重積分の問題演習2 [重積分]
重積分の問題演習2
数学の記事を何も書かないのはよくない。
ということで、つなぎ記事を上げることにした。
問題 次のことを示すケロ。
(1)f(x,y)が[0,1]で級であるならば、
(2)fが連続な偶関数ならば
【解】
(1)は、だから、極座標x=rcosθ、y=rsinθで積分してくださいと言っているようなもの。
で、極座標によって積分領域はから[0,1]×[0,2π]に変わるので、
となる。
(2)これは、x–y=u、x+y=vとおくにゃ、そして、xとyについて解くと、
だから、[0,1]×[0,1]という領域は
となる。
この(u,v)の領域を図示すると次のようになる。
また、
だから、ヤコビアンJは
となる。
とすると、
よって、
(2)の変換も、数学のいろいろなところで出てくる変換なので、覚えておくと便利かもしれない。
ひとこと付け加えると、こういう領域は必ず図示して考えるように。
面倒臭がってこの作業を怠ると、とんでもない計算をすることになるかもしれない。
「百聞は一見に如かず」です。
第17回 積分記号のもとでの微分 [重積分]
第17回 積分記号のもとでの微分
「積分記号のもとでの微分」とは何かというと、K=[a,b]×[α,β]で定義された関数f(x,t)で
が成り立つかどうかというもの。
試しに、f(x,t)=xyという関数でやってみると、
左辺は
となり、右辺は
となり、K上でf(x,t)が連続、かつ、偏導関数が連続の条件があれば、成り立つのであろうと予想できる。
f(x,y)が偏微分可能でなければ、そもそも右辺のは存在しないし、これがK上で連続でなければ右辺の積分が存在する保証がないので。
ということで、この予想が正しいかどうかをこれからやるにゃ。
すぐには出来ないので、まず、次の定理。
定理17-1
関数f(x,t)がK=[a,b]×[α,β]で連続であるとする。このとき、
は連続である。
【証明】
f(x,t)は有界閉区間K上での連続関数だから一様連続。よって、任意の正数εに対して
となるδが存在する。
故に、ならば
となり、連続である。
(証明終わり)そして、今回のメインである次の定理。
定理17-2(積分記号のもとでの微分)
f(x,t)は有界閉区間K=[a,b]×[α,β]上の連続関数で、偏導関数も連続であるとき、関数は[α,β]上で微分可能で
である。
【証明】
f(x,t)はK上の連続関数なので重積分可能であり、累次化ができる。よって、
は微分可能である。
(証明終わり)
上の定理の証明の最後の部分では、g(t)が[α,β]上で連続ならば
という積分の定理を使っているにゃ。
ということで、f(x,t)が有界閉区間K上の連続関数で、さらに偏導関数がK上で連続であれば、①が成り立つことがわかった。
問題1 次の値を求めよ。ただしa>0とする。
【解】
だから、
となる。
また、は[0,1]×[0,a]で連続だから、
(解答終わり)
ちょっと難しくて、計算が面倒くさい問題を一つ上げるにゃ。
問題2 について、次のことが成り立つことを示せ。
【解】
(1)を求めるには、とおいて置換積分を使うのだけれど、この計算は結構大変だし、今回の内容と直接関係しないから、やらないにゃ(^^ゞ
(2)は
(3)は(1)を微分すれば、
になるので、・・・。
(解答終わり)
そして、(3)をさらにxで微分すると、
さらに、微分を繰り返して
と、微分を繰り返すことで積分の値をどんどん求めることができるんだにゃ。
サイクロイドの問題を解く [重積分]
問題 曲線(Cycloid・サイクロイド)
に対して次の問いに答えよ。
(1)x軸と曲線で囲まれた部分の面積を求めよ。
(2)x軸を中心にして曲線を回転させて作られる回転体の体積と側面積を求めよ。(3)曲線の長さを求めよ。
を求めよ。【解】
a=1の時のサイクロイドは次の通り。
(2)体積Vは
ネムネコは、ここで、こう宣言しよう、
何故ならば、
だし、t=sinθとおくと
となるからだにゃ。
となり、
だ・か・ら、上の積分の計算は、実は、ほとんど暗算でできる!!
試験の答案として出すときには、きちんと計算しなければならないけれど、
側面積Sは
で与えられる。
から、
ここで、半角公式なるものを使う。
0≦θ≦2πでsin(θ/2)≧0だから、
となるので、
そして、
さらに、t=cosθとおき、
となるので、
よって、
(3)曲線の長さLは
第16回 曲面積 [重積分]
第16回 曲面積
曲面積
定理(曲面積)
関数z=f(x,y)が積分領域D上で級とする。このとき、Dの上にある曲線z=f(y)の曲面積は
である。
【証明】
Dをx軸に平行な直線とy軸に平行な直線で分割する。D上の内部に含まれる小長方形の一つを[x,x+Δx]×[y,y+Δy]とし、その頂点を
とする。
さらにD上のに対応する曲面z=f(x,y)上の点をとし、この微小部分の面積をΔSとする。
で、の接平面を考え、に対応する接平面上の点をとする。そうすると、
になる。
Δx、Δyが十分に小さければ、この微小な面積ΔSは平行四辺形で近似できるので
となる。
この微小面積ΔSをD上のすべての分割について足しあわせば
になり、この極限をとれば
(証明終わり?)
ちなみに、どこからが出てくるかというと、
から。
あと、平行四辺形の面積Sは
になるという公式を使っている。これは重積分の座標変換のところで話をしたよね。
なにぶん根号を含む積分なので、曲面積の計算は非常に厄介。
限られた極々簡単なものしか計算できないと思って間違いがない(^^ゞ
問題1 回転放物面のz≧0の部分の曲面積を求めよ。
【解】
となるので、
そして、積分領域Dは
よって、曲面積Sは
Dを極座標、x=rcosθ、y=rsinθで変換すると
よって、
回転体の側面積
回転体の場合には、次の定理が成り立つ。
定理(回転体の側面積)
区間[a,b]において関数f(x)は級でf(x)≧0であるとする。このとき、関数f(x)とx軸および直線x=a、x=bで囲まれた図形をx軸のまわりで1回転して得られる回転体の側面積は、
である。
【証明】
回転体をあらわす方程式は
よって、領域Dは
⑨をxで偏微分すると、
⑨をyで偏微分すると
これを代入すると、
よって、
となる。
問題2 y=sin(x)(0≦x≦π)をx軸に1回転して得られる回転体の表面積Sを求めよ。
【解】
t=cosxとし、置換積分を使うと
第15回 3重積分の応用・体積 [重積分]
第15回 3重積分の応用・体積
高校の数学で、立体Ωの体積Vは、zにおけるΩの断面積をS(z)とすると、
で求められると習ったと思うにゃ。
立体Ωが
で与えられるとすると、
となる。
はzにおける立体の断面積になるので、この3重積分の計算は立体Ωの体積を計算したことに相当する。
ということで、次の定理がえられる。
定理
関数f(x,y)、g(x,y)が積分領域Dで連続で、f(x,y)≦g(x,y)であるとする。このとき、D上のz軸方向の柱体z=f(x,y)、z=g(x,y)が囲むΩの体積Vは次で与えられる。
立体Ωは
縦線集合とあらわせるので、体積Vは3重積分を累次化すると
となる。
問題1 放物面と曲面で囲まれた体積を求めよ。
【解】
グラフにするとこんな感じになる。
分かりづらいと思うけれど、求める立体Ωは
だにゃ。
x=0、y=0を入れると、曲面の上下関係がわかると思う。
で、Dは
なので、
となるのだけれど、こんな計算はしたくない。
そこで、
となるので、少し工夫し、x=√2rcosθ、y=rsinθと置くと、Dは
になる。
この時のヤコビアンJは
から、J=√2rとなり、よって
問題2 2平面、z=0とz=2–yと円柱面で囲まれる部分の体積を求めよ。
【解】
立体Ωは
となる。
で、
となり、これをお決まりの極座標で変換すると、積分領域は
となるので、
3次(以上)の行列式の計算法 [重積分]
3次(以上)の行列式の計算法
と計算する。
2次、3次の行列式の記憶の仕方(サラスの方法)はあることはあるのだけれど、アレは4次以上の行列式では成り立たないので、危険だケロ。
ちなみに、2次の行列式は
だにゃ。
こうすると、規則性に気づくかもしれない(^^)
とすると、のところは、の属する第1行と第1列を取った
という「一回り小さくなった行列」の行列式が・・・。
のところは、の属する第1行と第2列を取った
のところは・・・。
Wikipediaの行列式
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%8C%E5%88%97%E5%BC%8F
の記事の歴史を読むと、面白いことが書いてあるケロよ。
遠く離れたヨーロッパと日本で、ほぼ同時期に、独立して行列式の研究が同時並行的に行われていた。
このことは、実は、とんでもないことなんだケロ。
ウィキペディアのこの記事に「サラスの方法」
が書いてあるけれど、これは4次以上では成り立たないので注意が必要。
第14回 3重積分の変数変換 [重積分]
第14回 3重積分の変数変換
3重積分の場合、ヤコビアンJは次のようになる。
定義
x=φ(u,v,w)、y=ψ(u,v,w)、x=η(u,v,w)がともに級であるとき、次の行列式
を写像(x,y,z)→(φ(x,y,z),ψ(x,y,z),η(x,y,z))のヤコビアンという。
そして、次の定理。
定理
Ωはxyz-空間の積分領域とし、関数f(x,y,z)はΩで連続とする。の変換x=φ(u,v,w)、y=ψ(u,v,w)、x=η(u,v,w)により積分空間Γに1対1対応するとする。このヤコビアン
がJ(u,v,w)≠0を満たすならば
それで、このヤコビアンは
になる。
ということで、次の定理が成立するにゃ。
定理
Ωはxyz-空間の積分領域とし、関数f(x,y,z)はΩで連続とする。極座標
により積分空間Γに1対1対応するとする。このとき
となる。
では、早速問題を。
問題1
「解」
このΩは原点を中心とする半径aの球で、上の積分はその体積。積分領域Ωを極座標変換すると、
になるので、
となる。
問題2
【解】
3重積分は計算が大変なので計算したくないというのが本音なのだが・・・。
極座標x=rsinθcosφ,x=rsinθcosφ,z=rcosxθで変換すると、
になる。
よって、
第13回 3重積分 [重積分]
第13回 3重積分
2重積分と同じように、3重積分、そして、n重積分を定義することができる。基本的に同じなので、3重積分をその代表としてやりますにゃ。
閉区間で有界な関数f(x,y,z)に対して、Kの分割を細かくしたリーマン和が一定の値に収束するとき、f(x,y,z)は積分可能であるといい、その極限を
とあらわす。
そして、定数関数1が有界な集合上で積分可能であるとき、体積確定といい、
をΩの体積という。
そして、3重積分を計算するときには累次化して積分する。
定理
f(x,y,z)がで連続であれば、
なお、
のことなので注意してください。
上の定理は積分領域が直方体の場合で、より一般のΩの場合は次のようになる。
f(x,y,z)がの積分領域Ωで連続とする。xy平面上の積分領域DとD上の連続関数により、Ωが縦線集合
としてあらわせるとき、
さらに積分領域DがD上で連続な関数によって
とあらわされるとき、
となる。
こういうふうに累次化して積分する。
何を書いてあるかわからないと思うので、問題を解いて実例を示すにゃ。
問題1
【解】
なのだけれど、これは次のように計算してよい。
上の右辺はただの積分の掛け算なので、累次積分と区別するために、「・」を付けたにゃ。
2重積分でも計算量が多いのに、3重積分はさらに計算量が多くなるので、大嫌いだにゃ。
問題2
【解】
Ωは次のように縦線集合に書き換えることができる。
積分領域Dは
よって、
3重積分は、こんな簡単なものでも、とにかく計算が大変です。
第12回の問題3を1変数関数で求めるには・・・ [重積分]
重積分の第12回の問題3の面積を1変数関数の積分でどうやって求めるかというと、細かい議論が少しいるのだけれど、その議論を、まずは、すっ飛ばすことにするにゃ。
図を見ればわかるけれど、この図形はx軸に関して対称だから、上半分、つまりy≧0の部分の面積を求め、これを2倍すれば求める面積になる。
ということで、
を計算し、これを2倍すれば、求める面積になる。
何処からこんなのが出てきたかというと、x=rcosθ、y=rsinθとr=1–cosθから
となり、あとは、置換積分の
というありがたい式からこうなる。
―――実は、ここで少しズルをしている(^^ゞ 詳しくは、細かい議論で―――
で、 0≦θ≦πで
となることから、xは、θ=π/3の時に最大で、最大値は1/4となる。
少し細かい議論というのは、
と言うもの。
これは下の図を見てもらうとよくわかると思う。
求める面積は、青の部分で、これは黄色の部分から紫の部分を引いたもの。
y+という関数は−2≦x≦1/4の関数、y-という関数は0≦x≦1/4・・・。
こういうちょっと細かい議論をしないといけない。
計算はしないぞ。真面目に計算をすると、同じ答えるになるはずだにゃ。上半分の面積は3π/4だから、面積は3π/2になるはずだ。
ちなみに、(1/4,√3/4)は変曲点。
答が一致することの検算は、台形公式でやってある。
今回は、C言語のプログラムを・・・。
#include <stdio.h>
#include <math.h>
double f(double x) {
return (1-cos(x))*sin(x)*(-sin(x)+2.*sin(x)*cos(x));
}
double daikei (double a, double b, int n) {
double s, h;
int i;
h=(b-a)/n;
s = (f(a)+f(b))/2;
for (i=1;i < n; i++) {
s= s+ f(a+i*h);
}
return s = s*h;
}
int main() {
int n;
double pi;
pi=4*atan(1.0);
n=100;
printf("s=%f\n", daikei(pi,0,n));
printf("kotae=%f\n",3.*pi/4);
return 0;
}
100分割で計算すると、3π/4≒2.356194となるにゃ。
だから、間違っちゃ〜いない(^^ゞ
台形公式のBASICのプログラムは
http://nemuneko-gensokyou.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09-3
に書いてある。
def f(x)=ホニャララ
の部分と、aとbの値を変えればいいにゃ。
第12回 2重積分の面積への応用 [重積分]
第12回 2重積分の面積への応用
2重積分のところで少し触れたのですが、実は
という2重積分は、集合Dの面積なんだケロ。
1変数の積分のところでやったけれど、x=a、x=b、そして、y=f(x)、y=g(x)とで囲まれる面積は、
また、
となるので、
2重積分を使うと、
そして、縦線集合Dを次のように定義すると、
①は
になるというわけ。
それでは、早速問題を解いてみよう。
問題1 次の図形の面積を求めよ。
【解】
これは原点を中心とする半径aの面積だね。
この領域Dは
これを
として計算してもいいけれど、これは計算が面倒(?)なので、極座標変換するケロ。そうすると、
になる。よって
こちらのほうが計算はずっと楽だケロ。
問題2 と2y–x–4=0で囲まれた領域の面積を求めよ。
【解】
この領域Dを縦線集合で書くと、
よって、面積は
かえって難しくしている話もあるが(^^ゞ
しかし、こういう問題になると、話が変わってくる。
問題3 r=1–cosθで囲む面積を求めよ。
【解】
なので、
ちなみに、これは次のような図になるにゃ。
この図形の面積を1変数の積分の範囲で求められないのかといえば、できないことはないけれど・・・。