一様連続とリプシッツ連続の問題の解答例 [微分]
一様連続とリプシッツ連続の問題の解答例
問5 f(x)を区間Iで微分可能な関数とする。任意のx∈Iに対して、
ならば、任意のx、y∈Iに対して
が成り立つ。逆も成り立つことを示せ。
【解答】
x,y∈I、x≠yのとき、平均値の定理より次の関係を満たすcがxとyの間に存在する。
したがって、
逆に、x≠yのとき。
(解答終)
問題 関数
について、次の問に答えよ。
(1) f(x)が[0,1]で一様連続であることを一様連続の定義に従って示せ。
(2) f(x)は[0,1]でリプシッツ連続でないことを示せ。
【解答】
(1) a≧0、b≧0のとき、
である。
x₁、x₂∈[0,1]、さらに、x₁≧x₂とする。
任意の正数ε>0に対して、δを
に定め、
とすると、①より、
したがって、
x₁>x₂の場合も同様に、
となり、f(x)=√xは[0,1]で一様連続である。
(2) nを任意の自然数とし、
とする。
f(x)=√xが[0,1]でリプシッツ連続であるとすると、
を満たす実定数Kが存在することになるが、これでは自然数が上に有界であることを示すので、このような実定数Kは存在しない。
したがって、f(x)=√xは[0,1]でリプシッツ連続でない。
(解答終)
一様連続とリプシッツ連続の問題 [微分]
一様連続とリプシッツ連続の問題
任意の正数εに対して、ある正数δが存在して、次の関係が成立するとき、関数f(x)は一様連続という。
より厳密に書けば、例えば、次のようになるだろう。
f(x)を区間Iで定義された関数とする。
任意の正数εに対して、ある正数δが存在し、任意のx₁,x₂∈Iに関して、
が成り立つとき、f(x)は一様連続であるという。
論理記号で書くと、
が成立するとき、f(x)は一様連続であるという。
たとえば、
とすると、
となるので、
したがって、任意のε>0に対して、
とδを定めれば、
が成立するので、f(x)=sin xは一様連続である。
もちろん、
平均値の定理より、x₁≠x₂とすると、
となるcがx₁とx₂の間に存在するので、
したがって、任意の正数εに対して、
とδを定めると、x₁=x₂の場合も含めて、
としてもよい。
問1 次の関数f(x)がI=[0,1]で一様連続であることを示せ。
【解】
任意の正数ε>0に対して、
と定めると、任意のx₁、x₂∈[0,1]に関して、
したがって、f(x)は一様連続である。
(解答終)
問2 平均値の定理を用いて、
が一様連続であることを示せ。
どうしてもできないヒトは、次の定理を使ってもよいが・・・。
定理1 有界閉区間Iで定義される関数f(x)がIで連続であれば、f(x)はIで一様連続である。
問3 Rを実数全体の集合とするとき、
は一様連続でないことを示せ。
(ヒント)
f(x)が区間Iで一様連続であるとは、
したがって、f(x)が一様連続でないとは、これを否定した
になる。
そこで、
nを自然数とし、δ=1/n、さらに、
とすると、
となり、
nをどんなに大きくとり、δを限りなく0に近づけても、x₁とx₂を
にとれば、は1より小さくならない!!
ヒントではなく、答を書いたようなものであるが・・・。
区間Iで定義される関数f(x)が、任意のx₁、x₂∈Iに対して、
であるK≧0である実定数Kが存在するとき、f(x)はIでリプシッツ連続であるという。
定理2 f(x)がリプシッツ連続であれば、f(x)は一様連続である。
【略証】
K=0のとき、任意のx₁、x₂に対して、
になるので、一様連続。
K>0のとき、任意の正数εに対して、
にδを定めると、
(略証終)
問4 [0,1]で定義される関数f(x)=x²が[0,1]でリプシッツ連続であることを示せ。
問5 f(x)を区間Iで微分可能な関数とする。任意のx∈Iに対して、
ならば、任意のx、y∈Iに対して
が成り立つ。逆も成り立つことを示せ。
ここまではサービス問題だケロ。
さぁ、お前らに次の問題を解いてもらおうじゃないか。
問題 関数
について、次の問に答えよ。
(1) f(x)が[0,1]で一様連続であることを一様連続の定義に従って示せ。
(2) f(x)は[0,1]でリプシッツ連続でないことを示せ。
言っておくが、(1)の解答で定理1を使った奴はぶっ殺す。
タコ殴りしたあと、簀巻きにして、川に流してやるケロ!!
念の為に言っておくけれど、
で、f'(x)は上に有界じゃないから、平均値の定理は使えない!!
aを0<a<1である任意の実数とし、[a,1]とすれば、たとえ、f'(x)がどんなに大きな値であろうと、所詮、有限の値だから、平均値の定理を使うことができて、f(x)は[a,1]でリプシッツ連続であり、したがって、一様連続であることを示すことができるが・・・。
さらに、[a,1]ではなく、(a,1]としたら、f(x)はリプシッツ連続か?
加法的関数 [微分]
加法的関数
次の関係式を満たす関数を加法的関数(加法的写像)という。
この最も代表的な関数は、
である。
問題1
fを実数全体の集合R上で連続とする。任意のx,y∈Rに対して
を満たせば、fはf(x)=f(1)xであらわせることを示せ。
【解答】
条件から、xを実数とすると、
が成り立つ。
同様に、
が成立する。
特にx=0のとき、任意の自然数nに対して
が成立するので、f(0)=0である。
また、
である。
pを自然数とし、x=pとすると、
また、qを自然数とすると、
したがって、
になる。
よって、x=p/qとおくと、
となり、全ての有理数xに対して、
無理数xに収束する有理数の数列を選ぶと、fはR上で連続なので、
が成立する(※)。
したがって、
である。
(解答終)
(※) 定理
関数fが点aで連続であることの必要十分条件は、aに収束する任意の数列に対してとなることである。
https://nekodamashi-math.blog.so-net.ne.jp/2018-11-29-6
というわけで、加法的関数fが連続であれば、
という形の関数に必ずなる。
類題1
fを実数全体の集合R上で連続とする。任意のx,y∈Rに対して
を満たし、かつ、fがx=0で連続ならば、fはf(x)=f(1)xの形であらわせること示せ。
【ヒント】
任意のxについて
類題2(連続な乗法的関数)
fをR上で連続な関数とする。任意の実数x,yに対して
を満たすとき、fはどのような関数になるか。
f(x)=0、f(x)=1という定数関数や指数関数がf(x+y)=f(x)f(y)を満たすのは明らかだが(^^)
fがRで微分可能ならば、yをひとまず固定し、両辺をxで微分((・・?)すると、
x=0を代入すると、
f'(0)=cとおき、さらに、yをxにすり替える。
x=0のとき、f(0)=0だから、
とか解けるんじゃないか。
オレは、高校の受験参考書などにに載っているこういう解法は大嫌いだけれど!!
問題2
関数fが、任意の実数x,yに対し、
を満たし、f(0)=0かつfがx=0で連続ならば、fはRで連続であることを示せ。
【解答】
f(x+y)≦f(x)+f(y)であるから、
また、
ここで、z=x−yとおくと、
になる。
ここで、zをあらためてxにおくと、
となり、(1)式とあわせると、
fは点0で連続なので、
したがって、ハサミ打ちの定理より
となり、fはRで連続である。
(解答終)
類題3
Rで定義されている関数fが、すべてのxとyに対して、
を満たすとき、f(0)=0でかつx=0で微分可能ならば、R上で微分可能であることを示せ。
【ヒント】
fは、x=0で微分可能なのだから、x=0で連続である。
したがって、(2)式をそのまま利用でき、
f(0)=0という条件から、
これをy≠0で割り、y→0の極限をとり、ハサミ打ちの定理を使うと・・・。
y<0のとき、yで割ると、不等式の不等号の向きが逆になることに注意!!
高校数学でおなじみのあの問題の二分法を用いた解答例 [微分]
高校数学でおなじみのあの問題の二分法を用いた解答例
問題 閉区間[a,b]で連続な関数f(x)について、a≦f(x)≦bであるならば、
となるcが[a,b]に存在することを示せ。
【中間値の定理を用いた解答例】
f(a)=aまたはf(b)=bならば、c=aまたはc=bをとればいい。
そこで、f(a)>a、f(b)<bとし、
という関数g(x)について考える。
f(x)とxは[a,b]で連続だから、g(x)は[a,b]で連続。
だから、中間値の定理より、
となるcが[a,b]に存在する。
(解答例終)
g(a)=f(a)−a=0、または、g(b)=f(b)−b=0のとき、aまたはbがお目当てのcになるので、この場合は除くにゃ。
とし、[a,b]を[a₁,b₂]とする。
そこで、
とし、
ならば、このc₁がお目当てのc。
ならば
とおき、[a₂,b₂]という新たな閉区間を作る。
で、
とし、
ならば、c₂がお目当てのc。
ならば、
とする。
そして、新たな閉区間[a₃,b₃]を設け、
という閉区間のときにも同様に、
とおき、
ならば、これがお目当てのものなので、ここで終了。
のとき、
とおき、という新しい閉区間を作る。
そして、この操作を繰り返す。
すると、
となる。
この構成法からすべての自然数について、
が成立していることは言わずもがなであり、
となる。
は上に有界な単調増加数列、は下に有界な単調減少数列だから、極限値をもち、
だから、
となる。
この構成法から、すべての自然数nについて
であること、また関数gは連続であることから、
よって、
したがって、この極限値γがお目当てのcとなる。
(解答終)関数f(x)=√xが一様連続であることの証明 [微分]
関数f(x)=√xが一様連続であることの証明
一様連続の定義
関数f(x)は区間Iで定義されている関数とする。任意のε>0に対して次の条件をみたすδ>0が存在するとき、f(x)はIで一様連続という。
関数の一様連続に関して、次の重要な定理に次のものがある。
定理
関数f(x)が有界閉区間Iで連続ならば、f(x)はIで一様連続である。
上の定理ではIが有界な閉区間であることが重要。
例 で定義されるf(x)=1/xは、Iで連続であるけれど、Iで一様連続ではない。
x₁、x₂∈(0,1]であるx₁、x₂を
にとると、
となり、nをどんなに小さくしても、これは1より小さくならないので、一様連続ではない。
I=[1,∞)にすると、
そこで、任意のε>0に対して、δ=εにδ>0をとると、
したがって、f(x)=1/xは区間[1,∞)で一様連続になる。
上の例のように、区間Iが有界な閉区間でなくても、Iで一様連続である関数は存在する。
問1 次の関数が一様連続であることを示せ。
【解】
平均値の定理より
となるcがx₁とx₂の間に存在する。
(1)より
任意のε>0に対して、δをδ=εにとると、
よって、一様連続である。
(解答終)
【別解】
よって、任意のε>0にたいしてδ=εとすれば、
(別解終)
問2 とする。f(x)が区間(1,∞)で一様連続であることを証明せよ。
【解】
x₁、x₂∈(1,∞)とする。
平均値の定理より
となるcがx₁とx₂の間に存在する。したがって、c>1。
よって、
そこで、任意のε>0に対して、δをδ=2εにとると、
したがって、√xは区間(1,∞)で一様連続である。
(解答終)
問3 平均値の定理を使わず、有理化を行うことで、問2を証明せよ。
問4 とする。関数f(x)は区間[0,1]で一様連続であることを証明せよ。
【解】
f(x)=√xは有界閉区間[0,1]で連続。したがって、定理よりf(x)=√xは[0,1]で一様連続である。
(解答終)
問2、問4より、は[0,∞)で一様連続ということになる。
問4は、技を使わないと、ちょっと証明しづらいので、定理を使って証明した。
そして、その技を使うと、ダイレクトには[0,∞)で一様連続であることを証明できる。
【証明】
a≧0、ε>0に対して
である。
x₁、x₂∈[0,∞)とする。
任意のε>0に対してδ=ε²とおくと
x₁≧x₂のとき
だから、
x₁<x₂のとき同様に
①と②より
したがって、任意のε>0に対して、δ=ε²とすると、
よって、f(x)=√xは[0,∞)で一様連続である。
(証明終)
なお、⑨は、⑨式の両辺が非負であるので、2乗しても大小が変わらないので、右辺²と左辺²の差をとると
であることから簡単に証明できる。
追加問題と宿題の答え [微分]
追加問題の答えだケロ!!
(1) f(x)がx=0で微分可能であることを示し、x=0におけるf(x)の微分係数f'(0)を求めよ。
(2) f(x)の導関数f'(x)がx=0で連続であることを示せ。
(3) x=0でf(x)は2回微分可能か?
(4) f(0)はf(x)の極値か否かを判定せよ。
ちなみに、
【解】
(1) h≠0とすると、
(2) x≠0では
よって、x≠0のとき
ここで、
だから、
となり、f'(x)はx=0で連続である。
(3) h≠0のとき
したがって、f(x)はx=0で2回微分可能である。
(4) f(0)は極値ではない。
任意のr>0に対して
が成立するように自然数nをとると、点x=0の近傍(–r,r)内に
という点がある。
したがって、r>0をどんなに小さくしても、(–r,r)で
が成立するので、f(0)は極値ではない。
(解答終)
宿題 次の曲線の概形を書け。
【解】
【解】
よって、y²=x²(x–3)をyについて解くと
となり、曲線y²=x²(x–3)は
と、y₁、y₂の2つの曲線に分解することができる。
y₁の凸凹表を書くと
x |
0 |
3 |
・・・ |
4 |
… |
y |
0 |
0 |
|
4 |
|
y'' |
|
|
− |
0 |
+ |
凸凹 |
|
|
凹 |
変曲点 |
凸 |
y₂はy₁をx軸に関して対称だから曲線y²=x²(x–3)のグラフは以下のようになる。
(解答終了)
曲線y²=x²(x–3)には、その近傍に曲線上の点が存在しない点(0,0)が存在する。この(0,0)のように、その近傍に曲線上の点が存在しない点を孤立点と呼ぶ。
参考までに、y²=x³のグラフを以下に示す。
曲線y²=x³上の点(0,0)は尖点という。
以上のことから、曲線
は、a>0のとき曲線上の点(0,0)は接線が2本引ける結節点になり、a=0のとき尖点、a<0のとき孤立点になる。
y²=x²(x+3)からきまるxの関数のyのグラフと接線 [微分]
問題 次の曲線の概形を書け。
【解1】
また、
だから、
となる。
したがって、
増減表を書くと
x |
−3 |
・・・ |
−2 |
・・・ |
0 |
・・・ |
y₁’ |
|
+ |
0 |
− |
|
+ |
y₁ |
0 |
増加 |
2(極大) |
減少 |
0(極小) |
増加 |
y₁’’ |
|
− |
|
+ |
||
凸凹 |
|
凹 |
変曲点 |
凸 |
y₂はy₁とx軸に対して対称だから、曲線の概形は次の通り。
(解答終)
高校レベルの微分を用いれば、上のように解くのが正攻法であろう。
しかし、曲線y²=x²(x+3)は次のように分解することも可能である。
このように考えると、次のような解答を作ることができるだろう。
【解2】
曲線y²=x²(x+3)を
と分解する。
曲線y₂は曲線y₁をx軸に関して折り返したものだから、y₁だけを考えれば十分。
よって、増減表(凹凸表)は次の通り。
x |
−3 |
… |
−2 |
… |
y₁’ |
|
− |
0 |
+ |
y₁ |
0 |
減少 |
−2 |
増加 |
y₁’’ |
|
+ |
||
凹凸 |
|
凸 |
したがって、この曲線の概形は次の通り。
【解1】と【解2】、どちらが楽かは言わずもがなだろう。
しかし、こんなことを言いたくて、この問題を解いたわけではない。
【解1】の
【解2】の
のy₁、y₂ともに、y²=x²(x+3)から決まるxの関数である。
しかし、解1の関数の場合、x=0で微分不可能であり、また、y₁はx=0で極小、y₂はx=0で極大である。
x=0で微分可能かによって、原点Oでこの曲線の接線が引けるかどうかの違いも出てくる。
解1の場合、x=0で微分不可能だから接線は存在しないが、解2の場合、x=0でy₁、y₂ともに微分可能で、接線が2本存在することになる。
原点Oで曲線の接線を引けるかどうか、この差は決定的だケロ。
曲線上の点で接線が2本引けるというのも考えてみれば妙な話のように思える。さてさて、この曲線の原点(0,0)における接線は0本か、それとも2本か、なんとも悩ましい話である。
出ないと思うけれど、もし、大学入試で「この曲線の原点(0,0)における接線を求めよ」という問題が出題されたら、受験生はどのように答えるのだろうか。
実に興味深い問題である(^^)
なお、この曲線
で囲まれている領域(下図参照)の面積Sは、
だから、t=x+aとおくと、x=−a →t=0、x=0→t=aに対応し、dx=dtだから
である。
宿題 曲線y²=x²(x–3) の概形をかきなさい。
おそらく、このグラフを書けるヒトは意外に少ないに違いない!!
第22回 数列の極限と関数の極限の融合 [微分]
第22回 数列の極限と関数の極限の融合
数列がaに収束するとは、任意のε>0に対して、ある正の整数mが存在し、
である。
関数f(x)がx→aのときbに収束するとは、任意のε>0に対して、あるδ>0が存在して
であることである。
この数列の極限と関数の極限を結びつける次の定理を紹介する。
定理
である必要十分な条件は、aに収束する任意の数列に対してとなることである。
【証明】
必要)
だから、任意のε>0に対して、あるδ>0が存在して、
である。
また、だから、ある正の整数mがあって
である。
よって、
十分)
を否定すると、
となるxが存在する。
特に、δ=1/n>0にとると、
となるが存在する。
このとき得られたに対しては、であるが、が成り立たない。
したがって、証明された。
(証明終)
この定理から、関数の極限を数列の極限を用いて定義してよいことになる。
同様に、数列の極限を用いて、関数の連続は次のように定義される。
関数f(x)は区間Iで定義された関数、a∈Iとする。aに収束するすべての数列に対してであるとき、関数f(x)はx=aで連続であるという。
最後に、これまで証明しなかった次の定理を証明する。
定理
関数f(x)が有界閉区間[a,b]で連続ならば、関数f(x)は[a,b]で最大値、最小値をもつ。
【証明 】
fが[a, b]で上に有界でないとすると、
が成り立つ。
n = 1, 2, 3, ・・・と変化させると、という有界な数列が得られる。
は有界な数列なので、ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理より収束する部分列が存在する。そして、その極限をcとすると、となる。
関数f(x) は連続なので、
となるけれど、
よって、f(c) = +∞となり、有限な値を持たない。
c∈[a,b]でf(c) は[a,b]で定義される関数の点である以上、有限の値を持たなければならない。
これは矛盾である。
よって、f(x)は上に有界である。
f(x) は [a, b] で上に有界なのだから、上限が存在する(実数の連続性)。その上限をMとする。
そして、f(x) が[a,b]で最大値を持たないと仮定すると、f(x) < M となり、M – f(x) ≠ 0となる。
だから、
という関数gは[a, b] で連続となる。
また、仮定より、Mはf(x) の上限なのだから、任意の正の数εに対して
となる x ∈ [a,b] が存在する。
εは任意の正の数なので、
とすると、
となる。ここで、n は自然数。
nは自然数なのだから、いくらでも大きくでき、g(x) には上限がないことになる。
g(x) は有界な閉区間[a,b]で定義された連続関数だから上限があるはずなのに、上限がない。
これは矛盾。
何故、矛盾したかというと、f(x) は[a,b] で最大値をもたないと仮定したから。 よって、f(x) は最大値をもつ。
下に有界をもつこと、最小値をもつことも同様。
(証明終)
第21回 ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理とコーシーの収束条件 [微分]
第21回 ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理とコーシーの収束条件
定理9
有界な数列は収束する部分列をもつ。
【証明】
有界だから
を満たす正の実数Kが存在する。
つまり、
閉区間[ –K, K] を二等分して、[–K, 0] と[0, K] という閉区間を作ると、 このどちらかにの無数の項がある。
かりに[0, K] にあるとして、
として、これをまた二等分する。すると[0,K/2] と[K/2, K] になって、このどちらかにの無数の項が存在する。
かりに[K/2, K]に無数の項があるとすると、
として、これをまた二等分する。
こうした操作を繰り返してゆくと、
という閉区間の減少列が得られる。
すると、
になる。
区間縮小法から、これら閉区間すべてに共通に含まれる一つの数αが存在する。
次に、のなかに含まれる数列の項の中で最も番号が若いものを、に含まれる数列の中で最も番号が若いものをといった具合に、この操作をと無限に繰り返す。
すると、
というの部分列が得られて、①と②より、はα に収束する。
(証明終了)
コーシー列
次の条件を満たす数列をコーシー列という。
任意のε > 0 に対して、次の条件を満たすm ∈ N が存在する。
収束する数列がコーシー列である。
何故ならば、とすると、
だからである。
定理10 (コーシーの収束条件)
数列が収束するための必要十分な条件は、数列がコーシー列であることである。
【証明】
収束する数列がコーシー列になることは先に証明した。
したがって、がコーシー列であるならば、が収束することを示せばよい。
条件より
任意のε > 0 に対して、次の条件を満たすm ∈ N が存在する。
q=m+1 に固定し、p>m とすると
よって、p> m で、数列は有界。 これにm以下の項を加えても、 はやはり有界。
ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理より、の部分列でα に収束するものがあるのだから、任意の正の数ε に対し適当なm₁を定めると 、k>m₁で
となkが無数に存在する。
また、条件から
となり、m'=max{m,m₁}とすると、k>m' で
をみたす k が無数に存在し、そのkに対して
したがって、n>m'のすべてのn について
となり、
である。
(証明終了)
数列の極限の補足 [微分]
数列の極限の補足
のイプシロン・デルタ論法の定義は次のとおり。
任意のε>0に対して、ある自然mがあって、n>mを満たす任意の自然数nで
であることである。
論理記号を用いて書くと
ここで、Nは自然数すべての集まりを表す。
∀は全称記号と呼ばれるもので「任意の❍に対して」あるいは「すべての❍に対して」の意味で、∃は存在記号で「❍が存在する」くらいの意味である。
一般項が次式で表される数列があるとする。
この数列の極限がであることはすぐにわかるだろう。
このことをイプシロン・デルタ論法(イプシロン・N論法)で証明するには次のようにすればよいだろう。
任意のε>0に対して
よって、(1)式の自然数mは、ガウス記号を用いて
にとれば
が満たされる。
もちろん、
であっても構わない。要は(2)式を満たすmでさえればよい。
例えば、ε=0.1=1/10ならば、m=10にとれば、n>mを満たすすべてのnに対して(2)式を満たす。m=11であっても、m=100であってもよく、これはそもそも1つ値に定まるものではない。
ここでガウス記号[x]は、xを越さない最小の整数で、
である整数nのことである。
ところで、一般項が
で表される数列があるとする。このとき、である。
先ほどと同じように、ε=1/10としたときのmを求めると
より、m=20にとればよい。
これからわかるように、同一のεの値であっても、一般に、数列によってmは異なる。
さてさて、
の証明は、任意のε>0に対して
である。
この証明で、なぜ、m=max{m₁,m₂}が必要かというと、先の例のように、同一のεであっても、数列によってmの値が異なるためで、εに対して①と②を同時に満たすmをあらたに採用しないと③が成立しないため。
上の例の場合、m₁=10、m₂=20だからm=max{10,20}=20となり、n>20>10であるすべてのnについて
と、自動的に満たすことになる。
だから、m=max{m₁,m₂}というお呪いが必要というわけ。
では、任意のε>0に対して、あるmがあって
という証明は間違いかというと、一概に、そうとも言えない。①、②式のm₁,m₂がそれぞれ1つの値として定まるものではなく、また、mをm≧max{m₁,m₂}にとれば成り立つから。ただ、初学者に無用な混乱を与えるので、不親切な証明とされていて、このお呪いを唱えたほうがよいとされている。