お前らに問題 (関数の極限と連続 5月13日) [お前らに質問]
明日から1変数の微分積分の記事を新たにブログに連続アップする予定なので、関数の極限と連続に関するちょっとした問題。
(1) が存在すれば値を求めよ。存在しないならば、その理由を述べよ。
(2) f(x)は点x=0で連続か。連続でなければ、その理由を述べよ。
(3) a≠0とすると、は存在するか。存在するならばその値を求め、存在しないならばその理由を記せ。
(4) a≠0とすると、関数f(x)は点x=aで連続か。
問題の関数f(x)のグラフ化は不可能なのですが、これが無いとイメージ化が出来ないので、右の図のようにしたにゃ。
黒い実線の部分(?)がxが無理数のときのf(x)のグラフ(?)で、赤い細かい破線の部分(?)がxが有理数のときのf(x)のグラフ(?)だにゃ。
なぜ、こう表したかって?
有理数の濃度は可算濃度(「あれふ・ぜろ」と読むにゃ)で、無理数の濃度は不可算濃度の(あれふ)で、はと比較にならないくらい、トンデモなく大きく、実数のほとんどすべてを無理数が占めているからだにゃ。
実数の濃度も不可算濃度のなので、無理数の個数(濃度)と実数の個数(濃度)は同じなんだケロよ。
このことを踏まえ、模式的に、右の図のように表したんだにゃ。
一応、関数の極限と連続の(高校数学流の)定義を書いておくにゃ。
関数の極限
xがaとは異なる値を取りながら限りなくaに近づくと、その近づき方にかかわらず、f(x)がある一定の値αに限りなく近づくとき、関数f(x)は点aで収束するといい、
と表し、この一定の値αをf(x)の点aにおける極限値という。
上の関数の連続の定義で下線部を施したのには深い理由があるにゃ。
悪評高いε−δ(いぷしろん・でるた)論法で書くと、次のようになる。
任意の正数ε>0に対して、ある正数δ>0が存在し、
が成り立つとき、関数f(x)は点aで収束するといい、記号
で表す。また、αをf(x)の点aにおける極限値という。
関数の連続
であるとき、関数f(x)は点aで連続であるという。
ゴキブリのごとく多くのヒトに忌み嫌われているε−δ論法による関数の連続の定義は次のとおり。
任意の正数ε>0に対して、ある正数δ>0が存在し、
が成り立つとき、関数f(x)は点aで連続であるという。
問題の問い方とグラフ(?)を見れば、
(1)の答はであることは容易に想像がつき、さらに、これからとなって点x=0で関数f(x)が連続であることが予想できるだろう。
できる奴は、であることを証明するといいにゃ。
ひょっとしたら、嘘かもしれないし(^^)
この証明には、みんなの嫌われ者であるε−δ論法を使うか、
とf(x)を挟み、高校数学でお馴染みのハサミ打ちの定理を使うといいかもしれない。
ハサミ打ちの定理
g(x)≦f(x)≦h(x)で、かつ、ならば、
である。
答はここにあるの?ないの?
I don't know. 今もわからないよ
今すぐ解けないかもしれない
諦めない 解けるまでは♪
さてさて、
「関数f(x)が点aで連続である」と聞くと、我々はどうしても曲線y=f(x)が点aでつながっていることをイメージしてしまうけれど、問題の曲線y=f(x)はどの部分でもブツブツと切れていて繋がってはいない。だって、有理数と有理数の間にはかならず無数の無理数があり、無理数と無理数の間にもかならず無数の有理数があるからね〜。
つ・ま・り、
関数f(x)が点aで連続であるということと、曲線y=f(x)が点aでつながっているということは、実は、まったく別なことってわけですよ。
最後に、久しぶりに、この曲のこの動画を♪
「ぬえ」ちゃんと 正邪は、このブログを象徴する重要なキャラクターだからね〜。
「3次間数と変曲点」の補足と座標変換について [高校の微分積分]
「3次関数と変曲点」という記事で、つぎのようなコメントをいただいたので、補足説明をすることにする。
もう一度コメントお許しを
私がはまったのは
y = f(x)
の (α, β) 平行移動後の方程式は
y - β = f(x - α)
はみんな知ってるんですが、この逆なんですよね。
要するに「平行移動したグラフを元に戻す」には
(x + α, y + β)
と、足さなきゃならんと。
だからクソ暗記で「引いたものを代入」なんてやらず
ちゃんと考えなきゃダメってことですね。
この動画の問3と似たような勘違い!?
何気に似ているから、よく、間違えるにゃ。
点Oを原点とするO−xy座標系があり、この平面上に点Pがあり、その座標を(x,y)とする。
また、この同一平面上に点O'があり、O-xy座標系における(α、β)とする。
さてさて、点Pをそのままにして、O−xy座標系を平行移動させたものをO'−XY座標系と呼ぶことにし、新しいO'−XY座標系における点Pの成分〈X,Y〉とすると、
という、O−xy座標系からO'−XY座標系への座標変換による点Pの成分変換の関係が得られる。
(右図参照)
また、この(1)式から〈X,Y〉から(x,y)への
という点Pの成分変換の式を得ることができる。
そして、この(2)式から得られたx=X+α、y=Y+βを曲線y=f(x)に代入すると、
となり、これが曲線y=f(x)の新しいO'−XY座標系における曲線の方程式ということになる。
この場合、新たな座標系を設定しただけで、平面上の点は、一切、動かないので、くれぐれも注意するにゃ。
ベクトルを使って、x軸の正の向きの単位ベクトル、y軸の正の向きの単位ベクトルをそれぞれとすると、
である。
で、X軸、Y軸の正の向きの単位ベクトルをとし、
このXとYをO'-XY座標系のX成分、Y成分とする。
X軸とx軸、Y軸とy軸は平行なので、
よって、
とか何とか書いたほうがいいのかもしれないけれど・・・。
ところで、O−xy座標系を原点Oを中心に反時計まわりにθ回転させた、回転座標系O−x'y'では、成分変換の式はどうなるケロか。
いま、高校では行列を習わないけれど、
一次変換の知識を元に
などとしたら間違いだにゃ。
だって、1次変換は、平面上の点すべてが原点Oを中心に半時計回りにθ回転するんだから。
座標変換とは、似て非なるものだにゃ。
「お前らにヤレ!」と言っても絶対にやらないから、ヒントを出してやるにゃ。
x’軸の正の方向の単位ベクトルは
y'軸の正の方向の単位ベクトルは
だケロ。(なぜ、①、②式のようになる?)
したがって、
①と②を③の右辺に代入すればx、yとx'、y'の関係式が得られ、これをx'、y'について解けばよい。
すると、たぶん
となるはず。
これを行列で表すと、
したがって、・・・・
2×2の行列の演算を知っている奴なら、この式を見ただけで答がわかる代物。
あるいは、①、②を連立させて、ついて解きそれを、③の中辺に入れての係数を比較する。
さあ、やってもらいましょうか。ここまで丁寧なヒントを出してやったのだから、ちゃんと最後までヤレ。
誰が読んでも納得してもらえるような、きちんとした答案の形にせよ。
なお、探せば、このブログのどこかにこの答が書いてあるので、答は教えないにゃ。って言っても、ほとんど、答を教えているようなものだけれど・・・。
だけど、
ddt³さんはとっても優しいので、そして、線形代数の記事を投稿してくださっているので、きっと、丁寧な解答を書いて送ってくれと思うにゃ。
ひょっとしたら、連立方程式を解くのに、クロネッカーのデルタを使った解法まで紹介してくれるかもしれないケロよ。
さらに、(2×2の行列の)直交行列の話しなんかもしてくれるかもしれない。
だ・か・ら、
みんな、期待して待つにゃ。
[行列式2.行列式の公理的扱い] [ddt³さんの部屋]
[行列式2.行列式の公理的扱い]
前回までの結果は、こうでした。
[定義4]
n次正方行列A=(aij),i,j=1~n について、
(1)
ただしΣj1j2・・・jnは、並び(1 2 ・・・ n)の任意の置換(j1j2・・・jn)についての和.
で表されるdet(A)をn次正方行列Aの行列式と言う。σ(j1j2・・・jn)=±1であり、値は[定義5]に従う。
[定義5]
(1 2 ・・・ n)からその置換(j1j2・・・jn)にいたる互換数をt(j1j2・・・jn)として、
(2)
(1 2 ・・・ n) → (j1j2・・・jn)に関して互換数tは一意ではないが、tの偶奇は一意。
[定義4]と[定義5]は先人たちの遺産です。そして先人たちは、(1),(2)を与えただけでは満足しませんでした。基本的には前回の[定理1]をフル活用して(1),(2)から、次に述べるdet(A)の性質を直接証明しました(添え字と闘いながら(^^;))。
1.行列式の公理的扱い
n次正方行列A=(aij)のk列目を縦ベクトルak=(a1k,a2k,・・・,ank)tとみなし、A=(a1,a2,・・・,an)と書きます。det(A)は、n個の縦ベクトルを変数とする関数det(A)=det(a1,a2,・・・,an)とみなせます。
det(a1,a2,・・・,an)には次の性質があります。
d1) bをn次の縦ベクトルとして、
(d2) kをスカラーとして、
d3) j≠kを2つの異なる列番号として、
(d4) 単位行列E=(e1,e2,・・・,en)に対し、
性質(d1)(d2)を特に重線形性といい、じつは全てのテンソルの源泉です。よって(d1)~(d4)を明示的に示すと、行列式が本質的にテンソルである事がモロバレなのです(^^)。(d3)は交代性と言われます。(d4)は、いちおう自明な性質です。
次に、(d1)~(d4)が行列式の特徴づけにもなっている事を証明します。(d1)~(d4) ⇒ (1)を示します。あらかじめ言っておきますが、この証明に賢いショートカットはありません。(d1)~(d4)に従って、ひたすら地道ぃ~に計算するのみです。(d1)~(d4)はそういう行為が可能なように、特に選ばれた性質なんですよ(^^;)。
[定理3]
性質(d1)~(d4)は、行列式det(a1,a2,・・・,an)を特徴づける。すなわち(d1)~(d4)を満たすn個のベクトルを変数とする関数det(A)は、(1)でなければならない。
[証明]
1) det(a1,a2,・・・,an)を強引に展開する
(d4)で利用した自然基底{e1,e2,・・・,en}を使います。A=(ajk)のk列目を表す縦ベクトルakは自然基底を使うと、
と表せるので、
(3)
になります。(3)に(d1)を使って展開する訳ですが、見当をつけるために、
という積を考えてみます。
(4)
(4)の1段目から2段目への移行,2段目から3段目への移行において、形式的に(d1)と全く同じ「分配」になってますよね?。4段目はajkの後ろの添え字kについてまとめただけです。ただし(j,k)=(j1,1)のajkと(j,k)=(j2,2)のajkの積をaj11 aj22と書くと訳わかんなくなるので、aj1, 1 aj2, 2と書きました。ここで前半の添え字j1とj2は1~2を自由に動けます。それは(4)の1段目から3段目への移行過程を追えば、明らかと思います。5段目はΣj1Σj2をΣj1, j2=1~2と略記しただけです。
でも同様な事が起きます。結局現れる項は、各Σからajkを1個ずつ拾ってかけたものなので、
という形をしていて、j1,j2,j3がスロットルマシンの窓のように、j1,j2,j3=1~3をグルグル回るというイメージです(^^)。そうすると(3)は積、
に対応するので、
(5)
という形でなければなりません。ejkがついてまわるのは、ejはajkの前半の添え字と同じ添え字jを持つからです。
(5)の右辺に(d2)を適用します。
(6)
(6)を(5)に考慮すれば、
(7)
が得られます。
2) j≠kを2つの異なる列番号として、aj=akならdet(A)=0である事を証明する
(d3)より、
∴
(8)
(8)より(7)右辺のdet(ej1,ej2,・・・,ejn)の中に重複する添え字があれば、det(ej1,ej2,・・・,ejn)=0。よって、(j1j2・・・jn)の並びで重複番号のない順列だけが残るので、
(9)
ここでΣj1j2・・・jnは[定義4]に従い、並び(1 2 ・・・ n)の任意の置換(j1j2・・・jn)についての和。
3) det(ej1,ej2,・・・,ejn)をdet(e1,e2,・・・,en)に戻す
置換(1 2 ・・・ n) → (j1j2・・・jn)をp(1 2 ・・・ n)=(j1j2・・・jn)と書く。逆置換p-1はp-1(j1j2・・・jn)=(1 2 ・・・ n)と書ける。
(9)の右辺の各項、
をp-1で並べ替える。p-1の定義より、p-1で並べ替えれば、
(10)
(11)
である。ここに(10)の(k1k2・・・kn)は、p-1(1 2 ・・・ n)=(k1k2・・・kn)。(11)右辺の±は(d3)による。
(11)の符号を決定する。置換pを互換に分解すれば互換数をmとして、
p=t(km,Lm)・t(km-1,Lm-1)・・・・・t(k2,L2)・t(k1,L1) (12)
の形になる。逆置換p-1としては、
p-1=t(k1,L1)・t(k2,L2)・・・・・t(km-1,Lm-1)・t(km,Lm) (13)
を取れば十分である。すなわちp-1の互換数はpの互換数mに等しいとできる。m=t(k1k2・・・kn)とできるので(11)は、
さらに(d4)と[定義5]を使えば、
(14)
4) Σj1j2・・・jn=Σk1k2・・・knである事を示す
置換全体の集合と逆置換全体の集合を、P={(j1j2・・・jn)|(j1j2・・・jn)=p(1 2 ・・・ n)}とP-1={(k1k2・・・kn)|(k1k2・・・kn)=p-1(1 2 ・・・ n)}で定義する。
(12),(13)より置換もその逆置換も、互換の合成として置換である。よって逆置換は置換であり、置換はある置換の逆置換に等しい。従って、(j1j2・・・jn)∈P ⇒ (j1j2・・・jn)∈P-1 かつ (k1k2・・・kn)∈P-1 ⇒ (k1k2・・・kn)∈P が成り立ちP=P-1であるので、Σj1j2・・・jn=Σk1k2・・・knが言える。
∴(10),(14)から、
(15)
が成り立つ。
以上まとめれば(3),(9),(15)より
(16)
なので、(d1)~(d4)を満たすn個のベクトル変数を持つ関数det(A)は、(1)以外にない。
[証明終]
そして最後にエディントンさんが登場します。(16)右辺のΣは添数j1,j2,・・・,jnに重複番号があってはならないという制限がつくために、かなり扱いにくいものになります。もしj1,j2,・・・,jnが完全に独立に1~nを自由に動けたら、[定理3]の1)の中で述べたスロットルマシーンのイメージで、形式的には非常に扱いやすくなるというのは、わかって頂けると思います。その望みをかなえてくれるのが、エディントンのイプシロンです。
[定義6]
(17)
エディントンのイプシロンε(j1j2・・・jn)は具体的には、
(18)
です。これは[定理3]の2)と3)で明らかと思います。(18)を使えば(16)は、
(19)
になります。(19)でj1,j2,・・・,jn=1~nは完全に自由です(=1~nは省略しました)。j1,j2,・・・,jnの中に重複があれば自動的に0になるのでOKよ、という訳です(^^)。
2.まとめ
もし(d1)~(d4)を行列式の公理とみなすなら、[定理3]はwell difined性の証明になります。これは公理論ではよくある事態です。具体的な定義(1)があり、同じものを(d1)~(d4)でもちゃんと定義できる事を確認した訳です。(d1)~(d4)の方が行列式の性質をもろに記述してるので、(1)より(d1)~(d4)の方が使い勝手が良いのです。
well difined性の観点から言うと、(d1)~(d4) ⇒ (1)を証明しただけではまだ道のりの半分で、厳密には(1) ⇒ (d1)~(d4)も(1)から直接証明しないと完全ではありません。そうでないと(d1)~(d4) ⇔ (1)とは言えないからです。(d1)~(d4)から(1)を導いても、(1)が(d1)~(d4)を満たさない論理的可能性はいちおうあります。しかし今回は行列式が(1)でOKだという前提があったので((1) ⇒ (d1)~(d4)は先人やってくれてた(^^))、そこは省略しました。
よって以降は、(1)から添え字と闘いながら(d1)~(d4)を直接証明する事無く、(d1)~(d4)を「自明」として使う事ができます。またエディントンのεは一種の省略記法とみなせますが、実際に使用してみると非常に便利だとすぐわかります。
well difined性の証明は普通、確認のためのたんなるルーティン・ワークで終わります。(d1)~(d4)の目的を理解していれば[定理3]の証明も地味ぃ~なルーティン・ワークではあるんですが、行列式では特に[定理3]の内容が、ほぼ行列式の理論展開の決定打になります。
このように少なくとも数学では、適切な公理的手法と省略記法の導入が、侮れない威力を発揮する事があります。それらは表現を変えただけに過ぎないにも関わらず。