今日のアニソン、アリスで『Gravity=Reality』 [今日のアニソン]
気のせいかな思っていたんだけれど、
北海道で冷え込み強まる 帯広で初霜と初氷 #nhk_news https://t.co/1FpQuYV5ng
— NHKニュース (@nhk_news) 2018年10月17日
新潟の最低気温10.6℃だったというし、寒くて目が覚めるケロよ。
[座屈ってご存知ですか?] 第3回 [ddt³さんの部屋]
5.座屈方程式の解の解釈
長柱の座屈方程式(14)は、力の釣り合いから導いた釣り合い方程式です。全ての釣り合い方程式には、最小エネルギー原理が対応します。(14)に対応する系のエネルギーは、
と書けます。右辺1項目がゼンマイバネにたまる回転バネのエネルギーを表し、符号も含めた2項目が外力Pのいわゆるポテンシャルエネルギーを表しますが、こいつの出どころはここでは余り気にしないで下さい(^^;)。それより重要なのは、系のエネルギー(20)が最小になる時に、釣り合い方程式(14)が満たされるという事実です。
系のエネルギーとは、外力作用によって系がどれだけ無理して変形したかの指標と考える事が出来ます。それが最小のとき釣り合い形状が得られるという事は、材料は与えられた外力条件に応じて最も楽な姿勢で変形する、と擬人化できます。擬人化は擬人化であって、本当の物理的意味を捉えてない時もありますが、今回は役に立ちます。
(19)から、圧縮力Pが、
ではない時、δ=0でなければなりません。すなわちu(x)=0です。つまりPが(21)を満たさない時は、柱は曲がりたくない(曲がらない)のです。それが最も楽だから。
一方Pが(21)を満たす時は、δ≠0「も」可能であり、柱は曲がって「も」良いよと言ってます。柱を構成する材料にとっては、曲がっても曲がらなくても同じくらい楽だ(もしくは苦しい)からです。では曲がる/曲がらないのどちらの状態を、現実の柱はとるのでしょう?。曲がったとしても曲がらなかったとしても釣り合い形状は少なくとも2つある訳で、現実の柱の挙動はどちらかを選択している事になります。材料力学(力の釣り合い)だけではそれが決まらない以上、何かきっかけがなければなりません。
ちなみに(21)を満たす圧縮力Pを座屈荷重といい、通常はPcrで表します。
6.外乱の導入
図-1,図-2を見る限り、たとえP=Pcrであってもq=0なら曲がる理由はなさそうです。だって真っすぐ鉛直下向きに圧縮されるだけですから。しかし実現象では、P=Pcrなら曲がる理由しかない、というのが現実での答えです。
まず図-1では、相場の組み立て誤差から水平材は厳密に水平には必ずならず、親柱は水平材から小さいかも知れないが必ず水平力を受けます。これによって親柱は小さいかも知れないが必ず曲がります。曲がったらPの作用位置が軸線から外れるので、Pによる回転力も加わります。曲がりが小さい間は、この回転力も小さいでしょうが。
親柱だって厳密に垂直に建てれる訳ありません。これによってもさっきと同じ事が起こります。さらに親柱が厳密に真っすぐだという保証だってありません。親柱は最初からそもそも曲がっているかも知れないのです。18世紀の木材柱なら、そんな事は日常茶飯事だったでしょう。現在の鋼製製品にすら製作較差でこういう事は起こり、初期不整といわれます。
僅かかも知れませんが、曲がる理由はまだあります。風吹けば電信柱は揺れますよね?。トラック通れば電信柱は揺れますよね?。けっこう目に見えるくらいに(^^;)。水平方向に揺れるという事は、曲がってるという事です。18世紀にだって風は吹きます。トラックは通らないでしょうが、足場の上で職人達が動き回れば、その振動で親柱は揺れます(だから足場は怖い(^^;))。
このように現実を見まわしてみると、現実には微小な曲げを伴う圧縮作用しかないのがわかります。このような、理論では無視しうるであろう不慮の作用を、系への外乱と言います。
外乱は微小です。普通は無視できるはずです。はい、普通は無視できます。P≠Pcrの場合、柱は曲がりたくないのです。曲がりたくないので外乱により強制的に曲げられたとしても、概ね(10)に従い曲がった状態からの復元力が働くと考えられます。よって理屈の上では圧縮を受ける柱は、常に微小振動していると考えられます。微小振動するだけなら、真っすぐ圧縮されてるのとほとんど変わりません。
対してP=Pcrの場合、柱は曲がっても曲がらなくてもどっちでも良く、この世には、曲がるきっかけしかない、のでした(^^;)。なので柱は必ず曲がる釣り合いを選択します。そしてどっちでも良いので、復元力は働きません。ここから最初は小さかった曲がりが増幅されます。
6.座屈現象
一番わかりやすいのは、一端固定-他端自由の柱です。図-5を見れば明らかですよね?。図-5では柱上端は自由,下端は地面の中に根入れされてると思って下さい。こういう場合だって、支持条件に応じた座屈荷重は当然あります。
外乱により曲がり、最初δ0まで柱頭がずれたとします。δ0は微小ですが柱頭にかかる回転力Pcr×δ0は、柱が曲がることによって追加される回転力です。ところが柱は曲げに抵抗せず、復元力は働かないのでした。回転力が追加された以上、柱はより大きく曲がり、δ0<δ1に達します。
Pcr×δ0<Pcr×δ1です。より大きな回転力を受けた柱はより大きく曲がり、δ0<δ1<δ2に達します。Pcr×δ0<Pcr×δ1<Pcr×δ2です。この止める事の出来ないフィードバックδ0<δ1<δ2<・・・によって、曲がり過ぎて柱が折れるという現象が、長柱の座屈です。
外乱は施工誤差や初期不整であったり、風が原因であったり人間の作業振動から生じるので、抜本対策がありません。また座屈現象は自励的なフィードバック過程なので、いったん始まったら止める事も出来ません。この意味で座屈は、やっかいな現象なんです。
7.まとめ
総じていえば、真っすぐ圧縮されるだけなら真っすぐ縮むだけだという直感は、ほとんど正しかった訳です。そうでないのは座屈荷重という「特定の」圧縮力の時だけです。それ以外の全ての圧縮力で、柱は単純に縮むだけです。
逆に言うと、オイラーはとても鋭かったと言えます。(10)の開発者であり(10)の限界を熟知してたからこそ、こういう発想ができたのか?。1.で述べたような事にも気づいていたのか?。
その辺りはわかりませんが、ほとんど難しい計算をすることなく座屈現象の「出だし」を探り当て、「出だし」に「外乱」を結び付けて、定性的には座屈現象の存在を暴いたことになります。これってまるごと2世紀以上も前なんですよね(^^;)。史上初めて明らかになった、構造的不安定性です。でも構造と言ったって、たった一本の棒です。数理ってどこに潜んでいるのか、油断なりませんよね(^^)。
そして2世紀以上前の理論が、多数行われた座屈実験結果も踏まえて現代風にアレンジされ、今でも土木・建築・機械分野では現役の設計基準になっています。オイラーの解析能力は、時代をこえて突出していたと思います。
[付録]
(21)を現在では足場に標準的に用いられる単管パイプ(鋼材)に対して計算してみます。単管パイプはたいてい、
単管パイプ:
φ48.6×2.4
断面積 :A=3.483 cm2
断面2次モーメント:I=9.319 cm4
弾性係数 :E=2.1×106 kgf/cm2
鋼材の強度 :σa=1400 kgf/cm2
くらいになります。
まず鋼材の材料としての耐荷力Pcは、概ね5トンくらいです。
一方、最低の座屈荷重は(21)でn=1とし、
なので、Pcr<Pcとすると、
ですが、
なので、長さ2 m以上の親柱は鋼材の強度で積載可能重量を考えてたら、事故になりかねません。「使用例」の写真を見ればわかるように、高さ2 mの足場なんてすぐ出来ちゃいそうですよね?(^^;)。オイラー先生の見立ては、やっぱり正しいんですよ(^^)。