今日のアニソン、『ちょこ ~~ ちょこれーと◎ほりっく!』 [今日のアニソン]
「ネムネコ式採点法 2次方程式の判別式を使うと減点される」の問題の解答例 [高校の微分積分]
「ネムネコ式採点法 2次方程式の判別式を使うと減点される」で、
方程式
が、正の解xを持つための(必要十分)条件を求めよ
という問題を出したのだけれど、この問題、解けたケロか?
ネムネコが宿題を出しても誰も解かないというのが、このブログの訪問者の流儀だから、答を教えてやるにゃ。
【微分を使わない解答】
x>0のとき、
また、
x>0のとき、
よって、
方程式①(②)が正の解xを持つためには、yは
でなければならない。
(解答終)
【微分を使う解答】
x>0のとき、
ここで、
とし、③をxで微分すると、
したがって、f(x)の増減表は次のようになる。
x |
0 |
・・・ |
・・・ |
∞ |
|
f'(x) |
|
− |
0 |
+ |
|
f(x) |
+∞ |
減少 |
極小 |
増加 |
+∞ |
よって、方程式②(①)が解x>0を持つためには、
でなければならない(必要条件)。
また、
y=f(x)=x+1/x³(x>0)は0<x<∞で連続、かつ、
だから、中間値の定理より、
である任意のyに対して、
を満たすx>0が存在する。(十分性の証明?)
方程式①と方程式②は同値だから、
が、求める必要十分条件である。
(解答終)
高校レベルならば、a>0のとき、
で連続性の証明になるのだろうけれど、ねこ騙し数学では、こんなのは証明として認めないケロ。
ということで、
お前ら、
が、x∈R−{0}で連続であることを、ε-δ論法を使って、直接、証明するにゃ。
大学1年の微分積分(解析)の前期の試験でこれを出題したら、きっと、悲鳴が上がると思うにゃ(^^)
討ち死者が続出する。
[線形代数ってなにさ?_8] [線形代数の基礎]
[線形代数ってなにさ?_8]
8.線形代数は密輸入品にあふれている
自分の意見では線形代数とは、ベクトルの独立・従属の性質に基づいて、線形写像をカッチョ良く扱う理論です。でも線形代数も代数学の一分野なので、それだけではいかんともし難く、代数系からの密輸入品にあふれています(^^;)。
代数系からの最大の「抜け荷」は、なんといっても行列式です。
線形代数の暗黙の作法としては、ベクトルと行列で出来ないものはやらないし、テンソルは使わないだと思うのですが、行列式ってじつはテンソルなんですよ!。
n個のベクトル空間の直積集合から、1次元のベクトル空間(スカラー)への多重線形写像のテンソル表現が行列式です。ところがさっきの作法から行列式がテンソルだとはもろには言えないもんだから、いきなり取って付けたように「訳もなく置換による行列式の定義」が出てきます。これは線形代数中で最大の「浮き物」です。
次にケーリー・ハミルトンの定理。
これは固有ベクトル基底の存在を示すために、なくてはならないものなのですが、テンソル空間の間の準同型定理に根拠があります。
従って線形代数の中でケーリー・ハミルトンの定理を証明するためには、テンソルである行列式が必要になります。でも線形代数の中で行列式は「訳もなく出てくるもの」ですから、線形代数の中でのケーリー・ハミルトンの定理の証明も、「こうしたら何故か証明できちゃった」という「出来ちゃった証明」になります。そういう風に考えるべきだという、見通しと根拠を示せないのです。
なので自分は、ケーリー・ハミルトンの定理は密輸入品だとはっきり認めて、天下りに承認するのが良いと思ってます。
小さな密輸入品です。多項式一般の性質です(^^)。
ここで多項式とは形式的に、
などと書けるもの全てです。αやAは、とにかく和と積が可能なら何でもOKです。ここでAの上の肩に付いてる添え字で最大のものを「次数」と言います。
この状況で言える代表的な定理は、上記をP(A)とした時、P(A)をQ(A)で割った商をR(A),余りをM(A)とすれば、M(A)の次数は、Q(A)の次数より低いです。多項式Pの次数をdeg(P)で表します。
という事ですが、deg(M)<deg(Q)でないと、MはPをQで割った余りではないですよね?(^^)。
もう一つ小さな密輸入品です。ユークリッドの互除法です。
ユークリッドの互除法は本来、2つの自然数の最大公約数を求めるアルゴリズムですが、この方法は「ベクトル空間の固有空間への直和分解定理」の標準的な証明において主役を果たします。「固有空間への分解定理」こそ、ここでの最終目標なのですが、ユークリッドの互除法を使うとその証明が、余りに線形代数らしくない気がします。なのでこの方法は使わず、ここでは別証明を与えます。
9.最小消去多項式
Vをベクトル空間,AをV上の線形変換とします。Aを行列と解釈すると、行列の和とスカラー倍には線形変換の和とスカラー倍が対応し、行列の積には線形変換の合成写像が対応しました。行列は、いくらスカラー倍しようと足そうが掛けようが行列は行列ですから、(1)のような線形変換の多項式もV上の線形変換になるのは明らかです。
P(A)をV上の線形変換の多項式とします。x∈Vかつx≠0としてP(A)x=0になる時、P(A)をベクトルxの消去多項式と呼びます。ベクトルxの消去多項式は一意には定まりません。何故なら例えばAP(A)も、AP(A)x=A(P(A)x)=A0=0で、xの消去多項式になるからです。そこでxの消去多項式の中で最低次数のものを、ベクトルxの最小消去多項式と呼びます。
エッ、何故そんなもの考える必要があるかって?。それは「異なる固有値に属する固有ベクトルは独立」を、すぐに証明できるようになるからです(^^)。
[定義-16]
Vをベクトル空間,x∈Vとして、xを消去するV上の線形変換Aの多項式で最低次数のものを、ベクトルxの最小消去多項式と呼び、φx(A)で表す。
[定理-8]
x∈Vの任意の消去多項式P(A)を、最小消去多項式φx(A)は割り切る。
[証明]
P(A)をφx(A)で割れば、次の形になる。
ここでR(A)とM(A)は線形変換Aの適当な多項式で、R(A)が商,M(A)は余りである。
deg(M(A))<deg(φx(A))。
上記の両辺にxをかければ、
であるが、P(A)はxの消去多項式でφx(A)はxの最小消去多項式なので、
が必要。ここでM(A)≠0なら、deg(M(A))<deg(φx(A))より、最小消去多項式φx(A)より次数の小さい消去多項式がある事になり、φx(A)が最小消去多項式である事に反する。従ってM(A)=0でなければならない。よってx∈Vの任意の消去多項式P(A)を、最小消去多項式φx(A)は割り切る。
[証明終]
[定理-9]
線形変換の多項式P(A)とQ(A)が多項式として互いに素なら、ker(P(A))とker(Q(A))は独立。
[証明]
多項式として互いに素とは、共通因数を持たない事。
ker(P(A))∩ker(Q(A))に0以外のx∈Vがあったとする。P(A)は、ベクトルxの消去多項式であるから、[定理-8]よりベクトルxの最小消去多項式φx(A)を因数として持つ。同様にQ(A)もベクトルxの最小消去多項式φx(A)を因数として持つ。従って多項式P(A)とQ(A)が多項式として互いに素でなくなるので、これは不可。よってker(P(A))∩ker(Q(A))={0}が必要。ker(P(A))とker(Q(A))は独立。
[証明終]
10.根空間
[線形代数ってなにさ?_7]で紹介した特性多項式が重根を持った場合に対処して、根空間を定義します。どういう対処になるのかは、この後です。なので2ペ-ジだけ、訳わからん定理と定義を許して下さい(^^;)。
[定義-17]
Vをベクトル空間,AをV上の線形変換として、
を、固有値λに属する根空間と言い、そこに含まれるベクトルを根ベクトルと呼ぶ。根空間は部分空間である(すぐ証明可能(^^))。h=deg((A-λE)h)は、根空間の高さと言う。
[定義-18]
高さ1の根空間、
を、固有値λに属する固有空間と言い、そこに含まれるベクトルを固有ベクトルと呼ぶ。固有空間は根空間なので部分空間。
ところで勝手なλを持ってきても根空間は{0}空間です。例えばA-λEが正則な場合です。そのようなものを自明な根空間という事にします。
[定理-10]
自明でない根空間の固有値がλなら、固有値λに属する固有ベクトルが、少なくとも一つ含まれる。
[証明]
例えば固有値λに属する高さ2の根空間ker((A-λE)2)を考えると、(A-λE)x=0を満たす固有ベクトルxは、(A-λE) 2x=(A-λE)(A-λE)x=(A-λE)0=0より、ker((A-λE)2)に含まれるので、けっきょくker((A-λE)h)にも含まれる。
(A-λE)x=0を満たすベクトルは0しかないとするとA-λEは正則なので(A-λE)2=(A-λE)(A-λE)でも0に移るベクトルは0しかなくなり、けっきょく(A-λE)hも正則でker((A-λE)h)={0}。
よってker((A-λE)h)が自明でないなら、(A-λE)x=0を満たすx≠0がなければならない。これは、固有値λに属する固有ベクトル。
[証明終]
[系-2]
自明でない根空間の固有値は、それに含まれる固有空間の固有値。
[定理-11]
異なる固有値に属する根空間は独立。
[証明]
λ1≠λ2としてP(A)=(A-λ1)h1とQ(A)=(A-λ2)h2を考えると、多項式P(A)とQ(A)は多項式として互いに素。従って[定理-9]より、λ1とλ2に属する根空間は独立。
[証明終]
[系-3]
異なる固有値に属する固有空間は独立。
[証明]
[定理-10]から固有空間は、同じ固有値に属する根空間に含まれるから。
[証明終]
[定理-12]
根空間の次元は、その高さh以下である。
[証明]
高さhの根空間は線形変換、
の核ker((A-λ)h)として定義されるので、xをそこに属する根ベクトルとすると、
が成り立つ。すなわちベクトル集合{Ahx,Ah-1x,・・・,x}は従属。何故なら少なくとも、Ahx係数は1だから。
{Ahx,Ah-1x,・・・,x}には(h+1)本のベクトルがあり、それらは従属なので、ベクトル空間に対する次元の一意性から、ker((A-λ)h) の次元はh以下でなければならない。
[証明終]
[定義-19]
根空間に含まれる固有空間の次元を、固有空間の高さと言う。
根空間の高さは、それを定義する線形変換の多項式の次数でしたが(後で根空間の次元に等しい事がわかります(^^))、固有空間の高さは正真正銘の次元です。
[系-4]
固有空間の高さは、それが含まれる根空間の高さh以下。
後は状況説明です。まず「固有空間の次元は1に決まってるじゃん!」って誤解があると思うんですよね?。そうじゃないんです。そういう例は意外に身近なところからも出てきます。単位行列Eを考えると、任意のx∈VでEx=xなので、単位行列では全空間Vが固有値1に属する固有空間です。Vの次元をnとすれば、その固有空間の高さはnという事です。
そこまで極端でない例としては、対称行列です。対称行列は固有ベクトル基底を持ちます。対称行列を固有ベクトル基底へ基底変換すると、一般に下図のような対角行列に変換されます。
図-1のように固有値λ=λjがh個出てくるとすると、[線形代数ってなにさ?_7]で述べた事を考慮すれば、同じ固有値λjに属する独立な固有ベクトルがh本ある事になります。また今回の[定理-10]より、固有空間はそれと同じ固有値に属する根空間に含まれるので、固有値λjに属する固有空間の高さはhであり、固有値λjに属する根空間の高さもhで、じつは固有値λjに属する根空間全体が、次元hの固有値λjに属する固有空間であったという事になります。このように固有空間の次元は決して1とは限りません(^^;)。
さぁ~、全てはスタンバイOKです!。ここまで来れば、線形代数前半の最終目標であった、ベクトル空間の根空間への直和分解定理を証明できます(^^)。
(執筆:ddt³さん)