立体角 [ベクトル解析]
立体角
閉曲面Sがあるとする。原点Oに対する、閉曲面S上の点の位置ベクトルをr、その大きさをr、Sの内部から外部に向かう単位法線ベクトルをnとし、次の積分の値を考える。
この積分は、rとnのなす角をθとすると、次のように書き換えることができる。
原点Oが閉曲面Sに囲まれた領域Vの外部にあるとき、ガウスの発散定理より、
となるが、
なので、
になる。
つぎに、原点Oが閉曲面Sの内部にあるときについて考える。Oを中心とし、Sに含まれるような、半径ρの球面をS’とし、SとS'とで作られた閉曲面について考えると、原点Oはその外部にあるので、
S'の法線ベクトルnは原点に向かっており、r=ρのとき、
したがって、
となり、したがって、
最後に、原点Oが閉曲面S上にある場合について考える。Oを中心とし、半径ρを中心とする球面Sにふくまれる部分をS’、球面外の部分をS’’とすれば、
ρが小さいときS'は半径ρの半球面と考えてよいので、上式の右辺は
また、ρ→0のとき、S’’は球面Sになるから、
以上のことをまとめると、次のようになる。
オイラーの連続の方程式、運動方程式、そして、ベルヌーイの定理 [ベクトル解析]
オイラーの連続の方程式、運動方程式、そして、ベルヌーイの定理
§1 オイラーの連続方程式と運動方程式
流体の密度をρ、流体の速度場をvとし、空間内の任意の閉曲面Sとこの閉曲面で囲まれた領域Vについて考える。
また、速度ベクトルvのx成分、y成分、z成分を、u、v、wとする。この閉曲面から単位時間あたりに流出する流体の質量は、閉曲面の単位法線ベクトルをnとすれば
である。
これは、閉曲面で囲まれた質量の減少分
と等しいので、
上式の左辺第1項については微分と積分の順序の交換が可能であると仮定すると
そして、左辺第2項にガウスの発散定理を用いると
となり、(1)式より
となる。
任意の閉曲面で囲まれた領域で(1’)が成立するので(2)式をデカルト直交座標で書き換えると
となる。
この(2)、(3)式をオイラーの連続方程式、連続の式という。この式の意味するところは質量保存の法則である。特に、密度が一定の場合
である。
また
とおくと、(2)は
となる。
ρを空間の電荷密度、jを電流密度ベクトルとすれば、そのまま、電磁気学の電荷の保存則になる。
次に、閉曲面Sに囲まれた領域の運動方程式を考える。
閉曲面の表面では圧力pのみが働き、この他に閉曲面Sで囲まれた領域に単位質量あたりにKという力が作用しているとすると、ニュートンの運動方程式は
これが任意の閉曲面で囲まれた領域で成立するので、
である。
というベクトル関数であるとすると、
となり、Kのx成分、y成分、z成分をそれぞれX、Y、Zとすると、運動方程式は
となる。
(5)式をオイラーの運動方程式という。(※) これはデカルト直交座標でしか成立しない、あくまで形式的な表現!!
そして、ここで使っているベクトル解析(?)は、いわゆるベクトル解析とされるものの範囲を逸脱しており、もう既にテンソルに片足を突っ込んでいる!!また、このオイラーの運動方程式の導出には多大の胡散臭さがある。
これは数学の話ではなく、物理の話だから胡散臭いのはしょうがない、と諦めてもらうことにする(^^ゞ
§2 ベルヌーイの定理
とすると、オイラーの運動方程式(5)は、
とあらわすことができる。
このままでは、(6)式はデカルト直交座標でしか成立しない。そこで、
と書き換えると、
この(7)式は円柱座標や極座標などの曲線座標でも成立する。
渦なし場の場合
縮まない流体(密度ρが一定)であるとし、渦なし、つまり、rot v=0の場合を考える。このとき、速度ポテンシャルが存在し
である。
これを(7)式に代入すると、
となり、Kにもポテンシャルが存在することになる。
そこで、
とすると、
となり、これを積分すると
となる。ここで、F(t)は任意の関数である。
これを拡張されたベルヌーイの定理という。
保存力場の定常な流れの場合
縮まない流体とする。この場合
だから、運動方程式は
v×rot vはvに直角だから、流線の方向の成分を取ると
ここで、sは流線に沿ってはかった距離である。
これを流線に沿って積分すると、
特に、外力として重力だけが働くとき、
だから
この(9)式をベルヌーイの定理という。
某Q&Aの知恵◯に寄せられていた質問の解答 [ベクトル解析]
私が過去に書いたベクトル解析の記事が関係しているので、質問の問題を解いてみた。
速度ベクトルvのr方向、θ方向、z方向の速度をとする。
微小体積rΔrΔθΔzに流入する水の量
流出する水の量は
流入した水の量と流出した水の量は、等しいので
で、は高次の微小項だから無視し、rΔrΔvΔθで両辺を割ると
で、Δr→0、Δθ→0、Δz→0の極限を取ると
これは円柱座標での縮まない流体の連続の式になるので、
連続の式
と同じものになるはずだ。
したがって、
数学じゃなくて、物理や工学だから、現象の物理的な意味を考えたこうした求め方が許されるのではないか。
某Q&Aである知恵◯に寄せられていた質問の問題は、おそらく、このように解けと言っているのだと思う。
そして、これが解答のはずだ。ちなみに、連続の式はベクトル解析を使うと次のように求められる。
ここでρは密度でtは時刻。
(1)は積分形、(2)は微分形の連続の方程式。
上の解答は、密度一定のときの円柱座標の連続の方程式を微分の立場から求めたものにすぎない。
またρv=jとおけば
となり、電磁気学の電荷の保存則になる。このとき、ρは電荷密度でjは電流密度。
双曲線の回転 [ベクトル解析]
双曲線の回転
問題 方程式x²−y²=a²(a>0)で表される曲線を、原点のまわりに45°回転して得られる曲線の方程式を求めよ。
【解】原点のまわりに45°回転することによって、(x,y)が(x',y')にうつるのだから
①+②より
②−①より
③、④を方程式x²−y²=a²に代入すると、
これでいいのですが、x'、y'だと見た目が悪いので、xとyにさり気なく戻して、
(解答終了)
行列や1次変換を知っている人ならば、次のように解けばよい。
【別解】
(以下略)
(別解終了)
この程度の問題に行列や一次変換なんて持ち出すと、書くのが大変だケロよ。
ちなみに、y=xとy=−xは直角双曲線x²−y²=a²(a>0)の漸近線。
第42回 直交軸とベクトル2 [ベクトル解析]
第42回 直交軸とベクトル2
直交軸の変換によって直角座標は次のように変換される。
だから、
となり、
となる。
また、
だから、
となる。
ということで、問題。
問題1 をスカラー関数とすれば、
はベクトルである。
【解】
のの座標における値をとすれば、だから
となる。
(2)より
だから、
となり、
はベクトルである。
ちなみに、問題1はスカラー関数の勾配だケロ。
問題2 をベクトル場とするとき、
はスカラーである。
【解】
で、
よって、
だから、
で、
なるので、
となり、値は変わらない。つまり、スカラーである。
このことは、ベクトルの発散は座標軸のとり方によって値は変わらない、ということを言っている。
何を書いているかわからないだろう。わからないのが普通だから、今は気に病むことはないケロ。
これはもうベクトルを越えてテンソルに入っているんだからわからなくて当たり前。オレはこの記事の式を作っている時に、どこまで式を作っているかわからなくなり、パニクったにゃ。
これでベクトル解析は終わりです。
お疲れ様でした。第41回 直交軸の変換とベクトル [ベクトル解析]
第41回 直交軸の変換とベクトル
直交軸の変換
によって直交座標は
に変換される。
点Aを始点、点Bを終点とするベクトルをvとする。さらに、A,Bの座標をとすれば、直交軸の変換によっては次のように変換される。
よって、
になる。
x¹、x²、x³軸とx’¹、x’²、x’³軸に対するvの成分をそれぞれとすれば
となり、
によって、ベクトルvの成分は次のように変換される。
この(4)が(3)による直交軸の変換によるベクトルの成分の変換式ということになる。
ということで、新たなベクトルの定義を提示。
順序のある3つの数の組v¹、v²、v³があるとする。直交座標の変換
によって
のように変換されるとき、この3つの数の組をベクトルといい、のおのおのをベクトルの成分という。
これに対して、直交座標の変換によって値が変わらないものをスカラーまたは不変量という。
をベクトルとするとき、で与えられる3つの数の組はベクトルになる。
はベクトルなので、
になり、
となる。
そして、とおけば、
になるので、はベクトルということになる。
また、φをスカラーとするとき、もベクトルになる。
、とする。
となるので、はベクトルである。
問題1 2つのベクトルをとすれば、
はスカラーである。
【解】
よって
で、
となるので、
第40回で出てきたクロネッカーのデルタが大活躍している。ちなみに、クロネッカーのデルタとは
の値をもつ9個の数の組のこと。
この問題の言わんとしていることは、直交座標の変換によってベクトルの内積は不変であるということ。
問題2 ベクトルがスカラー変数tの関数であるとき、
がベクトルであることを証明せよ。
【解】この両辺をtで微分すれば、
よって、ベクトルである。
番外編 一次変換の回転と軸の回転 [ベクトル解析]
番外編 一次変換の回転と軸の回転
高校時代に一次変換や行列を習った人ならば知っていると思うけれど、ねこ騙し数学は、そもそも、数学が苦手な文系の人を対象として始めたので、一次変換の回転について説明するにゃ。
xy平面に点P(x,y)があり、これを原点を中心にして角度θ(反時計回り)に回転させ、P'(x',y')になったとする。このとき、行列で書くと
という関係がある。
行列の計算法を知らな人もいるでしょうから、普通の計算式で書くと、次のようになる。
この式を導くことは難しくない。
基本単位ベクトルe₁、e₂の回転後の像をe’₁、e’₂とすると、下の図のようになる。
幾何学関係から、
になるので、一次変換は
になる。
何故ならば、回転をあらわす行列をAとすると
よって、
だから。
でだ、
の成分は、e’₁、e’₂のx軸、y軸の方向余弦になっている。
で、x軸(x¹軸)、y軸(x²軸)を反時計回りにθだけ回転した作った新たな座標軸x’¹軸、x’²軸を考える。
この時だから、新たに設けた座標軸x’¹軸、x’²軸での点Pの成分x’¹、x’²は
となる。
このことは、下の図を見てもらうと分かるでしょう。
新たな座標軸でのPの成分、x’¹は線分OAで、x’²の成分はOB。
一次変換の回転は、xy平面上の点Pを原点の周りにθ回転させて得られた点P’。
対して、回転による座標軸の変換は、点Pを固定して座標軸そのものをθだけ回転させる。
混同しないように。
第40回 クロネッカーのデルタ [ベクトル解析]
第40回 クロネッカーのデルタ
i、jがそれぞれ1、2、3の値をとるとき、9個の数を
を定義したものをクロネッカーのデルタという。
つまり、
である。
で、このクロネッカーのデルタを使うと
になる。同様に、
となる。
だから、
になる。
また、同様に
が成立する。
クロネッカーのδの表記法は
もある。
ということで、問題だにゃ。
問題 直交軸の変換公式
の係数に対して
であることを証明せよ。
【解】
基本単位ベクトルe₁、e₂、e₃は互いに垂直で大きさが1なのでだから、
である。
で、x’¹、x’²、x’³に対するの成分(方向余弦)は
だから
となる。
よって、
となる。
で、
だから、
また、
だから、
(証明終)
なお、
はとても重要な性質です。
第39回 直交軸の変換 [ベクトル解析]
第39回 直交軸の変換
ここで、直交軸の変換として扱う対象は、原点を変えない、右手系の直交軸から右手系の直交軸への変換とする。
また、直交座標を表すのに、x、y、zのかわりに、x¹、x²、x³を用い、基本ベクトルの表記は、これまで使ってきたi、j、kではなく、e₁、e₂、e₃を用いる。ベクトルvの成分はではなく、v₁、v₂、v₃であらわすことにする。
(注意)x、e、vの上下についている数字1、2、3を指標という。x¹、x²、x³は、xの1乗、2乗、3乗の意味ではないので、注意!!
直交軸Ox¹、Ox²、Ox³を他の直交軸Ox’¹、Ox’²、Ox’³に変える場合を考える。
逆に、x’¹軸、x’²軸、x’³軸に対するx¹軸、x²軸、x³軸の方向余弦、つまり、e₁、e₂、e₃の方向余弦は
となる。
上と下の指標が逆になっているので注意が必要。
ということで、
また、
となる。
なのだけれど、実は(1)から(2)を、(2)から(1)を直接導くことができる。やってみるにゃ。
で、e’₁のx¹軸、x²軸、x³軸に対する方向余弦をl₁、m₁、n₁と書くことにする。そうすると、
よって、
だから、
となり、
同様に、
となる。
以降、(1)と(2)のように、いちいち、成分に分けて書くのは面倒なので、
とまとめて書くことにする。
さらに、直交軸が(1)のように変換されるとき、点の座標の変化を調べることにする。
点Pのx¹軸、x²軸、x³軸に対する座標をx¹、x²、x³、また、x’¹軸、x²軸、x’³軸に対する座標をx’¹、x’²、x’³とする。もう一度言うけれど、x¹、x²、x³はxの1乗、2乗、3乗の意味ではない!!
(3)式から
また、
だから、
つまり、
となる。
iやjという指標のローマ字には特に意味はないので、(4)のiとjを入れ替えて、
とする。
――このあたりは融通無碍というか、首尾一貫していないと言おうか――
なのですが、⑨よりは行列を使った方がわかりやすいだろうから、行列を使って書くと、
となる。
これからだいたい推測がつくだろうけれど、となる。
そして、
が成立するので、
になるのであった。
同様に、になるのであった。
第38回 これまでのやり残し [ベクトル解析]
第38回 これまでのやり残し
前回、球座標(3次元の極座標)のh₁、h₂、h₃を計算することなく、h₁=1、h₂=r、h₃=rsinθとなることを使ったので、まずは、このことから取り上げることにします。
球座標の場合は、u=r、v=θ、w=φになることに注意する。そして、直交座標と球座標には次の関係がある。
ということで、あとは、ただの偏微分の計算になる。
さらに、
そして、
となる。
この計算では、三角関数の
を使っている。
また、
ベクトルAのu、v、wの成分と直交軸に関するには次の関係がある。
これを使って、次の問題を解くことにする。
問題 速度および加速度の円柱座標に関する成分は次のようになることを示せ。
ただし、tについての微分を
とあらわすことにする。
【解】
円柱座標だから
円柱座標のh₁、h₂、h₃はh₁=1、h₂=r、h₃=1。
zについては、そのままだから、計算を改めてする必要はない。
になる。
になるので、
でだ、
を真面目に計算し、この結果を
に代入し、真面目に計算すれば、
になる。