第59回 空間曲線 [微分積分]
第59回 空間曲線
空間の点Pの描く空間曲線は
で与えられるが、これは原点Oを始点とする点Pの位置ベクトルが
と与えられることと同等である。
そして、接線ベクトルは
で与えられる。
さらに、この曲線Cが滑らかなとき、位置ベクトルr(a)からr(t)までの弧の長さs(t)は
となり、
よって、
とすれば、
このdsを線元素という。
sはtの関数であるが、逆にtもsの関数と考えられるので、曲線は、曲線の長さを用いて
r=r(s)
とあらわすことができる。
このとき、
は曲線に接しsの増加する方向に向かうベクトルである。
何故ならば、
で、ベクトルtは接線ベクトルdr/dtと平行だから。
また、sとs+Δsに対応する曲線上の点をP、Qとし、とすれば
だから、tは単位接線ベクトルである。
Qにおける接線ベクトルとPにおける接線ベクトルのなす角度をΔθとすれば、
は、曲線の長さに対する接線の向きの変化率をあらわし、
を点Pにおける曲率という。この定義から明らかなように曲率は正または0であり、曲線上の各点でκ=0である時は直線である。
単位接線ベクトルt同士の内積t・t=1を微分すると、
となり、はtに垂直である。
また、
と同じ向きの単位ベクトルをnとすれば、
このnをPにおける(単位)主法線ベクトルといい、
となる。
また、曲率は
曲率の逆数
を曲率半径といい、曲線上のPから引かれたベクトルρnの終点を曲率半径の中心という。
また、曲線上の点Pにおける接線ベクトルと主法線ベクトルの外積
b=t×n
を、点Pにおける曲線の(単位)従法線ベクトルという。
したがって、
t、n、bは互いに直交する単位ベクトルで、右手系をなす。
また、
が成立し、τを捩率(れいりつ)という。
問題1 次の螺旋曲線の(単位)接線ベクトル、主法線ベクトル、従法線ベクトル、さらに曲率κと捩率τを求めよ。
【解】
したがって、
よって、
単位接線ベクトルtは
また、
ゆえに、曲率κは
よって、主法線ベクトルnは
従法線ベクトルbは
これから、
よって、捩率τは
(解答終)
xy平面の2次元で曲率について説明する。
次の図のように、点Pにおける曲線の接線とx軸のなす角度をθとする。このとき、単位接線ベクトルt=(cosθ,sinθ)となる。
単位弧長あたりの接線ベクトルの変化率は
よって、
問題2 曲線y=f(x)の曲率を求めよ。
【解】
接線とx軸のなす角度をθとすると、
よって、
また、
よって
だから、
となる。
特にy'が1に比べて非常に小さい場合は、
(解答終)
第58回 ベクトル関数の微分 [微分積分]
第58回 ベクトル関数の微分
実数全体の集合の部分集合Dで定義されているベクトル関数A(t)がt₀∈Dにおいて極限
を有するとき、A(t)はt=t₀で微分可能であるといい、A'(t₀)をt=t₀におけるA(t)の微分係数という。
Δt=t−t₀≠0とおくと、t→t₀のときΔt→0だから、(1)式は次のように書き換えることができる。
また、Dに属する任意の点でA(t)が微分可能であるとき、A(t)はDで微分可能であるという。
ベクトル関数A(t)がDの任意の点tで微分可能であるとき、
をA(t)の導関数といい、記号
などで表す。
また、
であるとき、
定理 A(t)が点t=t₀で微分可能ならば、A(t)は点t=t₀で連続である。
【略証】
(略証終)
問1 次のことを示せ。
【略証】
(略証終)
問2 実関数f(t)とベクトル関数A(t)はDで微分可能であるとするとき、次のことが成り立つことを示せ。
【解】
(解答終)
A(t)は微分可能だから連続で、
であることに注意。
問3 問1、問2を用いて、
のとき、
となることを示せ。
【解】
(解答終)
基本ベクトルは大きさ、方向が変わらない定ベクトルなので、
であることを使っていることに留意。
ベクトル関数の内積(スカラー積)、外積(ベクトル積)に関しては、次の関係が成り立つ。
定理
【証明】
とする。
(1) の両辺を微分すると、
(2)
だから、
(証明終)
問4 次のことを示せ。
【解】
(1)
(2) |A|=定数だから。
よって、
したがって、ならばとは直交する。
(3)
(解答終)
rを質点の位置ベクトル、mを質量とすると、問4の(3)より
ここで、
とおくと、
Lは角運動量であり、r×Fはモーメントだから、「角運動量の単位時間の変化はモーメントに等しい」という物理の角運動量保存の法則を得ることができる。
問5 rをtのベクトル関数、r=|r|とするとき、次の関数を微分せよ。
(答)
ここで、
問6 a、bを一定のベクトル、ωを定数とするとき、次のことを示せ。
ならば、
【略解】
また、
(略解終)
第57回 ベクトル関数の極限と連続 [微分積分]
第57回 ベクトル関数の極限と連続
実数全体の集合Rの空でない部分集合の任意の点tに対して、ベクトルAが一意に対応付けられているとき、これをベクトル関数と呼び、A(t)で表す。
直交座標を用いると、A(t)はDからRへの3つの実数関数x(t)、y(t)、z(t)によって次のように表すことができる。
ここで、i、j、kはそれぞれx軸、y軸、z軸の正の方向の単位ベクトル、すなわち、
である。
また、tの値によってベクトルの大きさ、方向が変わらないベクトルを定ベクトルという。
ベクトル関数の極限
tがt₀に限りなく近づくとき、A(t)がCに限りなく近づくならば、Cをt=t₀におけるA(t)の極限値といい、
で表す。
より正確にε−δ論法を用いると、
任意の正数ε>0に対して、ある正数δ>0が存在し、任意のt∈Dに対して
であるとき、このことを
であらわし、t=t₀においてA(t)はCに収束するという。また、このとき、Cをt=t₀におけるA(t)の極限値という。
問1 とするとき、とが同等であることを示せ。
すなわち、
【略証】
だから
したがって、
ならば、ハサミ打ちの定理より
逆に、ならば
なので、ハサミ打ちの定理より
(略証終)
問2 α、βを定数とするとき、次のことが成り立つことを示せ。
【略証】
とする。
α=β=0のとき、だから、あきらか。
同時にα=0、β=0でないとき、
任意の正数ε>0に対して
とおくと、あるδ>0があって、
とすることができる。
したがって、このとき、
(証明終)
問3 f(t)を実数全体の集合RからRへの関数とするとき、次のことを示せ。
【略証】
問1より
(解答終)
ベクトル関数の連続
であるとき、A(t)はt=t₀で連続であるという。
すなわち、
任意の正数ε>0に対して、ある正数δ>0が存在し、全てのt∈Dに関して
であるとき、A(t)はt=t₀で連続であるという。
また、Dに属する任意の点でA(t)が連続であるとき、A(t)はDで連続であるという。
ベクトル値関数A(t)が
であるとき、A(t)がt=t₀で連続であることと、実関数x(t)、y(t)、z(t)がt=t₀で連続であることは同値である。
問4 上のことぉ証明せよ。
第55回 関数項級数 [微分積分]
第55回 関数項級数
空間Iで定義された関数列に対して、その部分和からなる数列が収束するとき、関数項級数
は収束するという。
関数列の極限関数をS(x)とするとき、関数項級数の和といい、このことを
で表す。
すなわち、任意のε>0と任意のx∈Iに対して、ある自然数が存在し、任意のn≧Nとx∈Iに関して、
さらに、コーシーの収束定理より、次の定理を得る。
定理1 (コーシーの収束定理)
区間Iで定義された関数を項とする関数列級数が収束するための必要十分条件は、
任意のε>0に対し、ある自然数が存在し、m>n≧Nである任意の自然数m、nに関して
が成り立つことである。
さらに、関数項級数も関数列なので、関数列と同様に、一様収束を定義することができる。
定義 (関数項級数の一様収束)
区間Iで定義された関数を項とする関数列級数は、その部分和が一様収束するとき、関数項級数はI上で一様収束するという。
すなわち、
任意のε>0に対し、xに無関係な自然数が存在し、任意のx∈Iとn≧Nである任意の自然数nに関して
定理2 (ワイエルシュトラスの判定法)
次の条件を満たす正項級数が存在すれば、関数項級数はIで一様収束する。
【証明】
正項級数は収束するので、任意のε>0に対して、自然数が存在し、
また、条件より、任意のx∈Iと任意の自然nに対してが成り立つので、
よって、
(証明終)
問1 次の関数項級数が実数全体の集合一様収束することを示せ。
【解】
(1) すべての自然数nと実数nに関して
だから、
(2) すべての自然数nと実数xに関して
(解答終)
任意の自然数nに対してがIで連続ならば、もIで連続。したがって、関数列について定理を適用すれば、次の定理が成り立つ。
定理3 (関数項級数の連続)
I上の連続関数列からなる関数項級数がI上で一様収束ならば、はIで連続である。
問2 I=[−1,1]のとき、とする。関数項級数の極限関数S(x)を求め、また、一様収束でないことを示せ。
【解】
x=0のとき、任意のnに対して、だから、
x≠0のとき、初項x²、公比の等比無限級になるので、
したがって、
極限関数が連続でないので、一様収束でない。
(解答終)
定理4 (項別積分)
I=[a,b]上の連続関数列からなる関数項級数がI上で一様収束ならば、
問3 次の関係が成り立つことを示せ。
【解】
問1より、は[0,π]で一様収束し、また、は[0,π]で連続なので、
(解答終)
定理5 (項別微分)
I上でC¹である関数列からなる関数項級数がI上で各点収束し、さらにがIで一様収束するならば、もI上で一様収束し、次の関係が成り立つ。
第54回 一様収束する関数列の性質 [微分積分]
第54回 一様収束する関数列の性質
定理1 (連続性)
区間Iで連続な関数列がf(x)に一様収束するならば、f(x)はIで連続である。
【証明】
はf(x)に一様収束するので、任意の正数ε/3>0に対して、ある自然数が存在し、任意のx∈Iに関して、
a∈Iとすると、は点aで連続なので、任意の正数ε/3>0に対して、あるがあって、
したがって、任意のε>0に対して、にすると、
(証明終)
問1 次の関数列は各点で収束するが、一様収束でないことを示せ。
【解】
(1) 任意の自然数nに対しては[0,1]で連続だが、その極限関数
(2) 任意の自然数nに対しては[0,∞)で連続であるが、その極限関数
(解答終)
で定義される関数列は定数関数f(x)=0に各点収束し、また、f(x)=0はx≧0で連続であるが、はf(x)=0に一様収束しない。
したがって、この定理の逆は成立しない!!
問2 で定義される関数列は定数関数f(x)=0に各点収束するが、はf(x)=0に一様収束しないことを示せ。
【解】
x=0のとき、任意の自然数nに対して。
また、x>0のとき
関数の増減を調べるためにを微分すると、
となるから、はx=1/nのときに極大かつ最大。
また、
だから、
ゆえに、
よって、はx≧0でf(x)=0に一様収束でない。
(解答終)
定理2 (定積分)
有界閉区間I=[a,b]で連続な関数列がIでf(x)に一様収束するならば、
【証明】
連続な関数列が[a,b]でf(x)に一様に収束するので、定理1より、f(x)は[a,b]で連続であり、積分可能。
また、はf(x)に一様収束するので、任意の正数ε>0に対して、
したがって、
(証明終)
問3 とするとき、関数列は定数関数f(x)=0に一様収束する。このとき、が成り立つことを確かめよ。
【解】
したがって、
(解答終)
問4 関数列の極限関数をf(x)とするとき、次の関数列はが成り立つか。
【解】
(1)
また、極限関数は
だから、
よって、
(2)
また、極限関数はf(x)=0だから
(解答終)
したがって、一般に、この定理も逆が成立しないことがわかる。
問5
で定められる関数列について、次の問に答えよ。
(1) 関数列は[0,∞)で一様収束であることを示せ。
【解】
(1) x∈[0,∞)について
であるから、だから、ハサミ打ちの定理より
また、
だから、はf(x)=0に一様に収束する。
(2)
一方、
だから、
(解答終)
定理3 (微分)
区間IでC¹級な関数列がI上でf(x)に各点収束し、さらに、がI上でg(x)に一様収束するならば、
【証明】
a∈Iとし、aを固定すると、はIで連続なので、
また、はf(x)に各点収束し、はg(x)に一様収束するので、定理2より
g(x)はIで連続なので、
よって、f(x)はI上で微分可能で
(証明終)
第53回 一様収束 [微分積分]
第53回 一様収束
前回の関数列の(各点)収束の復習を兼ねて、関数列の各点収束の定義を再掲する。
定義 (各点収束)
任意の正数ε>0と任意のx∈Iに対して、ある自然数N(x,ε)が存在して、n≧N(x,ε)を満たす任意の自然数nに関して、
が成り立つとき、関数f(x)を関数列の極限関数といい、関数列はIで関数f(x)に各点収束するという。
各点収束の代表例として
である。
0<x<1の場合、任意のε>0に対して、
とすれば、
x=0の場合、任意のε>0に対し、に定めれば、
x=1の場合、 任意のε>0に対し、に定めれば、
で与えられる関数列も
に各点収束するが、任意のε>0に対して、点xの値に無関係に、
と定めると、任意のx≧0の点で
が成立する。
定義 (一様収束)
任意の正数ε>0に対して、ある自然数N(ε)が存在して、任意のx∈Iと任意のn≧N(ε)に対して、
これを論理記号で書くと、
であるから、がf(x)に一様に収束しないとは、これを否定するばよい。
すなわち、
したがって、
あるε>0が存在し、どのような自然数Nを与えても、
を満たす点x∈Iが存在すれば、はf(x)に一様に収束しないことになる。
【解】
任意のx>0に関して
ε=1とし、任意の自然数Nに対しx=1/N∈(0,∞)にとると、
の極限関数。
任意のε>0に対して、
よって、
にとれば、
(解答終)
もちろん、
任意のε>0に対して、
になるためには、でなければならない。
よって、任意の正数ε>0に対して、
とすれば、
としてもよい。
定理 (一様収束の必要十分条件)
【証明】
I上ではf(x)に一様に収束するので、任意のε>0に対して、ある自然数N(ε)が存在し、任意のx∈Iかつ任意のn≧N(ε)に関して、
が成立する。
任意のx∈Iに対して、
が成り立つので、
(証明終)
問2 次の関数列は各点収束するが、一様に収束しないことを示せ。
【解】
(1)
したがって、は、で極小かつ最小、で極大かつ最大。
よって、
ゆえに、
(2)
(解答終)
【別解】
(1) ε=1/2>0とすると、任意の自然数Nに対して、x=1/Nとすると
したがって、一様収束でない。
(2) ε=1>0とすると、任意の自然数Nに対して、x=Nとすると、
よって、一様収束でない。
(別解終)
問3 次の関数列が一様収束することを示せ。
【解】
よって、極限関数f(x)=0。
また、
よって、はf(x)=0に一様収束する。
(2)
よって、はx=1/nのとき極大かつ最大。
また、だから、
ゆえに、ハサミ打ちの定理より
また、
(解答終)
さて、I=[0,1)とし、はIで定義されているとすると、
となるので、はIで一様収束でない。しかし、問3の(1)より、0<a<1とするとき、任意の閉区間J=[0,a}で一様収束する。このように、Iでは一様収束でないが、Iに包まれる任意の閉区間J(J≠I)で一様収束する場合がある。
定義 (広義一様収束)
区間Iで定義された関数列がI内の任意の閉区間Jでf(x)に一様に収束するとき、はf(x)に広義に一様収束するという。
定義から、関数列がIで一様収束すれば、Iで一様収束する。しかし、この逆は成立しないので注意。
第52回 関数列とその収束 [微分積分]
第52回 関数列とその収束
任意の点x∈[0,1]から一つ選び、その値を固定すると
そこで、
とすると、
と表すことができる。
定義 (各点収束)
関数列と関数f(x)に対して、任意の点x∈Iを固定したときが収束し、
であるとき、関数f(x)を関数列の極限関数といい、関数列はIで各点収束するという。また、Iを関数列の収束域という。
イプシロン・デルタ論法で表わせば、
任意の正数ε>0任意のx∈Iとに対して、ある自然数N(x,ε)が存在して、n≧N(x,ε)を満たす任意の自然数nに関して、
が成り立つとき、関数f(x)を関数列の極限関数といい、関数列はIで関数f(x)に各点収束するという。
論理記号を用いるならば、
なお、ここで、N(x,ε)は、xとεの関数の意味ではなく、xとεに依存する程度の意味であることに注意。
例えば、
で定まる関数列の場合、
x=0、x=1の場合、任意のε>0に対して、任意の自然数nで、
一方、0<x<1の場合、
中辺と右辺の対数を取ると、
よって、
を満たす自然数Nを選び、それをN(x,ε)にする必要がある。
したがって、0<x<1のとき、
任意のε>0に対し、
とすれば、
問1 次の関数列は(各点)収束するか。収束するとき、極限関数を求めよ。
【解】
よって、
x=±1のとき、
x<−1、x>1のとき、1<x²だから
したがって、各点収束し。極限関数は
したがって、はx=1/nのとき、極大、かつ、最大で
また、
よって、
だからハサミ打ちの定理より
よって、関数列は各点収束し、極限関数は
である。
0<x≦1のとき、である自然数Nを選ぶと、
が成立するので、。
したがって、極限関数f(x)は
(解答終)
問の(1)、(2)の関数列に属する全ての関数は、定義域内で、連続、積分可能であり、微分可能である。
しかし、問の(1)の関数列の極限関数f(x)はx=0、x=±1で不連続で微分可能でなく、関数列の性質を引き継いでいない。
これに対し、(2)の関数列の極限関数f(x)は、定義域で、連続、積分可能であり、微分可能で、関数列の性質を受け継いでいることがわかる。
問2 とするとき、
は成立するか。
【解】
だから、
よって、
(解答終)
問3 とするとき、
は成立するか。
【解】
よって、
(解答終)
絶対収束と条件収束 [微分積分]
絶対収束と条件収束
が収束するとき、は絶対収束するという。は収束するが、絶対収束しないとき、は条件収束するという。
例1 正項級数が収束するとき、なのでが成立し、したがって、正項級数は絶対収束する。
定理4
例2 が収束し、
も収束するので、は絶対収束。
例3 は収束する(例4参照)が、
は収束しないので、は条件収束。
問1 次の級数の収束・発散を調べよ。
【解】
すべての自然数nについて、
は収束するのでは収束する。
したがって、は収束する。
(解答終)
問2 次のことを示せ。
(1) を満たす定数0<c<1とM>0が存在すれば、は収束する。
【解】
(1) 仮定より、任意の自然数nに対して
よって、任意の自然数nに対しては上に有界で、は収束する。
(2) が収束するとすると、。しかし、仮定より、任意の自然数nに対してだから、となり矛盾。よって、は発散する。
(解答終)
とするとき、
を交代級数という。
交代級数の収束については、次のライプニッツの定理がある。
定理11 (ライプニッツの定理)
【証明】
条件より
である。
とおくと、だから、
したがって、は上に有界。
また、
よって、は単調増加数列で上に有界。
ゆえに、は収束する。
とおくと、
よって、。
したがって、交代級数は収束する。
(解答終)
例4 数列は単調減少で、かつ、だから、交代級数は収束する。
正項級数 その2 [微分積分]
正項級数 その2
定理7
区間[1,∞)で定義された連続関数f(x)が、f(x)>0かつ単調減少とする。
【証明】
kを自然数とする。
k≦x≦k+1とすると、f(x)は減少関数なので、
したがって、
よって、
(証明終)
α>0に対して、
を一般調和級数という。
定理8 (一般調和級数の収束・発散)
【証明】
α>0とすると、関数は[1,∞)においてf(x)>0かつ減少関数である。よって、正項級数と広義積分は同時に収束・発散する。
ところで、広義積分が収束する必要十分条件はα>1であったから、正項級数も同じ条件で収束する。
(証明終)
問1 次の級数の収束・発散を判定せよ。
【解】
(1) とすると、f(x)>0かつf(x)は単調減少関数。
したがって、は発散する。
(2) とすると、f(x)>0かつf(x)は単調減少関数。
したがって、は収束する。
(解答終)
定理9 (ダランベールの判定法)
が存在するとき、
(1) ならばは収束する
(2) r>1ならばは発散する。
【証明】
(1) r<ρ<1であるρを取り、このρに対して適当な自然数Nを取ると、
したがって、
(2) 1<ρ<rであるρを1つとり、このρに対して適当な自然数Nを定めると、
したがって、
(証明終)
定理10 (コーシー・アダマールの判定法)
であるとき、次のことが成り立つ。
【解】
(1) r<ρ<1であるρを1とり、このρに対して適当な自然数Nを定めると、
とすることができる。
よって、
(2) 1<ρ<rであるρを1つとって、このρに対して適当な自然数Nを定めると、
よって、。
(証明終)
(注)
ダランベール、コーシー・アダマールの判定法ともに、r=1のとき、収束・発散の判定が行えないので、この点は注意すること。
問2 次の級数の収束・発散を判定せよ。
【解】
(1) とおけば、
よって、ダランベールの判定法により、収束する。
(2) とおくと、
したがって、ダランベールの判定法より、発散する。
(解答終)
正項級数 [微分積分]
正項級数
とおくと、数列は単調増加なので、は収束するか、+∞に発散するかのいずれかである。
したがって、次の定理が成り立つ。
定理5
正項級数が収束するための必要十分条件は、ある実数M>0が存在し、任意の自然数nに対して、
が成り立つことである。
【証明】
よって、が上に有界ならば収束し、上に有界でなければ発散する。
(証明終)
例
任意の自然数nについて
が成り立つので、定理5より正項級数は収束する。
問1 数学的帰納法を用いて、次の不等式を証明せよ。
定理6 (比較判定法)
正項級数において、任意の自然数nに対してであるとする。
このとき、
【証明】
とするとであるから、は単調増加数列で、が成り立つ。
よって、ならば、となり、は上に有界な単調増加数列となり収束する。
また、ならば、だから、と発散する。
(証明終)
問2 次の級数の収束を判定せよ。
【解】
(1) k≧2のとき、
したがって、
(2) 任意の自然数nに対して
(3) 任意の自然数nに対して
であり、と発散するので、は発散する。
(4) 任意の自然数nに対して
は発散するので、は発散する。
(解答終)
なお、上の解答では、と発散することを利用している。