お前らに問題 位相編 11月27日の解答例 [位相入門]
お前らに問題 位相編 11月27日の解答例
fを集合Xから集合Yへの写像、すなわち、f:X→Yとする。
Xのすべての開集合Aのfによる像f(A)がYの開集合になるとき、fをXからYへの開写像という。
また、Xのすべての閉集合Aのfによる像f(A)がYの閉集合になるとき、fをXからYへの閉写像という。
問題1
fを実数全体の集合RからRへの写像とする。fが、x∈Rである、すべての点xに関して連続であるとき、すなわち、fが連続写像(連続関数)であるとき、fは、かならず、開写像になるか。
これが成り立つときには証明をし、成り立たないときには反例を一つあげよ。
【反例】
f:R→Rの連続関数fを次のように定める。
開区間I=(−1,1)はRの開集合であるが、fによるこの像は
で、半区間で開集合ではない。
よって、連続写像(関数)は必ずしも開写像になるとは限らない。
(反例終)
問題2 f(x)=x²で与えられるRからRへの写像をf、A=[0,1]とする。
(1) fによるAの像f(A)を求めよ。
(2) を求めよ。
(3) であるが、でないことを確かめよ。
【解答】
(1)
(2) f(A)=[0,1]だから、
(3) であるが、[0,1]≠[−1,1]であるのでである。
(解答終)
ここに登場するf⁻¹はfの逆関数(逆写像)じゃ〜ないケロよ。
f:X→Yで、BをYの部分集合とする。
このとき、
をみたすXの部分集合を、fによるBの逆像または原像といい、これを記号で表すにゃ。
問題3 f(x)=|x|で与えられるRからRへの写像をf、B=[−1,1]とする。
(1) を求めよ。
(2) を求めよ。
(3) であるが、でないことを確かめよ。
【解答】
(1)
(2)
(3) であるが、[0,1]≠[−1,1]であるので
(解答終)
(1)の結果は少し奇妙に思うかもしれないけれど、
と考えると、こうなることを納得してもらえるのではないか。
第9回 連続写像 [位相入門]
第9回 連続写像
連続写像
を位相空間とする。写像がX₁の点xで連続であるとは、位相空間における点f(x)の近傍Uのfによる逆像が常ににおける点xの近傍になることである。
また、Xのすてての点xでfが連続であるとき、fはからへの連続写像という。
問題 を実数直線とする。関数がxで連続であることと、
をみたすことと同値であることを示せ。
【証明】
fがxで連続であるとする。任意のε>0に対して、はf(x)の近傍であるから、よってはxの近傍である。
よって、あるδ>0があって、
すなわち、
より、
となるので、
逆を示す。
をみたすならば、f(x)の任意の近傍Uに対して、実数直線の近傍の定義より、あるε>0が存在して、
となる。
このεに対して、(1)を適用すると、あるδ>0が存在し、
よって、
これと、を合わせると、
(証明終)
定理 を位相空間とする。写像について次の4つの条件は同値である。
(1) fはX₁の各点で連続
(2) X₂の任意の開集合Oのfによる逆像は、常にX₁の開集合
(3) X₂の任意の閉集合Fのfによる逆像は、常にX₁の閉集合
【証明】
(1)⇒(4)
とおけば、Uは位相空間の開近傍。fがX₁の各点で連続であるから、は位相空間における点xの近傍である。
さらに、
対偶をとれば、
(4)⇒(3)
が成り立つ。
したがって、
となり、はX₁の閉集合となる。
(3)⇒(2)
OをX₂の開集合とし、とおく。
が成り立ち、(3)より、はX₁の閉集合。よって、は開集合。
(2)⇒(1)
X₁の点xおよびにおけるの近傍をUとし、とおく。だから。(2)より、は位相空間におけるxの開近傍。が成り立つので、はにおける近傍。よって、写像fはXの各点xで連続である。
(証明終)
連続射像の例
(1) 恒等写像は連続写像
(2) を位相空間とし、をその部分空間とすれば、包含写像は位相空間から位相空間への連続写像。
(3) を位相空間、を写像とする。fがからへの連続写像、gがからへの連続写像であれば、合成写像はからへの連続写像である。
開写像と閉写像
すべてのX₁の開集合Oに対してOのfによる像f(O)がX₂の開集合であるとき、fはからへの開写像、単にfはX₁からX₂への開写像という。
すべてのX₁の閉集合Fに対してFのfによる像f(F)がX₂の閉集合であるとき、fはからへの閉写像、単にfはX₁からX₂への閉写像という。
fがX₁からX₂への全単射であるとき、fが開写像であることと閉写像であることは同値である。
このとき、AをX₁の部分集合とすると、
が成り立つ。
AがX₁の開(閉)集合、fが開(閉)写像のとき、f(A)はX₂の開(閉)集合となるので、Aの補集合は閉(開)集合の像は閉(開)集合になるためである。
同相写像
およびを位相空間とする。写像が全単射であり、fが位相空間からへの連続写像で、fの逆写像が位相空間からへの連続写像であるとき、fは位相区間からへの同相写像であるといい、位相空間とは同相または同相位相であるという。
第8回 近傍と近傍系 [位相入門]
第8回 近傍と近傍系
となるXの開集合Oが存在するとき、Uはxの近傍であるという。
とくに、点xを含む開集合はすべてxの近傍であり、これを点xの開近傍といい、Uが閉集合であるとき閉近傍という。
位相空間において、点xの近傍全体の集合を近傍系といい、で表す。すなわち、
定理1
を位相空間とする。OはXの部分集合とする。このとき、次は同値である。
(1) Oは開集合である。
(2) 任意のx∈Oに対して、
(3) 任意のx∈Oに対して、あるが存在し、U⊂Oとなる。
【証明】
(1)⇒(2)⇒(3)は明らかなので、(3)⇒(1)のみを証明する。
x∈Oとすると、仮定より、となるxの近傍がある。また、はxの近傍なので、
となる開集合が存在する。
したがって、任意のx∈Oは、集合Oの内点となり、Oは開集合である。
(証明終)
(1) Xの各点xについてであり、ならばx∈Uである。
(2) ならば
(3) かつU⊂V⊂Xならば
(4) 任意のに対して、あるを選んで、各点y∈Vに対してとすることができる。
【証明】
(1)、(3)は明らか。
(2) とすれば、x∈U₁、x∈U₂。
よって、
(4) に対してとおけばであり、任意のに対してとなる。
(証明終)
あるいは、
【別証】
(1)、(3)は明らか。
(2) 条件より
となるXの開集合が存在し、
(4) に対してとおけばであり、任意のに対してとなる。
(証明終)
定理3 を位相空間とする。Xの部分集合AとXの点xについて、であるための必要十分条件は、点xの各近傍がAと交わることである。
【証明】
とすれば、は点xの開近傍であり、Aと交わらない。ゆえに、点xの各近傍がAに交わればである。
逆に、点xの近傍UがAに交わらなければ、かつが成り立つ。は閉集合だから、となり、。
ゆえに、ならば点xの各近傍はAに交わる。
(証明終)
を位相空間とする。点x∈Xの近傍系の部分集合について、ならば、V⊂Uである元が常に存在するとき、を基本近傍系という。
例 を距離空間とし、を距離dで定まる位相とする。位相空間について、
は、点xの(可算)基本近傍系である。
お前らに問題!! (集合・位相編) [位相入門]
お前らに問題!!
問題 次の問に答えよ。
(1) Aを空でない集合とする。A⊂Bであることの必要十分な条件は、であることを示せ。ここで、はBの補集合を表す。
(2) を距離空間とし、AをXの空でない部分集合とする。このとき、次の関係が成り立つことを示せ。
ここで、はAの開核(集合Aに包まれる最大の開集合)、はAの閉包(集合Aを包む最小の閉集合)をあらわす。
これだけでは、(2)は解けないかもしれないので、ヒントを与えるにゃ。
だにゃ。
更にヒントを出すと、
となって、(1)より、
って、ほとんど解いてしまったケロ(^^ゞ
なお、B(x;ε)はxを中心とする半径ε>0の開球、すなわち、
だにゃ。
わかりにくいヒトは、Xを実数全体の集合Rとし、
として、(2)を解いてもいい。
弧状連結 [位相入門]
弧状連結
を位相空間とする。通常の位相をもった閉区間[0,1]から位相空間への連続写像を、位相空間における弧といい、f(0)を始点、f(1)を終点という。この場合、2点f(0)とf(1)は弧fによって結ぶことができるという。
位相空間は、Xの任意の2点が弧によって結ぶことができるとき、弧状連結であるという。また、Xの部分集合Aが部分空間として弧状連結であるとき、弧状連結集合という。
例 の2点に対して、連続写像を
と定めれば、f(0)=a、f(1)=bとなるので、通常の位相をもったは弧状連結である。
問題 位相空間について、弧状連結であることと、Xの1点aとXの任意の点が弧によって結べることと同等の条件であることを示せ。
【解】
前半は明らか、弧状連結の定義より明らか。
Xの1点aとXの任意の点は弧で結べるので、Xの任意の点b、cに対してf(0)=a、f(1)=b、g(0)=a、g(1)=cとすることができる[0,1]からXへの連続写像f、gが存在する。
そこで、
とすれば、hは[0,1]からXへの連続写像でh(0)=b、h(1)=c。
したがって、Xの1点aとXの任意の点が弧によって結べるならば、位相空間は連結空間である。
(解答終)
定理1 弧状連結空間は連結空間である。
【証明】
Xは弧状連結であるが連結でないと仮定する。
Xは連結でないので、空でないXの開集合O₁とO₂で
となるものが存在する。
x∈O₁、x∈O₂とすると、Xは弧状連結なので、f:[0,1]→Xで、f(0)=x、f(1)=yとなるものが存在する。
すると、は[0,1]の開集合で、
となり、閉区間[0,1]が連結であることと矛盾する。
よって、弧状連結空間は連結空間である。
(証明終)
例と定理1から、通常の位相を持った、つまり、n次元ユークリッド空間は連結空間であることがわかる。
定理2 を位相空間、f:X→Yを連続写像、AをXの空でない弧状連結部分集合とする。Aのfによる像f(A)は、Yの弧状連結部分集合である。
【証明】
y₀、y₁をf(A)の元とすると、fはXからYへの連続写像なので、
となるAの元x₀、x₁が存在する。
また、Aは弧状連結なので、連続写像γ:[0,1]→Aで、x₀=γ(0)、x₁=γ(1)となる弧γが存在する。
したがって、は[0.1]からf(A)への連続写像となり、また、f(A)の任意の点y₀、y₁に対して、
とすることができる。
よって、f(A)は弧状連結である。
(証明終)
連結性 [位相入門]
連結性
位相空間において、Xの部分集合Aに対して、Xの開集合O₁、O₂で、
を満たすものが存在しないとき、Aはの連結部分集合という。このことは、部分空間が連結空間であることと同値である。
定理1 位相空間に対してXが連結であることと、∅とX以外に開集合であり同時に閉集合であるようなXの部分集合が存在しないことと同値である。
【証明】
Xは連結であるとする。
もしAは、A≠∅、A≠X、かつ、開集合であり同時に閉集合であるならば、
とすると、Bは開集合で同時に閉集合。
となり、Xが連結であることと矛盾。
Xと∅以外に開集合であると同時に閉集合であるXの部分集合は存在しないとする。
もし、Xが連結でなければ、Xの開集合O₁、O₂で
を満たすものが存在する。
これはであることを意味するので、O₁は開集合であると同時に閉集合となる。
これは矛盾。
(証明終)
例 通常の位相に関して、実数全体の集合Rは連結である。
【証明】
Aを開集合であると同時に閉集合であるRの空でない部分集合とする。
Aの一点aを固定し、
とする。
B≠∅とすれば、aはBの下界なので、Bは下限をもつ。そこで、γ=inf Bとおくと、γ≧aであるが、Aは開集合でa∈Aであるからa<γであり、[a,γ)⊂A。また、Aは閉集合でもあるので、γ∈A。
Aは開集合であるから、正数εで
であるものが存在する。
したがって、[a,γ+ε)⊂Aとなり、
となり、γがBの下限であることに矛盾する。
したがって、B=∅。
同様に、C=∅。
ゆえに、開集合であると同時に閉集合であるRの空でない集合はR自身となる。
よって、通常のRの位相に対して、Rは連結である。
(証明終)
定理2 を位相空間とする。Xの部分集合Aについて、次のことは同値である。
(1) Aは連結集合である。
(2) Xの開集合O₁、O₂が
を満たせば、A⊂O₁、または、A⊂O₂である。
【証明】
(1)⇒(2)
Xの開集合O₁、O₂が
を満たし、さらに、かつとする。
A⊂O₁∪O₂かつよりO₂∩A≠∅である。同様に、O₁∩A≠∅。
これはAが連結集合であることと矛盾。
(2)⇒(1)
Xの開集合O₁、O₂が
を満たすと仮定すると、(2)よりA⊂O₁またはA⊂O₂となる。
A⊂O₁かつO₁∩O₂∩A=∅よりA∩O₂=∅となり矛盾。
A⊂O₂かつO₁∩O₂∩A=∅よりA∩O₁=∅となり矛盾。
よって、このようなO₁とO₂は存在しないので、AはXの連結部分集合である。
(問題終)
定理3
写像f:X→Yを位相空間からへの連続写像とし、Aをの連結集合とすれば、f(A)はの連結集合である。
【証明】
相対位相を考えることによって、A=X、f(X)=Yの場合に帰着できるので、A=X、f(X)=Yとする。
EをYの開集合であると同時に閉集合であるとする。
fは連続写像なので、D=f⁻¹(E)はXの開集合であると同時に閉集合。また、Xは連結空間なので、D=∅またはD=Xである。
これよりE=∅またはE=Yとなる。
よって、Y=f(A)は連結集合。
(証明終)
となるBもXの連結部分集合である。特に、Aが連結部分集合であればその閉包も連結部分集合である。
【証明】
Xの開集合O₁、O₂で
とする。
A⊂BかつB⊂O₁∪O₂だから、A⊂O₁∪O₂である。
かつB∩O₁=∅、B∩O₂=∅だから。よって、A∩O₁=∅、A∩O₂=∅(註)。
Aは連結集合だから、
また、A⊂Bだから
ゆえに、BはXの連結集合である。
(証明終)
(註) OがXの開集合であるとき、
なぜならば、
だから。
定理5 (中間値の定理)
f:X→Rを連結な位相空間で定義された連続関数とする。Xの2点x₁、x₂のfの値を
とすれば、α<γ<βであるすべての実数γに対して、f(x)=γとなるXの点xが存在する。
【証明】
α<γ<βで、f(x)=γとなるXの点xが存在しないと仮定する。
とおくと、fは連続写像なので、O₁とO₂はXの開集合である。
このとき、
となりXが連結であることに反する。
よって、α<γ<βである実数γに対して、f(x)=γであるXの点xが存在する。
(証明終)
第11回 コンパクトハウスドルフ空間 [位相入門]
第11回 コンパクトハウスドルフ空間
定理1 ハウスドルフ空間において、コンパクト集合AとAに属さないXの点xは常に分離される。
【証明】
はハウスドルフ空間だから、Aの各点aとxとは開集合で分離できる。
よって、開集合Oで、a∈Oかつであるものが存在する。
したがって、
はAの開被覆である。
Aはコンパクトだから、に属す有限個の開集合を選んで、
とすることことができる。
とおけば、となり、各がに属するので、。ここで、とおけば、UとVは互いに交わらない開集合で、x∈UかつA⊂V。
したがって、コンパクト集合AとAに属さない点xは開集合によって分離できる。
(証明終)
定理2 ハウスドルフ空間のコンパクト集合は閉集合である。
【証明】
Aをハウスドルフ空間のコンパクト集合とする。
定理1より、AとAの補集合の各点xは開集合によって分離できるので、点xはAと交わらない開近傍を持つことになる。よって、点xはの内点。
したがって、は開集合であり、Aは閉集合。
(証明終)
距離空間はハウスドルフ空間であることと定理2から、距離空間のコンパクト集合は閉集合である。また、距離空間上の閉集合は有界なので、距離空間上のコンパクト集合は有界閉集合である。
定理3 コンパクト空間上の実連続関数は最大値と最小値をとる。
【証明】
Xをコンパクト、f:X→Rを実連続関数とすると、像f(X)はRのコンパクト集合だから有界閉集合。よって、f(X)は最大値と最小値をもつ。
(証明終)
定理4 ハウスドルフ空間において、互いに交わらないコンパクト集合は開集合によって分離される。
【証明】
A、Bを互いに交わらないハウスドルフ空間とする。
定理1によって、AとBの各点bとは開集合によって分離できるので、
はBの開被覆になる。
Bはコンパクトだから、の有限個の開集合を選び、
とすることができる。
とおけば、各がに属するので、。
とおけば、UとVは互いに交わらない開集合で、A⊂UかつB⊂V。
よって、 互いに交わらないコンパクト集合は開集合によって分離される。
(証明終)
定理4の系 コンパクトハウスドルフ空間は正規空間である。
第9回 コンパクト空間 [位相入門]
第9回 コンパクト空間
Xの部分集合からなる集合族(Xの冪集合の部分集合)が
を満たすとき、はAを覆うといい、をAの被覆という。特に、の元がすべて開集合であるとき、をAの開被覆という。Aがの部分集合で覆われるとき、すなわち、であるとき、をAの部分被覆という。
Aが任意の開被覆に対して、Uの部分被覆で有限なものが取れるとき、すなわち、Aの任意の開被覆に対して、に属する有限個の開集合を選んで、
となるとき、Aはコンパクト集合といい、Aはコンパクトであるという。
X自身がコンパクトであるとき、をコンパクト空間といい、位相空間はコンパクトであるという。
例1 位相空間の有限部分集合は常にコンパクトであり、離散空間がコンパクトであるのは有限集合の時に限る。
例えば、Nを自然数全体の集合とし、Nの離散空間について考える。
とすると、
となるので、はNの開被覆となるが、有限個の開集合を選んで、Nを覆うことはできない。
例2 有限個のコンパクト集合の和集合はコンパクトである。
【証明】
をコンパクト集合とし、和集合の開被覆をとすると、は各の開被覆であり、コンパクトなので、はに対する有限部分被覆をもち、は和集合Aの有限開被覆となる。
よって、有限個のコンパクト集合の話集合はコンパクトである。
(証明終)
を集合Aの直径という。集合Aの直径が有限なとき、集合Aは有界であるという。
例3 距離空間上のコンパクト集合は有界である。
【証明】
Aの1点xをとり、
とおくと、これはAの開被覆である。
また、Aはコンパクトなので、
となる自然数nが存在する。
したがって、Aは有界である。
(証明終)
定理1 ハイネ・ボレルの定理
Rの任意の有界閉区間[a,b]はコンパクトである。
【証明】
を閉区間[a,b]の開被覆とし、が部分被覆を持たないと仮定する。
このとき、
の少なくとも一方はの有限個の開集合で被覆できない。その閉区間を[a₁,b₁]とする。同様に、
の少なくとも一方はの有限個の開集合で被覆できない。その閉区間を[a₂,b₂]とする。以下同様に、の有限個の開集合で被覆できない閉区間を2等分して、閉区間を選ぶことができる。
このような操作を繰り返すことによって、閉区間の列
を定めることができる。
よって、カントールの区間縮小の原理によって、すべての開区間に属する実数cがただひとつ定まる。
さて、は閉区間[a,b]の開被覆だから、に属するOでcを含むものがある。このとき、正の実数εで、
となる。であるから、十分大きな自然数nに対して
よって、この閉区間がのただひとつの開集合で被覆されることになり、閉区間の作り方に矛盾する。
したがって、閉区間[a,b]の任意の開被覆は有限な開被覆をもつことになり、閉区間[a,b]はコンパクト。
(証明終)
定理2 コンパクト空間の閉集合はコンパクトである。
【証明】
を位相空間とし、Aを閉集合とする。をAの開被覆とし、とおけば、これはXの開被覆。
Xはコンパクトなので、に属する有限個の開集合とによって
とXを覆うことができる。
このとき、
よって、コンパクト空間の閉集合はコンパクトである。
(証明終)
定理3 fを位相空間からへの連続写像とする。Aをのコンパクト集合とすると、その像f(A)はコンパクト集合である。
【証明】
をf(A)の開被覆とすれば、
はAの開被覆となる。
とすることができる。
ゆえに、
よって、f(A)はコンパクトである。
(証明終)
アルキメデスの公理とその応用 [位相入門]
アルキメデスの公理とその応用
Nを自然数全体の集合、Qを有理数全体の集合、Rを実数全体の集合とする。
アルキメデスの公理
任意の正数a、b∈Rに対して、適当なn∈Nをとると
とすることができる。
【証明】
すべてのn∈Nに対して、
であると仮定し、矛盾を導けばよい。
このとき、全てのn∈Nに対して
となるので、NはRの上に有界な部分集合である。したがって、Nには上限が存在する。
そこで、α=sup Nとおくとα−1<αであるから、α−1<nを満たすnがNに存在する。
このとき、α<n+1となるが、n+1∈Nなので、αより大きな自然数が存在することになり、αがNの上限であることに反する。
これは矛盾。
したがって、
任意の正数a、b∈Rに対して、適当なn∈Nをとると
とすることができる。
(証明終)
命題1
a、b∈R、a<bならば、a<r<bとなるr∈Qが存在する。
【証明】
a<0<bのとき、r=0をとればよい。したがって、0≦a<bまたはa<b≦0の場合について考えればよい。
そこで、0≦a<bと仮定すると、b−a>0だから、アルキメデスの公理より
となる自然数nが存在する。
このnに対してna<mを満たす自然数mが存在する。
このようなmの最小値をとると、
であるから、
となる。
したがって、このm/nをrにとればよい。
(証明終)
命題2
a,b∈R、a<bならば、a<r<bとなるr∈Qが存在する。
【証明】
αを実数とする。
a<bよりb−a>0。よって、
となる自然数nが存在する。
よって、
このnに対して
となる自然数mが存在するので、その最小のものをmとすると、
ゆえに、
すなわち、
よって、
である。
αを有理数にとり、
とすれば、
(証明終)
なお、上記証明のαを無理数にとれば、
命題 a<bである任意の実数a,bに対し、a<r<bとなる無理数が存在する
の証明になる。
第8回 分離公理 [位相入門]
第8回 分離公理
を位相空間とする。Xの相異なる2点aとbが、互いに交わらない開集合UとVでa∈U、b∈Vとなるものが存在するとき、点aとbは開集合で分離されるという。また、Xの相異なる部分集合AとBが、互いに交わらない開集合UとVで、A⊂U、B⊂Vとなるものが存在するとき、AとBは開集合で分離されるという。Xの部分集合AとAに属さない点xが、互いに交わらない開集合UとVで、A⊂U、x∈Vとなるものが存在するとき、Aとxは開集合で分離されるという。
例1 X={1, 2, 3}とし、Xの冪集合をB(X)、すなわち、
とし、離散空間について考える。
1∈X、2∈Xは、互いに交わらない開集合{1}、{2}で、1∈{1}、2∈{2}となるので、1と2は開集合{1}と{2}で分離可能。
また、{1}∈B(X)、{2,3}∈B(X)は、互いに交わらない開集合{1}、{2,3}で、{1}⊂{1}、{2,3}⊂{2,3}となるので、{1}と{2,3}は、{1}と{2,3}で分離可能。
{1,2}∈B(X)とに{1,2}に属さない3は、互いに交わらない{1,2}と{3}で、{1,2}⊂{1,2}、3∈{3}となるので、{1,2}と3は開集合{1,2}と{3}で分離可能である。
例2 n次元ユークリッド空間の任意の相異なる2点xとyは、
とおくと、
となるので、開集合で分離可能である。
位相空間は、Xの相異なる2点が、互いに交わらない2つの開集合で常に分離されるとき、ハウスドルフ空間という。このとき、位相はハウスドルフの分離公理を満足するという。
例3 密着空間はハウスドルフ空間でなく、密着位相はハウスドルフの分離公理を満足しない。
問1 X={1, 2, 3}とし、Xの冪集合をB(X)とする。このとき、離散空間はハウスドルフ空間であることを確かめよ。また、一般の離散空間の場合はどうか。
【解】
x,y∈X、かつ、x≠yとする。
よって、離散空間はハウスドルフ空間である。
(解答終)
位相空間は、Xの互いに交わらない2つの閉集合が、開集合で常に分離されるとき、は正規空間であるといい、位相は正規であるという。
また、は、Xの任意の閉集合FとFに属さない点xが常に開集合で分離されるとき、は正則空間であるといい、位相は正則であるという。
問2 X={1, 2, 3}とし、Xの冪集合をB(X)とする。このとき、離散空間は正規空間であるか。また正則空間であるか。
問題1 ハウスドルフ空間の1点集合は常に閉集合であり、したがって、正規ハウスドルフ空間は正則空間であることを示せ。
【略証】
xをハウスドルフ空間の点、とする。
仮定より、x≠y、かつ、ハウスドルフ空間なので、互いに交わらない開集合UとVで、x∈X、y∈Vとすることができる。
これはである任意の点yがの内点であることを表しており、したがって、は開集合である。よって、1点集合は閉集合。
Xの閉集合をF、x∉Fとする。
正規ハウスドルフ空間なので1点集合{x}は閉集合であるので、{x}と閉集合Fとは、U∩V=∅である開集合UとVで、{x}⊂U、F⊂Vとすることできる。
また、x∈{x}なので、x∈U、F⊂V。
よって、正規ハウスドルフ空間は正則空間である。
(略証終)
問題2 距離位相は常にハウスドルフの分離公理を満足し、かつ、正規であることを示せ。
【略解】
を距離空間とする。
x,y∈、x≠yとし
とすると、
よって、距離位相は常にハウスドルフの分離公理を満たす。
また、AとBをXの閉集合でA∩B=∅とする。
とすると、UとVは互いに交わらない開集合で、A⊂U、B⊂V。
よって、距離位相は常にハウスドルフの分離公理を満足し、正規である。
(略解終)