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古典的な統計力学の話から一気に量子力学誕生前夜に [ねこ騙し物理]

古典的な統計力学の話から一気に量子力学誕生前夜に

 

 ネムネコが大学1年の頃、教養科目で物理化学なるものを受講したことがある。一般教養ということもあってか、その講義で使用した教科書がネムネコの知的(痴的?)好奇心を満たすレベルではなかったので、これよりはレベルが高くて、内容が豊富な本を参考書として買った。

 アトキンスの物理化学なんて高尚なものじゃ〜ない。ネムネコが大学生の頃でもこの本は分厚い上に結構値の張る本だったし、しかも、上下2巻だから、さすがに、この本は手が出なかった。もちろん、アトキンスの物理化学は、一生ものの本で、この1冊――上下2巻ですが(^^ゞ――があれば、物理化学で困ることはないと言われるほどの優れものだということは知っていたけれど、ネムネコは化学専攻じゃなかったし、こんな高い本を買ってもしょうがないということで買わなかった。

 それで、大学の生協の書籍部においてあった、井上勝也著の「物理化学序説」(培風館)を買った。ここで使っている数学は、高校で習う微積分に多少毛が生えている程度のものだったので、当時のネムネコの数学力で十分に事足りるということも購入の理由ではあった。

 今もこの本が売られているのかどうかについては知らないけれど、基礎的な内容を丁寧に書いてあるだけではなく、基本的な量子力学、(化学)熱力学、さらに、(化学)熱力学に基づく化学反応論までもしっかりと書いてあって、非常にいい本だったね。先に書いたように高校の微分積分+αの数学だから、数式はほとんど使っていなかったけれど、物性論なども書いてあって、化学専攻でも、物理専攻でもない、ネムネコには十分な内容の本であった。

 

 ネムネコの物理、化学の知識は素人の域を出ない怪しいものであるけれど、それでも、大学1年生の時よりはいくらかマシになっているので、今、この本を読み返すと、「なんか胡散臭いケロ」と首をひねる箇所が多々あるのは事実。なのですが、大学1年のときに、そして、今も、「この部分はすごいケロ」と思う部分があるので、紹介するにゃ。

 

 地球上の空気の示す圧力は、上空へのぼるほど、一定の規則にしたがって低くなっていることは誰でも知っているが、それを気体分子運動論で考えてみよう。

 いま、ある面から情報へ分子がいかに分布する可を考えるのに、重力の場の中で、分子が持ついろいろの速度の上方への成分が大きい分子ほど高くまで上がると仮定しよう。図1・11のA面(単位面積とする)の圧力は、それからdhだけ下方にあるB面に比べて、dPだけ圧力が低い。これは、AB両面の間に存在する分子の運動によるものである(いまは一方向だけを考える。B面まで下から来る分子の方が、A面までくる分子の量より多いと考えているのあると)。とすると

(1・36)

となる。ここではρB面での気体密度であり、負記号をつけたのは、Phとは方向が逆だとしているからである。いま1 molの理想気体を考えれば、Mは分子量とするとき、

   (1・37)

であり、したがって

  

または、

  (1・38)

これを積分して、

   1-39.png (1・39)

  

積分定数Cは、あきらかに で、P0h = 0のところの圧力である。これから、

   (1・40)

  

を得る。ここでmは分子一個の質量であり、k = R/NAは分子1こあたりの気体定数で、Boltzmann定数である。

 

 圧力Pは、単位体積中にある分子の数nに比例するであろうから、ある高さhでのnの値は、(1・40)式から

   (1・41)

となる。これは、上空への気体分子の分布を示している。

 先に想定したように、hまで上がってくる分子は、速度zであるとき、運動速度で決まる運動エネルギーが、位置エネルギーと同じになるまでは上がると考えられる。すなわち

   (1・42)

(1・41)式を書き換えると、

   (1・43)

である。この式は、分子の分布と速度との関係を示している。

 

通常、物理などでは、速度は英単語のvelocityの頭文字をとりvで表すが、ここではzで表しており、z座標と速度を混同するなどの無用な混乱を招くおそれがあるけれど、

高校程度の数学的知識の範囲だけを使って

  

という関係、つまり、気体分子のマクスウェル・ボルツマンの速度分布則を導き出していることには驚きに値する。

これを初めて目にしたとき、「すごいケロ」と感動したものだった。

この導出が、この著者オリジナルのものなのかどうかについては知らないけれど・・・。

 

(1)式を使うと、

  si-001.png

という、物理学のエネルギー等分配の法則(デューロン・プティの法則)を導くことだってできる。

ここで、<>は平均を表す。

したがって、単原子の気体分子の(平均)運動エネルギーは、絶対温度Tに比例するんだケロ。

さらに言うと、このことは、運動の自由度1あたりにつき、気体分子一個の(平均)運動エネルギーは与えられることを意味している。

気体分子は、実際は、3次元空間を飛び回っているので、自由度は3で、単原子分子のエネルギー

  

になるケロ。

1モルあたりのエネルギーは

  nanda-000.png

よって、1原子分子の定積モル比熱は、

  

2原子分子の運動の自由度は5――2(原子)×3(1原子の自由度)−1(束縛条件)=5――なので、

  

となるにゃ、

空気(窒素、酸素分子)の1モルあたりのエネルギーは

  

よって、空気などの2原子分子の定積モル比熱は

  

となる。

 

のみならず、3次元調和振動子のエネルギー

  

だから、1モルあたりのエネルギーは

  

よって、(金属などの結晶体の)定積モル比熱

  

驚くなかれ、この法則は常温の金属にも当てはまるんだケロ。

気体ではない金属の1モルの定積比熱も気体定数Rで表せるってんだから驚きだにゃ。そう思わないケロか?

 

運動ネルギーmv²/2=Eとおくと、(1)は

  

となる。

さて、高校の物理で、プランクの量子仮説を習ったと思う。

  

ここで、εは量子のエネルギー、hはプランク定数、νは量子の振動数。そして、プランクの量子仮説によれば、量(光)子がとりうるエネルギーはの整数倍のみ。

ということで、(2)と(3)式を組み合わせると、

  si-002.png

と、温度Tのときの、光量子(?)の黒体放射の平均エネルギーが求められる。

さらに、これに謎の係数をかけた

  si-003.png

は単位体積あたりの光量子のエネルギー(エネルギー密度?)になる。

そして、これをν=0から∞まで積分

  nanda-001.png

すると、黒体輻射のエネルギーは絶対温度Tの4乗に比例するというステファン・ボルツマンの法則を導くことができる。

 

【参考】

  

物好きな奴は、この積分公式を用いて、(6)を計算し、計算結果をコメント欄に書いて、ネムネコのところに送信する!!

6)を真面目に計算すると、

  nanda-002.png

したがって、ステファン・ボルツマン定数は

  nanda-003.png

になるらしい。

(参考終)

 

 

また、が1に対して十分小さいとき、

  si-005.png

と近似できるので、(5)式は次のように近似することができる。

  si-006.png

レイリー・ジーンズの公式(?)になるにゃ。

光の振動数が小さいとき、つまり、波長が長いとき、ミクロな現象を支配するプランク定数は消えてしまうんだケロ。

なお、(7)を元に黒体の放射のエネルギーを求めると、

  si-007.png

発散してしまう(笑)。

 

話は前後するけれど、

  si-008.png

だから、が1と比較して十分小さいとき、次のように近似される。

  si-009.png

これは1次元調和振動子の粒子(?)1個のエネルギーと同じ。

つ・ま・り、エネルギー等分配の法則は、が十分に小さいときにしか成立しない近似的な法則ということになるのであった。

 

なお、(8)式の右辺を3倍した

  si-010.png

は金属の比熱理論(アインシュタインの比熱理論)に使われるもの。

より、精密な理論では、零点エネルギーを加えた

  si-011.png

が使われるみたいですが・・・。

ネムネコが考えるに、(9)式の両辺にアボガドロ数をかけ、絶対温度Tで偏微分すると、

  si-012.png

って出てくるんじゃないか。

 

大気圧を手がかりに、マクスウェル・ボルツマン分布、エネルギー等分配の法則、プランクの量子仮説、そして、アインシュタインの比熱の理論と、一気に駆け抜けてしまったケロ。

 

言っておくけれど、ネムネコがするのは、あくまで、数学的なサポートのみ。

物理的な意味を問う質問をネムネコにしても、それは無駄な行為だケロよ。オレは、そんなことは、まったく知らないし、わからないんだから。――ネムネコは形式論者。(数学的)形式がすべてで、(数式の)意味なんてものは考えない(^^ゞ――

物理的な部分のサポートはddt³さんがしてくれるに違いないので、こうしたことで何か聞きたいことがあったら、ddt³さんにドンドン質問するといいケロよ。

 




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