微分方程式よもやま話16 2階の非同次線形微分方程式 [微分方程式の解法]
微分方程式よもやま話16 2階の非同次線形微分方程式
次の2階の非同次線形微分方程式がある。
(1)の特殊解をy₀とすると、
となるので、(1)と(2)の差をとると、
となる。
ここで、とおくと、
になることから、y−y₀は、同次方程式(2)の解である。
したがって、(2)の一般解をuとすると、
よって、
(1)の一般解は
(1)の一般解=(2)の一般解+(1)の特殊解
問1 次の微分方程式の一般解を求めよ。
【解】
(1)、(2)、(3)の微分方程式の右辺=0とおいた同次微分方程式はいずれも
である。
そして、この同次方程式の一般解は
だから、(1)、(2)、(3)の右辺を満たすような特殊解を求め、①に加えたものが非同次方程式の一般解になる。
(1) y₀=ax+b(a、bは定数)が特殊解だとすると、
したがって、
よって、
は特殊解。
したがって、一般解は
(2) が②の特殊解であるとすると、
したがって、②の一般解は
(3)が特殊解であるとすると、
でなければならない。
したがって、
これを解くと、A=3/10、B=1/10。
よって、
ただし、(1)、(2)、(3)のC₁、C₂はいずれも任意定数。
(解答終)
宿題 次の微分方程式の一般解を求めよ。
答は、言わずもがな!!
上のように、経験と勘を頼りに非同次方程式の特殊解を求めることが嫌な人は、ロンスキー行列式(ロンスキアン)を用いた次の方法がお勧め。
ロンスキー行列式を用いて、非同次方程式の特殊解を見つける方法
非同次方程式
の特殊解y₀は、
同次方程式
の基本解をy₁、y₂とすると、
である。
ここで、
この方法が、最も安全、かつ、確実な方法であるが、ロンスキアンWを求めたあと、積分――ほぼ100%、部分積分による計算が必要!!――をしなければならないので、計算が大変!!
どうしても特殊解が見つからない時の最終手段といったところ。
問2 次の微分方程式の一般解を求めよ。
【解】
同次方程式
の基本解はである。
このロンスキー行列式Wは
(1)
よって、
(2)
よって、
(3)
よって、
(解答終)
ではあるが、どちらが楽かは言うまでもないだろう!!
今日のアニソン、「まよチキ!」から『Be Starters!』 [今日のアニソン]
微分方程式よもやま話15 特性方程式の解が虚数解の場合 [微分方程式の解法]
微分方程式よもやま話15 特性方程式の解が虚数解の場合
定数係数の同次2階線形微分方程式
があるとする。
(1)の特性方程式
の解をα、βとするとき、
(1)の一般解は
で与えられる。ここで、C₁、C₂は任意定数である。
(3)を導出するにあたって、α、βが実数であることを暗黙に仮定していたが、(3)の導出にあたってこの仮定は使っていない。
したがって、α、βが複素数のときにも、
は成立するはずである。
すなわち、
とするとき
であることが要請される。
そこで、オイラーの関係
を用いると、
ここで、
とおけば、
つまり、特性方程式(2)の解がp±iqであるとき、微分方程式(1)の解は
になる。
そして、微分方程式
の一般解であることを、(6)を微分し、(7)式の左辺に代入すれば、この値が0になることから直接確かめることもできる。
問題 (6)が微分方程式(7)の解であることを確かめろ。
なのですが〜、実は、このままでは塩梅が悪い。
というのは、(3)の任意定数C₁、C₂は実数であるけれど、(5)の任意定数C₁、C₂は一般に実数ではなく複素数だからだ。
もし、C₁、C₂が実数だとすると、⑨のBはC₁=C₂以外のとき虚数になってしまう。そして、yは実数だから、C₁=C₂でなければない。
だ・か・ら、
微分方程式(7)の一般解は、
になってしまう。
しかし、とすると、
そして、これを(7)式の左辺に代入すると、
となり、、さらに、これを定数倍したも解である。
ということで、C₁、C₂が実数だとマズいんだケロ。
だから、⑨ではなく、
AとBの実数部分
をとればよい、
といったような説明されるのだが、これでは如何にもご都合主義だろう。
そこで、
は(7)の基本解(基本系)であると同時に、
も基本解(基本系)。
よって、
(7)の一般解は、
である
ということにしておこう。
これならば、疚しさがだいぶ軽減される!!
問題2 次のロンスキー行列式(ロンスキアン)の値を求めよ。
ただし、p,qは実数で、q≠0とする。
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微分方程式よもやま話14 ロンスキアンのことなど [微分方程式の解法]
微分方程式よもやま話14 ロンスキアンのことなど
n−1回微分可能な関数
に対して、次の行列式をロンスキー行列式、または、ロンスキアンという。
u₁(x)、u₂(x)の場合、ロンスキアンは
になる。
さて、
u₁(x)、u₂(x)を2階の同次線形微分方程式
の解とする。
x₀を含む区間とすると、
が成り立つ。
ここで、
である。
【略証】
よって、
x=x₀とすると、
ゆえに、
(略証終)
このことから、W(x₀)≠0とW(x)≠0は同値である。
さらに、1次従属と1次独立の定義。
n個の関数について、全てが0でないn個の定数によって
となるとき、1次従属といい、そうでないとき、1次独立という。
定理 n−1回微分可能な関数に対して、
ならば、n個の関数は1次独立である。
n≠3のときも同様に証明できるので、n=3の場合について証明することにする。
【証明(n=3の場合)】
対偶をとる。
u₁、u₂、u₃は1次従属とすると、全てが0ではないc₁、c₂、c₃によって
とできる。
①を微分すると、
さらに、②の両辺を微分すると、
①、②、③より、
もし、
であると、
になるので、c₁=c₂=c₃=0でないためには、
でなければならない。
つまり、
u₁、u₂、u₃が1次従属ならば、W=0である。
よって、
W≠0ならば、u₁、u₂、u₃が1次独立である。
(証明終)
【注意)】
とすると、
になるが、u₁(x)=x³とu₂(x)=|x³|は1次独立。
つまり、
「ロンスキアンW[u₁,u₂]=0ならば、u₁、u₂は1次従属である」は必ずしも成り立たないし、「u₁、u₂は1次独立ならばW[u₁,u₂]≠0」も一般に成立しない。
今日のアニソン、「ミュンヘンへの道」から『ミュンヘンへの道』 [今日のアニソン]
この曲以外に、『燃える青春』という曲がこのアニメの挿入歌として使われていたらしいですが、YouTubeで、この曲は見つけることはできませんでした。
今日のアニソン、「勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職しました」から『エキストラレボリューション』 [今日のアニソン]
微分方程式よもやま話13 危ない話 [微分方程式の解法]
微分方程式よもやま話13 危ない話
次の微分方程式があるとする。
の形の解を求めると、
であるから、これを(1)に代入すると、
となるので、は(1)の解になる。
このロンスキー行列式の値を求めると、
したがって、は1次独立で、(1)の基本解になる。
よって、微分方程式(1)の一般解は
になる。
同様に、
α、βが相異なる実数のとき、
がこの微分方程式の基本解であり、その1次結合
が(2)の一般化であることを示すことができる。
ところで、も微分方程式の解であり、この1次結合
が0になる、つまり、
になるのは、のときだけなので、も(1)の基本解である。
また、
も(1)の解であり、の組み合わせも基本解になる。
つまり、基本解(の組み合わせ)は一通りではなく、無数に存在する。
同様に、
の組み合わせも、微分方程式(2)の基本解になる。
そこで、基本解の1つ
の、β→αの極限をとると、
となる。
だ・か・ら、
は、微分方程式(2)のβをαに限りなく近づけた、つまり、βをαにした微分方程式
の基本解になるんじゃ〜ないか。
そして、は、(3)の基本解(のセット)になり、(3)の一般解は
になるのではないかという危ない話で、もっともらしい、あと付けの理由をつけることもできたりするのであった。
お前らに問題(6月17日) 漸化式 [お前らに質問]
お前らに問題(6月17日) 漸化式
お前らに問題!!
問題 次の漸化式で表される数列の一般項を求めよ。
ヒント:
となるので、
とおくと、①は
になる。
あとは、自分の頭で考えろ!!
今日のクラシック、ファリャ作曲『アトランティーダ』 [今日のクラシック]
作曲技法的には、中期〜後期ロマン派的な作曲技法が用いられているようですが、ファリャならではの、スペイン舞曲のような布のよい鋭いリズムが現れたり、ドイツのロマン派音楽にはない新しい響きも随所に現れていて、聞く者を飽きさせない。これくらいの大曲になると、通常、どこかに弛緩したところがあって、「なんか、たるいな〜」と思ったりするものですが、そういった箇所はないようです。これだけでも、ファリャという作曲家の才能が並々ならぬ非凡なものであったことの証明になるのではないでしょうか。
世俗的なカンタータなども存在しますが、カンタータといえば、キリスト教と深い関係がある宗教的な音楽だから、この『アトランティーダ』もそこはかとなく宗教音楽的なものを感じさせるようです。
ファリャは、単純に印象派の作曲家という分類にはならないですね。最初から印象主義的技法と民族音楽の融合で、独自の様式を作っていますので、もしこれを印象主義に分類するなら、ストラヴィンスキーも、『火の鳥』だけではなく、『ペトルーシュカ』も、そして『春の祭典』でさえも印象主義の語法の延長といえます。しかし、これらの作品には、「原始主義」という別の名称があります。もちろんこれは、技法からくる命名ではなく、題材が古代で、原始的なリズムを強調しているからというだけですが。
ファリャの作品は、技法的にはもちろん印象主義の作曲家の影響はかなりはっきりあります。たとえば、『三角帽子』組曲の、開始から17分20秒当たり以降、ドビュッシーの『イベリア』や、ラヴェルの『スペイン狂詩曲』『ラ・ヴァルス』などとよく似た書法があります。そして、『ラ・ヴァルス』はウィーンへのオマージュなので別ですが、『イベリア』と『スペイン狂詩曲』は、題名が示すように、スペインが題材です。つまり、フランスの印象主義の作曲家が、そもそもスペインの民族音楽の要素を取り入れることが多かったということがあります。それにラヴェルは、父親がスイス人、母親がバスク人ということで、もともとスペイン系です。シャブリエにも、狂詩曲『スペイン』がありますし。また、ファリャの『スペインの庭の夜』なども、技法的にはかなり印象主義的な作品といえます。
『クラブサン協奏曲』も昔から知っているのですが、新古典主義的な作品はこれしかないと思っていました。そもそも作品数があまり多くなく、オペラとバレエが2曲ずつあるほかは、作品表に載っている作品があまりにも少ないのです。ウィキペディアのカタロニア語版に詳しい作品表が出ていますが、やはり、初期の小品や歌曲を除くと、作品は非常に少ないです。未完成に終わって、エルネスト・アルフテルによって完成された舞台用カンタータ『アトランティーダ』というのが新古典的な作品なので、『クラブサン協奏曲』以降、新古典主義に移行したのは間違いないでしょう。
(ネムネコ、秘密の情報源)
『アトランティーダ』という名曲、ともども、この文章は世に埋もれさすのはあまりにもったいなさすぎる!!