「積分を利用して、不等式を導く」の問題の解答例 [微分積分]
「積分を利用して、不等式を導く」の問題の解答例
問題 積分を用いて、次の関係が成り立つことを証明せよ。
【解】
x>0とする。
は増加関数だから、0≦t≦xとすると、
である。
したがって、
【解答終】
という関係は、x>0のとき、[0,x]で
について平均値の定理を適用することで、証明することもできる。
平均値の定理から、
であるcが存在する。
0<c<xだから、
よって、
愚直に、
などと置き、これらを微分し、x>0のとき、
だから、f(x)、g(x)は狭義増加関数。
よって、
したがって、
としてもよいけれど、積分や平均値の定理を使ったほうがスッキリ証明できる。
では、宿題を一つ。
宿題 積分を利用して、次の関係が成り立つことを示せ。
御用納めの問題と問題提起 [微分積分]
御用納めの問題と問題提起
とする。
このとき、次の問に答えよ。
(1) x=0でf(x)が連続であることを示せ。
(2) f(x)はx=0で微分可能か。
【略解】
(1) x≠0のとき
x→0のとき、x²→0だから、ハサミ打ちの定理より
また、f(0)=0だから、
となるので、f(x)はx=0で連続である。
(2) h≠0とすると、
したがって、
となるので、f(x)はx=0で微分可能である。
(略解終)
となるので、f(x)は(−∞,∞)で微分可能になる。
問題2 問題1の導関数f'(x)はx=0で連続か。
この問題を受けて、さらに質問するにゃ。
の導関数
って、たとえば、[−1,1]で積分可能なのだろうか?
f'(x)は原点付近でこんなに激しく振動しちゃっているけれど、本当に、f'(x)は[−1,1]で積分できるんだろうか。
つまり、次の積分は存在するか?
ことわっておくが、次の定理はf'(x)の[−1,1]における積分可能性の根拠にならない。
定理
f(x)を[a,b]で連続とする。F(x)がf(x)の原始関数、すなわち、
ならば、
である。
何故ならば、
は原点x=0で不連続だから!!
積分を利用して、不等式を導く [微分積分]
積分を利用して、不等式を導く
この問題を解ければ、
を[0,x]で積分することによって
さらに、これを積分し
以下同様に積分を繰り返すことにより、
という不等式を得ることができる。
循環論法になるのだけれど、問題1の結果から、x>0のとき。
x→0+0のとき、
だから、ハサミ打ちの定理より
という関係は成り立つので(右図参照)、このときは、
となり、
から、
この2つの結果を合せて、
となる。
これは循環論法なので、⑨の証明にはならないけれど、高校のときに無証明で習ったこの公式が成り立つことを確かめることができた。
積分についての簡単な(?)問題 [定積分]
お前らに、積分の簡単な問題を一つ出すにゃ。
問題 a<bとし、関数f(x)、g(x)は閉区間[a,b]で(リーマン)積分可能な関数とする。
であるが、f(x)とg(x)は[a,b]で恒等的に等しくないものとする。すなわち、f≠g。
このとき、
は成立するか。
成立するならば証明せよ。成立しないならば、反例を1つあげよ。
【ヒント】
(リーマン)積分可能な関数は、[a,b]で連続な関数とは限らない!!
では、
関数f(x)、g(x)は閉区間[a,b]で連続な関数としたらどうか。
が成り立つならば、証明せよ。
【ヒント】
f≠gで、
であるとき、
さすがに、
は成立しない。
であるから、この条件のとき、
が成立しないことを示せばよいだろう。
f(x)とg(x)は[a,b]で連続だから、h(x)=f(x)−g(x)も連続で、h(x)は[a,b]で恒等的に0に等しくなく、かつ、
となる。
このとき、
にならないことを示せばいいんじゃなかろうか。
さらに、出血大サービスで、
h(x)は恒等的に0に等しくなく、かつ、h(x)≧0という条件は、
というcが存在すると言い換えることができる。
h(x)は連続なので、cの近傍(cがaまたはbであるときは片側近傍)で
となるにゃ。
なお、δ>0だケロ。
これだけヒントを出してやったのだから、ちゃんと証明しろよな。
オマケのオマケ問題の解答例 [微分積分]
オマケのオマケ問題の解答
問 nを自然数とするとき、
が成立することを示せ。
【解答例】
[1,1+1/n]で
について平均値の定理を適用すると、
となるcが存在する。
だから、
したがって、
(解答終)
と変形し、[n,n+1]でlogxについて平均値の定理を適用すると
であるcが存在する。
となるので、
と解くこともできる。
こちらの方が解答としてスッキリしているのではないか。
積分を用いて証明するならば、例えば、次のようにすればよいだろう。
【解答】
とすると、f(x)は減少関数なので、
したがって、
(解答終)
このブログは高校生を対象にしているわけではないので、
で十分という気もしますが(^^ゞ
これを見て、読み解けないヒトが悪い!!
もちろん、微分を使って次のように解いてもよいでしょう。
【解答】
とし、これを微分すると
したがって、f(x)は増加関数。
よって、
x=1/n>0だから、
(解答終)
とし、これを微分し、f(x)の増減を調べることも可能ですが、このように解くと、「ダッセェ〜」と言われてしまう(^^ゞ
【解答】
とおくと、
したがって、f(x)=logxは上に凸である。
よって、f(x)上の点(1,0)における接線y=x−1とf(x)=log xの間には次の関係が成立する。
x=1+1/n>1だから、
(解答終)
簡単な問題ですが、いろいろと掘り下げて解いてみたにゃ。
微分ではなく、積分を使った方が、時に簡単に証明できる場合があるということをわかってもらったのではないか。
数学の記事が多いから・・・ [ひとこと言わねば]
特に、今回受けた、「い」さんからの質問は、プログラムに関するもので、プログラムのソースコードの字が細かくて、書いた本人が記事で紹介したソースコードを見ても、何を書いてあるかわからないときた。
純粋に数学の問題だったら記事中の数式を見ればわかるけれど、プログラムのソースコードはそうはいかないにゃ。
ネムネコはプログラマじゃないから、フローチャートのようなものは作らず、その場の思いつきと勢で一気呵成にプログラムを書くから、1年なんて時間が経ったら、なんでこのプログラムで解けるのかすらわからなくなっているにゃ。
「い」さんからいただいた質問の回答 [ひとこと言わねば]
「い」さんから頂いた質問
質問なのですが ルンゲクッタのdo k=2,3のループ内ではdk(1,0)やdk(1,nx)などを使っているように見えるのですが
dk(1,i)のループを見る限るそれがない気がしています.私の勘違いかもしれないですが教えていただけないでしょうか?
https://nekodamashi-math.blog.so-net.ne.jp/2017-11-24-3
【回答】
ルンゲ・クッタ法を用いる計算式(漸化式)は、
です。
なお、ここで、
です
プログラム中では、はdk(i,j)で、に対応するdk(1,j)です。
したがって、
となるので、
プログラムでは
dk(1,i) = dt*f(t(i-1,j-1),t(i,j-1),t(i+1,j-1),c)
です。
dk(2,j)、dk(3,j)、dk(4,j)の計算ではそれぞれ、一つ前のステップの計算結果を必要としますが、
dk(1,j)の計算に関しては、
初期条件の温度と、
ルンゲ・クッタ法を用いてその都度更新される温度
を使い、
と計算します。
ですから、直接的ではなく、(3)式を通じて間接的に入っているというわけです。
(回答終)
ルンゲ・クッタ法を用いても解けますが、記事中に書いてあるように、ルンゲ・クッタを用いた解法はオイラー法などと同じく陽解法なので、数値解を振動させないためには、安定条件を満足させる必要があり、2次元、3次元の計算の場合、この条件を満足させるのが厳しくて、偏微分方程式の初期値問題の数値解法でルンゲ・クッタ法が使われることはありません。
しかも、
1次元の場合でさえ、このようにプログラムが長く、複雑になりますし、2次元、3次元になれば、さらにプログラムは複雑化し、その上、メモリーの容量も大きくなりますので、余程の物好きでなければ、ルンゲ・クッタ法を用いて解いたりしません。
高精度で計算したいならば、無条件安定のクランク・ニコルソン法を使った方がいいんですよ。
少しだけ考えるネムネコ [微分積分]
問2 次のことを示せ。
の解答で、
nを2以上の自然数とするとn+1<n²なので、
としたけれど、
という不等式を用いた方がいいのかもしれない。
最初、下の不等式を使おうかと思ったんだけれど、「式が少し長いし、見た目がかっこ悪い」ということで、上の不等式を使った。
しかし、
の右辺第2項はをで近似したときの誤差の程度を与えるものと考えることができるので、これはこれで捨てがたいように思う。
そして、このことから、
となるので、
になるのだと理解することができる。
また、nが十分大きい自然数のとき、
だから、
と考えてよいことも表しているから。
さらに、
と変形し、
とする。
となることと
から、
問 nを自然数とするとき、
が成立することを示せ。
オレはお前らをこれっぽっちも信用していないから、サービスで図をつけてやるにゃ。
この図から、
等号が成立するのは、x=1のとき。
この不等式に、x=1+1/n>1を代入すると、
図形、幾何的にはこういうことだ。
「平均値の定理を使うといいんじゃねぇ」と気づいたヒトは、積分を使ってこの不等式を証明すべし。
まぁ、お前らごときに積分を用いた不等式の証明ができるなんて、さらさら思っていないが。
画像元:上の動画
この結果を使うならば、
よって、ハサミ打ちの定理より
と解くことができる。
オマケ問題の解答例(級数編) [数列と級数]
オマケ問題の解答例(級数編)
問1 次のことを示せ。
【解答】
(1)
とおくと、
ゆえに、
となり、f'(x)は増加関数。
したがって、
となり、f(x)は増加関数。
よって、
ゆえに、x>0のとき、
(2) (1)より、x>0のとき、
また、
となるので、ハサミ打ちの定理より、
(3) とおくと、
n→∞のときx→∞になるので、
(解答終)
問2 次のことを示せ。
【解】
nを2以上の自然数とすると、n+1<n²となるので、
問1より、
だから、ハサミ打ち定理より、
(解答終)
定理
ならば、
問3 定理を使わずに、次のことを示せ。
【解答】
kを自然数とする。
閉区間[k−1,k]でlogxは増加関数なので、
したがって、
log1=0だから、
また、
となるので、
したがって、
(解答終)
もっとうまい方法があるかもしれないけれど、定理を使わなくても、この問題は解くことができる。
今日のアニソン、「夏目友人帳」から『愛してる』 [今日のアニソン]
やっぱ、このアニメを見ると、心が優しくなるにゃ。
ddt³さんも木の上の妖怪が好きだと言っていたにゃ。