熱伝導方程式の変数分離法による解 [微分方程式の解法]
熱伝導方程式の変数分離法による解
ddt³さんの記事に熱伝導方程式の話が出たので
z=z(t,x)とし、
熱伝導方程式
を満たす、
の形の解を求めることにする。
(2)を(1)に代入すると、
仮定より、右辺は変数xだけの関数、左辺は変数tだけの関数になるので、(3)式の値は定数でなければならない。
(3)式の値が正のとき、p²(p>0)とおく。
すると、
となり、
したがって、
(3)式の値が負のとき、−p²とおくと、
したがって、この解は
(3)式の値が0のとき、
となり、解は
である。
(3)式の値が正、0のとき、t>0のときの境界条件
を満たすためには、z=0となり、解として不適。
というわけで、(3)式の値は負でなければならず、
の形で表されるものでなければならない。
境界条件z(t,0)=z(t,a)=0を満たさなければならないので、
①から、c₂=0。
c₁=0のとき、②は満たすが、初期条件z(0,x)=f(x)を満たすためにはf(x)=0となってしまい都合が悪い。
というわけで、②式を満たすためには、
でなければならなず、
したがって、
が解になりそうですが(は定数)、これでは、初期条件
を満たさない。
そこで、
が解だったらいいなと考え、
が成り立つように係数を定める。
すると、
フーリエ級数から
と係数が定まり、
が求める偏微分方程式の解になる。
[バーガーズ方程式_1] [ddt³さんの部屋]
[バーガーズ方程式_1]
集団就職の時代じゃなかったけれど(だから金の卵などと呼ばれたおぼえはない)、高校卒業後すぐにオイラは、神奈川にいたことがあったのだ。暑かったよ。おかげで2年で故郷である北の国へと帰ったケロ。いや「ケロ」じゃない。帰った「ニャ」でもない。「帰ったジャン」なのだ。そう、神奈川時代に忘れた事とおぼえた事がある。忘れたのは、東北以北の浜言葉のイントネーション。おぼえたのは湘南方言である「ジャン」。
ところで数学教師みたいで嫌なのだけれど、なんでもかんでも数値積分すりゃ良いってもんじゃないのだ。例えば線形の座標変換くらいで方程式が綺麗になるなら、まずそれを試すべきなのだ。数値積分は最終手段。数値積分は形式解がないかといちおう頑張った後で。形式解がみつかれば、それに越した事はないのだから。
だからみんな、数値積分と騒ぐ前に冷静になるジャン!(^^)。ジャン!を使うと会社の同僚は「この湘南かぶれめ!」と言ってくれるのだ。もっともモノホンの湘南ボーイは、こんなジャンの使い方はしないのだ(^^;)。
1.定数係数1階線形偏微分方程式
(1)
をまず考えてみるジャン。cは(t,x)と無関係な定数とします。これと対比させるのは、uの全微分です。
(2)
(2)で(t,x)の微小増分(dt,dx)は、2次元の(t,x)平面で任意の方向を向けます。つまり(t,x)から(t+dt,x+dx)と(dt,dx)方向へと進んだ時のuの増分duを、(2)は表します。duは(dt,dx)の方向に応じて決まるわけです。
で、(1)と(2)で偏微分の係数を比べてみると、
(3)
の方向に進めば、(1)よりuの変化はない、すなわちu=一定という事になります。kは任意の実数です。u=一定とは、3次元の(t,x,u)でu(t,x)のグラフを想像したとき、曲面u(t,x)の等高線という事です。(3)は等高線の微分方程式を与えます。明らかに、
(4)
ですよね?。ここでAは積分定数です。
(4)よりuの等高線は、Aをパラメータとして傾きcの平行な直線群をなします。Aを一つ指定すれば傾きcの直線が一つ定まり、それ上でuの値は一定です。という事は、Aからuの値への関数u=u(A)を定義できます。でもこれって解じゃないですか?(^^)。
(1)を解くとは、uの(t,x)に関する依存関係を知りたいという事です。いまAは自由に動く事ができて、(4)で表される直線群は、(t,x)平面全体をカバーします。点(t,x)はどれかのAに該当する直線に乗ってるので、その点でのuの値はu(A)です。これは解を知ってる事と同じジャン!。つまりu(A)の表現を(t,x)に変えれば良いだけです。(4)より、
(5)
です。ここでuは(微分可能な)任意の関数。じっさい(5)の形を(1)に代入してみると、
(6)
となります。1階偏微分方程式の一般論より、もとの偏微分方程式を満たし、かつ任意関数を1個含むものはその偏微分方程式の一般解です。(1)の一般解が得られました。
ざっくり言うと、以上が特性曲線法です。(4)を偏微分方程式(1)の特性曲線と言います。
2.座標変換を試みる
ところで(t,x)座標は、人間の勝手です。数学的には、とりあえず (1)を(t,x)で表すとわかりやすかった、くらいの意味しか(t,x)を選んだ理由にはないはずです。そこで例えば図-1に示した(ξ,η)系に移ったら、事態は劇的に単純化されるのではないか、と思えませんか?(^^)。
だってさっきu(t,x)は、一変数関数u(A)だとわかったんですよ。じっさい図-1のξ軸はx-ct=Aで表される曲線群に平行なので、
(7)
ですから、(t,x)を(ξ,η)に座標変換したら、(1)はηだけで表せるはずです。問題は(7)による偏微分の間の変換ですが、u=u(ξ(t,x),η(t,x))と考えれば、合成関数の微分公式より、
(8)
です。(8)を(1)に代入すれば、
(9)
になります。ξの微分が残ったので一瞬ぎょっとしますが、これで良いのです。1+c2≠0なのでそれでわると、けっきょく∂u/∂ξ=0という事です。「u(ξ,η)はξと無関係」です。これは望んだものじゃん。という訳で、
(10)
です。(10)を説明すると、uはξと無関係なのでCはξと無関係な積分定数、という事はξと無関係な任意のηの関数C(η)で、後は(7)を使いC(x-ct)。こうして全微分とか等高線うんぬんに煩わされることなく、(5)を得る事ができました。特性曲線って、とっても役立ちますよね?・・・じゃなかった、役立つジャン!(^^)。
2.一次元波動方程式
(11)
を考えます。考えますがさっきの事に味をしめて、(11)が座標変換で綺麗にならないか?と「獲らぬ狸の皮算用」を考えてもいいですよね?(^^;)。今度は2階偏微分方程式なので、∂2u/∂ξ/∂ηあたりを目標にするのが妥当でしょう。1階の偏微分の変換の一般形は(8)の中辺なので、もう一回頑張って2階偏微分の変換を出します。積の微分公式と(8)中辺を入れ子に使うだけです。
(12)
ちょっと長いですけど一回でもやってみれば、同じパターンの繰り返しジャンとわかります(^^)。(12)を(11)に代入すると、
(13)
・・・予想を大幅に上回った長い式ですが、目的を忘れてはいけません!。目的は(13)を簡単にする事でしたよね?。その目標は∂2u/∂ξ/∂η=0です。(13)の1段目の2項目以外が0になるように、ξとηを決めるのです。よって少なくとも、
(14)
なので、
(15)
と選べるのがわかります。(15)が成り立てば(13)の2段目は明らかに、
(16)
・・・ジャン!、という事になります(^^)。
ところで(15)って、(1)ですよね?。そして(15)さえ成り立てばOKなので、最も簡単なものを選べます。
(17)
で十分です。よって(13)は(17)より、
(18)
なのでc≠0とすれば、
(19)
になります。じつは(18)の左辺は、(t,x)から(ξ,η)への変換のヤコビアンになっています。(19)の解は(10)でやったのと同じ手順で、
(20)
なのは明らかです。ここでf1とf2はξとηの任意関数。(17)も偏微分方程式(11)の特性曲線と言われます(曲線じゃないけど(^^))。(19)より(ξ,η)も、一種の等高線に沿った座標とわかると思います。∂u/∂ξの等高線はη方向、∂u/∂ηの等高線はξ方向という訳です。
少なくとも2階線形偏微分方程式については(定数係数でなくてもOK)、系統的な特性曲線の与え方と、それを用いた「標準形」への落とし込み方がわかっています。
・物理数学-数理物理の方法と特殊関数,アルセニン,森北出版,1995年.
(※ 絶版かも知れない(^^;))
ちなみに(17)と(19)は、(16)に気づきさえすれば自明です。(16)と(11)は同じですよね。(16)中辺の偏微分作用素を与える座標系に移ればいいんだと。それは(8)最右辺を一回でも自力で計算してれば・・・。だから数値セキブ~ンと、そう簡単に騒ぐんじゃありません!(^^)。
3.(準?)バーガーズ方程式
さて、
(21)
です。cは適当な定数係数、νは動粘性係数としときます。
(21)の左辺を(1)左辺と同様に考えると、(21)ではξ(1,c)方向に進むと、uの増分が、
(22)
と増える事です。しかし(22)の意味は、とてもわかりやすい表現です。現象に対して素直です。なのでやはり、図-2のような座標系で考えるべきでないでしょうか?。すなわち、
(23)
なる座標変換です。(8)と同様にやると、
(24)
なので、
(25)
となり。望む形が得られました。(25)は、放物型と言われる2階線形偏微分方程式の標準形の一つです。別名は、熱伝導方程式とか拡散方程式とか言われます。
・・・という訳で、有限要素法に持ち込むのは(25)の形で良いですよね?(^^;)。「バーガーズ方程式_2」に続きます。
(執筆:ddt³さん)
第3回 関数の極限に関する定理 [微分積分]
第3回 関数の極限に関する定理
まず、議論の出発点になる次の定理(?)。
定理0
aを非負の実数とする。任意の正数εに対して
ならば、a=0である。
【証明】
a≠0、すなわち、a>0とする。
εは任意の正数なので
とすると、
となり矛盾する。
よって、a=0である。
(証明終)
定理1 (極限の唯一性)
点aにおける関数f(x)の極限値は、存在すれば、ただ1つである。
【証明】
点aにおける関数f(x)の極限値をα、βとすると、任意のε>0に対して、ある正数δ₁、δ₂が存在して、
そこで、任意の正数εに対して
と定めれば、
となり、
よって、関数f(x)の極限値が存在すれば、それはただ1つである。
(証明終)
定理2 (極限が収束するための必要十分条件)
となることである。
【証明】
とすると、任意の正数εに対して、ある正数δが存在して、であるすべてのxに関して
したがって、
で、
である。
逆に、ならば、任意の正数εに対してδ₁が存在し、a−δ₁<x<aであるすべてのxに関して
ならば、任意の正数εに対してδ₂が存在し、a<x<a+δ₂であるすべてのxに関して
よって、
とすると、
したがって、
(証明終)
第2回で紹介したように、ε−δ論法を用いて
であることを証明することは意外に難しい。
そこで、関数の極限の計算で使用する次の公式を証明する。
定理3 (極限の公式)
α、βを実定数、また、とする。このとき、次のことが成立する。
【証明】
だから、任意の正数ε'>0に対して、ある正数δ₁、δ₂が存在して
となるので、
にとれば、
になる。
(ⅰ) α=β=0のとき、
となるのは明らか。
α、βがともに0でないとする。
任意の正数εに対して
とおくと、
(ⅱ)
だから、任意のε>0に対して、
とおけば、
(ⅲ)
であることを示せば、(ⅱ)より
よって、(ⅲ’)を示せばよい。
だから、任意のε’>0に対してあるδ₁>0が存在して
である。
また、
だから、ε’=|m|/2>0とし、δ₂>-0を定めると、ならば、
したがって、任意のε>0に対して、
とおき、
と定めれば、
ならば、
であり、
(証明終)
問1 次のことを示せ。
【解】
また、
だから、
任意のε>0に対して、
よって、
(解答終)
ε−δ論法を使った証明では、
をよく使うので、この不等式の扱いになれる必要がある。
問2 aを実数とする。次の極限を求めよ。
(1)
(2) n=1のとき、
n=kのとき
とすると、
よって、数学的帰納法より
(解答終)
となるのは明らかなので、上のように計算する必要はない。
定理4
あるδ>0に対して
であって、f(x)、g(x)が点aで収束するならば、
である。
[証明]
とし、l>mと仮定する。
だから、に対してあるδ₁が存在して
だから、に対してあるδ₂が存在して
したがって、
とすると、で
となり、仮定と矛盾し、不合理。
よって、
である。
(証明終)
例
とすると、
すべての実数xに対して、f(x)<g(x)=0であるが、
だから、
一般に
は成立しない。
定理5(ハサミ打ちの定理)
点aを除くaの近傍においてf(x)≦h(x)≦g(x)で
ならば、
[証明]
だから、任意の正数ε>0に対して、
したがって、
とおくと、
よって、
また、f(x)≦h(x)≦g(x)だから
したがって、
となり、
(証明終)
問3 次の極限が存在すれば、その値を求めよ。
【解】
x≠0とすると、
よって、ハサミ打ち定理より
となるので、
(解答終)
定理6 (合成関数の極限)
点aの近傍で定義された関数f(x)がであり、さらに点y=bの近傍で定義された関数g(y)がであれば、
である。
【証明】
任意のε>0に対して、あるδ>0が存在して、
y=bのときもが成り立つので、
である。
任意のε’>0に対して、あるδ’>0が存在して、
ε'は任意の正数なので、ε'=δとすると、
よって、
(証明終)
(注意)
は一般に成立しない。
ちょっとお前らに問題 (ε−δ論法、論理 5月16日) [お前らに質問]
ちょっと、お前らに質問
関数f(x)が点aで(lに)収束するとは、
みんなの嫌われ者であるε−δ論法で書くと、
「ある実数lが存在し、任意の実数ε>0に対して、あるδ>0が存在して、0<|x−a|<δであるすべての実数xに関して、
であること」
だにゃ。
論理記号を使って表すと、
とかになるにゃ。
では、お前らに質問しよう。
問題1
関数f(x)が点aで収束しない、すなわち、関数f(x)が点aで発散することの、ε−δ論法による定義を与えよ。
【ヒント】
(1)を否定すればよい。
センター試験対策で、「ある」「任意の(すべての)」を含む命題の否定を求める問題は、繰り返し、何度も解いたはず!!
まぁ、
「ある実数lが存在し、xが点aに限りなく近づくとき、f(x)がlに限りなく近づく」
という(文学的な)定義を否定して、f(x)が点aで収束しない、発散するの定義にしてもらっても構わないけれど・・・。
ところで、命題「pならばq」を否定すると、どうなるんだい。
この基本を知らなければ、この問題は絶対に解けない!!
ついでなので、こうした数学語に慣れてもらうために、つぎの問題も解いてもらおうか。
問題2
命題A 「ある自然数mが存在し、すべての自然数nに対して、m≧nである」
命題B 「すべての自然数nに対して、ある自然数mが存在し、m≧nである」
(1) 命題Aと命題Bは同じ(命題)か。
(2) 命題A、命題Bの真偽を答えよ。
命題A、命題Bは次のように言い換えることができるので、こちらで考えてもらってもいいにゃ。
命題A’ 「ある適当な自然数mを選ぶと、すべての自然数nに対して、m≧nである」
命題B’ 「すべての自然数nに対して、m≧nである自然数mが存在する」
論理記号で書くと、
命題A(A')、命題B(B’)は、たとえば、次のようになるケロ。
ここでは自然数全体の集まり、集合を表す。
m、nが自然数であることを明示してあれば、つまり、mとnの外延を自然数全体の集合と定めておけば、
だにゃ。
こちらの方が正式な書き方らしいけれど・・・。
命題Aのタイプは、こなれた人間語にすると、意味が変わってしまう場合があるので、こうした数学語に慣れてもらうしかないケロ。
さらに、英語が得意な奴は、上の記号で書かれた命題AとBを英語に訳すにゃ(^^)。
英語だとひょっとしたら、この違いがわかるかもしれない(^^ゞ
第2回 ε−δ論法 [微分積分]
第2回 ε−δ論法
xが点aに限りなく近づくと、その近づき方によらず、関数f(x)がlに限りなく近づくとき、lを点aにおけるf(x)の極限値といい、記号
や
などであらわす。また、このとき、f(x)は点aでlに収束するという。
高校数学流の関数の極限の定義は上述のようなものであろうが、この定義は感覚的すぎて、正確な議論を進めることができないので、次のように関数の極限を定義することにする。
関数の極限の定義(ε−δ論法)
任意の正数εに対して、ある正数δが存在し、
であるとき、f(x)は点aで収束するといい、記号
であらわす。
また、このとき、lを点aにおけるf(x)の極限値という。
論理記号を使って表すと、
より厳密に表すと
関数f(x)が点aでlに収束しないは、(1)を否定すればよく、したがって、
がその定義になる。
なお、全称記号∀は英単語「any(任意の)」、あるいは、「all(すべての)」、存在記号∃は英単語「exist(存在する)」を記号化したもので、∀ε>0は「任意のε>0に対して」、「すべてのε>0に対して」、∃εは「あるε>0が存在して」などと読めばよい。
蛇足ながら、記号⇒は「ならば」、∧は「かつ」の意味である。
したがって、(2)は、
「ある実数ε>0が存在して、任意の実数δ>0に対して、ある実数xが存在して、
である」
または
「ある実数ε>0が存在して、任意の実数δ>0に対して、
を満たす、ある実数xが存在する」
などと読めばよい。
問題1 次のことを示せ。
【解】
任意の正数εに対して、δ=ε>0とすれば、
よって、
(解答終)
問題2 cを定数とするとき、次のことを(ε−δ論法を用いて)証明せよ。
【解】
c=0のとき、
は明らか。
そこで、c≠0とする。
任意の正数εに対して、ならば、
となるので、
に定めれば、
ならば、
となり、
(解答終)
問題3 a>0とする。このとき、次のことを示せ。
【解】
とすると、
よって、任意の正数εに対して
とすれば、
よって、
(解答終)
問題4 次のことを示せ。
【解】
任意の正数εに対して、δ=εと定めると、
ならば
よって、
(解答終)
問題5 次のことを(ε−δ論法を用いて)証明せよ。
【解】
とすると、
となるので、
となるように正数δを定めればよい。
0<δ≦1のとき、δ²≦δだから、
となるようにδを定めればよい。
したがって、δ>1の場合を含めて、
任意の正数εに対して、δを
に定めれば、
となり、
ここで、記号min{a,b}は、aとbのうちの大きくない数、すなわち、
である。
(解答終)
δはεに対して一意に定まるものではないので、次のような解答を作ることも可能。
【別解】
とすると、
したがって、任意の正数εに対して、
となるようにδを定めればよい。
2次方程式
から、解は
となるが、δ>0なので、
よって、
任意の正数εに対して、 とすれば、
となり、
(解答終)
なお、
一般に、δはaとεの値によって定まるのでやと表すことがあるが、問題3や問題5のように、aとεの値によって一意に定まるものではないので、関数の意味でないことに注意。
発展問題 a≠0とする。このとき、ε−δ論法を用いて、次のことを示せ。
最高時速360キロ 次世代新幹線試験車両「ロングノーズ」初公開 NHK [ひとこと言わねば]
最高時速360キロを目指す次世代新幹線 走行試験が公開 「ロングノーズ」と呼ばれる先端部分が特徴ですhttps://t.co/fWSdkj250j pic.twitter.com/kc8gn0RXfX
— NHKニュース (@nhk_news) 2019年5月15日
第1回 関数の極限 [微分積分]
第1回 関数の極限
f(x)=xという関数がある。xが1に近づけば近づくほど、f(x)の値は1に近づいていく。
このことを、
や
であらわし、1を点x=1における極限値という。
次に関数f(x)=x²という関数の場合について考えてみることにする。
xがaに近づけば近づくほど、f(x)の値はa²に限りなく近づいてゆくので、a²は関数f(x)=x²のx=aにおける極限値である。
したがって、
となる。
そして、
上の2つの例の場合、いずれも、
である。
この場合、xが0に近づけば近づくほど、f(x)の値は1に限りなく近づく。しかし、f(0)=0≠1なので、
である。
したがって、関数の極限は、次のようなものになるだろう。
xが限りなく点aに近づくと関数f(x)が限りなくある実数の値lに近づくとき、この値lを、点aにおける関数f(x)の極限値といい、記号、
や
などで表す。また、このとき、関数f(x)は点aでlに収束するという。
また、関数f(x)が点aでいかなる実数lに収束しないとき、f(x)は点aで発散するという。
xが点aに近づけば近づくほど、f(x)の値が限りなく大きくなるなるとき、
で表し、関数f(x)は点aで+∞(あるいは∞)に発散するという。
xが点aに近づけば近づくほど、−f(x)の値が限りなく大きくなるとき、
で表し、関数f(x)は点aで−∞に発散するという。
例
とすると、
である。
問1 次の極限値を求めなさい。
【解】
x≠aのとき、
したがって、
である。
(解答終)
(注意)
は、
などの意味で点aを定義域に含まない。
したがって、
実数全体の集合Rで定義される次の関数g(x)
と、f(x)の関数の定義域が異なっているので、f(x)とg(x)は異なる関数である。
また、点aにおける関数の極限を論じる場合、問1の関数f(x)のように、関数は点aで定義されたいなくもよく、点aを除く点aの近傍、すなわち、
でのみ定義されていればよい。
点aを除く点aの近傍を、点aの穴あき近傍と呼ぶことがある。
(注意終)
いちいち、このように書くのは面倒なので、次のように簡略に書くことにする。
【解】
(解答終)
問2 次の極限値を求めよ。
【解】
(解答終)
では、次のような関数の場合どうであろう。
この関数の場合、x=0の左側から点x=0に近づけばf(x)は0に近づき、点x=0の右側から点x=0に近づけばf(x)は1に近づく。
このような場合、0を点x=0におけるf(x)の左側極限といい、
で表し、1を点x=0におけるf(x)の右側極限といい、
と表す。
より一般に、
点x=aにおけるf(x)の左側極限を
で表し、点x=aにおけるf(x)の右側極限を
で表す。
(注)
と表すことがある。
そして、この左側極限と右側極限という概念を用いると、関数f(x)の点x=aにおける極限は次のように言い表すことができる。
ならばであり、
ならばである。
問3 次の関数がx=0における極限値が存在するように、cの値を定めよ。
【解】
x=0におけるf(x)の極限値が存在するためには、
でなければならないので、
(解答終)
お前らに問題 (上限と下限 5月14日) [お前らに質問]
お前らに問題 (上限と下限 5月14日)
Aを空でない実数全体の集合Rの部分集合であるとする。
上限の定義
(ⅰ) 任意のx∈Aに対して、x≦αである
(ⅱ) 任意のε>0に対して、
であるx∈Aが存在する。
このときαをAの上限といい、記号
と表す。
下限の定義
(ⅲ) 任意のx∈Aに対して、β≦xである。
(ⅳ) 任意のε>0に対して、
であるx∈Aが存在する。
このときβをAの下限といい、記号
と表す。
定理
A、Bを実数全体の集合Rの空でない部分集合とする。
A⊂Bならば
である。
たとえば、A={2,3}、B={1,2,3,4}とすると
A⊂Bで、
Aの上限sup A=3、下限inf A=2
Bの上限sup B=4、下限inf B=1
であり、1≦2≦3≦4なので、
確かに、上の定理を満たしている。
というわけで、あまりに当たり前な上の定理を、お前ら、証明するケロ。
問題 A≠∅、B≠∅、かつ、A⊂Bならば、
であることを証明せよ。
A。Bはともに有界である、つまり、
みたいな場合は除くことにするにゃ。
あまりにアタリマエの、つまり、自明なことの証明ってのは、意外に難しいもの、あるいは、そう感じるもの。
証明できたとしても、なにか釈然としないところが残ったり、その証明が正しいのか、間違っているのか、わからなかったりするもんだにゃ。
一応、考慮時間の上限は100分に設定しておくにゃ。
だから、この曲をその間のBGMにするといいと思うケロ。
この動画が終了したら、タイムアップだにゃ。
そして、
この定理を証明できた奴は、この記事のコメント欄に証明を書いて、ネムネコのところに送信するように。
第0回 実数の連続性 [微分積分]
第0回 実数の連続性
Aを実数全体の集合Rの空でない部分集合とする。
ある実数uが存在し、任意のx∈Aに対して、
が成立するとき、Aは上に有界であるといい、uをAの上界(じょうかい)という。また、Aの上界の最小値を上限といい、記号
や
などであらわす。
uがAの上限であるとは、
(ⅰ) 任意のx∈Aに対して、x≦uである (uがAの上界)
(ⅱ) u'<uならば、u'<xであるAの元xが存在する (uより小さいAの上界は存在しない)
ことである。
この条件(ⅰ)、(ⅱ)は次のようにしてもよい。
α=sup Aであるとは、次の条件を満たすことである。
(ⅰ) 任意のx∈Aに対してx≦α
(ⅱ’) 任意の正数εに対して、
であるAの元xが存在する。
ある実数lが存在し、任意のx∈Aに対して、
であるとき、Aは下に有界といい、lをAの下界(かかい)という。また、Aの下界の最大値を下限といい、記号
や
などであらわす。
lがAの下限であるとは、
(ⅲ) 任意のx∈Aに対して、l≦xである (lがAの下界)
(ⅳ) l<l'ならば、x<l'であるAの元xが存在する (lより大きいAの下界は存在しない)
ことである。
この条件(ⅰ)、(2)は次のようにしてもよい。
β=inf Aであるとは、次の条件を満たすことである。
(ⅲ) 任意のx∈Aに対してl≦xである
(ⅳ’) 任意の正数εに対して、
を満たすAの元xが存在する
集合Aが上に有界かつ下に有界であるとき、Aは有界であるという。
実数の連続性の公理
上に有界な実数全体の集合Rの部分集合は上限をもつ。また、下に有界な実数全体の部分集合は下限をもつ。
例 開区間(0,1)の上限は1、下限は0。閉集合[0,1]の上限は1、下限は0である。
問 開区間(0,1)の上限が1、下限が0であることを示せ。
定理0 (アルキメデスの公理)
任意の自然数nに対して、
である。
また、自然数全体の集合Nは上に有界でない。
【証明】
もし、任意の自然数nに対して
が成り立つならば、
となり、自然数全体の集合Nは上に有界になる。
したがって、自然数全体の集合Nが上に有界でないことを示せばよい。
もし、Nが上に有界ならば、実数の連続性の公理より上限αをもつ。
したがって、
任意の自然数nに対してn≦α。
αは上限なので、ε=1とすると、(1)より、α−1<nであるn∈Nが存在することになるが、これからα<n+1∈Nとなり、αがNの上限であることに反する。
よって、自然数全体の集合Nは上に有界でない。
(証明終)
上の定理0ではなく、下の定理0’をアルキメデスの公理と呼ぶ場合もある。
定理0’ (アルキメデスの公理)
任意の正の実数a、bに対して、
である自然数nが存在する。
【証明】
もし、任意の自然数に対して
であるとすると、
任意の自然数nに対して
となり、b/aは自然数全体の集合Nの上界である。Nは上に有界なので、実数の連続性の公理より、上限αをもつ。
したがって、
任意の自然数n∈Nに対して
である。
αは上限なので、ε=1とすると、(1)より、α−1<nであるn∈Nが存在することになるが、これからα<n+1∈Nとなり、αがNの上限であることに反する。
よって、自然数全体の集合Nは上に有界でない。
(証明終)
無限大記号
実数全体の集合Rの部分集合Aが上に有界でないとき、
と表す。
集合Aが上に有界であるとは「ある実数Kがあり、任意のx∈Aに対してx≦u」ということ、すなわち、
なので、集合Aが上に有界でないとは、(3)を否定した
となる。すなわち、
「任意の実数Kに対して、
を満たすxがAに存在する」
ことである。
また、Aが下に有界でないとき、
で表す。
また、Aが下に有界とは
ということなので、
すなわち、
「任意の実数Kに対して、
を満たすxがAに存在する」
ことである。
+∞、−∞ともに実数ではないけれど、x∈Rに対して
と大小関係を定義することにする。
また、
さらに、
と加法を定義することにする。
x>0のとき、
x<0のとき
x=0のとき、
さらに、
と乗法を定義することにする。
除法に関しては、xが実数のとき、
問 という引き算、また、といった割り算を定義しないのか、その理由について考えよ。
お前らに問題 (関数の極限と連続 5月13日) [お前らに質問]
明日から1変数の微分積分の記事を新たにブログに連続アップする予定なので、関数の極限と連続に関するちょっとした問題。
(1) が存在すれば値を求めよ。存在しないならば、その理由を述べよ。
(2) f(x)は点x=0で連続か。連続でなければ、その理由を述べよ。
(3) a≠0とすると、は存在するか。存在するならばその値を求め、存在しないならばその理由を記せ。
(4) a≠0とすると、関数f(x)は点x=aで連続か。
問題の関数f(x)のグラフ化は不可能なのですが、これが無いとイメージ化が出来ないので、右の図のようにしたにゃ。
黒い実線の部分(?)がxが無理数のときのf(x)のグラフ(?)で、赤い細かい破線の部分(?)がxが有理数のときのf(x)のグラフ(?)だにゃ。
なぜ、こう表したかって?
有理数の濃度は可算濃度(「あれふ・ぜろ」と読むにゃ)で、無理数の濃度は不可算濃度の(あれふ)で、はと比較にならないくらい、トンデモなく大きく、実数のほとんどすべてを無理数が占めているからだにゃ。
実数の濃度も不可算濃度のなので、無理数の個数(濃度)と実数の個数(濃度)は同じなんだケロよ。
このことを踏まえ、模式的に、右の図のように表したんだにゃ。
一応、関数の極限と連続の(高校数学流の)定義を書いておくにゃ。
関数の極限
xがaとは異なる値を取りながら限りなくaに近づくと、その近づき方にかかわらず、f(x)がある一定の値αに限りなく近づくとき、関数f(x)は点aで収束するといい、
と表し、この一定の値αをf(x)の点aにおける極限値という。
上の関数の連続の定義で下線部を施したのには深い理由があるにゃ。
悪評高いε−δ(いぷしろん・でるた)論法で書くと、次のようになる。
任意の正数ε>0に対して、ある正数δ>0が存在し、
が成り立つとき、関数f(x)は点aで収束するといい、記号
で表す。また、αをf(x)の点aにおける極限値という。
関数の連続
であるとき、関数f(x)は点aで連続であるという。
ゴキブリのごとく多くのヒトに忌み嫌われているε−δ論法による関数の連続の定義は次のとおり。
任意の正数ε>0に対して、ある正数δ>0が存在し、
が成り立つとき、関数f(x)は点aで連続であるという。
問題の問い方とグラフ(?)を見れば、
(1)の答はであることは容易に想像がつき、さらに、これからとなって点x=0で関数f(x)が連続であることが予想できるだろう。
できる奴は、であることを証明するといいにゃ。
ひょっとしたら、嘘かもしれないし(^^)
この証明には、みんなの嫌われ者であるε−δ論法を使うか、
とf(x)を挟み、高校数学でお馴染みのハサミ打ちの定理を使うといいかもしれない。
ハサミ打ちの定理
g(x)≦f(x)≦h(x)で、かつ、ならば、
である。
答はここにあるの?ないの?
I don't know. 今もわからないよ
今すぐ解けないかもしれない
諦めない 解けるまでは♪
さてさて、
「関数f(x)が点aで連続である」と聞くと、我々はどうしても曲線y=f(x)が点aでつながっていることをイメージしてしまうけれど、問題の曲線y=f(x)はどの部分でもブツブツと切れていて繋がってはいない。だって、有理数と有理数の間にはかならず無数の無理数があり、無理数と無理数の間にもかならず無数の有理数があるからね〜。
つ・ま・り、
関数f(x)が点aで連続であるということと、曲線y=f(x)が点aでつながっているということは、実は、まったく別なことってわけですよ。
最後に、久しぶりに、この曲のこの動画を♪
「ぬえ」ちゃんと 正邪は、このブログを象徴する重要なキャラクターだからね〜。