第11回 導関数の性質 [微分積分]
第11回 導関数の性質
定理1(導関数の和、積、商)
関数f(x)、g(x)を区間Iで微分可能な関数とする。
(1) α、βを実定数とすると、αf(x)+βg(x)はIで微分可能で、
(2) f(x)g(x)もIで微分可能で
(3) g(x)≠0ならば、はIで微分可能で、
特に
【証明】
(1)
(2)
(3)
したがって、
(証明終)
問1 数学的帰納法を用いて、
が成り立つことを示せ。
【解】
n=1のとき、
なので成立。
n=kのとき
と仮定。
n=k+1のとき、
よって、数学的帰納法より成立する。
(解答終)
問2 次の関数を微分せよ。
【解】
(解答終)
問3 と商の微分公式を利用して、次のことを示せ。
【解】
(解答終)
定理2 (合成関数の微分)
関数y=f(x)は区間Iで微分可能、z=g(y)は区間J(f(I)⊂J)とする。このとき、合成関数はJ上で微分可能であり、
すなわち
[証明]
示すべきことは、F(x)=g(f(x))とおき、すべての点a∈Iで
b=f(a)(a∈I)とおき、y∈J上の関数φ(y)を
と定めると、g(y)はJ上で微分可能だからJ上で連続である。同様にf(x)もI上で連続だから、φ(f(x))もI上で連続で、
である。
φ(y)の定義より、点bの近傍で
だから、y=f(x)とおくと、
よって、
したがって、
(証明終)
x≠aのとき、f(x)=f(a)、つまり、f(x)–f(a)=0になる場合があるので、 一般に
と変形することはできない。
したがって、x≠aのとき
といった証明は許されない。
問4 a,bを実数の定数、関数f(x)は実数全体の集合Rで微分可能とするとき、次のことが成り立つことを示せ。
【解】
y=ax+b、z=f(ax+b)=f(y)とおくと、合成関数の微分公式より
(解答終)
問5 次の関数を微分せよ。
【解】
(1) u=2x+5、y=(2x+5)²=u²とおくと、合成関数の微分公式より
(2) u=π/2−x、y=sin uとおくと、
(3)
x>0のとき、
x<0のとき、u=−x、y=log uとおくと、
よって、x≠0のとき、
(4) とおくと、
(解答終)
ちなみに、
なので、問5の(2)は
定理3 (逆関数の導関数)
関数y=f(x)は区間Iで狭義単調であるとする。f(x)がIで微分可能でつねにf'(x)≠0ならばf(I)で微分可能で
つまり、
である。
[証明]
f(x)はI上で狭義単調だから、x≠a(x,a∈I)⇔f(x)≠f(a)(f(x)、f(a)∈f(I))。
y=f(x)、b=f(a)とおくと、x≠a⇔f(x)≠f(b)だから
また、y→bのときx→aだから、
よって、f⁻¹(y)はy=bで微分可能である。
(証明終)
問6 指数関数の逆関数x=log yを考えることによって、指数関数の微分公式から対数関数の微分公式
を導け。
【略解】
逆関数の微分公式より
よって、
(略解終)
定理4 (媒介変数・パラメータで表された関数の導関数)
x=f(t)、y=g(t)は区間Iで微分可能でf'(t)≠0とする。x=f(t)に逆関数が存在すれば、
である。
[証明]
仮定より、x=f(t)には、逆関数t=f⁻¹(x)が存在して微分可能。したがって、となり、
合成関数と逆関数の微分より
(証明終)