お前らに質問(9月20日 マクロリーン展開と微分演算子法による微分方程式の解法) [お前らに質問]
お前らに質問(9月20日 マクロリーン展開と微分演算子法による微分方程式の解法)
関数f(x)が何回でも微分可能、すなわち、級であるとき、f(x)は原点O、点x=0のまわりで
と、マクローリン展開できることをお前らは知っているはずだ。
そして、
であるとき、
これをマクローリン級数という。
では、お前らに質問!!
問題1
(1) のマクローリン級数を求めよ。
(2) 次のこと
を利用し,とのマクローリン級数を求め、(1)で求めたのマクローリン級数と一致することを示せ。
さてさて、この結果を踏まえて、次の非同次の2階微分方程式の一般解を求めてもらおうじゃないか。
問題2 次の問に答えよ。
(1) 同次方程式の一般解を求めよ。
(2) 次の値を求めよ。
(3) 次のことが成り立つことを示せ。
(4) 非同次の微分方程式を解け。
(念のため、)
ここで、
であり、
まぁ、
(4)はy=ax+bとし、微分方程式の左辺に代入すると、
だから、
したがって、y=−x−2は微分方程式の特殊解・・・。
と解いてもいいけれど、これじゃ〜、ネムネコの出題意図を全く理解していないことになる。
ネムネコの顔に泥を塗るような、こんな神をも畏れない所業をした奴は、市中引き回しの上、打首、獄門だケロよ。
なんたって、ネコは地球そのものだからね。
お前らは、ネムネコの言いつけをひたすら守って、ネムネコに尽くせばいいんだにゃ。
ネムネコの操り人形であれば十分だにゃ。
この動画↓のように、誠心誠意、ネムネコに尽くすことこそ、お前らの幸せだにゃ。
なお、
問題1、2ともに、定義に従って計算するのは、阿呆のすること。
お前らが、いやしくも理系である、もしくは、かつてあったならば、少なくとも、高校時代に
という公式を習っているはずだ。
そして、この公式は、まさしくのマクローリン級数!!
だから、問題1は、即答できなければオカシイ。
演算子法入門 その2 [微分積分]
演算子法入門 その2
非同次の2階線形方程式
がある。
これは
と変形し、とおくと
となり、この一般解
である。
したがって、
である。
ゆえに、同次方程式
の一般解に特殊解に
を加えたものになっていることがわかる。
さて、a≠bのとき
を部分積分すれば、
前回、導入した、演算子
ならびに
を用いて、この結果を表すと、次のようになる。
したがって、
が成立する。
また、このことは、微分演算子Dをあたかも実数のように考え、
と部分分数に分解して良いことを示している。
a=bのときは
である。
以下、同様に、
が成り立つ。
また、
が成立する。
より一般に
であるとき、
が成り立つ。
なお、上の計算では、前回の公式
を使っていることに注意。
問1 次の微分方程式を解け。
【解】
微分方程式
の一般解は
非同次の微分方程式
の特殊解については、
よって、
(解答終)
問2 次の微分方程式を解け。
【解】
同次方程式
の特性方程式は
したがって、同次方程式の一般解は
非同次方程式の特殊解については
ここで、
とマクローリン展開(?)すると
ゆえに、一般解は
(解答終)
と部分分数(?)に分解し、
と計算し、
と、特殊解を求めてもよい。
問1はともかく、問2の場合、(部分)積分を一切せず、微分するだけで非同次方程式の特殊解を求められるという利点はあるけれど、計算が楽かといえば、何とも微妙。
しかも、演算子法の演算公式をあらたにいくつか覚えないといけないので、ねこ騙し数学では、(微分)演算子法による微分方程式の解法を推奨しません。
まぁ、
としたとき、非同次のn階微分方程式
の特殊解y₀は
であると簡潔に表せるメリットはあるけれど・・・。
今回は、こういう微分方程式の解き方もあるんだということで・・・。
演算子法入門 [微分積分]
演算子法入門
非同次の1階線形微分方程式
のf(x)を定数関数0にした同次方程式(補助方程式)を
とすると、(2)の一般解
である。
定数係数の線形方程式の解法の復習として(1)を解いてみる。
(1)の両辺にを掛けると
積分すると
さて、(3)と(4)を比較すると、非同次の1階線形方程式(1)の一般解(4)は、同次方程式(2)の一般解(3)に、(1)の特殊解の1つであるを加えたものになっていることがわかる。
ここで、次の微分演算子
を導入し、
と表すことにすると、(1)は
になる。
そして、新たに
と定義すると、(5)は非同次方程式(1)の特殊解になることがわかる。
したがって、(1)の一般解は
特に、a=0のとき、だから、
ただし、不定積分は、積分定数を含まないものとする。
たとえば、
だにゃ。
f(x)は何度でも微分可能、つまり、級とする。
部分積分すると
したがって、
ここで、
さて、
と変形し、演算子Dをあたかも実数のように考え、
とマクローリン展開すると、
となり、これは(8)と一致する。
【参考】
だ・か・ら、
例えば、
といった計算をしてもいいってこと。
現に
と一致する。
(部分)積分と微分のどちらの計算が楽かといえば、微分の方が楽だから、この計算法のメリットは計り知れない。
そして、一切積分することなく、同次方程式
の一般解が
であることがわかる。
さらに、α≠aのとき、
また
になる。
ただの積分だから次の関係が成り立つことは明らかだろう。
問 次の微分方程式を解け。
【解】
の一般解は
(1)
よって、
(2)
したがって、
(3)
したがって、
(解答終)
9月17日の問題の解答例 [微分積分]
問題の解答例
問 次の微分方程式を解け。
(1)については、
とすると、
だから、これを代入すると
となり、これから
が特殊解。
また、
の一般解は
だから、
紹介していないが、演算子法を使うと、特殊解y₀は
と簡単に求められる。
ここで、
であり、
という謎の公式を使っている(^^ゞ。
(2)では、特殊解は
であろうと推測し、これを微分方程式の左辺に代入すると
だから
となってしまう(^^)。
困ったね〜。
ではあるが、
として、これを微分方程式の左辺に代入し、それがになるようにAとnを定めればいいんじゃなかろうか。
これを代入すると、
したがって、
よって、n=2、A=1/2。
また、
の一般解は
なので、
上の方法は、意外に面倒だね。
ならば、定数変化法を用いて
【定数変化法を用いた解法】
はy''−2y'+y=0の(基本)解の1つなので、
とおくと、
これを代入すると
したがって、
よって、
これではちょっと見栄えが悪いので、として、
(定数変化法を用いた解法終)
【直接積分する解法】
なので、
とおくと
両辺を倍すると
よって、
両辺を倍すると
見た目が悪いので、と置き直して
(直接積分する解法終)
【ロンスキアンを使う】
同次方程式
の基本解は、だから、
したがって、
は、
の特殊解の1つ。
よって、
(ロンスキアンを使う解法終)
【定理】
y₁、y₂を同次方程式
の基本解とすると、
は
の特殊解である。
ここで、
謎の公式⑨を使うと、
塩梅が悪いのであった。
問題2 非同次の微分方程式
を解きたい。
そこで、次の指示に従って、①の一般解を求めよ。
【指示1】
(1) 同次方程式を解け。
(3) 非同次方程式の一般解を答えよ。
【指示2】
(1) は同次方程式の解である。そこで、
として、①をuの微分方程式に書き換えよ。
(2) とおいて、(1)で得られた微分方程式を解け。
(3) このようにして求めた解が【指示1】のそれと一致することを確かめよ。
【解答】
【指示1】
(1) 特性方程式は
となるので、
よって、
(3)
【指示2】
(1) とすると、
だから、これを左辺に代入すると
(2)(3) v=u'とおくと、
両辺にを掛けると
したがって、
よって、
ここで、とおくと
(解答終)
お前らに質問(9月17日 微分方程式) [お前らに質問]
お前らに質問(9月17日 微分方程式)
問題1 非同次の微分方程式
を解きたい。
そこで、次の指示に従って、①の一般解を求めよ。
【指示1】
(1) 同次方程式を解け。
(2) として、これが①を満たすように定数A、Bを定めよ。
(3) 非同次方程式の一般解を答えよ。
【指示2】
(1) は同次方程式の解である。そこで、
として、①をuの微分方程式に書き換えよ。
(2) とおいて、(1)で得られた微分方程式を解け。
(3) このようにして求めた解が【指示1】のそれと一致することを確かめよ。
昨夜、この曲を見つけて、気に入ったので、この記事に埋め込んだだけだにゃ、きっと。
おそらく、こんなこと↓は思っていない、と思うにゃ。
直接、積分することで、非同次の2階線形微分方程式は解けないのか [微分積分]
直接、積分することで、非同次の2階線形微分方程式(せめて定数係数くらい)は解けないのか
次の非同次の2階線形微分方程式があるとする。
右辺を0にした同次方程式
の特性方程式
だから、は(2)の基本解で
が一般解になる。
そして、何らかの方法で(1)の特殊解y₀を求めれば、
が(1)の一般解なる。
これが非同次の2階線形微分方程式を解く流れるなる。そして、(1)の特殊解y₀を求める方法としては、例えば、次の2つが考えられるだろう。
【解法1】
y₀=ax+bが(1)の解であるとすると、
だから、これを(1)に代入すると
右辺と左辺の係数を比較すると、a=1/2、b=5/4。
よって、
したがって、(1)の一般解は
【解法2】
(2)の基本解は。
ロンスキー行列式(ロンスキアン)
なので、
は、(1)の特殊解の1つ。
したがって、(1)の一般解は
【参考】
同次方程式
の基本解をy₁、₂とするとき、
は
の特殊解の1つである。
ここで、
この他にもいくつか特集解を求める方法はあるが、
ロンスキアンを使った解法2は一般的であるかわりに、計算量が多く、この問題に関しては【解法1】に劣る。
さてさて、次に
を、直接、積分することによって、(1)の一般解を求める方法について考えてみよう。
(1)は、
あるいは、
と変形することが出来る。
【解法3】
とおくと、①は
という1階線形微分方程式になる。
この両辺を倍すると、
③の中辺と右辺を倍すると
ここで、とおくと、
【解法4】
また、
とおくと、②は
この両辺を倍すると
y'を消去するために、③と④の差を取ると
ここで、とおくと、
直接、積分することによって、(1)の一般解を求めることが出来た(^^)。
微分方程式に限ったことではないが、記事を読んでわかったで済ますのではダメで、どんな簡単な問題でもいいから自分で解く必要がある。
ということで、どのような方法を使ってもよいので、次の微分方程式を解くように。
問 次の微分方程式を解け。
(2)は、少しだけ意地悪問題。
というのは、(2)の特殊解は、ちょっと、予想が難しいから(^^)
(1)に関しては、
とすると、
だから、これを代入すると
となり、これから
が特殊解の1つであることがわかり、したがって、
が(1)の一般解になる。
(2)でも同様に
とし微分方程式の左辺に代入すると
だから
となってしまう(^^)。
困ったケロね〜。
ロンスキアンと2階線形非同次微分方程式の特殊解 [微分積分]
ロンスキアンと2階線形非同次微分方程式の特殊解
線形方程式
を非同次方程式、
を同次方程式という。
y₁、y₂を(2)の解であるとすると、その1次結合を
とすると、
となるので、も(2)の解になる。
また、ある定数c₁、c₂があって
であるとする――少なくとも、c₁=c₂=0が存在する――。
両辺を微分すると
よって、
行列で表すと
が成り立つ。
したがって、(ロンスキー)行列式
であるとき、行列の逆行列が存在し、
したがって、ロンスキーの行列式(ロンスキアンという)
が0でないならば、y₁、y₂は1次独立である。
以上のことから、次の定理が成り立つことがわかるだろう。
定理1
y₁、y₂が方程式(2)の解とする。
(ⅰ) その一次結合も解である。
(ⅱ) 方程式(2)の1次独立な解を基本解という。y₁、y₂が(2)の基本解である必要十分な条件はロンスキアン
であることである。
(ⅲ) y₁、y₂が(2)の基本解ならば、一般解はである。
例1 2階線形同次方程式
があるとすると、はこの微分方程式の解である。
また、
なので、はこの微分方程式の基本解であり、一般解は
例2 2階線形同次方程式
があるとすると、はこの微分方程式の解。
また、
したがって、はこの微分方程式の基本解。
よって、一般解は
【注意1】
をロンスキー行列(ロンスキアン)と呼ぶ場合がある。こちらの方が主流派!!
【注意2】
2階線形同次方程式の基本解は1つ(1組)ではない。
たとえば、
の場合、もこの微分方程式の解で、しかも、このロンスキアンなので、も基本解である。
定理2
非同次の2階線形方程式
とその同次方程式(余関数)を
とするとき、次のことが成り立つ。
(ⅰ) (1)の一般解=同次方程式(2)の一般解+(1)の特殊解
(ⅱ) y₁、y₂を同次方程式(2)の基本解、とするとき、
は(1)のⅰつの特殊解である。
したがって、に(3)を加えたものが同次方程式(1)の一般解である。
【証明】
(ⅰ) y₀を(1)の特殊解とすると
φを(2)の一般解とすると、
(ⅱ) この証明は問題にしますか(^^ゞ
(証明終)
問題 y₁、y₂を同次方程式の基本解、とするとき、
が非同次の方程式の(特殊)解であることを確かめよ。
として、これをの左辺に代入し、真面目にコツコツと、途中で計算を間違えることなく、計算すれば左辺はR(x)になる。
定数変化法を用いた(ⅱ)の証明
【解】
が非同次方程式の解になるようにu₁、u₂を定めることにする。
だから、
そこで、
となるようにu₁、u₂を定める。
の両辺をxで微分すると、
よって、
となり、φは非同次方程式
の解である。
①の連立方程式をについて解くと、
したがって、
よって、
(証明終)
微分方程式の追加問題 [微分積分]
微分方程式の追加問題
問題1 2階線形微分方程式
は、同次方程式
の解をを知れば、と置くことによって、の1階線形微分方程式に帰着できることをしめし、これを用いて次の微分方程式を解け。
【解】
したがって、
よって、
(1) 両辺をx²で割ると
これは、の場合で、だから、①より
両辺をx³倍すると
したがって、
よって、
(2) 両辺をxで割ると
これは、
の場合で、y₀=xなので、①より
両辺をx倍すると
したがって、
(解答終)
ところで、
の特性方程式は
だから、はこの微分方程式の解である。
そして、これはP=−2、Q=1、R=0の場合だから、①より
したがって、
がこの微分方程式の一般解になる。
実は、問題1の微分方程式(1)、(2)ともにEulerの微分方程式
である。
そして、オイラーの微分方程式はとおくと
したがって、(1)は
という2階線形微分方程式になる。
だから、x≦0のとき、どうするんだという微妙なところがあるんですが、このあたりが気になるヒトは、
としてもらうことにして(^^ゞ。
微分方程式の解法については、うるさいことを言い出したら、ホント、キリがないから(^^ゞ。
問題2 次のオイラーの微分方程式を解け。
【解】
とおくと
だから、
(1)
(2)
同次方程式
の一般解は
ところで、とすると、
よって、は①の特殊解。
したがって、
(解答終)
では、どのような方法でもいいから、次の微分方程式の解を求めてもらいましょうか。
問題3 次の微分方程式を解け。
初等的な微分方程式の解法4 ベルヌーイ形、リッカチ形の微分方程式 [微分積分]
初等的な微分方程式の解法4 ベルヌーイ形、リッカチ形の微分方程式
§1 ベルヌーイ形
をベルヌーイ形の微分方程式という。
(1)の両辺をで割ると、
とおき、この両辺をxで微分すると
となるから、uの線形の微分方程式
を得る。
この微分方程式を解くことによって、ベルヌーイ形の微分方程式(1)を解くことができる。
問題1 次の微分方程式を解け。
【解】
(1) この微分方程式はn=2のときのベルヌーイ形の微分方程式。
そこで、
両辺をxで微分すると、
したがって、①は
②の両辺にを掛けると、
t=1/yだから
(2) この微分方程式はn=−3のときのベルヌーイ形の微分方程式。
両辺をy⁻³で割ると、すなわち、y³をかけると、
そこで、
とおき、両辺をxで微分すると、
よって、①は
両辺をx⁴で割ると、
(解答終)
(1)は
と変形すると、変数分離形の微分方程式。。
したがって、
これをyについて解くと
と解くことも出来る。
§2 リッカチ形
y(x)についての1階微分方程式
をリッカチの微分方程式という。
リッカチ形の微分方程式は一般に解くことはできないが、1つの特殊解y₁が既知であるとき次のように解くことができる。
y₁は(3)の特殊解だから、
(3)の両辺を上の式で引くと、
ここで、
とすると、
これはuについてのベルヌーイ形の微分方程式だから、
とおくと、
となるので、これを(4)式に代入すると、次の1階線形微分方程式を得る。
問題2 次の微分方程式を解け。
【解】
(1) y=1/xとおくと、
したがって、y=1/xは微分方程式の解。
そこで、
とおくと、
よって、
両辺にx²を掛けると
したがて、
(2)y=1とすると、
したがって、y=1は微分方程式の解である。
そこで、とおくと、
よって、
①の両辺にを掛けると
したがって、
(解答終)
オイラー法とシンプレクティック法 その2 [ddt³さんの部屋]
オイラー法とシンプレクティック法 その2
3.しかし逆変換はある
しかし(6)の逆変換はあります。それが(7)です。(7)を繰り返し用いれば、(p(1),q(1))=(1.12253,1.47121)から初期条件(p(0),q(0))=(0,1)に戻れるのは明らかです。時間反転とは、時間に関して解の進行を逆向きに進める事なので、これは時間反転ではないのでしょうか?。この定義からは、時間反転ではあるでしょう。
ただこれは、オイラー法による時間反転ではないのです。それは(6)と(7)でτを-τにかえただけの同じ計算手続きになっていないからです。ここから、オイラー法は時間反転を満たさない、と言われます。
4.シンプレクティック法
オイラー法の時間更新手続き(6)を、以下のようにほんのわずか変更します。
(11)
明らかに(11)の局所精度は、(6)とほとんど変わらないはずです。しかし(11)は等速運動させてから等加速度運動させる計算手順になっています。このような運動を許容する運動方程式はあるはずです。じっさいシンプレクティック変換の標準的構成法によって、(11)を与える事はたやすいです。たやすいのでその詳細は省略します(^^;)。そういう訳で(11)は、シンプレクティック変換です(^^)。
シンプレクティック変換ならば、何らかの運動方程式に従った運動を表します。その運動方程式は、(11)の局所精度が(6)と同等程度という事を考えれば、もとの系に対する近似運動方程式になるはずです。しかも近似エネルギー曲線も持つはずです。もとの系のエネルギー曲線の表式と近似エネルギーの表式を比較すれば、大域的精度までいっきょに明らかになるかも知れません。こうしてなんとなく性質の良さそうな近似解法への展望が開けます(^^)。
要するに問題の理論的背景は、(11)の計算手順が厳密解を与える運動方程式をみつける問題に帰着されます。シンプレクティック法は、少なくとも(2)のような自励系に対しては既に確立された方法です。オーソライズされた方法は非常にスタイリッシュで、少なくとも初見では、とても読みたくなるようなものではありません(^^;)。こんな具合です・・・。
まず(11)の1段目を、運動エネルギー1/2×p2に適当な偏微分作用素Dp()が作用したものとみなし、同様に2段目をポテンシャルエネルギー-1/2×q2にDq()が作用したものとみなします。Dp()とDq()は非可換作用素です。(11)を繰り返す計算手続き全体は、Dp()とDq()から構成される指数演算子を用いて、
と表されます。右辺のH(p,q)が求める近似運動方程式のエネルギーです。エネルギーがわかればその形から、運動方程式も導けます。普通の指数法則から、
と思いたくなりますが、Dp()とDq()は非可換なのでそうはならず、非可換作用素代数(リー代数)のBCH公式(ベイカー・キャンベル・ハウスドルフ公式)を使ってH(p,q)を求めます。BCH公式は、クソ力任せな計算で証明されますが、H(p,q)を求める計算もクソ力任せです(^^;)。
オーソライズされた方法は、(11)が厳密解を与える系を力任せに構成するという方法です。もう一つのやり方としては、(11)が厳密解を与える系を探すという方向もあり得ます。こっちの方が多少初等的(?)と思えるのですが、非常に地道な大量の計算をしなければならないので、やっぱり詳細は省略します(^^;)。こんな具合です・・・。
まず(3)のポテンシャルエネルギー:-1/2×q2を、一般にU(q)で表します。要はもとの系として、
の形のエネルギーを持つ自励系を想定する、という意味です。そうするとシンプレクティック変換(11)は、
と書けます。シンプレクティック変換(13)が厳密解を与える系を探すために、近似系のエネルギーに、
の形を仮定し、これに変換に対して運動方程式が不変になるという条件(S-2)を要求します。要するに(13)で(14)を(P,Q)に書き換えた時に、同じ形になるという要求です。
で、・・・初等的なムチャ長ぁ~い計算を実行すると・・・、(14)の未知関数f0,f1,f2,・・・に対して、次の偏微分方程式の系列が得られます。D1,D2を偏微分作用素、
として、
ここにn=0,1,2,・・・で、n=0のとき右辺は0とします。また0≦k,mに対し、
は、D1,D2に含まれる偏微分演算子の係数を、偏微分演算子に対して定数と考えてとった積です。(15)もなかなか力任せの計算になりそうですが、D1作用素が線形演算子なので、なんとか処理できます。
n=0の時は、
なので、f0として、
の形の解を選べるのは、けっこうすぐわかります。すなわちf0として想定した系のエネルギーの表式をとれます。n=1では、
ですが、右辺に(17)を代入し少し頑張ると、
を得ます。n=2で、
(17)と(18)を代入し、かなり頑張ると、
が出ます。以下同様に(15)を解き続ける事になりますが、3≦nでは右辺の項数も増えて、非常に非常に頑張らないといけない事になり、一般項を与えるためには、やはりクソ力任せ計算となります(^^;)。しかし(2)のような線形系においては、ここまでで十分です。
(17),(18),(19)でU(q)=-1/2×q2とします。そうすると、
(20)と(22)を比べると、(22)は(20)の定数倍になっているのがわかりますが、(16),(17)から明らかなようにこれは、斉次方程式D1g=0の特解で、1≦nで非斉次になる(15)の解の不定性を表すものだと解釈できます。従って(22)を採用するか否かは、人間が判断して良いものです。目的は、(12)に出来るだけ近い(14)を定める事でした。よって(22)の不定性を無視し、f2=0を採用します。
3≦nで(15)右辺のf0,f1に関する和は、pまたはqの3階微分以上の項の和になるので、それらは0です。n=3で右辺に残るのはf2に関する和ですが、f2=0と決めました。従ってD1f3=0となり、f3=0を解に選べます。以下帰納的に3≦nでD1fn=0が得られ、f2=f3=f4=・・・=0を選べます。
以上まとめれば、
が求める近似系のエネルギーです。近似運動方程式は正準方程式の手順によって、
と得られますが、(24)の厳密解が(11)で与えられるとわかってる以上、(24)を使うことはほとんどありません。それよりも、重要なのは(12)と(23)の比較です。(23)と(12)の差は、|pq|のτの1次オーダーです。最も荒い見当で|p2|~|q2|~|pq|程度とすれば、(11)では相対誤差をτの1次オーダーに保ったまま、どこまでも計算できる事になります。こうして、数値解の大域的性質がいっきょに手に入ります。
相対誤差なので今回のような単調増加する解では、絶対誤差は増え続け、局所精度ではルンゲクッタ法やオイラー法にさえ及ばない事態も起きますが、厳密解が大きくなりすぎ他の解法では計算不能になっても、シンプレクティック法は相対誤差を保ちながら計算可能な場合も良くあります。
現実には無限大に逝っちゃう解にはあまり興味がありません(少なくとも工学では)。重要なのはどこまでいっても有界な解です。このときポアンカレの再帰定理より、解は1度通過した点の近傍に必ず帰ってきます。という事は相対誤差一定なので、いったん増えた絶対誤差が減少もします。このような性質は、他の解法にはないものです。ここから特に周期解(振動系)において、抜群の性能を発揮します。こういう事もあり、シンプレクティック法に数値誤差の蓄積はないといわれます。
5.シンプレクティック法の宣伝
ちょっとシンプレクティック法の宣伝をしちゃいますね(^^)。1次の陽的シンプレクティック法の一般形は以下です。系のエネルギーを、
として、
ちなみにネコ先生のあげたリープ・フロッグ法は、2次の陽的シンプレクティック法の一種です。系のエネルギーが(25)のように、運動量だけの関数と変位だけの関数に分離されるとき、8次の陽的シンプレクティック法まで知られています(本当はどこまでもいける)。大域的精度はn次解法ならばτのn次精度です。
(26)は本当は陰解法です。時間更新手続きの両辺に(t+τ)が出てくるからです。にもかかわらず陽的と言われるのは、あたかもオイラー法のごとく順番に代入計算してけばOKだからです。これはV(p)やU(q)が非線形であっても同じで、非線形陰解法に憑いてまわる、時間更新ステップごとの繰り返し計算はいっさい不要になります。つまり非線形現象に対しても計算時間は、陽解法とほとんど同じです(高速)。かつプログラム簡単(Excelでもできちゃう!)。
しかも無条件安定の精度保証付きです!。陽解法の宿命である、解の発散や縮退は起こりません!。使ってみたくなりませんか?(^^)。
6.シンプレクティック法における時間反転
1次の陽的シンプレクティック法(11)を、初期条件(p(0),q(0))=(0,1),τ=0.1で計算したものが図-3です。シンプレクティック法の方がオイラー法より若干はずれた解を与えますが、近似エネルギー曲線にはしっかり載ってます。
(p(1),q(1))=(1.17309,1.48394)です。さらにτ=-0.1で時間反転を行うと・・・。
あれ~(^^;)もとに戻らないじゃん。しかもオイラー法の時より、はずれが大きい。・・・そりゃそうなんですよ。
τを-τにしたという事は、近似エネルギー曲線、
を、
に変えたって事なんですから。C=-0.32592は初期条件(p(1),q(1))=(1.17309,1.48394)から計算しました。オイラー法は異なる初期条件の解曲線に数値解の点列が飛んでく解法でしたが、シンプレクティック法では逆に、人間の方で異なる初期条件の解曲線へ数値解を乗せ換えてやったようなものです。実際にやってみるとわかりますが、アクア色の点列は、後の方のエネルギー曲線にしっかり載ってるのです(^^;)。
つまりシンプレクティック法でも解を逆進させるためには、逆変換を使うしかないという事です。逆変換は(27)になります。これは(11)でq(t),p(t)が左辺に来るように、移項しただけのものです。(27)を見ると、なんだか(11)と似ています。違いは、pの更新を先にやってからqの更新を行う点です。qとpの立場が入れ替わっています。じつはシンプレクティック変換では、変位qと運動量pの区別はないのです。qとpの事を人間が勝手にそう名付けただけ、という事になります。qとpを入れ替えるシンプレクティック変換が存在するからです。だから(27)もシンプレクティック変換なのです(^^)。従って(同じではないけれど)シンプレクティック法による、正確な解の逆進が可能です。この事態をさして、シンプレクティック法には時間反転性があるといわれます。
数値解法で時間反転を考えると、このようにちょっとわかりにくい事態になりますね(^^;)。
7.q'=qの場合
最後に、懸案の(p(0),q(0))=(1,1)のケースです(q'=qに相当)。結果は図-4になります。
q'=qの場合はエネルギー曲線が直線で、オイラー法の接線飛び出しが直線の傾きに一致して点列は正確に厳密解q=etのエネルギー曲線に載りますが、シンプレクテッィク変換ではないため、誤差は蓄積して行きます。シンプレクテッィク法では最初からエネルギー曲線がずれてますが、t=1ではオイラー法より厳密解に近いです。この場合の評価は微妙ですなぁ~(^^;)。