第10回 有限交叉性 [位相入門]
第10回 有限交叉性
集合Aの部分集合族Aは、Aに属する有限個の集合について、常に
であるとき、有限交叉性をもつという。
定理 位相空間について、次の2つの条件は同値である。
(1) 位相空間はコンパクトである。
(2) の閉集合の族Fが有限交叉性をもてば、常にである。
【証明】
(1)⇒(2)
位相空間の閉集合の族Fに対して、開集合の族を
で定義する。
もし、
であれば、ド・モルガンの法則より
となり、Xの開被覆になる。
はコンパクトだから、有限の開集合を選んで
とすることができる。
ド・モルガンの法則を改めて適用すると、
となりFが有限交叉性をもつことと矛盾。
よって、有限交叉性をもてば、である。
(2)⇒(1)
逆に、Xの任意の有限交叉性をもつ閉集合がをみたし、Xがをコンパクトであることを示す。
UをXの開被覆とすると、
より、
となるので、
はXの閉集合からなる集合族。
(2)の対偶をとると、
のとき、あるを選んで、
とすることができる。
ド・モルガンの法則を用いると、
よって、はXの開被覆であり、はコンパクト。
(証明終)
参考までに、
チコノフ(Tychonoff)の定理
チコノフ(Tychonoff)の定理
位相空間の族において、各がコンパクトであることと、直積空間がコンパクトであることとは同値である。
お前らに質問 (集合と位相) [位相入門]
最近数学の記事を書いていない、本で見つけた次の問題を解いてみるにゃ。
問題 を有界閉集合の列で、単調減少とすると、であることを証明せよ。
見るからに、と仮定し、ハイネ・ボレルの定理を使って解けという問題。
ということで、この方針にしたがって、解くことにする。
【証明】
と仮定すると、
になる。
は開集合だから、は有界閉集合F₁の開被覆である。
よって、ハイネ・ボレルの定理より、有限被覆がある。
一方、だから、であるので、
となるが存在することになり、に矛盾する。
(証明終)
この証明では、ド・モルガンの法則
や、
などを使っている。
ここで、Rは実数全体の集合で、はFの補集合を表す。
さてさて、
となるが存在すると、何故、に矛盾するかを答えてもらおうじゃないか。
書くまでもないと思うが、念の為に、Nは1以上の整数だケロよ。
ハイネ・ボレルの定理から、開被覆の中から適当なものを有限個選び
とすることができ、としたものだからね。
答えられないヒトは、次のことを証明するとヨロシ。
位相の問題 距離空間の開核、閉包作用子 [位相入門]
位相の問題 距離空間の開核、閉包作用子
dをX上の距離(関数)とする。
1 x∈Xと、任意のε>0に対し、
となるXの部分集合をxのε‐近傍や開球という。
2 x∈Xに対して、Xの部分集合Uが、あるε>0が存在し、
を満たすとき、Uはxの近傍といい、xの近傍全体の集合を近傍系という。
3 Xの部分集合Aに対し、x∈Xが、あるε>0が存在し、
を満たすとき、xをAの内点という。Aの内点全体の集まりをAの開核といいなどで表す。
4 Xの部分集合Aに対し、x∈Xが、任意のε>0について、
を満たすとき、xをAの触点という。Aの触点全体の集まりをAの閉包といい、などで表す。
7 Xの部分集合Aに対し、x∈Xが、任意のε>0について、
を満たすと、xをAの境界点という。Aの境界点全体の集まりをAの境界といい、などで表す。
8 Xの部分集合Aに対し、x∈Xが、任意のε>0について、
をみたすとき、xをAの集積点といい、Aの集積点全体の集まりをAの導集合といい、などで表す。
定理1 を距離空間、をXの開集合全体の集まりとする。このとき、次のことが成り立つ。
【証明】
(1) 略
(2) x∈O₁∩O₂とすると、だから、あるε₁>0が存在し、B(x;ε₁)⊂O₁、あるε₂>0が存在し、B(x;ε₂)⊂O₂とできる。
そこで、正数εを
にとれば、
よって、
(3) x∈O₁∪O₂とすると、x∈O₁またはx∈O₂である。だから、
をみたすが存在する。
したがって、
よって、
(証明終)
定理2 AをXの部分集合とする。
Aが開集合⇔Aの補集合は閉集合
§2 問題編
問題1 を距離空間、AをXの部分集合とする。次のことを示せ。
【解】
(解答終)
問題1は、閉集合の補集合は開集合であることを、開集合の補集合は閉集合であることを表している。
問題2 を距離空間、A、BをXの部分集合とするとき、次のことを示せ。
【解】
(1) すべてのx∈X、すべてのε>0に対して。したがって、。
(3) (2)より、である。とすると、あるε>0が存在して、とすることができる。y∈B(x;ε)に対して、δ=ε−d(x,y)>0とおき、とすると、
よって、
ゆえに、
したがって、
(4) (3)よりはともに開集合なので、は開集合。ゆえに、任意のに対してとなるε>0が存在する。さらに(2)より、となり、。すなわち、。
とすると、となるε>0が存在する。よって、
すなわち、
よって、
したがって、
(解答終)
問題3 を距離空間、AとBをXの部分集合とする。このとき、次のことを示せ。
【解】
問題1の(1)と問題2の結果を使う。
(3) より、
(4) より、
したがって、
よって、
(解答終)
問題4 を距離空間、AとBをXの部分集合とする。このとき、次のことを示せ。
【解】
(1) よりは開集合。Oを開集合でO⊂Aとすると、任意のx∈Oに対して、あるε>0が存在して、B(x;ε)⊂G。
また、G⊂Aであり、B(x;ε)⊂A。
したがって、
よって、は集合Aに包まれる最大の開集合である。
ならば、任意のε>0に対して、
よって、
ゆえに、
よって、
(3)
(解答終)
超〜危険な定理の確認問題の解答例 [位相入門]
超〜危険な定理の確認問題の解答例
定理 次の2つは同値である。
(1) 集合Fは閉集合である
(2) 点列が収束するならば、その極限は集合Fに必ず属する。
確認問題1
A=(−1,1)とし、一般項が
である点列(数列)を考える。
すると、この点列の極限値は0、0∈A。
定理よりAは閉集合となるが、A=(−1,1)は開集合となり、矛盾する。
これは、紹介した定理に反する。
どこがいけないのか、説明せよ。
【解答例】
「点列が収束するならば、その極限は集合Fに必ず属する」は、
であるすべての点列について、
点列が収束するならば、その極限は集合Fに必ず属する
の意味であって、定理の適用を間違っているから。
一般項
で与えられる点列はで1に収束するが、。
したがって、(−1,1)は閉集合でない。
(解答終)
確認問題2
さて、集合Mは閉集合か。閉集合であればその証明をし、閉集合でなければ、反例をあげよ。
集合Lは閉集合か。
【略解】
M内の点列
は0に収束し、なので、Mは閉集合ではない。
Lは閉集合である。
(略解終)
発展問題
fを実数全体の集合R上の連続関数とする。このとき、集合
が閉集合であることを示せ。
【解答例】
Aが∅のとき、定義からAは閉集合。
つぎに、Aが空集合でない場合について考える。
とし、この数列の極限点をxとする。
fはR上での連続関数なので、
よって、Aは閉集合である。
(解答終)
最も簡単な解答は、次の定理を用いる。
定理
fがXからYへの連続写像であることの必要十分な条件は、Yの閉集合Fのfによる逆像がXの閉集合であることである。
【別解】
{0}はRの閉集合。また、fはR上の連続関数(連続写像)なので、fによる{0}の逆像
は閉集合。
(別解終)
距離空間の問題 [位相入門]
距離空間の問題
問題1 を距離空間とする。
とおけば、d'もX上の距離関数となり、d'から定まる開集合とdから定まる開集合は一致することを示せ。
【解】
三角不等式
が成立することを示す。
とおけば、fは単調増加関数である。
dはX上の距離関数だから
したがって、
OとO'を、それぞれ、距離dとd'で定まる開集合とする。
x∈Oとすると、あるε>0があって、
とできる。
δ>0を
にとり、
とすると、
となり、
Oはd'の意味での開集合となる。
x∈O'とし、ある0<δ<1があって、
とすることができる。
ε>0を
にとり、
とすると、
となり、
となり、O'はdの意味での開集合となる。
よって、dとd'で定まる開集合は一致する。
(解答終)
問題2 Xを集合とする。X上の距離d₁とd₂がある正の定数aが存在して、任意のXの元x,yに対して、
を満たしているとする。このとき、d₁で定まる開集合はd₂で定まる開集合になることを示せ。
【解】
Oをd₁で定まる開集合とする。
x∈Oとすると、ある正数εがあって、
とすることができる。
とし、
とすると、
よって、
よって、Oはd₂で定める開集合となる。
(解答終)
問題3 上の距離
で定める開集合が一致することを示せ。
【解】
仮定より、
が成立する。
問題2とより、d₁で定まる開集合はで定める開集合となる。
また、問題2とよりで定める開集合はd₁で定める開集合となる。
よって、とd₁(x,y)で定める開集合は一致する。
(解答終)
便利だが超〜危険な定理 [位相入門]
便利だが超〜危険な定理
このブログ、「ねこ騙し数学」は、原則として、極限計算でロピタルの定理を使わない、つまり、反ロピタルの定理の方針を貫いている。
古くからこのブログの数学の記事を読んでいるヒトは、このことをよく知っていると思う。
そこで、大学の微分積分などの解析で使われている、何を書いているかわからなくて、ロピタルの定理以上に危険な定理を紹介することにする。
定理 次の2つは同値である。
(1) 集合Fは閉集合である
(2) 点列が収束するならば、その極限は集合Fに必ず属する。
この定理があまりに危険なためなのだろうか、
洲之内治男の「ルベーグ積分入門」(内田古鶴圃)には、この定理を紹介すると同時に次のような注意書きがついている。
【注意】 この定理の(2)⇒(1)は、解析学で集合が閉集合であることを示すのに用いられる。ところで、(この)定理は、Fの任意の点列がFの中に極限をもつといっているのではない。ただ単に、Fの点列が極限をもつならば、その極限は必ずFの中に入るに行っているに過ぎない。
そして、この注意書きのあとに、この定理の応用として、次の例が紹介されている。
例 閉集合[a,b]が閉集合であることをこの定理を用いて証明してみよう。
それには、ならば、x∈[a,b]であることを示せばよい。
より、である。
とすると、極限の性質より、a≦x≦bは明らか(であり、x∈[a,b]。よって[a,b]は閉集合である)。
この例の証明を読んで納得できるヒトは、いったい、どれくらいいるのだろうか(^^ゞ
この例を真似れば、A=[a,b]×[c,d]、すなわち、
が閉集合であることの証明は次のようになるのであろう。
【証明(・・?】
それには、ならば、(x,y)∈Aであることを示せばよい。
であるから、
である。
とすると、極限の性質より、
は明らかであり、(x,y)∈[a,b]×[c,d]。
よって、A=[a,b]×[c,d]は閉集合である。
(証明(・・?終)
2次元ユークリッド空間R²の場合、
をその点列、その元、さらに、この点列の極限(点)をP=(x,y)とする。
このとき、
が成立するから、うるさいことをいわなければ、上のヤツで証明になっているんじゃ〜ないか。
何故かって、がPに収束するとき、
任意の正数ε>0に対し、ある自然数mがあって、
が成立し、
逆にのとき、任意のε>0に対し、ある自然数mがあって、n≧mならば、
が成立するので、任意のε>0に対して、
が成立するからだよ。
ここで、お前らに問題。
確認問題1
A=(−1,1)とし、一般項が
である点列(数列)を考える。
すると、この点列の極限値は0、0∈A。
すると、定理よりAは閉集合となるが、A=(−1,1)は開集合となり、矛盾する。
これは、紹介した定理に反する。
どこがいけないのか、説明せよ。
確認問題2
さて、集合Mは閉集合か。閉集合であればその証明をし、閉集合でなければ、反例をあげよ。
集合Lは閉集合か。
この確認問題に答えられないとしたら、そのヒトは、この定理を理解できていないので、この超〜危険な定理は使うべきではない。
発展問題
fを実数全体の集合R上の連続関数とする。このとき、集合
が閉集合であることを示せ。
完備距離空間 [位相入門]
完備距離空間
を距離空間とする。
任意のε>0に対し、ある自然数pが存在し、任意の任意の自然数n、mに対して、
距離空間の収束する点列は基本列、すなわち、コーシー列である。
点aをこの点列の極限点とすると、任意の正数ε>0に対して、ある自然数pが存在し、
とすることができる。
したがって、m,n≧pならば、
となるからである。
また、コーシー列は、有界である。
【証明】
コーシー列なので、ε=1に対して、ある自然数pが存在し、
とすることができる。
m=pと固定し、とおけば、n≧pに対して、、つまり、となる。
ゆえに、
とおけば、
となる。
(証明終)
距離空間の任意の点列が収束列であるとき、を完備距離空間であるという。
定理1
ユークリッド空間は完備距離空間である。
を距離空間とし、fをXからXへの写像とする。正数c<1が存在して、Xの任意の2点x、yに対して、
が常に成り立つとき、fをの縮小写像という。
また、このとき、fは連続写像である。
x,y∈Xとし、yを固定すると、任意のε>0に対して、正数δを
をみたすように定めれば、任意のε>0に対して、
したがって、fは任意のy∈Xに対して連続となり、fは連続写像である。
定理2 (縮小写像の原理)
となる点(不動点)がただ1つ存在する。
【証明】
fは縮小写像だから、0<c<1であるcが存在し、
とすることができる。
Xの点x₁を任意に選び、
とおく。
自然数n,rに対して、
また、fは連続だから、
が成り立ち、これが不動点である。
次に不動点がただ1つであることを示す。
Xの点yが不動点あるとすれば、
となる。
また、d(a,y)≧0だから、
よって、不動点はただ1つである。
(証明終)
点列の収束 [位相入門]
点列の収束
自然数全体の集合Nから位相空間への写像
をXの点列という。
点列の場合、n∈Nの像a(n)をであらわし、点列自体を、または単にで表す。
xの任意の近傍Uに対して、ある自然数m∈Nが存在して、n≧mならば、であるとき、すなわち、
であるとき、点列はxに収束するといい、xを点列の極限点という。
また、点列がxに収束するとき、
などであらわす。
【注意】
点列がx∈Xに収束するとき、と表すが、数列の極限値とは異なり、点列の極限点は必ずしも一意的に定まるわけではない。
たとえば、密着位相空間のとき、Xの任意の点列はXの任意の点に収束することができる。何故ならば、x∈Xとすると、xの近傍UはX自身しかないのででxの任意の近傍U=Xとなり、n≧1ならば、
が成立するため。
定理1
ハウスドルフ空間においては、点列の極限点は、それが存在すれば、唯一つである。
【証明】
x≠yで、点列の極限点がx、yであるとすると
を満たす。
m=max{m₁,m₂}にとると、
となり、ハウスドルフ空間であることに反する。
よって、極限点が存在すれば、唯一つである。
(証明)
距離空間はハウスドルフ空間なので、定理1から次のことが成り立つ。
定理1の系
距離空間においては、点列の極限点は、それが存在すれば、唯一つである。
密着位相空間の点列の極限点が唯一つに限らないのは、Xの相異なる2点xとyを互いに交わらない開集合UとVでx∈U、y∈Vと分離できないため。
定理2
を位相空間、A⊂Xとする。
(1) A内の点列がxに収束するならば、である。
(2) が第一可算公理を満たすならば、各に対し、A内の点列でxに収束するものが存在する。
【証明】
(1) A内の点列がxに収束するので、任意のxの近傍に対して、ある自然数mが存在し、
を満たす。
すると、
であるから、
よって、である。
(2) とし、xの可算基本近傍系をとし、
とする。
そして、とする。
Uをxの任意の近傍とすると、が基本近傍系であることより、ある自然数mがあって。
すると、n≧mならば、
となる。
つまり、はxに収束するA内の点列である。
(証明終)
数列の収束の復習2 [位相入門]
数列の収束の復習2
集合が上に有界なとき、数列は上に有界であるといい、集合が下に有界なとき、数列は下に有界であるという。
定理6 (単調数列の収束)
数列が単調増加かつ上に有界(単調減少かつ下に有界)ならばは収束する。
【証明】
上に有界な単調増加数列の場合について証明する。
上限の定義より、
(1) すべての自然数nについて、
(2) 任意の正数εに対して、
となるが存在する。
したがって、n>mであるすべてのnについて、
よって、上に有界な単調増加数列は収束する。
(証明終)
定理7 (カントールの区間縮小法の原理)
閉区間がを満たすならば、
である。
さらに、ならば、共通部分
とただ1点からなり、である。
【証明】
である。
よって、数列は上に有界な単調増加数列、数列は下に有界な単調減少数列となり、定理6より収束する。
とおくと、より、α≦βである。
また、なので、
である。
したがって、
である。
また、より、α=β。
とすると、すべての自然数nに対して
となるので、c=α。
よって、
(証明終)
φをNからNへの狭義単調増加関数(n₁<n₂ならばφ(n₁)<φ(n₂)とする。数列が与えられたとき、数列を数列の部分列という。
定理8 (部分列の収束)
すなわち、
【証明】
数列の極限値をαとすると、任意の正数εに対して、ある自然数mがあって、
である。
φ(n)≧nなので、
よって、収束する数列の部分列はの極限値に収束する。
(証明終)
定理9 (Boltano-Weiestrassの定理)
有界な数列は、収束する部分列をもつ。
コーシー列
数列が任意の正数εに対して、ある自然数pが存在し、n>p、m>pを満たす任意の自然数m、nに対して
が成り立つとき、はコーシー列であるという。
定理10 (コーシー列の有界性)
コーシー列は有界である。
【証明】
数列はコーシー列であるとする。ε=1とすれば、ある自然数pが存在し、
となる。
m=p+1とすると、
となるから、
そこで、
とおけば、任意の自然数nに対して、
(証明終)
定理11 (コーシーの収束条件)
数列が収束するための必要十分条件は、コーシー列であることである。
関数の極限値と数列の極限
定理12
という極限値が存在することの必要十分条件は、となる任意の数列に対してとなることである。
定理13
関数fが点aで連続であることの必要十分条件は、aに収束する任意の数列に対してとなることである。
【証明】
fは点aに対して連続なので、任意のε>0に対して、あるδ>0が存在して、
をみたす。
また、数列はaに収束するので、δ>0に対して、ある自然数mが存在して、
よって、
である。
次に、逆を示す。
対偶法を用いるために、(1)を否定すると、
となるxが存在する。
ここで、
とし、n=1,2,・・・に応じて
すると、任意のnについて
よって、証明された。
(証明終)
数列の極限の復習 [位相入門]
数列の極限の復習
自然数全体の集合Nから実数全体の集合Rへの写像
数列において、任意の正数εに対して、適当な自然数mを選ぶと、n>mのすべての自然数nについて、
となるとき、
であらわし、数列はαに収束するという。また、αを数列の極限値という。
定理1 (極限値の一意性)
【証明】
となる自然数m₁、m₂が存在する。
そこで、とおくと、n>mならば、三角不等式より、
εは任意の正数なので、α−β=0、すなわち、α=βとなる。
(証明終)
定理2 (数列の極限の公式)
【略証】
(1) c=0のときは明らか。
c≠0のとき、だから、任意の正数εに対して、ある自然数mが存在し、
よって、
(2) だから、任意のε>0に対して、ある自然数m₁、m₂があって、
よって、とおくと、
(3) 任意のε>0に対し、
とすると、ある自然数mが存在して、
したがって、
(4) 任意のε>0に対して、
とおくと、ある自然数mが存在して、
となる。
このとき、
よって、
したがって、
ゆえに、(3)より
(略証終)
定理3 (ハサミ打ちの定理)
数列に対して、
が成り立ち、
とする。このとき
である。
【証明】
数列はαに収束するので、任意の正数εに対して、ある自然数m₁があって、
数列はαに収束するので、任意の正数εに対して、ある自然数m₁があって、
とおくと、n>mならば、
よって、
(証明終)
定理4 (数列の大小と極限)
数列は収束し、
が成り立つならば、
が成り立つ。
【証明】
とし、α>βと仮定する。
数列はαに収束するので、に対して、ある自然数m₁があって、n>m₁ならば、
数列はβに収束するので、に対して、ある自然数m₂があって、n>m₂ならば、
したがって、とおくと、n>mならば、
となり、矛盾する。
よって、α≦βである。
(証明終)
定理5 (収束する数列の有界性)
収束する数列は有界である。
【証明】
数列が実数αに収束するとすると、ε=1に対して、あるmが存在して、
である。
そこで、nによらない正の定数Mを
とおくと、
である。
また、n>mのときは、
よって、すべての自然数nについてが成り立つので、数列は有界である。
(証明終)
確認問題
問1 数列の極限の定義に、(1)、(2)、(3)、(4)のどの定義を採用してもよいことを示せ。
問2 数列が収束するとき、次の数列も収束することを示せ。
(ヒント)
問3 a>0、b>0とする。このとき、次の極限値を求めよ。
問4 のとき、次のことを示せ。