論理の問題2 [集合と論理]
論理の問題2
問題1 p、q、r、sを任意の命題とするとき、とが同値であることを示せ。
【解答】
(解答終)
問題2 実数a、b、x、yがa+b=1、x+y=2、ax+by=3を満たすならば、a、b、x、yのうち、少なくともひとつは負の数であることを示せ。
【解答】
背理法で示すために、結論「a、b、x、yのうち、少なくともひとつは負の数である」を否定すると、「a、b、x、yのすべては0以上である」。
そこで、
と仮定する。
a+b=1だから、
x+y=2だから
したがって、
となり、ax+by=3に矛盾する。
したがって、
a、b、x、yのうち、少なくともひとつは負の数である。
(解答終)
問題3 実数a、b、xに対して、次の命題の真偽を理由をつけて述べよ。
(1) |a|+|b|>|a+b|ならばab≠0である。
(2) a≦xとx≦bを同時に満たすxはすべて、x<bを満足する。
(3) a≦bならばx≦aを満足するxはすべて、x≦bを満足する。
(4) f(x)=x²+3x+2とする。f(a)>0ならばaはf(x)=0の2根の大きいほうよりもさらに大きい。
【解答】
(1) 対偶をとると、
ab=0ならば|a|+|b|≦|a+b|
ab=0と「a=0またはb=0」は同値なので、
「a=0またはb=0」ならば|a|+|b|≦|a+b|
となる。
これは真であるから、この命題は真である。
(2) 偽。反例:a=b=x=1
(3) 偽。反例:a=b=x=1
(4) f(x)=x²+3x+2=0の解はx=−1、−2。a=−3とすると、f(−3)=2>0であるが、a<−1。よって、この命題は偽。
(解答終)
問題4 「実数a、bがともに有理数ならば、a+bは有理数である。よって、もしa+bが無理数であるならば、a、bはともに無理数である」という推論は正しいか。正しくなければ、正せ。
【解答】
a=√2、b=−√2とすると、a、bはともに無理数であるが、
は有理数で、無理数でない。
有理数全体の集合をQ、無理数の集合をとすると、命題命題「実数a、bがともに有理数ならば、a+bは有理数である」の対偶は、「a+bが無理数であるならば、aまたはbは無理数である」である。
だから、「a+bが無理数であるならば、aまたはbは無理数である」とすればよい。
(解答終)
問題5 条件p(x):x²−6x+8<0、q(x):x²−9x+8>0について、
(1) 命題「p(x)またはq(x)」の真理集合Sを求めよ。
(2) すべてのx∈Sについて、x²−ax+8≠0のための条件を求めよ。
【解】
(1) x²−6x+8=(x−2)(x−4)<0だから、この解は2<x<4。また、x²−9x+8=(x−1)(x−8)>0だから、この解はx<1またはx>8。
したがって、
(2) この条件は方程式x²−ax+8=0の解が、虚数解であるか、Sの補集合に属するとき。
x²−ax+8=0が虚数解を持つ条件は
x²−ax+8=0が重根をもつときは、x=±2√2となり不適。
x²−ax+8=0が相異なる2実根をもつとき、f(x)=x²−ax+8とすると、f(1)≧0、f(2)≦0、f(4)≦0、f(8)≧0でなければならない。
よって、
したがって、6≦a≦9。
ゆえに、−4√2<a<4√2、または、 6≦a≦9。
(解答終)
問題6 次の条件は、すべてのxについてx²+px+q>0であるための何条件であるか。ただし、p、qは実数とする。
【解】
すべてのxについてx²+px+q>0の必要十分な条件は
である。
という包含関係が成立するので、
(1) 必要条件 (2) 十分条件
(解答終)
問題7 ある学者が古今東西の政治家について調べて、次のような説を立てた。
(1) A型のものはすべてB型でない。
(2) C型でないものはB型でない。
(3) C型のものはすべてD型でない。
(4) E型のものはすべてB型である。
この説から次のどの結論が出るか。その理由を(ベン)図を用いずに書け。
(あ) A型のものはE型でない。
(い) D型であってE型のものがいる。
(う) E型のものはすべてC型である。
(え) A型であってC型のものがいる。
【解答】
命題「A型である」、「B型である」、「C型である」、「D型である」、「E型である」の真理集合をそれぞれA、B、C、D、Eで表す。
(1)より、A∩B=∅である。
(2)の対偶は「B型のものはC型である」だから、B⊂C。
(3)より、C∩D=∅。
(4)より、E⊂B。
また、
(あ)はA∩E=∅。
(い)はD∩E≠∅。
(う)はE⊂C。
(え)はA∩C≠∅。
である。
(1)と(3)より、A∩B=∅かつE⊂BからA∩E=∅となるので、(あ)は正しい。
(2)と(4)から、B⊂CかつE⊂BからE⊂B⊂Cとなるので、(う)は正しい。
(2)と(4)よりE⊂C、(3)よりC∩D=∅であるから、E∩D=∅となり、(い)は偽である。
(え)については、(1)のA∩B=∅と(2)のB⊂CからA∩C=∅の真偽は不明。
したがって、(あ)と(う)。
(解答終)
第10回 「すべての」と「ならば」を含む複合命題 [集合と論理]
第10回 「すべての」と「ならば」を含む複合命題
数学には「a(x)ならばb(x)」という形の命題が多い。これは、条件命題ではなく、全称命題
「すべてのxについて、a(x)ならばb(x)」
または
「すべてのxは、a(x)ならばb(x)」
で、
の意味である。
ところで、
であるので、
となる。
a(x)、b(x)の真理集合をA、Bとすると、条件命題の真理集合はとなるので、
となる。
すなわち、
したがって、∀x(a(x)⇒b(x))の真偽は、真理集合の包含関係A⊂Bを調べることにことによって知ることができる。
また、このことから、
となる。
問1 次の命題の真偽を調べよ。
(1) x²+x<2ならばx²−x<2
(2) x²−3x+2<0ならばx²+3x+2>0
(3) x+y<1ならばx²+y²<1
【解答】
(1) x²+x<2の真理集合をA、x²−x<2の真理集合をBとすると、
したがって、偽
(2) x²−3x+2<0の真理集合をA、x²+3x+2>0の真理集合をBとすると、
よって、真である。
(3) x+y<1の真理集合をA、x²+y²<1の真理集合をBとすると、
A,Bを座標平面上に書くと、下図のようになり、。
よって、偽である。
(解答終)
問2 真理集合包含関係を調べて、実数x、yに関する次の命題に真偽を定めよ。
【解答】
(1) y=|x|の真理集合をA、y²=x²の真理集合をBとすると、
これを図示すると、下図のようになり、A⊂B。
したがって、この命題は真である。
(2) (x²+y²<1)∧(x+y+1<0)の真理集合をA、(x<0)∧(y<0)の真理集合をBとすると、
これを図示すると、下図のようになり、A⊂B。
したがって、この命題は真である。
(解答終)
問3 ある正の数a、bに対してax+by>0ならば、x>0またはy>0であることを証明せよ。
【解】
だから、この対偶をとると、
すなわち、
x≦0かつy≦0ならば、全ての正数a、bに対してax+by≦0である
になり、これは明らか。
よって、成り立つ。
(解答終)
第9回 全称命題と特称命題の複合命題1 [集合と論理]
第9回 全称命題と特称命題の複合命題1
§1 全称命題と特称命題の否定
全体集合UをU={1,2,3}とし、
「すべてのxは6の約数である」
という命題p(x)の否定について考える。
a(x)を「6の約数である」とすると、この命題は
で表され、a(x)は、x=1,2,3のときに真である。すなわち、
である。
したがって、この命題に否定は
であり、ド・モルガンの法則より
この右辺は、の少なくとも1つが真であることを表している。
よって、
である。
同様に、
を否定すると、
となることから、
となる。
条件命題a(x)の真理集合をAとすると、このことは次のように示される。
したがって、
「すべてのxは・・・である」の否定は「あるxは・・・でない」
「あるxは・・・である」の否定は「すべてのxは・・・でない」
である。
問1 次の命題の真偽を言え。偽の場合は、その命題を否定して真の命題にせよ。
(1) すべてのxについて、x²≧2x−2
(2) x>0を満たす任意のxをとっても、である。
(3) ある実数xに対して、である。
【解答】
(1) すべてのxについて、となるので、真。
(2) x=1のとき、なので、偽。
全体集合UをU={x|x>0}とすると、この命題は
となるので、この否定は
したがって、「x>0を満たすあるxはである」
(3) を満たす実数xは存在しないので、この命題は偽。
この命題の否定は
なので、この命題の否定は
よって、「すべての実数xについて、である」
(解答終)
§2 連言と選言
「すべてのx」、「あるx」がついた連言、選言については次の関係が成り立つ。
【証明】
全体集合をU、a(x)、b(x)の真理集合をそれぞれA、Bとする。
U=A∩B⊂A、かつ、A⊂Uだから、A=U。
同様に、B=U。
よって、
したがって、
(4)については、
(解答終)
なお、次の関係は一般に成り立たないので注意。
問2 (5)、(6)は一般に成り立たない。その反例をあげよ。
【反例」
(5)については、実数全体の集合Rを全体集合とし、「xは有理数である」をa(x)、「xは無理数である」をb(x)とすると、
は真であるが、ともに偽であるからは偽。
したがって、
(6) 三角形すべての集合を全体集合とし、「xは鋭角三角形である」をa(x)、「xは鈍角三角形」をb(x)とすると、
は偽、ともに真であるのでは真である。
したがって、
(反例)
a(x)、b(x)の真理集合をA、Bとすると、
であり、
なので、(5)は一般に成立しない。
ただ、
は成立するので、
は成立する。ただし、この逆は一般に成立しない。
また、
となり、
は成り立つので、
である。ただし、この逆は一般に成立しない。
問3 次の関係が成り立つことを示せ。
【解】
(解答終)
論理の問題 [集合と論理]
論理の問題
問題1 次の命題の真偽判断し、その理由を述べよ。
(1) a,b,cが実数で、ac<0ならば、2次方程式ax²+bx+c=0は異なる2つの解をもつ。
(2) nが自然数ならば、n²-n+17は素数である。
【解】
(1) 真。
2次方程式ax²+bx+c=0 (a≠0) の判別式をDとすると、
したがって、ac>0ならば、bは実数だからb²≧0なので、
よって、相異なる2実根をもつ。
(2) 偽。
n=17とすると、
したがって、n=17のとき、n²−n+17は素数ではない。
(解答終)
問題2 命題p,qについて、次のことを証明せよ。
【解】
ここで、Iは恒真命題。
(解答終)
問題3 次の命題が恒真(命題)であることを示せ。
【解答例】
(1)
(2)
ここで、Iは恒真命題。
(解答終)
上の計算では、
を利用していることに注意。
【証明】
(証明終)
問題4 a、bを命題とするとき、次の等式が成り立つことを示せ。
【解】
(1)
(2) 対偶と(1)の結果を使って
などと証明できそうですが、ここは愚直に
(解答終)
真偽表を使うと、上の問題は次のように証明することができる。
【別解】
(別解終)
問題5 a、bを命題とするとき、次の等式を証明せよ。
【解答】
(解答終)
真偽表による別解は次のとおり。
【別解】
よって、等式が成立。
(別解終)
問題6 次の問に答えよ。
(1) 実数のある集合Sについて、命題{Sに属するすべてのxはmより小さい」を否定する命題をかけ。
(2) 命題:x≧1、y≧1ならばx+y≧2の逆、対偶、裏を述べ、その真偽を書け。
【解】
(1) 「すべてのxはp(x)である」の否定は「あるxはである」。
よって、
「Sに属するあるxはmより小さくない」
(2) p⇒qの逆はq⇒p、対偶は、裏はである。
p:x≧1かつy≧1
q:x+y≦2
とすると、その否定は
したがって、
逆:x+y≧2ならばx≧1、y≧1 。 偽(反例:x=3、y=−1のとき、x+y≧2)
対偶:x+y<2ならば、x<1またはy<1。 真(p⇒qとその対偶の真偽は一致する)
裏:x<1またはy<1ならばx+y<2。 偽(これは逆の対偶なので、逆が偽だからこれも偽)
(解答終)
問題7 次の問に答えよ。
(1) 「x²が3の倍数ならば、xは3の倍数である」という命題の対偶を述べ、次に初めの命題を証明せよ。
(2) 「x、yが実数で、x+y>2ならば、x,yのうちすくなくとも1つは1より大きい」ことを証明せよ。
【解】
(1) 対偶:xが3の倍数でなければ、x²は3の倍数でない。
xは3の倍数でないので、
となる整数nが存在する。
よって、x²は3の倍数でない。
したがって、
対偶:xが3の倍数ならばx²は3の倍数は、真。
よって、命題「x²が3の倍数ならば、xは3の倍数である」は真。
ただし、xを実数とすると、x=√3のときx²=3で3の倍数であるが、x=√3は3の倍数ではないので、この命題が偽である。
(2) 対偶:「x,yが実数で、x≦1かつy≦1ならばx+y≦2である」
x≦1かつy≦1とすると、
対偶が真なので、命題「x,yが実数で、x+y>2ならば、xとyのうち少なくとも1つは1より大きい」は真である。
(解答終)
発展問題
(1)
(2)
(解答終)
必要条件、十分条件に関する問題 [集合と論理]
必要条件、十分条件に関する問題
基礎知識の確認
p、qを命題とする。p⇒qが真であるとき、pはqであるための十分条件、qはpであるための必要条件であるという。
また、p(x)、q(x)を条件命題、P、Qをその真理集合、すなわち、
とすると、p(x)⇒q(x)(正確には、∀x,p(x)⇒q(x))のとき、真理集合PとQの間には
という関係が成立する。
したがって、必定十分条件、p(x)⇔q(x)のとき、P⊂QかつP⊃Qより、真理集合PとQの間には
P=Q
という関係が成立する。
問題1 次の表で、PはQであるための必要条件、十分条件、必要十分条件であるか。このいずれでもない場合は☓をつけよ。
P |
(ア) a=0 |
(イ) ab>bc |
(ウ) a³=b³ |
(エ) a²>b² |
(オ) ab=0 |
Q |
ab=0 |
a>c |
a=b |
a>b |
a²+b²=0 |
【解】
(ア) a=0⇒ab=0は真、ab=0⇒a=0は偽。したがって、a=0はab=0であるための十分条件。
(イ) ab>bcかつb<0とすると、
a>cのとき、b<0とすると、
よって、ab>bcは、必要条件でも十分条件でもない。
(ウ) a³=b³であるとすると、
したがって、等号が成立するのは、
よって、
したがって、a³=b³はa=bであるための必要かつ十分条件。
(エ) a=−1、b=0とすると、(-1)²=1>0であるが、a>bではない。よって、a²>b²⇒a>bは偽。
a=0、b=−1とすると、a>bであるが、a²=0<(−1)²=b²となるので、a>b⇒a²>b²は偽。
よって、a²>b²はa>bであるための必要条件でも十分条件でもない。
(オ) 「ab=0」⇔「a=0またはb=0」。また、「a²+b²=0」⇔「a=b=0」である。
したがって、ab=0⇒a²+b²=0は偽、a²+b²=0⇒ab=0。
よって、ab=0はa²+b²=0であるための必要条件。
P |
(ア) a=0 |
(イ) ab>bc |
(ウ) a³=b³ |
(エ) a²>b² |
(オ) ab=0 |
Q |
ab=0 |
a>c |
a=b |
a>b |
a²+b²=0 |
|
十分条件 |
☓ |
必要十分条件 |
☓ |
必要条件 |
(解答終)
問題2 次の空欄(ア)、(イ)、(ウ)に適する言葉を入れよ。
実数x,yに対するp:x+y≧4、q:x≧2またはy≧2、r:x≧2かつy≧2において、pはqの(ア)条件、pはrの(イ)条件、qはrの(ウ)条件である。
【解】
命題p、q、rの真理集合をそれぞれP、Q、Rとすると、
これを座標平面上に描くと、次のようになる。
したがって、
P⊂Q、P⊃R(R⊂P)、Q⊃R(R⊂Q)という包含関係が成り立つ。
よって、pはqであるための十分条件、qはpであるための必要条件、
qはrであるための必要条件である。
(ア)十分条件 (イ)必要条件 (ウ)必要条件
(解答終)
問題3 f(x)は係数が実数である3次式、x²+bx+c(b,cは実数)を0にするxの値の1つをαとする。次の問に答えよ。
(1) f(α)=0は、f(x)がx²+bx+cで割り切れるための必要条件であることを示せ。
(2) b²<4bcのとき、f(α)=0は、f(x)がx²+bx+cで割り切れるための十分条件であることを示せ。
【解】
(1) f(x)がx²+x+cで割り切れるとすると、
である1次式h(x)が存在する。
したがって、(x)がx²+bx+cで割り切れるためには、
でなければならない。
(2) b²<4bcだから、2次方程式x²+bx+c=0の解は虚根。その一つをα=p+qi(p、qは実数でq≠0)とし、f(x)をx²+bx+cで割った商をh(x)、剰余をmx+nとすると、
仮定よりf(α)=0だから、
q≠0だからm=0。よって、n=0。
したがって、f(α)=0は、f(x)がx²+bx+cで割り切れるための十分条件である。
(解答終)
問題4 f(x)=x²+(a−1)x+1、g(x)=mx²+2ax+mとおく。a、bは実数である。
(1) すべての実数xについて、f(x)>0が成り立つようなaの範囲を定めよ。
(2) 「すべての実数xに対して、f(x)>0である」ことが、 「すべての実数xに対して、g(x)>0である」ための十分条件となるようなmの範囲を定めよ。
【解】
(1) 2次方程式x²+(a−1)x+1=0の判別式をDとすると、すべての実数xについてf(x)>0であるためにはD<0でなければならない。
したがって、
(2) 2次方程式mx²+2ax+m=0の判別式をDとすると、すべての実数xに対してg(x)>0であるためには、m>0かつD<0でなければならない。
としたとき、A⊂Bとならなければならないので、m≧3。
(解答終)
宿題 y≧ax(x−2)がの成り立つための十分条件となるようなaの範囲を定めよ。
(ヒント)
第11回 十分条件と必要条件 [集合と論理]
第11回 十分条件と必要条件
一般に、内含命題a(x)⇒b(x)(正確には、∀x,a(x)⇒b(x))は、真にも偽にもなる。(右表参照)
a(x)⇒b(x)が真であるときでも、a(x)、b(x)がともに真であるとは限らない。
そこで、a(x)⇒b(x)が真であるとき、b(x)が偽であるとすると、a(x)は真と偽のいずれの値もとる。したがって、a(x)が真であるためには、b(x)は真である必要がある。よって、b(x)はa(x)であるための必要条件という。
また、a(x)⇒b(x)が真であるとき、b(x)が真であるためには、a(x)が真であれば十分である。よって、a(x)はb(x)であるための十分条件という。
2つの内含命題、a(x)⇒b(x)とb(x)⇒a(x)がともに真であるとき、後者からa(x)はbであるための必要条件となり、前者からa(x)はb(x)であるための十分条件となる。このとき、a(x)はb(x)であるための必要十分条件という。同様に、b(x)はa(x)であるための必要十分条件である。
問1 次の( )の中に適するように、「必要」、「十分」、「必要でも十分でもない」のいずれかを入れよ。
(1) x=1はx²−x=0であるための( )条件である。
(2) −4≦x≦6は|x−1|≦5であるための( )条件である。
(3) x>2、y>3はx+y>5であるための( )条件である。
(4) 「x=1またはx=6」はであるための( )条件である。
(5) x+y≦1はx²+y²≦1であるための( )条件である。
【解答】
(1) x=1⇒x²−x=0は真、x²−x⇒x=1は偽。したがって、x=1はx²−x=0であるための十分条件。
(2) 不等式|x−1|≦5の解は−4≦x≦6。よって、−4≦x≦6は|x−1|≦5であるための必要十分条件。
(3) x>2∧y>3⇒x+y>5は真。x+y>5⇒x>2∧y>3は偽。したがって、x>2、y>3はx+y>5であるための十分条件である。
(4) の解はx=6。したがって、は偽で、は真。よって、「x=1またはx=6」はであるための必要条件である。
(5) x+y≦1⇒x²+y²≦1は偽。(反例:x=−1、y=2)
x²+y²≦1⇒x+y≦1は偽。(反例:x=y=1/√2)
よって、x+y≦1はx²+y²≦1であるための必要でも十分でもない条件である。
(解答終)
問2 次の( )の中に必要条件ならばA、十分条件ならばB、必要十分条件ならばC、必要条件でも十分条件でもないならばDを入れよ。
(1) x>0、y>0は2x−y>0、x−2y+1<0であるための( )である。
(2) x≧0は、すべてのy<0について、x≧yであるための( )である。
(3) あるxについてax+b=0であることは、a≠0であるための( )である。
【解答】
(1) 命題「x>0,y>0」の真理集合をP、「2x−y>0、x−2y+1<0」の真理集合をQとすると、
P={(x,y)|x>0∧y>0}、Q={(x,y)|2x−y>0∧x−2y+1<0}
したがって、
(下図参照)
よって、x>0∧y>0⇒2x−y>0∧x−2y+1<0は偽、2x−y>0∧x−2y+1<0⇒x>0∧y>0は真。
したがって、A
(2) 「x≧0」⇒「すべてのy<0について、x≧y」は真。
また、「すべてのy<0について、x≧y」⇒「x≧0」も真。
したがって、C
(3) 「あるxについてax+b=0である」⇒「a≠0」は、偽。なぜならば、a=b=0のとき、全てのxについて0=0が成立し、実数全体が解になるから。
「a≠0」⇒「あるxについてax+b=0である」は、真。
したがって、D。
(解答終)
第8回 全称命題と特称命題 [集合と論理]
第8回 全称命題と特称命題
数学の命題の中には「すべてのxについて・・・である」、あるいは、「すべてのxは・・・である」という形の命題がある。
たとえば、「すべての実数xに対して、x²≧0である」といった命題である。
Uを全体集合(普遍集合)、その条件命題がa(x)であるとき、
「すべてのxについてa(x)である」
を、
あるいは
で表し、これを全称命題、記号∀を全称記号という。
全体集合Uに対して、全称命題「すべてのxについてa(x)である」、すなわち、が真であることは、すべてのx∈Uについてa(x)が真であることを意味しているから、a(x)の真理集合Aは全体集合Uと一致する。すなわち、
である。
したがって、
A=Uのとき、∀x,a(x)は真
A≠Uのとき、∀x,a(x)は偽
が成り立つ。
また、数学の命題には、「・・・であるxが少なくとも1つ存在する」や「あるxは・・・である」という形のものがある。
たとえば、「ある実数xはx²>1である」のように、
「あるxはa(x)である」
の形の命題を、
あるは
で表し、これを存在命題、記号∃を存在記号という。
全体集合Uに対して、「∃x,a(x)」が真であることは、a(x)が真であるxがUに存在すること意味しているので、a(x)の真理集合Aは空集合でない。すなわち、
である。
したがって、
A≠∅のとき、∃x,a(x)は真
A=∅のとき、∃x,a(x)は偽
問2 xを実数とするとき、自治の問に答えよ。
(1) 「すべてのxについてx²+x+1>0」は真であり、「すべてのxについてx+1=0」が偽であることを示せ。
(2) 「あるxはx²−2x+1>0」は真であり、「あるx²−2x+1<0」は偽であることを示せ。
【解答】
実数全体の集合をRとする。
(1) a(x):x²+x+1>0、b(x):x+1=0とし、a(x)、b(x)の真理集合をそれぞれA、Bとすると、
よって、∀x,a(x)は真である。
また、
よって、∀x,b(x)は偽である。
(2) c(x):x²−2x+1>0、d(x):x²−2x+1<0とし、c(x)、d(x)の真理集合をそれぞれC、Dとする。
だから、∃x,c(x)は真である。
また、
したがって、∃x,d(x)は偽である。
(解答終)
b(x)で、x=0とするとx+1=0は成り立たず、よって、B={x|x+1=0}≠Rとなり、∀x,b(x)は偽である。このように全称命題が偽であることを示すことのできる例を反例という。反例は1つ示せ十分である。
問1 次の命題を記号∀、∃を用いて表し、真偽を判定せよ。
(1) 任意の実数xに対して、である。
(2) を満たす実数xが存在する。
(3) θがどんな値であっても、である。
【解答】
実数全体の集合をRとする。
(1) で、偽である。x=−1のとき
(2) で、偽である。何故ならば、を満たす実数xは存在しないから。
(3) で真である。
(解答終)
第7回 複合条件命題と真理集合 [集合と論理]
第7回 複合条件命題と真理集合
§1 条件命題の否定とその真理集合
条件命題a(x)に対して、「a(x)でない」という条件命題をa(x)の否定と言い、記号やなどであらわす。
また、Aをa(x)の真理集合、すなわち、
とするとき、a(x)の否定の真理集合とa(x)の真理集合Aとの間には次の関係が成立する。
ここで、はAの補集合である。
また、a(x)の二重否定の真理集合は
である。
§2 条件命題の連言、選言とその真理集合
条件命題a(x)、b(x)の真理集合をそれぞれA、Bとする。
このとき、
「a(x)∧b(x)」と「x∈Aかつx∈B」
「a(x)∨b(x)」と「x∈Aまたはx∈B」
は同値。
したがって、
とすると、次の関係が成立する。
また、条件命題a(x)、b(x)、c(x)の真理集合をA、B、Cとするとき、
が成り立つので、真理集合A、B、Cの間には次の結合法則が成り立つ。
問 a(x)、b(x)の真理集合をA、Bとするとき、真理集合AとBの間には次の交換法則が成り立つことを確かめよ。
§3 分配法則とド・モルガンの法則
条件命題a(x)、b(x)、c(x)の真理集合をそれぞれA、B、Cとする。
条件命題には分配法則
が整理するので、真理集合A、B、Cの間には次の関係が成立する。
また、ド・モルガンの法則
が成り立つので、
集合と論理が入り乱れていて、胡散臭い話だな〜。多大の疚しさと後ろめたさを感じつつ書いているので、 書くのが嫌になってしまう(^^ゞ
問題 x、yを含む条件命題a(x,y)、b(x,y)が
であるとき、次の条件命題の真理集合を求め、座標平面上に図示せよ。
【解答】
a(x)、b(x)の真理集合をそれぞれA、Bとすると、
で、Aはy=x²+1の下側、Bはy=x−1の上側である。
(破線は含まない)
(1) の真理集合は
したがって、次のようになる。
(2) a(x,y)∧b(x,y)の真理集合A∩B
(3) a(x,y)∨b(x,y)の真理集合はA∪B
(4)
(3)より、A∪B=Uだから、
第6回 条件命題と真理集合 [集合と論理]
第6回 条件命題と真理集合
たとえば、
「xは3の倍数である」
「x+1は5より大きい」
という文があるとする。
この文には変数xが含まれていて、xの値によって真偽が定まるので、このままでは、[xは3の倍数である」、「x+1は5より大きい」という文は命題ではない。
このように、変数を含み、変数xの値によって真偽が定まる文p(x)を条件命題といい、条件命題p(x)を真とする集合を
で表し、これを条件命題p(x)の真理集合という。
条件命題p(x)、真理集合P={x|p(x)}を考える場合、変数xの値として考えうる値の全体、すなわち、xの全体集合Uを定める必要がある。
何故ならば、たとえば、条件命題
の真理集合
とし、xの全体集合Uを実数全体の集合とする場合、x²+1=0を満たす実数xは存在しないので、
となり、xの全体集合Uを複素数にした場合、
となり、真理集合Pが異なるためである。
問1 全体集合UがU={x|−2≦x<5、かつ、xは整数}のとき、
とする。このとき、次の条件命題の真理集合を求めよ。
【解】
(1) xを実数とするとき、p(x)かつq(x)を満たすxは、連立不等式
の解である。
したがって、この解は2<x≦3。
また、全体集合Uは{x|−2≦x<5、かつ、xは整数}なので、真理集合は{3}である。
(2) だから、真理集合は{−2,−1,0,1,2}である。
(3) だから、これは「x²−3x>0またはx>2」、すなわち、「(x<0またはx>3)またはx>2」となり、「x<0またはx>2」(註)。
全体集合{x|−2≦x<5、かつ、xは整数}なので、これを満たすxは{−2,−1,3,4}。したがって、真理集合は{−2,−1,3,4}。
(解答終)
問題が難しいというよりも、解答の書き方に困ってしまうという意味で、これは難問だね(^^ゞ
(註)
「x>3またはx>2」は「x>2」になる。
問2 次の条件命題の心理集合を求め、真理集合を図示せよ。
(1) 1<x+y<3、ただし、x,yは実数
(2) 4<x²+y²<9、ただし、x,yは自然数
【解答】
(1) 求める真理集合は
であるから、座標平面上で2つの直線x+1y=1とx+y=4の間に挟まれた部分。
(2) 求める真理集合は
だから、座標平面上で原点を中心とする半径2の円x²+y²=2²と半径3の円x²+y²=3²の間にはさまれた部分で、座標がともに自然数となる点なので、
である。
(解答終)
問3 A={x|x>1}、B={x|x<2}とするとき、次の条件命題の真理集合をA、Bを用いて表わせ。
(1) 条件命題(x−1)(x−2)<0
(2) 条件命題(x−1)(x−2)≧0
【解答】
(解答終)
第5回 恒真命題と恒偽命題 [集合と論理]
第5回 恒真命題と恒偽命題
§1 恒真命題と恒偽命題
命題a⇒bは、aとbの命題の真偽によって真にも儀にもなるが、(a∧b)⇒aや、a⇒(a∨b)などは、aとbの真偽にかかわらず常に真である(下表参照)。
このように、ある複合命題が、それを構成する命題a、b、c・・・の真偽にかかわらずつねに真であるとき、その複合命題は恒真である、または、恒真命題といい、記号Iで表すことにする。
また、複合命題を構成する命題a、b、c・・・の真偽にかかわらずつねに偽であるとき、その複合命題は恒偽である、または、恒偽命題といい、記号Oで表す。
恒真命題と恒偽命題の定義から次の関係が成立する。
§2 同一律と排中律
a |
a⇒a |
||
T |
F |
T |
T |
F |
T |
T |
T |
上の真偽表より明らかなように、同一律と排中律はともに恒真命題である。すなわち、
である。
また、a⇒aは、
と変形できるので、同一律と排中律は同じものと考えることができる。
§3 矛盾律と矛盾
だから、
したがって、は恒偽命題である。
また、命題aと命題bがともに真であることができない、すなわち、
であるとき、命題aとbは矛盾するという。
§3 恒真命題と恒偽命題の演算規則
aを任意の命題とするとき、恒真命題Iと恒偽命題Oについては次の関係が成り立つ。
問1 a、b、cを命題とする。次の問に答えよ。
(1)、a∧bとが矛盾すること、つまり、
であることを示せ。
(2) 2つの命題とは矛盾するか答えよ。
【解】
(1)
よって、矛盾しない。
(2)
よって、矛盾しない。
(解答終)
問2 次の等式を証明せよ。
【解】
(解答終)
(2)、(3)は吸収法則
の証明になる。
問3 次の複合命題が恒真命題であることを示せ。
【解】
(解答終)
問4 次の等式を証明せよ。
【略解】
または、
(解答終)
問5 次の命題が恒真命題であることを示せ。