第18回 関数の増減と極大・極小 [微分積分]
第18回 関数の増減と極大・極小
関数の極値について述べる前に、(平均値の定理の)復習をかねて次の定理を再掲。
定理1 (関数の増減)
関数f(x)は閉区間[a,b]で連続、開区間で微分可能であるとする。開区間(a,b)において
(1) 常にf'(x)>0ならば、f(x)は[a,b]で狭義単調増加
(2) 常にf'(x)<0ならば、f(x)は[a,b]で狭義単調減少
である。
[証明]
a≦x₁<x₂≦bとすると、仮定より、f(x)は閉区間[x₁,x₂]で連続、開区間(x₁,x₂)で微分可能である。したがって、平均値の定理より
となるcが少なくとも1つ存在する。
f'(c)>0のとき、
同様に、f'(c)<0のとき、f(x₂)<f(x₁)。
(証明終)
関数f(x)は点aの近傍で定義されているとする。
ある正の数δが存在し、
であるとき、f(x)は点aで極大であるといい、f(a)を極大値という。
また、ある正の数δが存在し、
であるとき、f(x)は点aで極小であるといい、f(a)を極小値という。
極大値、極小値をまとめて極値という。
例1
は、x=0で極小で、極小値はf(0)=0。
また、x=±1でf(x)は最大、最大値はf(±1)=1であるが、f(x)はx=±1で極大でないので注意。
何故だろうか。
定理2 (極値の必要条件)
関数f(x)は点aで極値をとり、かつ、点aで微分可能ならば、f’(a)=0である。
【証明】
f(x)は点aで極大であるとする。
点aで極大なので、適当なδ>0をとると、
である。
x<aのとき
f(x)は点aで微分可能だから、点aにおける左側微分係数が存在し
x>aのとき、
f(x)は点aで微分可能だから、点aにおける右側微分係数が存在し、
点aで微分可能だからでなければならない。
よって、
極小の場合も同様。
(解答終)
(注意)
f(x)=x³は、f'(x)=3x²なので、点x=0でf'(0)=0になるが、f(x)=x³は点x=0で極大でも、極小でもない。したがって、定理2の逆は成立しない。
定理1と定理2から、次の定理は明らかだろう。
定理3
関数f(x)は(a−h、a+h)で微分可能、かつ、f'(a)=0であるとする。
(ⅰ) a−h<x<aでf'(x)>0、a<x<a+hでf'(x)<0ならば、f(x)は点aで極大
(ⅱ) a−h<x<aでf'(x)<0、a<x<a+hでf'(x)>0ならば、f(x)は点aで極小
【注】
f(x)=|x|は、点x=0で微分可能でないが、x<0でf'(x)<0、x>0でf'(x)>0と、点x=0の前後でf'(x)の符号が変わっており、f(x)はx=0で極小である。
だ・か・ら、
関数f(x)が|x−a|<hで連続、0<|x−a|<hで微分可能ならば、
(ⅰ) a−h<x<aでf'(x)>0、a<x<a+hでf'(x)<0ならば、f(x)は点aで極大
(ⅱ) a−h<x<aでf'(x)<0、a<x<a+hでf'(x)>0ならば、f(x)は点aで極小
が成り立つ。
なぜならば、
a−h<x₁<aの点x₁をとると、[x₁,a]でf(x)は連続、(x₁,a)でf'(x)>0なので、f(x)は[x₁,a]で狭義の単調増加だから、x₁≦x<aの任意のxに対して、f(x)<f(a)。
また、a<x₂<a+hの点x₂をとると、f(x)は[a,x₂]で連続、かつ、(a,x₂)でf'(x)<0なので、[a,x₂]で狭義の単勝減少となり、a≦x<x₂の任意の点xに対して、f(x)<f(a)。
ゆえに、f(x)は点aで極大。
極小の場合も同様にして証明できる。
問1 f(x)が点aで極小である場合の証明をし、定理2の証明を完成させよ。
定理4 (2次導関数を用いた極値の判定)
関数f(x)が2回微分可能でf’(a)=0のとき、
(ⅰ) f’’(a)>0ならば点aで極小
(ⅱ) f’’(a)<0ならば点aで極大
である。
【証明】
f’’(a)>0だからf'(x)は点aで増加の状態にあり、f’(a)=0だから、点aの前後でf’(x)の符号が負から正に変わる。よって、f(x)は点aで極小である。
f’’(a)<0だからf'(x)は点aで減少の状態にあり、f’(a)=0だから、点aの前後でf’(x)の符号が正から負に変わる。よって、f(x)は点aで極大である。
(証明終)
2次導関数の符号を用いて関数f(x)の極値の判定を行うことができるが、 一般に1次導関数より2次導関数の方が複雑になることが多いので、問2のように極値の判定は増減表を用いた方がよい。
問2 次の関数の増減を調べ、極値を求めよ。
【解】
f(x)は微分可能なので、極値をとる点ではf'(x)=0でなければならないので、f'(x)=0となる点を求めると、
増減表を書くと、
したがって、
x=−1のとき極大で極大値はf(−1)=1、 x=1のとき極小で極小値はf(1)=−3。
(2) 増減を調べるために、f(x)を微分すると、
f(x)は微分可能で、極値をとる点ではf'(x)=0でなければならないので、f'(x)=0となる点を求めると、x=−1,1。
増減表を書くと、
したがって、f(x)は
x=−1のとき極大で、極大値はf(−1)=3
x=1のとき極小で、極小値はf(1)=1/3
(3)
よって、f'(x)=0となるxの値は
よって、
(解答終)
問題2の(2)、(3)の関数の場合、極大値が最大値、極小値が最小値になっている。
た、(1)のy=x³−3x−1は三次関数なので、曲線y=x³−3x−1は変曲点(0,1)に関して対称であり、したがって、極大になる点(−1,1)と極小になる点(1,−3)も変曲点(0,1)に関して対称になる。
問3 次の関数の増減を調べ、極値を求めよ。
【解】
f(x)をxで微分すると、
よって、f'(x)=0になる点はx=0、n。
nが奇数のとき
nが偶数のとき
よって、
x=0のとき極小で、0が極小値。
(解答終)
問4 関数はx=3で極値−1をとるという。aとbの値を求めよ。
x=3で極値−1をとるので、y'=0、y=−1とおくと、
このa,bに対しては
よって、増減表は
確かに条件を満たしているので、これが求める値である。
(解答終)
(1) aの値を求めよ。
(2) x>0におけるf(x)のすべての極大値の和を求めよ。
【解】
f(x)はx=π/4で極大値を取るので、
(2) f(x)はx=π/4+2nπ (n=0,1,2,・・・)で極大で、
したがって、すべての極大値の和Sは
(解答終)
問6 次の問に答えなさい。
【解】
(1)
とし、これを微分すると、
ここで、g(x)=xcosx−sinxとおくと、
したがって、g(x)は0<x≦π/2で単調減少、
よって、0<x≦π/2でf'(x)<0となり、f(x)は単調減少で、ゆえに、0<α<β≦π/2のとき、
とし、これを微分すると、
よって、f'(x)=0となるのはx=eのとき。
増減表を書くと、
したがって、x>eにおいてf(x)は単調減少で、e<α<βのとき、
また、0<x<eにおいてf(x)は単調増加で、
だから、
よって、e<α<βのとき、
(解答終)
だから、f(0)=1とすると、f(x)は[0,π/2]で狭義単調減少なので、
となり、これから
よって、次の不等式を得る。