位相 集合と点の距離 [位相入門]
位相 集合と点の距離
を距離空間、AをXの空でない部分集合とする。Xの点xに対して、点xと集合Aの距離を
で定義する。
定理 を距離空間とする。Xの空でない部分集合AとXの点x、yに関して、次のことが成り立つ。
(1)
(2) xがAの触点である必要十分条件はd(x,A)=0である。すなわち、
(3) xがAの内点であるための必要十分な条件はである。
(4)
【証明】
(1) 任意のa∈Aに対して、d(x,a)≧0による。
(2)
(3) が成り立つ必要十分条件は点xのある近傍に対して、すなわち、であること。したがって、が成り立つ必要十分条件は、xがAの内点であること。
(4) 三角不等式より
が成り立つ。
よって、
が成立する。
したがって、d(x,A)−d(x,y)は集合の下界のひとつ。
よって、
xとyを交換すると、
よって、
(証明終)
問題1 を距離空間とし、Aをxの空でない部分集合とする。実数値関数f:X→Rをf(x)=d(x,A)によって定義すれば、fは距離空間1次元ユークリッド空間への連続写像になることを示せ。
【略証】
x,y∈Xとし、任意のε>0に対して
とすると、
よって、fは距離空間1次元ユークリッド空間への連続写像である。
(略証終)
問題2 を距離空間とし、Xの空でない部分集合A、Bに対してA、Bの距離を
と定義する。A、Bが互いに交わらない閉集合であるとき、つねにd(A,B)>0が成り立つか。
【解】
X=R²、dをR²上の通常の距離とする。
とすれば、AとBへ互いに交わらない閉集合だが、x軸とy軸は曲線xy=1の漸近線なので、
よって、成り立たない。
(解答終)
問題3 距離空間において、A、Bを空でないXの部分集合とする。このとき、XからRへの連続な関数fで、任意のx∈Xに対して0≦f(x)≦1、x∈Aならばf(x)=0、x∈Bならばf(x)=1となるものが存在することを示せ。
【解】
とする。
AとBは閉集合でA∩B≠∅だから、d(x,A)+d(x,B)≠0となり、f(x)は連続な関数。また、0≦f(x)≦1である。
x∈Aならばd(x,A)=0よりf(x)=0。xならばd(x,B)=0よりf(x)=1。
よって、fは条件を満たす。
(解答終)
fが連続な関数ならばf(x)>0は開集合 [位相入門]
fが連続な関数ならばf(x)>0は開集合
問題1
Rを実数全体の集合とし、fをからRへの連続関数とする。このとき、
は、開集合である。
【証明】
とする。fはからRへの連続関数だから、任意の正数ε>0に対して、ある正数δ>0があって、
である。
ε=f(a)/2>0とおき、
が成り立つようにδ>0を定める。
すると、
したがって、
よって、
となり、Aは開集合である。
(証明終)
を連続関数とするとき、は開集合なので、この補集合
は閉集合である。
問題2 を連続関数とするとき、
が開集合であることを示せ。
【証明】
a∈Bとする。fはからRへの連続関数なので、任意のε>0に対して、あるδ>0があって、
が成り立つ。
そこで、とおき、
となるようにδ>0を定めると、
よって、
が成り立つ。
したがって、は開集合である。
(証明終)
【別証】
−fはからRへの連続関数であること問題1より、Bは開集合である。
(別証終)
AとBは開集合なので、AとBの和集合A∪Bも開集合である。
そこで、
とおくと、これは閉集合。
つまり、が連続関数であるとき、は閉集合である。
また、
かつ、
が成立するので、BはAの外部(AはBの外部)であり、∂AはAとBの境界であることがわかる。
問題3 f、gをからRへの連続関数とする。このとき、
が開集合であることを示せ。
【略証】
f、gがからRへの連続関数だから、f−gもからRへの連続関数。
問題1より、Aは開集合である。
(略証終)
となどが閉集合であり、がAの境界∂Aであることがわかる。
距離空間における集合は連続関数を用いて与えられることが多いので、これでその集合が開集合であるか閉集合であるかの判定が容易になった。
上限と下限の復習 [位相入門]
上限と下限の復習
Aを実数全体の集合Rの空でない部分集合とする。
任意のAの元に対して、x≦αである実数αが存在するとき、αをAの上界という。
任意のAの元に対して、β≦xである実数βが存在するとき、βをAの下界という。
Aに上界(下界)が存在すると、Aは上に有界(下に有界)であるという。また、Aが上に有界かつ下に有界であるとき、Aは有界であるという。
例 A={x∈R|x<1}とすると。Aのすべての元について、x≦2が成立するので、2はAの上界である。したがって、Aは上に有界である。また、x≦1も成立するので、1もAの上界である。
しかし、Aに下界は存在しないので、Aは下に有界でない。
問1 例1の集合Aが下に有界でないことを証明せよ。
【解】
Aが下に下界ならば、Aには下限が存在する。
inf A=βとなる実数β<1が存在すると仮定すると、1>β>β−1∈Aとなり、βがAの下界であることと矛盾する。よって、Aは下に有界でない。
(解答終)
Aが上に有界(下に有界)ならば、実数の連続性から、Aの上界(下界)の集合Bには最小の上界(最大の下界)が存在する。Aの最小の上界を上限といい、
と表す。
Aの最大の下界を下限といい、
と表す。
Aが上に有界(下に有界)でないとき、sup A=∞(inf A=−∞)で表す。
定理
sup A=αであるための必要十分な条件は、次の(ⅰ)、(ⅱ)が成り立つことである。
(ⅰ) 任意のx∈Aに対して、x≦α
(ⅱ) 任意の正数εに対して、α−ε<xを満たすx∈Aが存在する。
また、inf A=βであるための必要十分な条件は、次の(ⅲ)、(ⅳ)が成り立つことである。
(ⅲ) 任意のx∈Aに対して、β≦x
(ⅳ) 任意の正数εに対して、β+ε<xが存在する。
(註)
定理1の(ⅰ)はαがAの上界であることを表し、(ⅱ)はαがAの最小の上界であることを表す。
また、(ⅲ)はβがAの下界であること、(ⅳ)はβがAの最大の下界であることを表す。
問2 a<bとし、I=(a,b)={x|a<x<b}とする。このとき、inf I=a、sup I=bとなることを示せ。
【解】
bがIの上界であることは明らか。したがって、bより小さい上界が存在しないことを示せばよい。
a<α<bとすると、
となるので、αはIの上界でない。したがって、bより小さい上界はしない。
よって、sup I=b。
aがIの下界であることは明らか。したがって、aより大きい下界が存在しないことを示せばよい。
a<β<bとすると、
となるので、βはIの下界でない。したがって、aより大きい下界は存在しない。
よって、inf I=a。
(解答終)
問3 A={x∈R|0<x<1}とし、x∈Rに対して
とする。このとき、次の問に答えよ。
(1) x∈Aのとき、d(x,A)の値を求めよ。
(2) d(0,A)、d(1,A)の値を求めよ。
(3) d(2,A)、d(-3,A)の値を求めよ。
【答】
(1) d(x,A)=0 (2) d(0,A)=0、d(1,A)=0 (3) d(2,A)=1、d(−3,A)=2
位相の確認問題 [位相入門]
位相の確認問題
まずは、用語の復習。
をXの部分集合の集合、すなわち、Xの冪集合の部分集合とする。
を満たすとき、をXの上の位相、Xとの組を位相空間という。
位相空間に対して、
(1) の元を開集合という。
(2) Xの部分集合Fは、その補集合が開集合であるとき、閉集合という。
(3) AをXの部分集合とする。Aに包まれる最大の開集合をで表し、Aの内部、または、開核という。の元をAの内点という。
X={1,2,3}とすると、この冪(べき)集合は
である。
ここで、とおくと、である。
また、
さらに、I={1,2,3,4,5,6,7,8}とすると、任意のi,j∈Iに関して、
が成立する。
また、とすれば、
が成立するので、は位相空間になる。これをX={1,2,3}の離散位相という。
O₁=∅、O₂={1}、・・・、O₈=X={1,2,3}は、Xの冪集合の元なので、すべて開集合である。
また、たとえば、となるので、{1}は閉集合である。同様に、O₁〜O₈の全ては開集合であると同時に閉集合である。
O₆={1,3}を包む最大の開集合はそれ自身O₆なので、
が成立するので、O₆={1,3}の内点は1、3である。
このことは、O₆は開集合だから開核演算子の公式より、
が成立するので、当たり前といえば当たり前の話。
問1 X={1,2,3}とし、とする。このとき、次の問に答えよ。
(1) がX上の位相であることを確かめよ。
(2) {2,3}がの閉集合であることを示せ。
(3) {1,3}の開核を求めよ。
(4) {1,3}の内点を求めよ。
【略解】
(1) 省略
(2) 。よって、{2,3}は閉集合である。
(3) {1,3}に包まれる最大の開集合{1}。よって、
(4) (3)より{1,3}の内点は1である。
(略解終)
問2 Xを空でない集合とし、とする。
(1) がX上の位相であることを確かめよ。
(2) の閉集合を全て求めよ。
(3) X={1,2,3}、とする。A={1,2}のとき、Aの開核を求めよ。
【略解】
(1) 省略
(2) ∅、X
(3) A={1,2}に包まれる最大の開集合は∅。したがって、
よって、内点は存在しない。
(略解終)
第7回 集合の内点、内部、外部、境界 [位相入門]
第7回 集合の内点、内部、外部、境界
を位相とし、AをXの部分集合とする。Aに包まれる開集合全体の和集合をで表わせば、もに属するから、はAに包まれる最大の開集合である。をAの内部または開核といい、の点をAの内点という。
Xの各部分集合をその内部に対応させることによって、Xの冪集合からへの1つの写像が定まる。この写像をの開核作用子という。
定理1 の開核作用子は次の性質をもつ。
【証明】
(1) よりXに包まれる最大の開集合はX自身である。
(3) はそれぞれAとBに包まれる開集合だからはA∩Bに包まれる開集合であり、一方、はA∩Bに包まれる最大の開集合。よって、
同様に
よって、
したがって、
(4) は開集合だからを包む最大の開集合は自分自身。よって、
(証明終)
問 X={1, 2, 3}とし、この密着位相について次の問に答えよ。
(1) {1}と{2, 3}はXの開集合か。
(2) {1}と{2, 3}の内点を求めよ。
【解】
(1) だから、{1}と{2, 3}はともにXの開集合ではない。
(2) {1}に包まれる最大の開集合は空集合∅、{2, 3}に包まれる最大の開集合は∅。
よって、
したがって、内点は存在しない。
(解答終)
を位相空間とし、AをXの部分集合とする。 Aを包むような閉集合全体の共通部分をまたはで表す。自身も閉集合であるから、はAを包む最小の閉集合である。をAの閉包といい、の点をAの触点という。Xの各部分集合にを対応させることによって、Aの冪集合からへの1つの写像が定まる。この写像をの閉包作用子という。
【証明】
(1) ∅は閉集合で、は∅を包む最小の閉集合。
(2) 定義より明らか。
(3) はそれぞれA、Bを包む閉集合だからはA∪Bを包む閉集合。一方、A∪Bを包む最小の閉集合はだから、
はA∪Bを包む最小の閉集合であり、したがってAを包む閉集合。
また、はAを包む最小の閉集合だから、
同様に
よって、
ゆえに、
(4) は閉集合だから、を包む最小の閉集合は自身。したがって、
(証明終了)
を位相空間とし、AをXの部分集合とする。Aの補集合の内部をAの外部と言い、で表し、の点をAの外点という。
Aの外部は、Aと交わらない最大の開集合である。実際、はAの補集合の内部だから開集合であり、だから。OをO∩A=∅である開集合とすると、だから、
また、
Aの内点でも外点でもないXの点をAの境界点といい、Aの境界点全体の集合をAの境界といい、やで表す。
距離空間の場合と同様に、
が成り立つ。
Xの点xが集合の触点であるとき、xをAの集積点という。Aの集積点全体の集合を導集合といいで表す。また、の点をAの孤立点という。
第6回 位相空間 [位相入門]
第6回 位相空間
Xを空でない集合とする。Xの部分集合の族(Xの冪集合の部分集合)が次の3つの条件を満たすとき、集合Xの位相であるという。
位相が与えられた集合Xを位相空間といい、で表す。の元を位相空間の開集合という。
(注意)
条件[O₁]、[O₂]、[O₃]はn次元ユークリッド空間の開集合系と距離空間の開集合系がみたしている条件である。
例1 は明らかに集合Xの位相の1つである。この位相を離散位相といい、位相空間を離散空間という。もXの位相の1つである。この位相を密着位相といい、を密着空間という。
例2 n次元ユークリッド空間の開集合系はの1つの位相である。この位相を通常の位相という。
例3 を距離空間とする。の開集合系はXの1つの位相である。この位相をdによって定まる距離位相という。集合X上の位相が1つの距離位相に一致するとき、この位相は距離化可能であるという。
と定めると、はAの位相になる。この位相をXによるAの相対位相といい、位相空間を位相空間の部分空間という。
【証明】
となるが存在し、
[O₃] だから、
(証明終)
問題1 Xを集合とする。
とすると、はXの位相となることを示せ。(これを補有限位相という)
【証明】
[O₁] だからは有限集合。よって、。また、。
[O₂] とする。A₁、A₂が空集合の場合、。
どちらも空集合でない場合、はともに有限集合。よって、も有限集合。したがって、
[O₃] とする。
λ₀∈Λに対しては有限集合。
であるから、は有限集合。
(証明終)
問題2 を位相空間、Yを集合、f:X→Yを写像とするとするとき、
とおくと、これはYの上の位相となることを示せ。
【略証】
[O₃] ならば
よって、はY上の位相である。
(略証終)
Xを集合をXの位相とする。であるとき、位相は位相より弱い、または、粗い、あるいは、はより強い、または、細かいという。
したがって、密着位相は最も弱く、離散位相は最も強い位相である。
を位相空間とする。集合Xの部分集合は、その補集合がに属すとき、位相空間の閉集合という。
定理 は次をみたす。
問 X={1, 2, 3}とするとき、次の問に答えよ。
(2) 位相空間の開集合{1}の補集合を求め、それがの閉集合であると同時に閉集合であることを確かめよ。
(3) 位相空間の開集合はすべて同時にの閉集合であることを確かめよ。
お前らに問題 位相編 10月26日 [位相入門]
お前らに問題 位相編 10月26日
Rを実数全体の集合とする。
空間の二つの点に対して、関数
と定めれば、これは距離の公理
を満たすので、距離(関数)になる。
空間に(1)で与えられる距離を入れた距離空間をと表すことにする。
d₁の右肩についている(n)はn次元を表すくらいの意味。
特に、n=2のときは、(1)は
となる。(下図参照)
例1 (1)で定められる、(1,2),(2,4)∈R²の2点間の距離は、
である。
また、このとき、通常の距離は
一般に、
さてさて、r>0のとき、
で定義される空間の集合を、点を中心とする半径rである距離空間の球面と呼ぶことにするにゃ。
特に、n=1のときは、
となり、数直線上の2点a₁−r、a₁+rになる。
「2つの点を球面と呼ぶのか」というクレームが来そうだけれど、定義上これは、点a₁を中心、半径rとする距離空間の球面だケロ。
球面という言葉が嫌いならば、超球面という言葉を使ってもいいが・・・。
では、ここで問題。
問 原点(0,0)を中心とし、半径が1である、距離空間の球面、すなわち、
を求め、それを図示せよ。
また、
と定義するとき、 を図示せよ。
さらに、原点(0,0)を中心とする半径1の”普通の”円の内部、すなわち、
ととの包含関係を示せ。
要するに、
か
のドッチが成立するか答えよってんだよ。
オレの書いた定義を理解できていれば、高校1年生ですら解ける、教科書の基本問題レベルの問題。
これをできないとは言わせない!!
こんなのはチョロいというヒトは、 との包含関係を答えるにゃ。
円や球が”丸い”と誰が決めた!! 位相の問題 10月25日 [位相入門]
円や球が”丸い”と誰が決めた!! 位相の問題 10月25日
実数全体の集合をRとする。で、空間上の2つの点x、yの座標をそれぞれとし、
とすると、d₀は距離になる。
ここで、は、の最大値を表す。
特に、R²空間の場合、とすると、
例 x(1,3), y(2,5)とすると、
この場合、いわゆる2点間の距離d、つまり、ユークリッド(空間)の距離dは
だにゃ。
この例からわかるように、一般に、d₀(x,y)≠d(x,y)だケロ。
さらに言うと、
という関係が成立するので、
なんて関係が成立する。
問1 (3)が成り立つことを確認せよ。できたら、証明して欲しいところであるが・・・。
ところで、R²空間に(2)式で定義した距離d₀を入れた距離空間をとする。
で、a∈R²、r>0
とし、これを、ここでは、ひとまず、点aを中心とし半径rのB₀開球とでも呼ぶことにしよう。
(4)という記号に幻惑されてはいけないケロよ。
B₀開球とは、aの座標を(a₁,a₂)、xの座標を(x₁,x₂)とするとき、
一方、R²に通常の距離d、すなわち、
を入れた距離空間をとする。
a∈R²、r>0として、
を、点aを中心とし半径rのB開球と呼ぶことにしよう。
では、ここで問題。
問2 次の問に答えよ。
(1) 距離空間〈R²,d₀〉の原点を中心とし半径1のB₀開球、すなわち、
をグラフ用紙に図示せよ。
(2) 距離空間〈R²,d〉の、原点を中心とし半径1のB開球とB₀開球の包含関係を示せ。
要するに、
B((0,0),1)⊂B₀((0,0),1)かB₀((0,0),1)⊂B((0,0),1)のドッチだって訊いているんだ。
こんなのはチョロいというヒトは、さらに、との包含関係を調べるにゃ。
グラフ用紙をつけたので、ここに書き込んで、包含関係を調べるといいと思うケロ。
「円や球は丸い」とは、必ずしも、決まっていないケロよ。
円の定義は、
「同一平面上にある、定点Oとの距離が一定である点の集合」
なんだから。
距離の定義が違えば、円の形も変わるかもしれないにゃ。
偏見を捨てて、定義に沿って考えるんだケロよ。
関数の連続の問題の解答例 [位相入門]
関数の連続の問題の解答例
基本問題 次のことを示せ。
cを実定数とする。
とすると、関数fはa∈Rのすべての点aで連続となること示せ。
【解答例】
(1) c=0のとき
すべてのx∈Rに対してf(x)=0である。
したがって、任意の正数εに対して、それとは無関係にδ>0を選び、
とすることができる。
(2) c≠0のとき
εを任意の正数とする。
とδを定めれば、
(1)、(2)より、f(x)はa∈Rのすべての点aで連続である。
(解答終)
応用問題 次のことを示せ。
f(x)=x² (x∈R)は、a∈Rのすべての点aで連続であることを示せ。
【解答例】
δ>0、|x−a|<δとすると、
となる。
したがって、任意の正数εに対して、
となるように、δ>0を定めればよい。
この2次方程式を解くと、
δ>0なので、
とδを定めれば、任意の正数εに対して
が成立する。
よって、f(x)=x² (x∈R)は、a∈Rのすべての点aで連続である。
(解答例)
このように解いてもいいけれど、次のように解くのが一般敵。
【別解】
εを任意の正数、0<δ≦1とすると、
が成立するようにδを定めればよい。
よって、
任意の正数εに対して、
とδを定めれば、
が成立する。
よって、f(x)=x² (x∈R)は、a∈Rのすべての点aで連続である。
(別解終)
0<δ≦1なので、δ²≦δである。
また、
とすると、たとえば、ε=9、a=1のとき、
となるので、こうならないように、
とするとよい。
――①の導出の仮定に0<δ≦1が入っているため――
これならば、δが1を越すことがないので、OKというわけ。
発展問題 次のことを示せ。
nを正の整数とする。は、a∈Rのすべての点aで連続であることを示せ。
【解答例】
任意の正数εに対して、
とおくと、δ>0で、ならば、
よって、nを正の整数とする。は、a∈Rのすべての点aで連続である
(解答終)
このような証明は、「おっ、すげぇ〜。うまく証明してやがる」と感嘆するにかぎる。
真似しようたって真似なんてできないので、絶対に、真似しようとしてはいけない。
ということで、次の問題をやるべし。
追加問題
f(x)=x³ (x∈R)は、a∈Rのすべての点aで連続であることを示せ。
位相 第5回 近傍と連続写像 [位相入門]
位相 第5回 近傍と連続写像
§1 近傍と近傍系
を距離空間とする。x∈Xと、実数ε>0に対し、
となるXの部分集合をxのε-近傍という。
x∈Xに対して、Xの部分集合Uが
をみたすとき、Uをxの近傍という。また、xの近傍全体の集合を近傍系といい、などで表す。
とくに、Uが開集合のとき開近傍といい、Uが閉集合のとき閉近傍という。
例1 Rを実数全体の集合、a,x∈Rとし、
とおく。
このとき、であり、任意の正の整数nに対して、とおけば、
が成立するので、は点aの開近傍となる。
例2 a,x∈Rとし、
とすると、はR上の閉集合で、
となるので、は点aの閉近傍になる。
定理1 を距離位相、をx∈Xの近傍系とする。このとき、次が成り立つ。
(1) ならばx∈Uである。
(2) ならばである。
(3) かつU⊂V⊂Xならばである。
(4) 任意のに対し、あるが存在し、V⊂Uかつ任意のy∈Uに対してとすることができる。
【証明】
(1)、(3)は明らか。
(2) だから、正の実数ε₁、ε₂でとすることができる。とすれば、
(4) に対してとおけばであり、任意のに対してとなる。
(証明終)
§2 連続写像
1変数関数f;R→Rが点aで連続であるとは、次の関係が成り立つことである。
このことは、ユークリッド空間Rに通常の距離を入れると、
さらに、
と書き換えることができる。
そして、このことは、
どのような正の実数εに対しても、点f(x)のε-近傍のfによる逆像が点aにおける近傍となるとき、写像fは点aで連続である
と言い換えることができる。
ある正の実数εに対してが点xの近傍であれば、ε'>εであるようなどんな実数ε'に対してもは点xの近傍となる。
なぜならば、
だから、定理1の(3)によっても点xの近傍になるからである。