第11回 広義2重積分の計算2 [重積分]
第11回 広義2重積分の計算2
前回まで広義積分とは異なるタイプの計算をすることにしますにゃ。
問題1 次の広義積分の値を求めよ。
【解】
この問題は、原点だけ取り除いてあるにゃ。
―――原点で被積分関数が不連続!!―――
D上で1/(x+y)≧0。
次のような増加近似列を考える。
そうすると、
となる。
よって、
となる。
やは存在しないのに、上の積分は存在する。不思議だと思わない?
問題2 次の広義積分の値を求めよ。
【解】
という形が出たら、極座標に座標変換しろと言っているようなもの・・・。
さて、これは次のような近似増加列を考える。
で、お決まりのx=rcosθ、y=sinθとおいて極座標変換する。
そして、
でだ、
になるので、
になる。だから、
ということで、
になる。
になるのは、これまでに何度も証明しているケロ。ロピタルの定理を使ってずるしてもいいにゃ。
で、
だから、ハサミ打ちの定理を使って、
ちなみに、はDで負値関数。
問題3
【解】
D上で。そして、次のような増加近似列を考える。
で、
よって、
なのですが、実際に計算するときはこんな面倒なことをせず、たとえば問題1ならば、
と計算するにゃ。
第10回 広義2重積分 [重積分]
第10回 広義2重積分
近似増加列
近似増加列の定義
次を満たす面積確定の有界閉集合の列をDの近似増加列という。
(1)
(2)Dに含まれる任意の有界閉集合Kに対してとなる自然数nが存在する。
たとえば、
とし、
とすれば、(1)と(2)の条件を満たすので近似増加列になっている。
さらに、用語の説明を続ける。
正値関数とその広義積分
f(x,y)をD上で連続な正値関数、をD上の任意の近似増加列とする。
このとき、
が上に有界だとすると、これはnに関して単調増加なので収束する。
をf(x,y)のD上における広義2重積分という。この極限が存在するときに広義積分は収束するといい、収束しないとき発散するという。
正確に言うと、上の定義は正値関数の2重積分だけれど。
で、収束するのはいいけれど、この極限値が近似増加列のとり方によって変わってもらっては困る。①が意味をもつのは、極限値が近似増加列のとり方によらない必要がある。
定理
f(x,y)はD上の正値関数とする。このとき、D上の増加近似列、に対して
である。
この定理によって、正値関数の広義積分の一意性が保証される。
ということで、早速、問題を解いてみるにゃ。
問題1
【解】
これだとピンとこないかもしれない。
ということです。
D上でだから正値関数。そして、次のような増加近似列を考える。
そうすると、
となり、n→∞とすれば、1になる。よって、
となる。
そして、超有名な次の積分をやる。
問題2
【解】
この積分は
のこと。
D上でだケロ。
で、次のような近似増加列を作る。
x=rcosθ、y=rsinθで極座標変換すると、これは次のようになる。
そうすると、
になる。
よって、
になる。
それでだ、
だから、
さらに、は偶関数なので、
となる。
物理や統計によく出てくる積分だケロ。第9回 2重積分の演習1 [重積分]
第9回 2重積分の演習1
重積分に関しては、とにかく計算ができないことには始まらないので、問題を幾つか解くことにするにゃ。
問題1 次の重積分の値を求めよ。
[解】
Dは縦線集合なので
また、Dを横線集合と考えるならば、
となる。
問題2 次の積分の順序を交換せよ。
【解】
(1)積分領域Dは
図を見るとわかるけれど、これを横線領域で書くと、
になる。
よって、
になる。
ちなみに、
は、y=cosxの逆関数。
(2)積分領域Dは
これを横線集合に書き換えると、
になるので、
問題3 次の重積分を極座標に変換して求めよ。
【解】
(1)x=rcosθ、y=rsinθと座標変換すると、ヤコビアンJ=rとなる。また、Dは次のようにrθ平面に写される。
よって、
ここで、
よって、
これ↓くらいは、暗算でできる―――と言うか、見ただけで答が分かる―――ようになってもらわないと困る。
なのだが、この問題はもっと簡単に計算できる。この場合、
だから、
上の計算では、三角関数の倍角公式
を使っているよ。
ちなみに、ネムネコはこの公式を覚えておらず、使うとき、その場で導く(^^ゞ
数学の公式なんて覚えるもんじゃないにゃ。覚えるとバカになる。そもそも覚えていないから、何年経っても忘れない(^^)
第8回 極座標変換 [重積分]
第8回 極座標変換
極座標(r,θ)といわゆるxy平面のデカルト直交座標とは次の関係がある。
前回、極座標の場合ヤコビアンJ
になるという話をしたにゃ。
だから、次の関係が成り立つ。
定理8(極座標への変換)
Dをxy平面上の積分領域とし、関数f(x,y)は連続関数とする。Dが極座標変換によってrθ平面のEに1対1にうつされるとき、次の関係が成り立つ。
一番わかり易いのは、Dが原点を中心とする半径aの円周とその内部の領域、つまり、
の時、これは極座標平面の
になる。
ということで、早速、問題を。
問題1
【解】
x=rcosθ、y=rsinθとおき、極座標変換すると、極座標平面におけるEは
となるので、
で、とおくと
となるので、
よって、
となる。
問題2
【解】
これは極座標変換によってEは次のようになる。
だから、
となる。
問題1の時のようにと真面目に計算してもいいけれど、{}の中のはθに関する積分の計算に直接関係しないので、問題2の【解】の計算のようにrとθを分離して計算してもいい、この方が計算がすこし楽になる。
半径aの円の中心が必ず原点であるという保証はないケロ。たとえば、次の問題。
問題3
【解】
となる。
よって、で、
となるので、
となる。
第7回 変数変換 [重積分]
第7回 変数変換
1変数関数の積分で置換積分をやったにゃ。α≦t≦βで定義された関数φが滑らかで単調な関数でかつx=φ(t)、a=φ(α)、b=φ(β)であるとき、
になるというヤツだにゃ。
この置換積分のようなものが2重積分にも存在するという話。
級の関数φ、ψがあって、x=φ(u,v)、y=ψ(u,v)であるとき、
という謎の量、ヤコビアンというものを定義する。
ちなみに、
このヤコビアンなる謎の量を導入すると、次のようになるにゃ。
定理7
Dをxy平面の積分領域とし、f(x,y)はDで連続とする。級の変換x=φ(u,v)、y=ψ(u,v)によりDがuv平面のEに1対1に対応するとする。このヤコビアンがJ≠0であるならば、
である。
証明は結構大変なので、これも天下り的に受け入れてもらうことにするにゃ。
感覚的に受け入れてもらうことにするケロ。かりに、x=2u、y=2vという変換があり、xy平面上の0≦x≦1、0≦y≦1という領域Dがuv平面の領域Eにうつされたとするにゃ。
そうすると、x=2u、y=2vなのだから、これは0≦u≦1/2、0≦v≦1/2になる。で、uv平面上のEの面積を計算すると、1/2×1/2=1/4。面積が変わっている。だから、uv上で積分する場合、面積を4倍しないといけない。で、このヤコビアンを計算すると、
なので、これを掛けてやると、面積の辻褄が合うというわけ。
つまり、一般に図形を変換すると元の図形と面積が変わってしまうので、面積の辻褄合わせをしないといけない。それがヤコビアンという量という。
たとえば、原点を中心とする半径aの円の内部と円周の領域D
があるとする。この図形の面積はだにゃ。
これをx=rsinθ,y=rcosθという極座標を用いて(x,y)→(r,θ)に変換する。そうすると、xy平面のDはrθ平面上の0≦r≦a、0≦θ≦2πという長方形のEに変換される。このuv平面上のEの面積を求めると、2πaなので、元の面積と変わってしまっている。
だから、面積の辻褄合わせが必要。
そこで、ヤコビアンを求めてみる。
になるので、
となり、DとEの面積が一致する。
ちなみに
だにゃ。
また、定理7より
これは公式のようなものだから、覚えておいたほうがいい。
第6回 少しだけ一次変換 [重積分]
第6回 少しだけ一次変換
1次変換
x'=ax+by、y'=cd+dy・・・①によって、点P(x,y)と点P'(x',y')との関係を定めると、平面座標上の点の集合R×RからR×Rへの写像が与えられる。このような写像を1次変換といい、①を変換式という。これを行列であらわすと
となる。
行列
によって定まるから、行列Aは1次変換をあらわす行列といい、簡単に1次変換Aということがある。
で、
とおき、基本ベクトル
のAによる像を求めると、
となる。
で、行列式det(A)=ad–bc≠0のときaとbは平行ではなく、この2つのベクトルaとbで作られる平行四辺形の面積は
となる。
Aで1次変換すると、その像の面積は|ad–bc|倍になるんだケロ。
じゃあ、行列式が0の時はどうなるか。
の場合を調べてみるにゃ。
となるので、
となって、平面上の点はすべて原点Oと点(1,2)を結ぶ直線上に存在することになる。
零行列の時は像はすべて原点だにゃ。
だから、行列式の値が0のとき、全平面は原点を通る直線、または平面上の原点にうつされると予想できるにゃ。
これで終わるのもなんなので、ついでにもう少し1次変換に関する話をするにゃ。
問題1
1次変換
によって、直線l上の点は、すべてこの直線上にうつされた。この直線の方程式を求めよ。
【解】
自分自身にうつされる直線のことを不動直線というにゃ。
直線の方程式をy=mx+n、この直線上の点を(t,mt+n)とする。
この点((1–2m)t–2n,−3t)
は直線l:y=mx+n上にあるので、
これはすべてのtについて成立するので、
②式より
で、1–2m≠0だから、③式の両辺を1–2mでわると、n=0
よって、
ここで終わっちゃ〜いけないにゃ。
x=c(cは定数)も直線だからね。ということで、この直線上の点を(c,s)とすると、
にうつされるけれど、これではy=−3cになってしまうので、不適。
だから、y=3x/2とy=−xが答。問題2
零ベクトルでないが1次変換によってに平行なベクトルにうつされるとき、はどのようなベクトルか。
【解】
に平行なベクトルとはとあらわすことができる。
ということで
で、左辺の行列式の値が0でないとx=0、y=0が解になってしまうので、行列式の値は0ではない。
この2次方程式をとくとk=2、5となる。
ということで、
k=2のときは④より
よりx+y=0となり、y=−x。
k=5のときはになるので、x–2y=0となり、x=2yになる。
ということで、求めるベクトルはとなる。xとyのままだとなにかと誤解されやすいので、それぞれs、tにすると、
ここで、sとtは任意の定数。
このkのことをAの固有値といい、そして、こういうベクトルのことをAの固有ベクトルという。
第5回 行列と行列式 [重積分]
第5回 行列と行列式
高校で習う数学についてまったく知らないので、高校で行列を習っていない人がいるかもしれない。ということで、2×2の正方行列についてちょこっとやるにゃ。
2次の正方行列Aとは
という4つの数の組みたいなものだにゃ。
より一般のm×nの行列は次のようになる。
特にn=mの場合、n次の正方行列という。
で、横の並びを行、縦の並びを列といい、そのi行j列の成分というふうに書くにゃ。一々成分を書くのは大変なので、と略記するにゃ。
列ベクトル、行ベクトル
1×n行列をn次元行ベクトル、m×1行列をm次元列ベクトルという。平面ベクトルやを1×2、1×3の行列を用いてとあらわしたり、列ベクトルを用いて
とあらわしたりするにゃ。
行列の相等
次のような2次の正方行列A、Bがあるとする。
この行列AとBの成分、
であるとき、AとBは等しいといい、A=Bと書く。
より一般の行列m×n行列の場合は、i=1〜m、j=1〜nのすべてのi、jに対してであるとき、A=Bとなる。
行列の和と差
同じ型の2つの行列においてをi-j成分とする行列をAとBの和といい、A+Bであらわす。
2×2の正方行列の場合、
となるにゃ。
上の結果を見れば明らかだけれど、行列の足し算に関して交換法則、つまり、A+B=B+Aが成り立つ。一般の場合も、
となるので和に関して交換法則が成り立つにゃ。
においてをi-j成分とする行列をA–Bであらわすにゃ。
2×2の正方行列の場合
となる。
行列の実数倍
そして、kA=Akは、ほとんど明らかでしょう。
行列の積
m×lの行列とl×nの行列の行列のi-j成分を
で定義するんだケロ。m×lとl×nの行列の積は、m×nの行列になる。これをABと書く。
特に、2×2の正方行列の場合、
となるにゃ。
そして、2×2の行列と2×1の行列(列ベクトル)の積は2×1の行列(列ベクトル)になる。となるにゃ。
さらに、1×2の行列(2列の行ベクトル)と2×1の行列(2行の列ベクトル)との積は1×1の行列(スカラー)になるにゃ。
これは、ベクトル(p,q)とベクトル(r,s)の内積になっている。
そして、
ちなみに、行列同士の積に関しては交換法則、つまり、AB=BAは一般に成り立たない。
零行列と単位行列
すべて成分が0である行列を零行列といい、Oであらわす。
たとえば、
などなど。
単位行列とは、
を成分とする正方行列のことで、記号EやIであらわすにゃ。
2×2の正方行列ならば、
となる。
逆行列
AとXを正方行列とする。で、AX=XA=IとなるXが存在するとき、このXをAの逆行列といい、という。
のとき、
となる。
ad–bc=0のときは逆行列は存在しない。
あくまで2次の正方行列の場合だけれど、このad–bcを行列式といい、det(A)や|A|
であらわす。
と書いたりもするにゃ。
行列式は2次以上の正方行列の場合でも定義できるけれど、2次の正方行列の行列式のように簡単に計算できないんだケロ。
行列を用いた連立2次方程式の解法
となるので、
そして、行列式が0でなければ、逆行列の定義より
となり、連立2元方程式の解が一意に求められる。
で、ad–bc=0とはどういうことなのかというと、
となるので、直線ax+by=pとcx+dy=qが平行ということ。
そして、さらにp=kqのときax+by=pはk(cx+dy)=kqになるのでk≠0ならば、両辺をkで割るとcx+dy=qとなり、ax+by=pとcx+dy=qは同じ直線になる。同じ直線なので解(2直線?の交点?)は無数に存在し、一つに定まらない。したがって、不定。
で、p≠kqのときは、相異なる平行な直線なので、解は無いにゃ。
粗い議論だけれど、そういう話になるにゃ。
第4回 2重積分の計算例 [重積分]
第4回 2重積分の計算例
計算が苦手なネムネコのこと、計算量の多い重積分を取り上げたことを後悔し始めている。
では、早速、やるにゃ。問題1
【解】
積分領域Dを図で示すと上のようになる。ということで、積分領域は次のように書き換えることができる。
だから、
と計算することができる。
ここで、
よって
となる。
これは横線集合で計算しているけれど、もちろん縦線集合としても計算することができる。
縦線集合として計算する場合、
となり、計算が面倒になる。
―――計算する気はない。2重積分の計算問題としてこれを計算して同じ値になるように確かめるケロ!!―――
だから、計算が楽になるように、計算量が減るように積分の順序を選ぶことが大切なんだケロ。上の問題は、縦線集合で計算するか横線集合で計算するかによって計算量が変わるだけだけれど、次の問題の場合、積分の計算順序によって積分の計算ができない(不定積分が求められない!!)。
問題2
【解】
この2重積分を縦線集合で累次積分にすると
となる。
だから、
となる。
これを横線集合上で累次積分化すると、
となるけれど、
の不定積分を求めることが出来ないので、ここから先を計算ができなくなるにゃ。
積分の順序交換
f(x,y)が連続関数で、積分領域Dがx方向、y方向の縦線集合である場合、
が成り立つ。この2つの累次積分の一方から他方への変換を積分の順序交換という。
要するに、最初に縦(y方向)で積分をするか、横(x方向)で積分するか、この積分の計算の順序を交換すること。問題3
【解】
これはこの順序じゃ〜計算できないケロよ。という不定積分を求めることができないからだにゃ。
ということで、積分の順序を次のように交換するんだにゃ。
積分領域Dは縦線集合であらわすと
だけれど、横線集合であらわすと
になるので、
となるにゃ。
ちなみに、
だにゃ。
計算だから、自分で実際に計算しないことには力がつかない。
ということで宿題を一つ。宿題 次の計算をするケロ。
答は7/6と11/40になるらしいケロよ。
第3回 一般の集合上の2重積分 [重積分]
第3回 一般の集合上の2重積分
第1回、第2回で取り上げた2重積分は、有界な長方形領域の2重積分。今回は、より一般の集合上の2重積分を定義し、これを計算できるようにしようというお話です。
定義3(2重積分の定義)
Dをの有界な部分集合とし、f(x,y)をD上の有界な関数とする。このときD⊂Kとなる閉区間Kを1つとり、K上の関数f*(x,y)を次のように定義する。
f*(x,y)がK上で重積分可能なとき、f(x,y)はD上で重積分可能であるといい、その積分の値を
と定義する。
定義4(面積の定義)
定数関数1がの有界な部分集合Dで重積分可能であるとき、Dは面積確定であるといい、その面積|D|を
で定義する。
定理4(面積確定の必要十分条件)の部分集合Dが面積確定である必要十分条件は、Dの境界∂Dの面積が0であることである。
定理4は天下り的に受け入れてほしいニャ。
このように定義すると第1回でやった定理1、定理2は次のように拡張できる。
定理5(重積分の性質)f(x,y)、g(x,y)をD上で積分可能な関数とする。このとき、
(a) cf(x,y)、f(x,y)+g(x,y)もD上で積分可能であり
(b)f(x,y)≧g(x,y)ならば
(c)
定理6(連続関数の可積分性)
関数f(x,y)が領域D上で連続であれば、f(x,y)は積分可能である。
そして、更に縦線集合なるものを定義する。
定義5(縦線集合)
の有界な部分集合Dが閉区間[a,b]上の連続関数を用いて
とあらわされるとき、Dを縦線集合という。
また、閉区間[c,d]上で連続な関数を用いて
とあらあされるとき、Dを横線集合という。
こんな定義よりも下の図を見たもらったほうがわかりやすいと思うにゃ。
と定義したところで、いよいよ、本題。
定理6(縦線集合上の2重積分の累次化)
関数f(x,y)はの積分領域Dで連続とする。
(1)Dが縦線集合
であれば
である。
(2)Dが横線集合
であれば
である。
定理6の証明はそのうち与えることにして、今は先を急ごう。
問題D={(x,y)|0≦x≦1,0≦y≦x}であるとき
を求めよ。
【解】
わかると思うけれど、念のために
となる。
なのだけれど、これは見方を変えると、次のように横線集合と考えることができる。
だから、次のように計算することもできる。
第2回 重積分の計算 [重積分]
第2回 2重積分の計算
第1回でやった2重積分の定義から積分の値を求めるのは至難の業なので、とりあえず、証明なしで次の定理を受け入れてもらうことにするにゃ。
定理3(区間上の2重積分の累次化)
関数f(x,y)が閉区間K=[a,b]×[c,d]で連続ならば、
ここで注意して欲しいのだけれど、累次積分と2重積分を区別するために
と書いたりもするにゃ。
そして、
と書いたりする。
誤解を招きやすい表記法なので、ねこ騙し数学では、こういう表記法を極力使わないことにして、括弧をつけた表記法を使うことにするにゃ。
K=[a,b]×[c,d]上の連続関数f(x,y)が[a,b]で定義される連続な関数φ(x)、[c,d]で定義される連続な関数ψ(y)で
f(x,y)=φ(x)ψ(y)とxの関数φ(x)とyの関数ψ(y)であらわされるときとなるにゃ。
―――1変数関数の積分のタダの積になる―――
これは、この2重積分を累次化すると
となり、はyを含まない定数なので、この部分はyに関する積分記号の外に出せるので
となることから分かる。
わかりづらかったら、③の変形の時に
とおけばいいにゃ。
そうすると、
となり、このAを元に戻せば③になるにゃ。
問題1 K=[0,1]×[0,1]のとき、次の値を求めよ。
【解】
②式を使うならば、
となる。
①式を使うならば、
となる。これはxに関する積分を最初に計算したけれど、
として計算してもいい。
問題2K=[0,1]×[0,1]のとき、次の値を求めよ。
【解】
あるいは、
これくらいならば、最初にxで積分しようが、最初にyで積分しようが、計算量はそれほど変わらないけれど、複雑な関数の計算だと計算量がかなり違う場合があるケロ。
なお、問題2は
として計算したほうがいくらか計算は楽になると思うにゃ。こう分けると、③式より
となり、ほとんど暗算で計算できる。
問題3
【解】
K=[0,1]×[0,1]ね。
この問題は
で計算しようとすると、大変なことになる。