お前らに質問(12月16日 数列の極限) [お前らに質問]
お前らに質問(12月16日 数列の極限)
本日、12月16日の数学の記事、数列の極限で、「みんなが大好き」ε−δ論法の一種、ε−N論法をバリバリ使った。
数式はいっぱい出てくるので、So-netブログ名物の1記事10万字以内というオキテに触れて、記事中の数式を50近く、画像に変換し、それを記事に貼り付けるという気が遠くなるような作業をやる羽目になってしまった。
これから、ねこ騙し数学で取り扱う内容の前提知識となる内容なので、これを疎かにはできないにゃ。
というわけで、お前らには、数列の極限に関する問題をいくつかといてもらうことにするにゃ。
問題1 数列が収束しないとはどういうことか。その定義を記せ。
と、いきなり質問しても、質問が曖昧すぎて答えられないかもしれないので、数列の収束に関する定義を記すにゃ。
ある実数αが存在し、任意の正数ε>0に対して、ある自然数Nが存在し、n≧Nを満たすすべての自然数nについて、
であるとき、数列はαに収束するといい、また、αをの極限値という。
実数全体の集合を、自然数全体の集合をとすると、
といった感じになりますか。
(1)が数列の収束の定義なのだから、これを否定すれば、収束しないの定義になるわな。
そして、それを日常事は著しく異なる数学語に翻訳すればよい。
翻訳した数学語を、自然な日本語――英語であろうが同じだが――に直そうとすると、意味が変わることが往々にして生じるので、やめたほうがいいケロよ。
日本語としてどんなに不自然であろうと、翻訳数学語に慣れるしかない!!
ところで、
「ある自然数Nがあって、どんな自然数nに対しても、N≧nである」
と
「どんな自然数nに対しても、ある自然数Nがあって、N≧nである」
は同じ意味ですか?
怪しげな記号を使うと、
と
とかになりますか。
違うとすれば、命題P1とP2のどちらが真の命題か、あるいは、どちらも真、ともに偽か、について考えるといいにゃ。
問題2 、かつ、α>0とするとき、ある自然数Nが存在し、n≧Nである全ての自然数nについて、
であることを示せ。
この極限値がαたとえ無量大数分の1という限りなく0に近い数であろうと、その極限値がα>0でありさえすれば、上のことは必ず成り立つ。
問題3 数列が収束するとき、は有界である、
すなわち、
である実数Mが存在する。
このことを利用して、極限の公式
を証明せよ。
ノーヒントじゃ辛いかもしれないので、心優しいネムネコはヒントを出してやるにゃ。
【ヒント】
とし、次のように変形せよ。
もう答を教えたようなものだけれど…。
数列の極限 [微分積分]
数列の極限
§1 数列の極限
定理0 任意の正数ε>0に対して、
ならば、a=0である。
【証明】
a>0とすると、a/2>0。
εは任意の定数なので、ε=a/2>0とおくと、
となり矛盾。したがって、a=0である。
(証明終)
自然数全体の集合から実数全体の集合への写像
数列において、任意の正数εに対して、適当な自然数Nを選ぶと、n≧Nのすべての自然数nについて、
となるとき、
であらわし、数列はαに収束するという。また、αを数列の極限値という。
すなわち、
であるとき、
と表す。
定理1 (極限値の一意性)
【証明】
となる自然数N₁、N₂が存在する。
εは任意の正数なので、α−β=0、すなわち、α=βとなる。
(証明終)
定理2 (数列の極限の公式)
【略証】
(1) c=0のときは明らか。
c≠0のとき、だから、任意の正数εに対して、ある自然数Nが存在し、
よって、
(2) だから、任意のε>0に対して、ある自然数N₁、N₂があって、
(3) 任意のε>0に対し、
とすると、ある自然数Nが存在して、
したがって、
(4) 任意のε>0に対して、
とおくと、ある自然数Nが存在して、
となる。
このとき、
よって、
したがって、
ゆえに、(3)より
(5) だから、任意のε>0に対して、ある自然数Nが存在し、
三角不等式より、
(証明終)
定理3 (ハサミ打ちの定理)
数列に対して、
が成り立ち、
とする。このとき
である。
【証明】
数列はαに収束するので、任意の正数εに対して、ある自然数N₁があって、
数列はαに収束するので、任意の正数εに対して、ある自然数N₂があって、
よって、
(証明終)
定理4 (数列の大小と極限)
数列は収束し、
が成り立つならば、
が成り立つ。
【証明】
数列はαに収束するので、に対して、ある自然数N₁があって、n≧N₁ならば、
数列はβに収束するので、に対して、ある自然数N₂があって、n≧N₂ならば、
となり、矛盾する。
よって、α≦βである。
(証明終)
定理5 (収束する数列の有界性)
収束する数列は有界である。
【証明】
数列が実数αに収束するとすると、ε=1に対して、あるNが存在して、
である。
そこで、nによらない正の定数Mを
とおくと、
である。
また、n≧Nに関しては
よって、すべての自然数nについてが成り立つので、数列は有界である。
(証明終)
集合が上に有界なとき、数列は上に有界であるといい、集合が下に有界なとき、数列は下に有界であるという。
定理6 (単調数列の収束)
数列が単調増加かつ上に有界(単調減少かつ下に有界)ならばは収束する。
【証明】
上に有界な単調増加数列の場合について証明する。
上限の定義より、
(1) すべての自然数nについて、
(2) 任意の正数εに対して、
となるが存在する。
したがって、n≧Nであるすべてのnについて、
よって、上に有界な単調増加数列は収束する。
(証明終)
定理7 (カントールの区間縮小法の原理)
閉区間がを満たすならば、
である。
【証明】
条件より、
である。
よって、数列は上に有界な単調増加数列、数列は下に有界な単調減少数列となり、定理6より収束する。
である。
したがって、
である。
となるので、c=α。
よって、
(証明終)