お前らに質問!(5月24日) 微分積分 [お前らに質問]
お前らに質問!
問題 次の問に答えよ。
(1) 原始関数の定義に従って、次の積分公式の是非について論ぜよ。
①が正当化されるとすれば、公式①をどのように解釈すべきか。
(2) Rを実数全体の集合とし、
とする。
このとき、
は正しいか。
議論をより正確なものにするために、ここでは、原始関数を次のように定義する。
定義 原始関数
区間I上の関数f(x)に対し、
である関数F(x)が存在するとき、F(x)をf(x)の原始関数という。
ここでいう区間とは、a<b(aとbは、実数だけではなく、−∞や∞場合も含む)のとき
の形で表される実数全体の集合Rの部分集合のことである。
微分方程式のよもやま話2 原始関数と不定積分 [微分方程式の解法]
微分方程式のよもやま話2 原始関数と不定積分
関数f(x)とF(x)に次の関係があるとする。
このとき、何をf(x)の原始関数、不定積分とするかは、いろいろな流儀があって、実は定まっていない。
ネムネコが高校時代に使っていた数学の参考書を見ても、次の2つの立場が出ている。
立場1 原始関数と不定積分を同一視
導関数がf(x)である関数をf(x)の不定積分、または、原始関数といい、記号で表す。すなわち、
f(x)の不定積分を求めることを、f(x)を(xについて)積分するといい、f(x)を被積分関数という。
いま、f(x)の不定積分の1つを、F(x)とすれば、Cを定数とするとき、F(x)+Cもまたf(x)の不定積分である。
逆に、f(x)の任意の不定積分をG(x)とすれば、
よって、f(x)の不定積分の1つをF(x)、Cを任意の定数とすれば、f(x)のすべての不定積分は、
で表される。このCを積分定数という。
このように、f(x)の不定積分は無数にあるが、付加定数Cを無視すれば一意的に定まることがわかる。
立場2 原始関数と不定積分を区別
微分してf(x)になる関数F(x)
となるF(x)をf(x)の原始関数という。これは1通りに定まらないが、平均値の定理から証明したように、
であって、f(x)の原始関数は、いずれも定数Cだけのちがいがある。つまり、F(x)がf(x)の1つの原始関数のとき、すべての原始関数はF(x)+Cと書かれるわけで、これらを総称して不定積分といい、であらわす。つまり、
このように、不定積分は任意定数Cを含む。この定数Cを積分定数という。
また、大学生向けのとある解析の本には、次のように書いてある。
関数fに対し、導関数がfに等しい関数をfの原始関数という。原始関数をで表しfの不定積分ともいう。不定積分を求めることをfを積分するという。
この定義は、立場1に従ったもの。
そして、有名な高木貞治の「解析概論」には、申し訳程度に、不定積分が次のように書かれている。
(定)積分の上の限界を変数とし、下の限界を任意の定数とすれば、その定数をどう定めても、差はxに無関係である。すなわちf(x)が積分可能なる区間に属する任意のa、a’に関し
で、はxに関係しない。このように積分の下の限界なる定数を指定しない場合に、積分を限界なしにと書いて、それを不定積分という。f(x)が連続関数ならば、不定積分は原始関数と同意語である。
「解析概論」では、新たに不定積分の第3の立場が表明されるている。
さらに進んで、原始関数と不定積分を次のように定義したりもする。
定義(原始関数)
区間I上の関数f(x)に対し、
を満たす関数F(x)が存在するとき、F(x)をf(x)の原始関数という。
定義(不定積分)
関数f(x)が任意の区間Iに含まれる有界区間上で積分可能とする。このとき、a∈Iと任意の定数Cに対して、関数F(x)を
を定める、このF(x)を記号
であらわし、これを不定積分という。
この不定積分の定義では、F(x)の微分可能性を前提としていないから、f(x)が連続関数のとき次の関係は成り立つけれど、一般に
は成り立たない。
ここにおいて、原始関数と不定積分の違いが決定的になり、原始関数と不定積分は袂を分かつ。
それはさておき、高校以来おなじみの次の不定積分の公式がある。
先に紹介した立場1、立場2のどちらの流儀に従っても、関数1/xの原始関数のすべてはlog|x|+Cの形に表されるはずである。
しかし、
とすると、
だから、G(x)は1/xの原始関数であるにも関わらず、⑧の形に表すことができない。
もっと一般的に
とすれば、このG(x)は、どんなに頑張っても、これは⑧の形に表すことができない。
だから、⑧は1/xの原始関数のすべてを尽くしておらず、おなじみの公式⑧は、どう考えても、おかしい。
だから、すべての原始関数を表すためには、⑧を
に改めるべきなんじゃないか。
同様に、微分方程式よもやま話1で取り上げた
という微分方程式の解を求めるときにに出てきた次の積分は、
ではなく、
とするべきなのではないか。
そして、こうすると、何故、x=1のときy=2という条件から、上の微分方程式の解がすべて定まらなかったかのか、その理由が理解できるのではないか。
だって、この条件から定まるのは、x>0のときのC₂=2だけであって、x<0のときのC₁は定まらないからだにゃ。
なぜ、このようなことが起きるかといえば、1/x、−1/x²ともにx=0で連続ではなく、そして、その原始関数の1つであるlog|x|と1/xが−∞<x<∞のすべての点xで微分可能でないから。
いま、かりに、f(x)=1/x、その2つの相異なる原始関数をF(x)、G(x)とするとき、この場合、
という関係が保証されない(註)のに、
としちゃっている。これがまずい。
大体、こんな公式があるから、
なんて計算を平気でするアホウが出てしまうんだケロ。
少なくとも、⑨の公式ならば、
とせざるを得ず、この(広義)積分が存在しないことに気づく機会が与えられる(笑)。
(註)
定理
関数Fが関数fの原始関数でならばF+C(Cは定数)もfの原始関数である。
関数Gがfの他の原始関数ならば、G−Fは区間I上で定数である。すなわち、
実数全体の集合をRとするとき、log|x|の定義域DはR−{0}であって、このDは区間ではない。したがって、上の微分積分の定理は、D上で
が成り立つ保証を与えないのであった。