辺第2項の積分に対して、t=π−xとして置換積分すると、
したがって、
(2)
右辺第2項の積分に、t=x−πとして置換積分すると、
よって、
(証明終了)
【註】
と表すのが一般的であるが、議論を容易にするために、パラメータ(母数)kを省略した。
u=F(φ)の逆関数を
で表し、これをuの振幅という。この振幅の正弦と余弦を
で表す。
この定義から、
(4)より次の関係が成立する。
が成り立つから、sn uとcn uは4nKを周期とする周期関数である。また、sn uは奇関数、cn uは偶関数である。
(下図参照)
次に振幅am uの導関数を考えると、
となるが、これをdn(u)で表す。すなわち、
したがって、snとcnの導関数は次のようになる。
さらに、