第16回 平均値の定理 [微分積分]
第16回 平均値の定理
定理1
関数f(x)は開区間Iで微分可能とする。点c∈Iにおいて最大値、または、最小値をとるならば、f'(c)=0である。
[証明]
f(x)が点cで最大値をとるものし、区間Iの任意の点をxとする。
f(x)は点cで最大だから、
x<cのとき
x>cのとき
f(x)は点cで微分可能だから
が存在し、でなければならない。
よって、f'(c)=0である。
f(x)が区間内で最小値をとるときも同様に証明できる。
(証明終)
定理1は、開区間ではなく閉区間の場合、必ずしも成立しない。
たとえば、
の場合、閉区間[−1,1]の端点x=±1で最大値1をとるがf'(x)=2xだからf'(−1)=−2≠0、f'(1)=2≠0で上の定理は成立しない。
また、
は、(-1,1)で微分可能で、導関数f'(x)=3x²だからf'(0)=0となるが、f(0)はf(x)は最小値でも最大値でもない。
したがって、定理1の逆、
f'(c)=0ならばf(x)はx=cで最大または最小である
は一般に整理しない。
定理2 (ロールの定理)
f(x)は[a,b]で連続、開区間(a,b)で微分可能とする。このとき、f(a)=f(b)ならば
となるcが少なくとも1つ存在する。
[証明]
f(x)は閉区間[a,b]で連続だから、連続関数の最大値・最小値の定理より、f(x)は[a,b]で最大値、最小値をとる。
f(x)が定数の場合、常にf'(x)=0だから、定理は成立。
f(x)が定数でない場合、最大値と最小値の一方はf(a)=f(b)と異なる。これをf(c)とすると、c≠a、c≠bだから、a<c<b。
条件よりf(x)は開区間(a,b)で微分可能で、かつ、(a,b)で最大値または最小値を持つので、上の定理より
となるcが少なくとも1つ存在する。
(証明終)
定理3 (平均値の定理)
関数f(x)が閉区間[a,b]で連続、開区間(a,b)で微分可能であるならば
となるcが少なくとも1つ存在する。
とし、
とする。
g(x)は[a,b]っで連続、(a,b)で微分可能であり、g(a)=g(b)=0である。よって、ロールの定理より
となる点cが存在する。
したがって、
となる点cが存在する。
(証明終)
とおくと、0<θ<1となり、平均値の定理を次のように書き換えることができる。
さらに、h=b−aとおくと
問 図を参考に平均値の定理の図形的な意味を答えよ。
定理4
f(x)、g(x)を区間Iで微分可能な関数とする。f'(x)がIでつねに0であるならば、f(x)は定数である。Iでつねにf'(x)=g'(x)ならば、f(x)−g(x)はIで定数である。
【証明】
a∈Iである点aを一つとる。
平均値の定理より、x∈Iの任意の点aに対して、aとxの間に
となる点cが存在する。
c∈Iだから条件よりf'(c)=0で、
よって、f(x)はIで定数である。
h(x)=f(x)−g(x)とおくと、Iでh(x)は微分可能。
Iでつねにf'(x)=g'(x)だから
h'(x)はIでつねに0である。
よって、h(x)=f(x)−g(x)は定数である。
(証明終)
問1 平均値の定理を用いて、つぎのことを示せ。
【解】
(1) f(t)=log tは、t>0で微分可能だから、区間[x,x+1]で平均値の定理の条件を満たす。
よって、
であるcが存在する。
0<x<c<x+1だから、
(2) a=bのときは自明。
a≠bのとき、平均値の定理より
を満たすcがaとbの間に存在する。
したがって、
(解答終)
問2 f(x)=x³について、
を満たすθを求め、を求めよ。ただし、a≠0。
【解】
f'(x)=3x²だから、
a≠0だから
0<θ<1だから|θ²h|<|h|。よって、h→0のとき、θ²h→0。
ゆえに、
(解答終)
f(x)は区間Iで定義される関数とする。
x₁、x₂をIに属する任意の2数としx₁<x₂とするとき、
f(x₁)<f(x₂)であればf(x)は区間Iにおいて狭義単調増加関数または狭義増加関数といい、
f(x₁)<f(x₂)であればf(x)は区間Iにおいて狭義単調減少関数または狭義減少関数という。
定理5 関数f(x)が区間[a,b]で連続、区間(a,b)で微分可能であるとき、区間(a,b)において
(ⅰ) 常にf'(x)>0ならば、f(x)は区間[a,b]で狭義増加関数
(ⅱ) 常にf'(x)<0ならば、f(x)は区間[a,b]で狭義減少関数
である。
[証明]
a≦x₁<x₂≦bとすると、仮定より、f(x)は閉区間[x₁,x₂]で連続、開区間(x₁,x₂)で微分可能である。したがって、平均値の定理より
となるcが少なくとも1つ存在する。
f'(c)>0のとき、
同様に、f'(c)<0のとき、f(x₂)<f(x₁)。
(証明終)
定理6 (拡張された平均値の定理)
関数f(x)は[a,b]で2回微分可能であるとすると、
【証明】
とし、F(a)=f(b)となるように定数Kを定めると、F(a)=F(b)=f(b)、かつ、F(x)は(a,b)で微分可能となり、F(x)はロールの定理の条件を満たす。
F(x)をxで微分すると、
したがって、ロールの定理より
となるcが存在する。
b≠cだから、
したがって、
(証明終)
とおくと、0<θ<1だから、
さらに、h=b−aとおくと、