第11回 十分条件と必要条件 [集合と論理]
第11回 十分条件と必要条件
一般に、内含命題a(x)⇒b(x)(正確には、∀x,a(x)⇒b(x))は、真にも偽にもなる。(右表参照)
a(x)⇒b(x)が真であるときでも、a(x)、b(x)がともに真であるとは限らない。
そこで、a(x)⇒b(x)が真であるとき、b(x)が偽であるとすると、a(x)は真と偽のいずれの値もとる。したがって、a(x)が真であるためには、b(x)は真である必要がある。よって、b(x)はa(x)であるための必要条件という。
また、a(x)⇒b(x)が真であるとき、b(x)が真であるためには、a(x)が真であれば十分である。よって、a(x)はb(x)であるための十分条件という。
2つの内含命題、a(x)⇒b(x)とb(x)⇒a(x)がともに真であるとき、後者からa(x)はbであるための必要条件となり、前者からa(x)はb(x)であるための十分条件となる。このとき、a(x)はb(x)であるための必要十分条件という。同様に、b(x)はa(x)であるための必要十分条件である。
問1 次の( )の中に適するように、「必要」、「十分」、「必要でも十分でもない」のいずれかを入れよ。
(1) x=1はx²−x=0であるための( )条件である。
(2) −4≦x≦6は|x−1|≦5であるための( )条件である。
(3) x>2、y>3はx+y>5であるための( )条件である。
(4) 「x=1またはx=6」はであるための( )条件である。
(5) x+y≦1はx²+y²≦1であるための( )条件である。
【解答】
(1) x=1⇒x²−x=0は真、x²−x⇒x=1は偽。したがって、x=1はx²−x=0であるための十分条件。
(2) 不等式|x−1|≦5の解は−4≦x≦6。よって、−4≦x≦6は|x−1|≦5であるための必要十分条件。
(3) x>2∧y>3⇒x+y>5は真。x+y>5⇒x>2∧y>3は偽。したがって、x>2、y>3はx+y>5であるための十分条件である。
(4) の解はx=6。したがって、は偽で、は真。よって、「x=1またはx=6」はであるための必要条件である。
(5) x+y≦1⇒x²+y²≦1は偽。(反例:x=−1、y=2)
x²+y²≦1⇒x+y≦1は偽。(反例:x=y=1/√2)
よって、x+y≦1はx²+y²≦1であるための必要でも十分でもない条件である。
(解答終)
問2 次の( )の中に必要条件ならばA、十分条件ならばB、必要十分条件ならばC、必要条件でも十分条件でもないならばDを入れよ。
(1) x>0、y>0は2x−y>0、x−2y+1<0であるための( )である。
(2) x≧0は、すべてのy<0について、x≧yであるための( )である。
(3) あるxについてax+b=0であることは、a≠0であるための( )である。
【解答】
(1) 命題「x>0,y>0」の真理集合をP、「2x−y>0、x−2y+1<0」の真理集合をQとすると、
P={(x,y)|x>0∧y>0}、Q={(x,y)|2x−y>0∧x−2y+1<0}
したがって、
(下図参照)
よって、x>0∧y>0⇒2x−y>0∧x−2y+1<0は偽、2x−y>0∧x−2y+1<0⇒x>0∧y>0は真。
したがって、A
(2) 「x≧0」⇒「すべてのy<0について、x≧y」は真。
また、「すべてのy<0について、x≧y」⇒「x≧0」も真。
したがって、C
(3) 「あるxについてax+b=0である」⇒「a≠0」は、偽。なぜならば、a=b=0のとき、全てのxについて0=0が成立し、実数全体が解になるから。
「a≠0」⇒「あるxについてax+b=0である」は、真。
したがって、D。
(解答終)
第8回 全称命題と特称命題 [集合と論理]
第8回 全称命題と特称命題
数学の命題の中には「すべてのxについて・・・である」、あるいは、「すべてのxは・・・である」という形の命題がある。
たとえば、「すべての実数xに対して、x²≧0である」といった命題である。
Uを全体集合(普遍集合)、その条件命題がa(x)であるとき、
「すべてのxについてa(x)である」
を、
あるいは
で表し、これを全称命題、記号∀を全称記号という。
全体集合Uに対して、全称命題「すべてのxについてa(x)である」、すなわち、が真であることは、すべてのx∈Uについてa(x)が真であることを意味しているから、a(x)の真理集合Aは全体集合Uと一致する。すなわち、
である。
したがって、
A=Uのとき、∀x,a(x)は真
A≠Uのとき、∀x,a(x)は偽
が成り立つ。
また、数学の命題には、「・・・であるxが少なくとも1つ存在する」や「あるxは・・・である」という形のものがある。
たとえば、「ある実数xはx²>1である」のように、
「あるxはa(x)である」
の形の命題を、
あるは
で表し、これを存在命題、記号∃を存在記号という。
全体集合Uに対して、「∃x,a(x)」が真であることは、a(x)が真であるxがUに存在すること意味しているので、a(x)の真理集合Aは空集合でない。すなわち、
である。
したがって、
A≠∅のとき、∃x,a(x)は真
A=∅のとき、∃x,a(x)は偽
問2 xを実数とするとき、自治の問に答えよ。
(1) 「すべてのxについてx²+x+1>0」は真であり、「すべてのxについてx+1=0」が偽であることを示せ。
(2) 「あるxはx²−2x+1>0」は真であり、「あるx²−2x+1<0」は偽であることを示せ。
【解答】
実数全体の集合をRとする。
(1) a(x):x²+x+1>0、b(x):x+1=0とし、a(x)、b(x)の真理集合をそれぞれA、Bとすると、
よって、∀x,a(x)は真である。
また、
よって、∀x,b(x)は偽である。
(2) c(x):x²−2x+1>0、d(x):x²−2x+1<0とし、c(x)、d(x)の真理集合をそれぞれC、Dとする。
だから、∃x,c(x)は真である。
また、
したがって、∃x,d(x)は偽である。
(解答終)
b(x)で、x=0とするとx+1=0は成り立たず、よって、B={x|x+1=0}≠Rとなり、∀x,b(x)は偽である。このように全称命題が偽であることを示すことのできる例を反例という。反例は1つ示せ十分である。
問1 次の命題を記号∀、∃を用いて表し、真偽を判定せよ。
(1) 任意の実数xに対して、である。
(2) を満たす実数xが存在する。
(3) θがどんな値であっても、である。
【解答】
実数全体の集合をRとする。
(1) で、偽である。x=−1のとき
(2) で、偽である。何故ならば、を満たす実数xは存在しないから。
(3) で真である。
(解答終)
論理の超〜基本問題 [お前らに質問]
論理の超〜基本問題
みんなの嫌われ者、論理の問題だにゃ。
問題 次の命題の真偽を答えよ。
(1) ならばである。
(2) (2≠3または2×3=5)ならば2×3=5である。
正しく答えられるかい(^^)
常識で判断すると、地獄を見るにゃ。
第7回 複合条件命題と真理集合 [集合と論理]
第7回 複合条件命題と真理集合
§1 条件命題の否定とその真理集合
条件命題a(x)に対して、「a(x)でない」という条件命題をa(x)の否定と言い、記号やなどであらわす。
また、Aをa(x)の真理集合、すなわち、
とするとき、a(x)の否定の真理集合とa(x)の真理集合Aとの間には次の関係が成立する。
ここで、はAの補集合である。
また、a(x)の二重否定の真理集合は
である。
§2 条件命題の連言、選言とその真理集合
条件命題a(x)、b(x)の真理集合をそれぞれA、Bとする。
このとき、
「a(x)∧b(x)」と「x∈Aかつx∈B」
「a(x)∨b(x)」と「x∈Aまたはx∈B」
は同値。
したがって、
とすると、次の関係が成立する。
また、条件命題a(x)、b(x)、c(x)の真理集合をA、B、Cとするとき、
が成り立つので、真理集合A、B、Cの間には次の結合法則が成り立つ。
問 a(x)、b(x)の真理集合をA、Bとするとき、真理集合AとBの間には次の交換法則が成り立つことを確かめよ。
§3 分配法則とド・モルガンの法則
条件命題a(x)、b(x)、c(x)の真理集合をそれぞれA、B、Cとする。
条件命題には分配法則
が整理するので、真理集合A、B、Cの間には次の関係が成立する。
また、ド・モルガンの法則
が成り立つので、
集合と論理が入り乱れていて、胡散臭い話だな〜。多大の疚しさと後ろめたさを感じつつ書いているので、 書くのが嫌になってしまう(^^ゞ
問題 x、yを含む条件命題a(x,y)、b(x,y)が
であるとき、次の条件命題の真理集合を求め、座標平面上に図示せよ。
【解答】
a(x)、b(x)の真理集合をそれぞれA、Bとすると、
で、Aはy=x²+1の下側、Bはy=x−1の上側である。
(破線は含まない)
(1) の真理集合は
したがって、次のようになる。
(2) a(x,y)∧b(x,y)の真理集合A∩B
(3) a(x,y)∨b(x,y)の真理集合はA∪B
(4)
(3)より、A∪B=Uだから、
ねこ騙し数学、ブログテーマ学問で2位に!! [ひとこと言わねば]
嘘じゃないにゃ。証拠を見せるにゃ。
そう言えば、最近、SPAとかいう週刊誌が「ヤレる女子大ランキング」という記事を掲載し、炎上していたな。その影響か。
今日のアニソン、「ゴールデンカムイ」から『Winding Road』 [今日のアニソン]
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— NHKニュース (@nhk_news) 2019年1月16日
アシタカはアイヌっぽいけれど、もののけ姫の姿はアイヌりはアメリカのネイティブ・インディアンの方が近いと思うけれどさ。
第6回 条件命題と真理集合 [集合と論理]
第6回 条件命題と真理集合
たとえば、
「xは3の倍数である」
「x+1は5より大きい」
という文があるとする。
この文には変数xが含まれていて、xの値によって真偽が定まるので、このままでは、[xは3の倍数である」、「x+1は5より大きい」という文は命題ではない。
このように、変数を含み、変数xの値によって真偽が定まる文p(x)を条件命題といい、条件命題p(x)を真とする集合を
で表し、これを条件命題p(x)の真理集合という。
条件命題p(x)、真理集合P={x|p(x)}を考える場合、変数xの値として考えうる値の全体、すなわち、xの全体集合Uを定める必要がある。
何故ならば、たとえば、条件命題
の真理集合
とし、xの全体集合Uを実数全体の集合とする場合、x²+1=0を満たす実数xは存在しないので、
となり、xの全体集合Uを複素数にした場合、
となり、真理集合Pが異なるためである。
問1 全体集合UがU={x|−2≦x<5、かつ、xは整数}のとき、
とする。このとき、次の条件命題の真理集合を求めよ。
【解】
(1) xを実数とするとき、p(x)かつq(x)を満たすxは、連立不等式
の解である。
したがって、この解は2<x≦3。
また、全体集合Uは{x|−2≦x<5、かつ、xは整数}なので、真理集合は{3}である。
(2) だから、真理集合は{−2,−1,0,1,2}である。
(3) だから、これは「x²−3x>0またはx>2」、すなわち、「(x<0またはx>3)またはx>2」となり、「x<0またはx>2」(註)。
全体集合{x|−2≦x<5、かつ、xは整数}なので、これを満たすxは{−2,−1,3,4}。したがって、真理集合は{−2,−1,3,4}。
(解答終)
問題が難しいというよりも、解答の書き方に困ってしまうという意味で、これは難問だね(^^ゞ
(註)
「x>3またはx>2」は「x>2」になる。
問2 次の条件命題の心理集合を求め、真理集合を図示せよ。
(1) 1<x+y<3、ただし、x,yは実数
(2) 4<x²+y²<9、ただし、x,yは自然数
【解答】
(1) 求める真理集合は
であるから、座標平面上で2つの直線x+1y=1とx+y=4の間に挟まれた部分。
(2) 求める真理集合は
だから、座標平面上で原点を中心とする半径2の円x²+y²=2²と半径3の円x²+y²=3²の間にはさまれた部分で、座標がともに自然数となる点なので、
である。
(解答終)
問3 A={x|x>1}、B={x|x<2}とするとき、次の条件命題の真理集合をA、Bを用いて表わせ。
(1) 条件命題(x−1)(x−2)<0
(2) 条件命題(x−1)(x−2)≧0
【解答】
(解答終)
今日のアニソン、「名犬ラッシー」から『終わらない物語』 [今日のアニソン]
第5回 恒真命題と恒偽命題 [集合と論理]
第5回 恒真命題と恒偽命題
§1 恒真命題と恒偽命題
命題a⇒bは、aとbの命題の真偽によって真にも儀にもなるが、(a∧b)⇒aや、a⇒(a∨b)などは、aとbの真偽にかかわらず常に真である(下表参照)。
このように、ある複合命題が、それを構成する命題a、b、c・・・の真偽にかかわらずつねに真であるとき、その複合命題は恒真である、または、恒真命題といい、記号Iで表すことにする。
また、複合命題を構成する命題a、b、c・・・の真偽にかかわらずつねに偽であるとき、その複合命題は恒偽である、または、恒偽命題といい、記号Oで表す。
恒真命題と恒偽命題の定義から次の関係が成立する。
§2 同一律と排中律
a |
a⇒a |
||
T |
F |
T |
T |
F |
T |
T |
T |
上の真偽表より明らかなように、同一律と排中律はともに恒真命題である。すなわち、
である。
また、a⇒aは、
と変形できるので、同一律と排中律は同じものと考えることができる。
§3 矛盾律と矛盾
だから、
したがって、は恒偽命題である。
また、命題aと命題bがともに真であることができない、すなわち、
であるとき、命題aとbは矛盾するという。
§3 恒真命題と恒偽命題の演算規則
aを任意の命題とするとき、恒真命題Iと恒偽命題Oについては次の関係が成り立つ。
問1 a、b、cを命題とする。次の問に答えよ。
(1)、a∧bとが矛盾すること、つまり、
であることを示せ。
(2) 2つの命題とは矛盾するか答えよ。
【解】
(1)
よって、矛盾しない。
(2)
よって、矛盾しない。
(解答終)
問2 次の等式を証明せよ。
【解】
(解答終)
(2)、(3)は吸収法則
の証明になる。
問3 次の複合命題が恒真命題であることを示せ。
【解】
(解答終)
問4 次の等式を証明せよ。
【略解】
または、
(解答終)
問5 次の命題が恒真命題であることを示せ。
第4回 内含命題 [集合と論理]
第4回 内含命題
「aならばb」という形の複合命題を内含命題といい、記号、
などで表す。
内含命題a⇒bの真偽表は次の通りである。
また、a⇒bは次のように定義される。
このとき、
が成り立つので、
が成り立つ。
問1 真偽表を用いて、(2)が成り立つことを確かめよ。
【解】
(解答終)
「aならばb」かつ「bならばa」が成り立つとき、記号
で表し、aとbは同値であるという。
問2 a⇔bのとき、命題aと命題bの真偽が一致すること、すなわち、a=bであることを確かめよ。
【解】
(解答終)
問3 真偽表を用いて、次の命題の真偽を確かめよ。
【解】
(解答終)
問4 次の等式が成り立つことを示せ。
【解】
(解答終)
問5 真偽表を用いて、次の等式が成り立つことを示せ。
【解】
(解答終)
問6 次の等式を証明せよ。
【略解】
または、
(解答終)