お前らに問題(5月28日) 簡単に解ける微分方程式をいかに難しく解くか [お前らに質問]
これは、
1−y²≠0のとき
と、変数分離法を使って解くのが一般的であろう。
ところで、微分方程式(1)は次のように変形することが可能である。
このように変形すると、微分方程式(3)は、
という形の微分方程式、つまり、リッカチ形の微分方程式の一種であることがわかる。
そして、リッカチ形の微分方程式は、一部の例外を除くと、解くことが恐ろしく難しいことで知られている。解けなくて、涙がチョチョギ出るほど難しい。
(1)は、変数分離法でたまたま解けるカタチのリッカチ形の微分方程式だから簡単に解けたのであった。
最近、このブログで何度も登場している
も
と書き直せるので、リッカチ形の微分方程式。
ということで、お前らに問題。
問題 次のリッカチ形の微分方程式を、変数分離法を用いずに、解け。
どちらか一方でいい。変数分離法を使わずに、この微分方程式を解いて欲しい。変数分離法を使わないければ、どんな姑息な手を使っても構わない。
ただし、一般解を(1)、(2)の左辺に代入し計算したら、右辺になるといった解答は解答として認めない。
ちなみに、リッカチ形とベルヌーイ形の微分方程式の一般的な解法については、ねこ騙し数学の次の記事に出ているにゃ。
第5回 ベルヌーイ形、リッカチ形の微分方程式
http://nekodamashi-math.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31-5
リッカチ形、微分方程式などで検索をかければ、リッカチの微分方程式の解法について出ているサイトが多数あるはずなので、それを参考にして解いても良いにゃ。
「問題の(1)、(2)の微分方程式の解の1つがわからないから解けないケロ」と言ってはいけない。
(1)の一般解
に、C=0を代入すれば、y=−1という特殊解(?)が出てくるではないか。
また、特異解y=1だってある。
しまった、(2)は確かにリッカチ形ではあるが、ベルヌーイ形ではないか。問題として出してしまった以上、引っ込められないにゃ。さらに、(1)は
と全微分方程式に書き換えられるので、なにかうまい積分因子を見つけられれば、ひょっとしたら、こっちの線で簡単に解けるかもしれない。
あくまで、「かも」だケロ。
そんな都合のいい積分因子はひょっとしたら無いのかもしれない(^^ゞ
よしんば積分因子を見つけられたとしても、その不定積分が初等的な関数で表わせず、最終的にそれは消えてしまうものの、計算過程で死ぬような思いがする計算をしなければならない、なんて事態に遭遇するかもしれない(^^ゞ
ラプラス変換するもよし、フーリエ変換して解こうが、どう解こうが自由だケロ!!
問題の(1)、(2)の微分方程式は、ともに(4)式の形で表されるリッカチ形の微分方程式なのだから、共通の性質を有しているはずである。
そう考えると、問題の(1)、(2)の一般解の曲線が同じような形をしているのも納得できるような気がするような、気がしないような・・・。
(1)の一般解のグラフ
(2)の一般解のグラフ
おそらく、「ただの偶然」の一言で片付けてはいけないのだろう。
ということで、できた奴は、コメント欄にその計算を書き、ネムネコに送信する。
そうしてくれれば、ネムネコがそれを綺麗に清書し、このブログでその解答を紹介するケロ。
一階微分方程式の一般解の続き その1 [微分方程式の解法]
一階微分方程式の一般解の続き その1
ddt^3です。
http://nekodamashi-math.blog.so-net.ne.jp/2018-05-25-1
の続きです。まずこの前は、嘘八百を並べた事をお詫び申し上げます(∨∨)。
の位相空間での軌道で、この前の(dy/dx,y)をひっくり返したしたものです(やっぱりこっちの方がわかりやすい)。
ひっくり返しただけなので、yがいつでも単調増加は変わらないのですが、この前は、y<0からdy/dx=0に近づくには無限の時間が、またy=dy/dxから0<yに出ていくにも無限の時間がかかると書きました。嘘です。
これもあんまり確認せずに言ってるので、また「嘘です」と後から言う破目になるかもわからないですが(^^;)、図中に点線で示したdy/dx=0から引いたdy/dx=±yより軌道が上にあれば、軌道上の点は、dy/dx=0の点へ有限の時間で到達できるし、有限の時間でdy/dx=0の点から出て行けます。
という訳で右図より、(1)の解は(y,dy/dx)=(0,0)を、すぅ~っと抜けて行けます。
だいたいy≠0として解いた(1)の一般解は、
で、x=Cのとき明らかにy(C)=0へ一階微分可能な形で接続できるんだから、x<Cから出発した解が有限の時間(C-x)でy(C)=0に到達できるのは一目瞭然。同様にx=Cから出発する解が、有限の時間(x-C)でC<xの点に行けるのも、火を見るよりも明らか。お前はどこに目ぇ~付けとるんじゃ~っ!。
どうも質点の運動のイメージが強すぎたんですよね(いっつもやってるので(^^;))。素直な質点の運動では、速度dy/dx=0の時はほとんど力Maxになってるんですよ。力はdy2/dx2に比例します。そこで(1)からdy2/dx2を出してみると、再びy≠0として、
となり、今度も2階微分可能な形でy→0へ接続できるんだから、「なぁ~んだ。y=0にはまった解は、そこから動けないじゃない」と。何故なら速度0で力も0なら動くわけないからです。こういう場合、「y=0へはまりに行く解は、はまるまで無限の時間がかかる」のが普通だ。それは(1)にy=0で「角が立つ」からだと訳わからん事を言いながら・・・。(ネムネコの呟き)
・・・安易に。(・・・アンイに・アンイに・アンイに・・・・とエコー付き(^^;))
「微分方程式という数学を使った力学問題」と「微分方程式という数学問題」の違いをはっきりさせるために、もう少しこの話を続けます。
(1)が(y,dy/dx)=(0,0)へすぅ~っと到達できるにしても、力学的には、y=0に達した解はそこから動けない。そうするとネコ先生の仰る、(x,y)=(C,0)へ(2)で単調増加して行って、(x,y)=(C,0)でy(x)=0に乗り換え、(x,y)=(C+δ,0)でy(x)=(x-C-δ)3にまた乗り換えて単調増加して行く解は、少なくともない訳です(δ>0)。前回はこんなイメージでした。
でもですね、(1)が力学問題であると誰が言ったんだ?。(1)の「運動」が(3)で駆動されるなんて、(1)に書いてあるのか?。
全然ありません(^^;)。では微分方程式(1)とは、いったい何なんだろう?。それは「接線の傾きとその時の関数値の関係を与えた」という、幾何学的条件に過ぎない訳です。なので「運動」を考えるのが、そもそも間違い。
「微分方程式という数学問題」が「幾何学的条件を与えたに過ぎない」ならば、けっこうとんでもない結論になります。それは「原理的に微分方程式は、いたるところから分岐しうる」。
例えば(1)の一つの解のy≠0となる点で同じ接線を持ち、しかもその後も(1)の幾何学的条件をみたすものがもしあれば、それも(1)の解と認めざる得ない。しかもその分岐は、無数にあってかまわない。
そうであれば、微分方程式の解の一意性存在定理にはネコ先生の仰るように、かなりの制約条件があるが、そうであればこそ制約条件付きであろうと「証明できた」という事実に意味がある。
ただしその制約条件は、全然実用的じゃない。簡単そうな(1)にさえ手軽には使えない。その観点から一般解を考えると、一般解に意味が出てくる。無限に解が分岐しない事の実用的確認手段としての意味が。
という訳で最後は、ネコ先生の結論と同様になったと個人的には思います(^^)。
ちなみにルンゲクッタ法による(1)の数値解ですが、x=Cでy(x)=0に接続されないという事は、y(C)にy(C)=ε≠0となる数値誤差があるという事ですよね?(絶対ある(^^))。εが十分小さいとして(ルンゲクッタだから十分小さいだろう)第一近似として、数値解はy=(x-C)3+ε(x-C)程度と考えられます。ところでルンゲクッタ法はdy/dx=εに対して正解を与えるので、まさに数値解は上記とほとんど変わらないはず。これを、
と変形すると、右辺後半のカッコの2項目は相対誤差です。x=Cの近傍では相対誤差∞ですが、xが大きくなると相対誤差は2乗オーダーでどんどん0へ収束していく。
数値解をグラフにするために、(x-C)3オーダーでグラフの縦軸スケールをどんどんアップして行くと、誤差絶対値は無限に大きくなるのだが、逆に数値解のグラフは理論解の曲線へ見た目上は無限に接近して行く・・・。反則技その二(^^;)。
(執筆:ddt³さん)
今日のアニソン、東方から『WARNING!』 [今日のアニソン]
微分方程式よもやま話4 微分方程式の超難問に挑む(笑) [微分方程式の解法]
微分方程式よもやま話4 微分方程式の超難問に挑む(笑)
次の微分方程式がある。
この微分方程式の(いわゆる)一般解が
であることは、(2)式を(1)式に代入することにより、次のようにすぐに確かめられるだろう。
一階微分方程式の一般解の定義は、「任意定数を一つもつ微分方程式の解」なのだから、この定義にしたがう限り、これが微分方程式(1)の一般解であることは疑いの余地がない。そして、「微分方程式を解け」の意味は、「微分方程式の一般解を求めよ」の意味なのだから、実は、「微分方程式(1)を解け」という問題の解答としてはこれで十分でのはずである。
まぁ〜、高校の数学の先生がこの答案を見たら、「これでは微分方程式を解いたことにならない」と、大減点するのは火を見るより明らかだが・・・。
したがって、テストで減点されないためには、たとえば、次のような答案を作らないとイケナイに違いない。
【答案例】
x≠0、y≠0のとき、
ここで、とおくと、
C=0のとき、y=0になるので、微分方程式の(一般)解は
(答案例終)
⑨のところで、Cを任意定数としないのは、⑨の段階ではC≠0の任意定数であるから。
ネムネコのように重箱突きが好きなヒトのツッコミを交わすために、⑨の段階では、あえて、ぼかしてあるんだにゃ。
⑨なりの智慧という奴だにゃ(笑)。
ところで、微分方程式のべき級数解というものを知っているだろうか。
次に、べき級数を用いた
もし、上の微分方程式の解が次のようなべき級数(収束することを仮定)の形に表せるとする。
さらに、(4)式の無限級数の項別微分が許されるとすると、
になる。
すると、微分方程式の左辺は次のようになる。
よって、(1)は次のようになる。
すべての実数(うるさい奴の口封じをするために、収束半径をRとするとき、|x|<R)で(6)が成立するためには、
が成立しなければならない。
ここで、a₁をa₁=Cとおくと、微分方程式の(べき級数)解は
である。
そして、(7)は微分方程式の解のテーラー級数(マクローリン級数)そのものであり、テーラー級数の一意性から微分方程式(1)の解は(7)以外に存在しない。
変数分離法のようにゼロ割の影に怯えることなく、べき級数による微分方程式の解法を導入することによって、微分方程式(1)を解くことが出来た(^^)
さてさて、微分方程式(1)を変形した微分方程式(3)について考えることにする。
x≠0という仮定のもとで(1)を変形したのだから当然だけれど、原点(0,0)の値を入れると、原点(0,0)における微分係数が不定になってしまう。
これが原因で、数値計算で最も初歩的な微分方程式の求積法であるEuler法で、原点(0,0)を計算の出発点とした計算しようとした場合、ファースト・ステップで微分方程式(3)の数値解を求めることができない。
この事実だけからも、微分方程式(3)が実に危ない方程式だということがわかるにゃ。
だ・か・ら、胡散臭さ、疑いの余地を見人も有さない、最初に示した解き方が一番安全なんだケロ。そして、「この解法にケチをつけちゃ〜ならねぇ〜!!」と、オレは思う。「これでは、(一般)解がこれしかないことを示しておらず、微分方程式の解法としては不十分である」なんて批判は当たらないと思う。だって、一般解は微分方程式に一つしかないはずだ。一般解は1つしかないと堅く信じ、このことにいささかの疑念を持っていない一般解信者が何をか言わんやである。
少なくとも、怪しいところが多数存在する変数分離法を使って微分方程式(1)の解を求めた奴にあれこれと文句をつけられる筋合いだけはねぇ、と思う。