お前らに質問(12月06日 微分) [お前らに質問]
お前らに質問(12月06日 微分)
ddt³さんが提出した微分の定義をまず紹介。
関数f(x)が点xで
を満たす定数Aが存在するとき、関数f(x)は点xで微分可能という。
さてさて、
お前らには、この定義にしたがって、次の定理を証明してもらおうか。
問題 次の定理を証明せよ。
定理 関数f(x)が点xで微分可能ならば、f(x)は点xで連続である。
連続の定義がわからないというふざけた奴がいるかもしれないので、
であるとき、関数f(x)は点xで連続であるという。
要するに、(1)から
あるいは、
などを導けってわけ。
言っておくけれど、
かどうかはわからないし、そもそも、なんて極限が存在するかどうかもわからないので、
といったことが許されるかどうかも不明だケロよ。
だから、証明では、この点に留意すること。
こんなのはちょろいぜというヤツは、さらに、ε−δ(いぷしろん・でるた)論法を使って、この定理を証明し、その証明をこの記事のコメントに書き込んで、ネムネコのもとに送信するように。
首を長くして、お待ちしております。
工学野郎の思う微分_1 【ddt³さん、半回復記念、特別寄稿記事】 [ddt³さんの部屋]
【ddt³さん、半回復記念特別寄稿】 工学野郎の思う微分_1
先日「自宅のPCが起動しなくなったぁ~!」と悲鳴をあげましたが、新しいPCを購入し(マザーボードがお釈迦という診断でした)、旧PCのHDは抜き出して外付け装置に移植しデータ救出。目出度しめでたし・・・のはずだったのですが、昨日外付けHDのデータを内蔵HDに移そうと思ってアクセスしたら、「フォーマットされていません」が出やがったんですよ(^^;)。「これは外付け装置の外周りの故障に違いない。中に移植したHDは無事に違いない!(そう思いたい!)」という状況になっちゃいました(^^;)。
・・・という訳で、半復活記念です(^^)。
1.二つの微分可能の定義
とりあえず普通の微分可能の定義をあげます。
[定義-1 微分可能]
関数f(x)に対して、
という計算が可能なとき、関数f(x)はxで微分可能という。関数f(x)がxで微分可能なら、(1)の結果をf'(x)と書く。すなわち、
ところが現代の(20世紀以降の)数学は、次の微分可能の定義を正式採用します。
[定義-2 微分可能]
hに依存しないa(x)が存在し、任意のhで、
が成り立つとき、関数f(x)はxで微分可能という。ただしO(h2)は、
を満たす(※)。
(※)
(3)、(4)ではなく、
関数fが
を満たすとき、関数fは点xで微分可能である、と定義するほうがメジャー。たとえば、高木貞治の「解析概論」。
また、ε−δ論法との兼ね合いで、
をもって、微分可能を定義する流儀もある。
英単語”where”は、日本語の「ここで」くらいの意味。
Ο(h²)、ο(h)に登場する、記号Οとοは、ともにLandau(らんだう)の記号と呼ばれるもの。
Ο(h²)、ο(h)の括弧()の中のh²、hにはそれぞれ意味があるのだけれど、これをやりだしたら、際限がなくなるので、ここでは触れない(^^ゞ。
これには、ちょっと、特殊な演算規則、色々なお約束事があるので。
「これでは曖昧すぎる」というヒトには、ε−δ論法による定義を。
任意の正数ε>0に対し、ある正数δ>0が存在し、0<|h|<δを満たす全ての実数hに関して、
が成り立つ、hに無関係な関数(?)aが存在するとき、関数fは点xで微分可能であるといい、
で表す、
といった感じになる。
(※終)
[定義-2]は、さすがに数学科で正式採用されただけあって不要に一般化されていて、一回読んだだけでは、いったい何を言ってんだかわかんないと思います(^^;)。しかし[定義-1]と[定義-2]は同等なのです。ここで同等とは、[定義-1]が成り立つなら必ず[定義-2]が成り立つし、[定義-2]が成り立てば必ず[定義-1]が成り立つ、という事です。[定義-1]と[定義-2]は、互いに互いの必要十分条件だ、という事です。
[定義-2]を採用するメリットこそ、ここで話したい事なのですが、まずは[定義-1]と[定義-2]は同等である事を証明します。それがないと話が進まないので。
[定理-1]
[定義-1]と[定義-2]は、同等な微分の定義である。
[証明]
1)[定義-2]⇒[定義-1]
[定義-2]が成り立つとすれば、(3)に次の変形が可能である。
h≠0のとき、
hは任意だったから、h→0でもかまわない。
上記に(4)を使えば、
となり、[定義-2]が成り立てばa(x)は存在するから、上記左辺の計算は可能である。これは[定義-1]。
2)[定義-1]⇒[定義-2]
[定義-1]が成り立つとすれば、(2)で定義されるf'(x)が存在する。そこで、
と定義する。上記に(2)を考慮すれば、
を導ける。さらにf'(x)はhに依存せず存在するので、それをa(x)と書いても良い。f'(x)をa(x)でおきかえ、(5)を(3)の形に移項すれば(6)((4))も成り立つ事から、これは[定義-2]である。
[証明終]
という訳で微分の定義としては、どっちでも良いんですよ。にも関わらず20世紀の数学科が、[定義-2]の表現を選んだのは、それがまず概念的,理論的に非常に有用だったからです。ここからは、その有用性について語るつもりです。
ちなみに「[定義-2]が不要に一般化されてる」というのは、[定理-1]の証明過程から明らかなように、[定義-2]は本来、h→0という状況で考えるのが目的なのは明瞭だからです。にも関わらず、任意のhでとなってしまうところが数学科(^^;)。
以後、hが0に近い事をh~0と書きます(hはほとんど0と読む)。[定理-1]の証明過程から(3)でa(x)をf'(x)と書いてもOKなのも明らかでしょう。
(10)は実質的には、h→0という状況を念頭においた式でした。h→0ならh~0であり、hの大きさはカスです。しかしここで皆さんに問いたいのは、大きい/小さいはどうやって判断してますか?、という話です。
h=0.1なら十分小さいと感じますけれど、それは普通h=1を基準にするからです。もしh=0.01を基準にしたら、h=0.1は基準より10倍も大きいです。何を言いたいかというと、大きい/小さいを言うためには、基準の大きさが必要ですよね?、という事です。基準の大きさでhを割って、その比率でhの大きさを判断してませんか?、という事です。
[定義-2]ではO(h2)をhで割ってました。という事は、O(h2)の大きさをhを基準に測ると言ってるのと同じです。ところが(4)が成り立つのでh~0でカスなhに対し、O(h2)は、h~0でさらにカスだという事になります。カス過ぎるものは無視したって、とりあえずOKなはずです。問題は人間が、どこまでの精度を求めるかでしょう。しかし最初は最低限の近似ですよね?。そして理屈の上では最低限の近似も、無限に精度を上げる事ができます。最低限の近似を考慮するだけで一般的には理論を組み立て可能です。よって理論屋な微分ユーザーの欲求からすれば、(10)のO(h2)は無視して良いのです!(^^)。
となります。(11)の意味はなんでしょう?。こうなります(^^)。
(D) 微小入力では、出力は入力に比例する.
・・・です。
hはh~0なので、hが微小入力です。その出力はf'(x)・hです。だってh=0ならf(x+h)=f(x)なんだから、という訳です。そしてf'(x)・hは、確かにhに比例します。比例定数は微分すればf'(x)と出るよ、というのが(11)の意味です。
(D)を認めるという事は概念上の話としては、微分可能な関数の一点には、理想化すればその接線が住んでると認めるのと同じです。これは、瞬間速度f'(t)を定義に従って計算する時に薄々ついてまわる気持ち悪さ、「瞬間では動いてないのに速度あり?」という疑問に対する概念上の答でもあります。
「動いてないけど接線はいるんだ。だから傾きはある。文句あっかぁ~!」
・・・という訳です(^^;)。
h~0なので(11)は、x近傍の局所の話です。接線は一次関数ですが、一次関数は線形関数とも呼ばれます。よって微分とは、局所線形化をやりたいという人間の意志だったのです。その意志を許容する条件が、微分可能という条件だった事になります。
しかし、いくら(11)の形が理論的に使い出があり、概念的にわかりやすくても(← 本当か?)、計算手段として不便だったら、数学屋さんたちはきっと別の表現に走ったはずです。じつは(10),(11)の形は、計算手段としても非常に使い出があります。それを見るためにここでは、四則演算に対する微分公式を証明してみます。
和の微分公式は、
でした。これを通常は、まだ見ぬ結論(12)の姿を想像しながら、
h≠0のとき、
とこねくり回し、(12)を導くわけですが、もし(10)を使えば、
と目標物であるf'(x)とg'(x)が、初っ端から眼前に現れるので、後は微分の定義式を思い出すだけで、
という変形はたやすいはずです。上記に条件(4)を使えば(12)です。なれてくると(4)は当然として、O(h2)の項は、書く事すらしなくなります(※)。
(※)
としてもよい。
そして、Ο(h²)の特殊な演算器則
を使うと、
h≠0のとき
としてよい。
上記の演算規則を使わずに、
としてもいい。
ランダウの記号を用いた算法では、記号の胡散臭さ、疚(やま)しさ――記事を書く数学屋が感じる疚しさ、後ろめたさ!!――を少しでも軽減するために、極限を→で表すことが多い(^_^;)。
(※終)
定数倍の微分公式も同様です。
積の微分公式は、(13)のO(h2)の項を失くした形で((11)の形で)辺々の積をとり、
最後は(14)と(11)の形を直接比べ、hで割る操作もlimh→0の操作も省略して結論を出しちゃいました(^^)。
面倒くさいので省略しますが、商の微分公式も合成関数の微分公式も、同じくらい簡単に導けます。最後に、ネコ先生の大嫌いなロピタルの定理を証明しましょう。
[定理-2]
関数f(x)とg(x)が、あるxでf(x)=g(x =0、かつg'(x)≠0とする。このとき、
[証明(?)]
(11)を使い、f(x)=g(x)=0かつg'(x)≠0であるから、
より明らか。
[証明終]
なれてくると(16)を見た瞬間に、それは明らか!と思えるようになります(^^)。しかしロピタルの定理の運用には、十分な注意が必要です。それはネコ先生の仰る通りなのです(^^;)。
(おまけ)
h≠0のとき、