絶対収束と条件収束 [微分積分]
絶対収束と条件収束
が収束するとき、は絶対収束するという。は収束するが、絶対収束しないとき、は条件収束するという。
例1 正項級数が収束するとき、なのでが成立し、したがって、正項級数は絶対収束する。
定理4
例2 が収束し、
も収束するので、は絶対収束。
例3 は収束する(例4参照)が、
は収束しないので、は条件収束。
問1 次の級数の収束・発散を調べよ。
【解】
すべての自然数nについて、
は収束するのでは収束する。
したがって、は収束する。
(解答終)
問2 次のことを示せ。
(1) を満たす定数0<c<1とM>0が存在すれば、は収束する。
【解】
(1) 仮定より、任意の自然数nに対して
よって、任意の自然数nに対しては上に有界で、は収束する。
(2) が収束するとすると、。しかし、仮定より、任意の自然数nに対してだから、となり矛盾。よって、は発散する。
(解答終)
とするとき、
を交代級数という。
交代級数の収束については、次のライプニッツの定理がある。
定理11 (ライプニッツの定理)
【証明】
条件より
である。
とおくと、だから、
したがって、は上に有界。
また、
よって、は単調増加数列で上に有界。
ゆえに、は収束する。
とおくと、
よって、。
したがって、交代級数は収束する。
(解答終)
例4 数列は単調減少で、かつ、だから、交代級数は収束する。
正項級数 その2 [微分積分]
正項級数 その2
定理7
区間[1,∞)で定義された連続関数f(x)が、f(x)>0かつ単調減少とする。
【証明】
kを自然数とする。
k≦x≦k+1とすると、f(x)は減少関数なので、
したがって、
よって、
(証明終)
α>0に対して、
を一般調和級数という。
定理8 (一般調和級数の収束・発散)
【証明】
α>0とすると、関数は[1,∞)においてf(x)>0かつ減少関数である。よって、正項級数と広義積分は同時に収束・発散する。
ところで、広義積分が収束する必要十分条件はα>1であったから、正項級数も同じ条件で収束する。
(証明終)
問1 次の級数の収束・発散を判定せよ。
【解】
(1) とすると、f(x)>0かつf(x)は単調減少関数。
したがって、は発散する。
(2) とすると、f(x)>0かつf(x)は単調減少関数。
したがって、は収束する。
(解答終)
定理9 (ダランベールの判定法)
が存在するとき、
(1) ならばは収束する
(2) r>1ならばは発散する。
【証明】
(1) r<ρ<1であるρを取り、このρに対して適当な自然数Nを取ると、
したがって、
(2) 1<ρ<rであるρを1つとり、このρに対して適当な自然数Nを定めると、
したがって、
(証明終)
定理10 (コーシー・アダマールの判定法)
であるとき、次のことが成り立つ。
【解】
(1) r<ρ<1であるρを1とり、このρに対して適当な自然数Nを定めると、
とすることができる。
よって、
(2) 1<ρ<rであるρを1つとって、このρに対して適当な自然数Nを定めると、
よって、。
(証明終)
(注)
ダランベール、コーシー・アダマールの判定法ともに、r=1のとき、収束・発散の判定が行えないので、この点は注意すること。
問2 次の級数の収束・発散を判定せよ。
【解】
(1) とおけば、
よって、ダランベールの判定法により、収束する。
(2) とおくと、
したがって、ダランベールの判定法より、発散する。
(解答終)
正項級数 [微分積分]
正項級数
とおくと、数列は単調増加なので、は収束するか、+∞に発散するかのいずれかである。
したがって、次の定理が成り立つ。
定理5
正項級数が収束するための必要十分条件は、ある実数M>0が存在し、任意の自然数nに対して、
が成り立つことである。
【証明】
よって、が上に有界ならば収束し、上に有界でなければ発散する。
(証明終)
例
任意の自然数nについて
が成り立つので、定理5より正項級数は収束する。
問1 数学的帰納法を用いて、次の不等式を証明せよ。
定理6 (比較判定法)
正項級数において、任意の自然数nに対してであるとする。
このとき、
【証明】
とするとであるから、は単調増加数列で、が成り立つ。
よって、ならば、となり、は上に有界な単調増加数列となり収束する。
また、ならば、だから、と発散する。
(証明終)
問2 次の級数の収束を判定せよ。
【解】
(1) k≧2のとき、
したがって、
(2) 任意の自然数nに対して
(3) 任意の自然数nに対して
であり、と発散するので、は発散する。
(4) 任意の自然数nに対して
は発散するので、は発散する。
(解答終)
なお、上の解答では、と発散することを利用している。
「数値解析勉強中の大学生」さんからいただいた質問への回答 [数値解析]
「数値解析勉強中の大学生」さんからいただいた質問への回答
2)のk2の式で、
となっていますが、何故にはではなくが使われるのかが完全に理解できておらず、ご教授頂きたいです。宜しくお願いいたします。
に対する、ルンゲ・クッタ法は
ですよね。
時刻tを陽に含まない、
の場合――力学系のといいます――は、これに対するルンゲ・クッタ法は
になります。
これは、次のようなベクトル表記を用い、そのまま、連立常微分方程式に拡張が可能です。
すなわち、
これに対する、ルンゲ・クッタ法は
これを成分で表すと、
に対するルンゲ・クッタ法は、i=1,2,・・・、nに対して、
となります。
そして、
の場合は、
になるでしょう、って話なんですが。
いま振り返ると、
ではなく、
とし、これから、偏微分方程式(1)は
という連立常微分方程式に変換――というか近似――できる。
そして、
とおくと、
になり、これにルンゲ・クッタ法を適用すると、
と書いたほうが良かったのかもしれませんね。
この話、近似法には、正直、胡散臭いところがいくつかあるもので、この部分の話はあまりしたくない(^^ゞ。
それで、質問の
何故にはではなくが使われるのかが完全に理解できておらず、ご教授頂きたいです。
ですが、
時刻t+Δt/2のの変化分(の近似値)はだから、にこれを加えるみたいは話なんですよ。
同様に、 時刻t+Δt/2のの変化分(の近似値)はだから、にこれを加え、時刻t+Δt/2のの変化分(の近似値)はだから、にこれを加えるといった話です。
お前らに質問(12月12日 関数の微分可能性)の解答例 [お前らに質問]
お前らに質問(12月12日 関数の微分可能性)の解答例
問題 f(x)=x³を実数全体の集合Rで定義される関数とするとき、任意のa∈Rに対して
となることを、ε−δ論法を用いて証明せよ。
【解答】
0<δ≦1とし、とすると、
よって、任意のε>0に対して、
に取ると、
(解答終)
なお、上の解答で
となっているのは、0<δ≦1⇒δ²≦δだから。
また、単に、
任意の正数ε>0に対しδを
とすると、ε>1+3|a|のとき、
となってしまうので、0<δ≦1という仮定を満たすために
というお呪(まじな)いを唱える必要がある。
ここで、
そして、
は、こっそり、
とおき、これを解いたところから出てくる。
「aとbの大きくない方をとる」を意味する、min{a,b}という怪しげな記号なんか使いたくないというヒトは、次のように解くといいかもしれない。
0<|x−a|<δとすると、
とおき、
このδの2次方程式を解く。
δ>0という条件があるので、
をとる。
よって、
任意のε>0に対して、
にすると、
この場合は、幸い、δ²+3|a|δ−ε=0という2次方程式になるのでδについて解くことができるけれど、δの3次以上の方程式になると厄介なので、応用しづらいという難点がある。
発展問題 とするとき、
となることを、ε−δ論法を用いて示せ。
正しかろうが間違っていようが、お前らから1つ回答が寄せられたら、解答例の公開を検討するにゃ。
無限級数 [微分積分]
無限級数
数列が与えられたとき、
とおく。
すなわち、
任意の正数ε>0に対し、ある自然数Nが存在し、
が収束するとき、は絶対収束するという。は収束するが絶対収束しないとき、は条件収束するという。
特に、が等比数列
であるとき、部分和は
になるので、|r|<1のとき
は収束し、それ以外では発散する。
無限級数の定義とコーシーの収束条件から、ただちに、次のことが言える。
定理1 (無限級数の収束に関する必要十分な条件)
級数が収束するための必要条件は、任意のε>0に対し、次の自然数Nが存在することである。
定理2
【証明】
が収束するので、定理1より、任意のε>0に対して、ある自然数Nが存在し、
m=n+1とおくと、任意のε>0に対し、
よって、
(証明終)
【別証】
とおくと、
仮定より、は収束するので、とおくと、
(別証終)
定理2の系
定理2の逆、つまり、「ならばは収束する」は一般に成り立たない。
たとえば、であるがは収束しない。
【解】
ε=1/2>0とすると、どのような自然数Nに対しても、m=2n>n≧Nにとると、
よって、は収束しない。
(解答終)
定理3
λ、μを実数とする。
【証明】
λ=μ=0のときは、明らか。
同時にλ=0、μ=0でないものとする。
は収束するので、任意のε>0に対して、ある自然数Nが存在して
よって、三角不等式から、
(証明終)
問2 次の無限級数の和を求めよ。
【解】
(1)
|a|<1だから、
よって、
したがって、は収束し、
(2) とおくと、
よって、
したがって、
よって、
(3)
したがって、
(解答終)
定理4
【証明】
が絶対収束する、すなわち、が収束するので、定理1より、任意の正数ε>0に対して、ある自然数Nが存在し、
(解答終)
問3 は収束するが、絶対収束しない(無限)級数の例を1つあげよ。
数列の極限その2 [微分積分]
数列の極限その2
§2 部分列
φをからへの狭義単調増加関数(n₁<n₂ならばφ(n₁)<φ(n₂))とする。数列が与えられたとき、数列を数列の部分列という。
定理8 (部分列の収束)
すなわち、
【証明】
数列の極限値をαとすると、任意の正数εに対して、ある自然数Nがあって、
である。
φ(n)≧nなので、
(証明終)
定理9 (Boltano-Weiestrassの定理)
有界な数列は、収束する部分列をもつ。
【証明】
である。
ここで、
とおくと、閉区間[m₁,c₁]、[c₁,M₁]を作ると、少なくともどちらか一方に無数のが存在する。
もし、[m₁,c₁]に無数のが存在すれば、
そうでないとき、
と置く。
以下、同様な操作をし、
とすると、を構成する。
すると、
であるから、
したがって、とおくと、カントールの区間縮小法(定理7)を満たしており、ある実数cが存在し、
各区間には無数のの項が含まれていたから、自然数を項とする狭義単調増加数列を、各自然数kに対して
となるように選ぶことができる。
このとき、
であるから、ハサミ打ちの定理より
(証明終)
§3 コーシー列
数列が任意の正数εに対して、ある自然数Nが存在し、n≧N、m≧Nを満たす任意の自然数m、nに対して
定理10 (コーシー列の有界性)
コーシー列は有界である。
【証明】
数列はコーシー列であるとする。ε=1とすれば、ある自然数Nが存在し、
となる。
m=Nとすると、
となるから、
そこで、
とおけば、任意の自然数nに対して、
(証明終)
定理11 (コーシーの収束条件)
数列が収束するための必要十分条件は、コーシー列であることである。
【証明】
任意の正数εに対して、ある自然数Nがあって、
が成り立つ。
したがって、m≧N、n≧Nならば、
数列は、コーシー列なので有界だからBoltzano-Weirstrassの定理より、収束する部分列をもつ。
ε>0を任意の正数とする。はコーシー列なので、ある自然数N₁が存在して、
が成立する。
また、ある自然数Kが存在して、
が成り立つ。
ここで、自然数k₀をk₀≧Kかつを満たすように1つに固定し、N=N₁とおけば、
(証明終)
お前らに質問(12月16日 数列の極限)の解答例 [お前らに質問]
お前らに質問(12月16日 数列の極限)の解答例
問題1 数列が収束しないとはどういうことか。その定義を記せ。
【解答例】
を否定すると、
すなわち、
どんな実数値αに対しても、ある実数ε>0が存在し、任意の自然数Nについて、
となる自然数nが(少なくとも1つ)存在する、こと。
(解答例終)
命題「pならばq」の否定は、
「pかつqでない」だから注意するにゃ。
さらに、高校の数学で、
「すべての◯」(∀◯)の否定は「ある◯」(∃◯)、「ある△」(∃△)の否定は「すべての△」(∀△)
って習ったはずだから、この規則にしたがえばいいにゃ。
そうすれば、(1)の否定である(1’)が得られる!!
ちなみに、
数列の極限の定義(1)は、「数列の極限値は、それが存在すれば、ただ1つに限る」とまでは主張していない。「そんなものがあるとすれば、すくなくとも1つはある」としか言っていない。
したがって、極限値が1つに限るということは、定義(1)などから証明すべきことなのであった!!
問題2 、かつ、α>0とするとき、ある自然数Nが存在し、n≧Nである全ての自然数nについて、
であることを示せ。
【解答例】
である。
ε>0は任意なので、にすると、
を満たす自然数Nが存在する。
よって、このとき、
(解答終)
細かいヒトは、
ではなく、「すべての」、「任意の」を表す「全称記号」∀をつけて
としたりするにゃ。
類題 、かつ、α≠0とするとき、ある自然数Nが存在し、n≧Nである全ての自然数nについて、
であることを示せ。
問題3 数列が収束するとき、は有界である、
すなわち、
である実数Mが存在する。
このことを利用して、極限の公式
を証明せよ。
【解答例】
であるとき
だから、
また、とすると、だから、
となり、
次に、少なくとも1つである項が存在するとする。
数列は収束するので有界である。
つまり、
となる実数M>0が存在する。
また、であるから、
任意のε>0に対して、ある自然数N₁、N₂が存在し
が成り立つ。
よって、とすると、
任意のε>0に対して、n≧Nならば
となるので、
したがって、
である。
(解答例終)
(M+|α|)=0だと
となって、
という条件を満たさなくなるので、塩梅が悪いにゃ。
そこで、
そうならないように、
とそうでない場合に分けたケロ。
突っ込まれないようにこう書いたけれど、
を満たす実数Mはの上限、
である必要は必ずしもないから、上の部分は要らな言っちゃ〜要らない。
てなわけで、
こういうことを踏まえて、
「数列は収束するので有界である。
つまり、
となる実数M>0が存在する」
とすればいいんだウサ。
実は、みんなの幸せを願う「ウサギ」のネムネコでした。
お前らに質問(12月16日 数列の極限) [お前らに質問]
お前らに質問(12月16日 数列の極限)
本日、12月16日の数学の記事、数列の極限で、「みんなが大好き」ε−δ論法の一種、ε−N論法をバリバリ使った。
数式はいっぱい出てくるので、So-netブログ名物の1記事10万字以内というオキテに触れて、記事中の数式を50近く、画像に変換し、それを記事に貼り付けるという気が遠くなるような作業をやる羽目になってしまった。
これから、ねこ騙し数学で取り扱う内容の前提知識となる内容なので、これを疎かにはできないにゃ。
というわけで、お前らには、数列の極限に関する問題をいくつかといてもらうことにするにゃ。
問題1 数列が収束しないとはどういうことか。その定義を記せ。
と、いきなり質問しても、質問が曖昧すぎて答えられないかもしれないので、数列の収束に関する定義を記すにゃ。
ある実数αが存在し、任意の正数ε>0に対して、ある自然数Nが存在し、n≧Nを満たすすべての自然数nについて、
であるとき、数列はαに収束するといい、また、αをの極限値という。
実数全体の集合を、自然数全体の集合をとすると、
といった感じになりますか。
(1)が数列の収束の定義なのだから、これを否定すれば、収束しないの定義になるわな。
そして、それを日常事は著しく異なる数学語に翻訳すればよい。
翻訳した数学語を、自然な日本語――英語であろうが同じだが――に直そうとすると、意味が変わることが往々にして生じるので、やめたほうがいいケロよ。
日本語としてどんなに不自然であろうと、翻訳数学語に慣れるしかない!!
ところで、
「ある自然数Nがあって、どんな自然数nに対しても、N≧nである」
と
「どんな自然数nに対しても、ある自然数Nがあって、N≧nである」
は同じ意味ですか?
怪しげな記号を使うと、
と
とかになりますか。
違うとすれば、命題P1とP2のどちらが真の命題か、あるいは、どちらも真、ともに偽か、について考えるといいにゃ。
問題2 、かつ、α>0とするとき、ある自然数Nが存在し、n≧Nである全ての自然数nについて、
であることを示せ。
この極限値がαたとえ無量大数分の1という限りなく0に近い数であろうと、その極限値がα>0でありさえすれば、上のことは必ず成り立つ。
問題3 数列が収束するとき、は有界である、
すなわち、
である実数Mが存在する。
このことを利用して、極限の公式
を証明せよ。
ノーヒントじゃ辛いかもしれないので、心優しいネムネコはヒントを出してやるにゃ。
【ヒント】
とし、次のように変形せよ。
もう答を教えたようなものだけれど…。
数列の極限 [微分積分]
数列の極限
§1 数列の極限
定理0 任意の正数ε>0に対して、
ならば、a=0である。
【証明】
a>0とすると、a/2>0。
εは任意の定数なので、ε=a/2>0とおくと、
となり矛盾。したがって、a=0である。
(証明終)
自然数全体の集合から実数全体の集合への写像
数列において、任意の正数εに対して、適当な自然数Nを選ぶと、n≧Nのすべての自然数nについて、
となるとき、
であらわし、数列はαに収束するという。また、αを数列の極限値という。
すなわち、
であるとき、
と表す。
定理1 (極限値の一意性)
【証明】
となる自然数N₁、N₂が存在する。
εは任意の正数なので、α−β=0、すなわち、α=βとなる。
(証明終)
定理2 (数列の極限の公式)
【略証】
(1) c=0のときは明らか。
c≠0のとき、だから、任意の正数εに対して、ある自然数Nが存在し、
よって、
(2) だから、任意のε>0に対して、ある自然数N₁、N₂があって、
(3) 任意のε>0に対し、
とすると、ある自然数Nが存在して、
したがって、
(4) 任意のε>0に対して、
とおくと、ある自然数Nが存在して、
となる。
このとき、
よって、
したがって、
ゆえに、(3)より
(5) だから、任意のε>0に対して、ある自然数Nが存在し、
三角不等式より、
(証明終)
定理3 (ハサミ打ちの定理)
数列に対して、
が成り立ち、
とする。このとき
である。
【証明】
数列はαに収束するので、任意の正数εに対して、ある自然数N₁があって、
数列はαに収束するので、任意の正数εに対して、ある自然数N₂があって、
よって、
(証明終)
定理4 (数列の大小と極限)
数列は収束し、
が成り立つならば、
が成り立つ。
【証明】
数列はαに収束するので、に対して、ある自然数N₁があって、n≧N₁ならば、
数列はβに収束するので、に対して、ある自然数N₂があって、n≧N₂ならば、
となり、矛盾する。
よって、α≦βである。
(証明終)
定理5 (収束する数列の有界性)
収束する数列は有界である。
【証明】
数列が実数αに収束するとすると、ε=1に対して、あるNが存在して、
である。
そこで、nによらない正の定数Mを
とおくと、
である。
また、n≧Nに関しては
よって、すべての自然数nについてが成り立つので、数列は有界である。
(証明終)
集合が上に有界なとき、数列は上に有界であるといい、集合が下に有界なとき、数列は下に有界であるという。
定理6 (単調数列の収束)
数列が単調増加かつ上に有界(単調減少かつ下に有界)ならばは収束する。
【証明】
上に有界な単調増加数列の場合について証明する。
上限の定義より、
(1) すべての自然数nについて、
(2) 任意の正数εに対して、
となるが存在する。
したがって、n≧Nであるすべてのnについて、
よって、上に有界な単調増加数列は収束する。
(証明終)
定理7 (カントールの区間縮小法の原理)
閉区間がを満たすならば、
である。
【証明】
条件より、
である。
よって、数列は上に有界な単調増加数列、数列は下に有界な単調減少数列となり、定理6より収束する。
である。
したがって、
である。
となるので、c=α。
よって、
(証明終)