波動方程式2 [微分方程式の解法]
波動方程式2
前回に引き続き、(1次元の)波動方程式
について考える。
その前に、偏導関数の性質の復習。
偏導関数の性質
f(x,y)をR²の開区間D=(a,b)×(c,d)で定義された関数とする。このとき、次のことが成り立つ。
(1) fがxについて偏微分可能でならば、fはyだけの関数である。
(2) ならば、fは定数である。
(3) でかつが連続ならば、fはxだけの関数とyだけの関数との和に等しい。
【証明】
(1) yを固定する。g(x)=f(x,y)は(a,b)上でだから定数である。この値をφ(y)とおくと、f(x,y)=φ(y)で、fはyだけの関数である。
(2) だから(1)よりf(x,y)=φ(y)である。また、だから、
よって、φ(y)は定数である。
(3) だから、はxだけの関数hに等しい。そこで、x₀を固定する。仮定よりはxについて連続だから、
この右辺をΦ(x)、とおけば、
(証明終)
である任意の関数f,gがC²級であるとすると、
が(1)を満たすこと、つまり、が(1)の解になることは前回学んだ。
そこで、次の定理。
定理 (波動関数の一般解)
(ⅰ) 任意のC²級関数に対し、は
を満たす。
(ⅱ) C²級関数が(1)を満たすならば、を満たすC²級関数が存在する。
【証明】
(ⅰ)
(2) ξ=x−ct、η=x+ctとおくと、
同様に、
だから、
偏導関数の性質(3)より、
(証明終)
したがって、は(1)の一般解と考えることができ、これをダランベール(d'Alambert)の解という。
物理的には、c>0のとき、f(x−ct)はx軸の正の方向に速さcで進む波、g(x+ct)はx軸の負の方向に進む波を表す。
(1)を満たす解z=z(x,t)は無数に存在し、これを1つに定めるためには何らかの条件を加えなければならない。そこで、次の(初期)条件を課すことにする。
z=f(x−ct)+g(x+ct)だから、1番目の条件より
2番めの条件より
これを積分すると、
①、②をf(x)、g(x)について解くと、
となり、これから
これをd'Alamertの公式、Stokesの公式という。
問 初期条件が次の場合の解を求めよ。
【解】
d'Alambertの公式より、