第20回 関数の凸凹 [微分積分]
第20回 関数の凸凹
区間Iで定義された関数f(x)が、I内の任意の点x₁、x₂(x₁<x₂)に対して、x₁<x<x₂ ならば
であるとき、f(x)を凸関数という。また、このとき、f(x)は下に凸という。
であるとき、f(x)を狭義の凸関数という。
また、 –f(x)が凸関数であるとき、f(x)を凹関数という。
x₁<x<x₂ とすると、(1)式は
と変形され、さらに、
とおくと
となる。
したがって、f(x)が凸関数のとき、曲線y=f(x)上の任意の2点(x₁,f(x₁)と(x₂,f(x₂))を結ぶ線分は、曲線y=f(x)の下側にはくることがない。
また、f(x)が凸関数のとき、
が成立し、
直線AC勾配≦直線ABの勾配≦直線CBの勾配
である。
aを区間Iの内部の点とする。関数f(x)が点aの左近傍で狭義凸(狭義凹)、点aの右近傍で狭義凹(狭義凸)、つまり、点aの前後で凹凸が入れ替わるとき、曲線y=f(x)上の点(a,f(a))を曲線の変曲点という。
例1 f(x)=x²は(狭義)凸関数である。
a<c<bとすると、
例2 点(0,0)は曲線y=x³の変曲点である。
定理1 (凸関数と2次導関数)
関数f(x)が区間Iで連続、区間Iの内部で2回微分可能とする。f(x)がIで凸関数である必要十分な条件は、Iの内部でf''(x)≧0であることである。
[証明]
区間Iの内部の任意の点をa、b(a<b)、a<x<bとする。
f(x)はIの凸関数だから
f(x)は微分可能だから
f'(x)はIの内部で(広義)単調増加であり、よって、f''(x)≧0である。
逆に、
Iの内部でf''(x)≧0とすると、f'(x)はIで(広義)単調増加。区間Iの任意の2点a,bをとり、a<x<bとすると、平均値の定理より
であるξとηが存在する。
ξ<ηだから、
よって、f(x)はIで凸関数である。
(証明終)
定理2 関数f(x)が区間Iで連続、区間Iの内部で2回微分可能とする。Iの内部でf''(x)>0ならば、狭義凸関数である。
[証明]
Iの内部でf''(x)>0とすると、f'(x)はIで(狭義)単調増加。
区間Iの任意の2点a,bをとり、a<x<bとすると、平均値の定理より
であるξとηが存在する。
ξ<ηだから、
よって、f(x)はIで狭義凸関数である。
(証明終)
次の定理は、上の定理と変曲点の定義より明らかだろう。
定理3 関数f(x)が区間Iで連続、Iの内部で2回微分可能とする。aがIの内部の点で点(a,f(a))が変曲点であるならば、f''(a)=0である。
注意 y=f(x)=x⁴のとき、f'(x)'=4x³、f''(x)=12x²だからf''(0)=0になるが、y=x⁴は凸関数。したがって、「f''(a)=0ならば(a,f(a))」は一般に成立しない。
問題1 関数f(x)は、開区間Iで2回微分可能、かつ、f''(x)>0とする。曲線y=f(x)は、Iで常に接線の上側にあることを証明せよ。
[解]
aを開区間Iの任意の点とすると、(a,f(a))における接線の方程式は
である。
平均値の定理より、
であるcがaとxの間に存在する。
よって、
Iでf''>0だからf'は単調増加。
したがって、x<aのとき、
x>aのとき
x=aのときF(a)=0。
よって、曲線y=f(x)は接線の上側にある。
(解答終)
問題2 関数fを区間Iで定義された二回微分可能な凸関数とする。f'(x)>0(x∈I)ならば逆関数f⁻¹は上に凸(凹)であり、f'(x)<0ならば下に凸であることを証明せよ。
[解]
x=f⁻¹(y)とすると、y=f(x)。
(解答終)
関数fが区間Iで下に凸のとき、f''(x)=y''≧0だから、関数fは、f'(x)=y'>0ならばとなり上に凸(凹)、f'(x)=y'<0ならばとなり下に凸である。
(解答終)
問題3 f(x)=ax²+bx+c(a>0)について、次の不等式が成り立つことを証明せよ。
[解]
f'(x)=2ax+b、f''(x)=2a>0 (∵a>0) だから、f(x)は狭義凸関数。
A(x₁,f(x₁))、B(x₂,f(x₂))、C(x₃,f(x₃))とすると、f(x)は狭義凸関数なので、線分AB、BC、ACは曲線y=f(x)のグラフの上側にある。
とすると、これは△ABCの重心で、△ABCの内部にある(図を参照)。
したがって、
(解答終)
[別解]
f(x)は狭義凸関数。
よって、
したがって
(解答終了)
f(x)がIで狭義凸関数であり、a、b(a≠b)がIの任意の点のとき、
が成立する。
とおくと、
となる。
は、m=n=1、a=x₁、b=x₂とし(1)に代入すれば出てくる。
とおき(1)に代入すれば、
が出てくる。
f(x)がIで狭義凸関数ならば、
が成立する。
証明は、上の方法にならって数学的帰納法を用いればよい。
一般に、
f(x)がIで凸関数ならば
f(x)がIで凹関数ならば
問題4 のとき、次の関係が成り立つことを示せ。
【ヒント】
(1) f(x)=√xとおくとf''(x)<0だから、f(x)=√xは凹関数
(2) 両辺の対数を取れ。
よって、証明すべきことは
log xは凹関数だから・・・。