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第2回 ε−δ論法 [微分積分]

第2回 ε−δ論法

 

xが点a限りなく近づくと、その近づき方によらず、関数f(x)l限りなく近づくとき、lを点aにおけるf(x)極限値といい、記号

  ed-000.png

  

などであらわす。また、このとき、f(x)は点al収束するという。

 

高校数学流の関数の極限の定義は上述のようなものであろうが、この定義は感覚的すぎて、正確な議論を進めることができないので、次のように関数の極限を定義することにする。

 

関数の極限の定義(ε−δ論法)

任意の正数εに対して、ある正数δが存在し、

  ed-001.png

であるとき、f(x)は点aで収束するといい、記号

  ed-000.png

であらわす。

また、このとき、lを点aにおけるf(x)の極限値という。

 

論理記号を使って表すと、

  ed-002.png

より厳密に表すと

  ed-003.png

 

関数f(x)が点alに収束しないは、(1)を否定すればよく、したがって、

  ed-004.png

がその定義になる。

 

なお、全称記号∀は英単語「any(任意の)」、あるいは、「all(すべての)」、存在記号∃は英単語「exist(存在する)」を記号化したもので、∀ε>0は「任意のε>0に対して」、「すべてのε>0に対して」、∃εは「あるε>0が存在して」などと読めばよい。

蛇足ながら、記号⇒は「ならば」、∧は「かつ」の意味である。

 

したがって、(2)は、

「ある実数ε>0が存在して、任意の実数δ>0に対して、ある実数xが存在して、

  ed-005.png

である」

または

「ある実数ε>0が存在して、任意の実数δ>0に対して、

  ed-005.png

を満たす、ある実数xが存在する」

などと読めばよい。

 

 

問題1 次のことを示せ。

  

【解】

任意の正数εに対して、δ=ε>0とすれば、

  ed-006.png

よって、

  

(解答終)

 

 

問題2 cを定数とするとき、次のことを(ε−δ論法を用いて)証明せよ。

  

【解】

c=0のとき、

  

は明らか。

そこで、c≠0とする。

任意の正数εに対して、ならば、

  ed-007.png

となるので、

  

に定めれば、

  ed-008.png  

ならば、

  ed-009.png

となり、

  

(解答終)

 

問題3 a>0とする。このとき、次のことを示せ。

  

【解】

とすると、

  ed-010.png

よって、任意の正数εに対して

  

とすれば、

  ed-0010.png

よって、

  

(解答終)

 

問題4 次のことを示せ。

  

【解】

任意の正数εに対して、δ=εと定めると、

  

ならば

  

よって、

  

(解答終)

 

 

問題5 次のことを(ε−δ論法を用いて)証明せよ。

  

【解】

とすると、

  

となるので、

  

となるように正数δを定めればよい。

0<δ≦1のとき、δ²≦δだから、

  ed-013.png

となるようにδを定めればよい。

したがって、δ>1の場合を含めて、

任意の正数εに対して、δ

  ed-014.png

に定めれば、

  ed-015.png

となり、

  

ここで、記号min{a,b}は、abのうちの大きくない数、すなわち、

  ed-06.png

である。

(解答終)

 

δεに対して一意に定まるものではないので、次のような解答を作ることも可能。

 

【別解】

とすると、

  ed-017.png

したがって、任意の正数εに対して、

  ed-018.png

となるようにδを定めればよい。

2次方程式

  

から、解は

  ed-021.png

となるが、δ>0なので、

  ed-023.png

よって、

任意の正数εに対して、 とすれば、

  ed-024.png

となり、

  

(解答終)

 

なお、

一般に、δaεの値によって定まるのでと表すことがあるが、問題3や問題5のように、aεの値によって一意に定まるものではないので、関数の意味でないことに注意。

 

発展問題 a≠0とする。このとき、ε−δ論法を用いて、次のことを示せ。

  

 

 


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