「お前ら、関数列の収束に関する、この問題を解けるか?」の解答例 [数列と級数]
お前ら、関数列の収束に関する、この問題を解けるか?
とすると、各点x≧0では極限をもつことを示せ。
また、この収束は一様収束か。
【解答例】
a∈[0,∞]の任意の実数とする。
a=0のとき、nの値にかかわらず、
だから、
である。
a>0とする。a>1/n、すなわち、n>1/aとなるようにnをとると、
よって、
したがって、a∈[0,∞)の任意のaについては0に収束し、極限関数f(x)は
である。
したがって、はf(x)=0に一様収束しない。
(解答例終)
になるのは、x=1/nのときね。
みんな大好き「ε‐δ論法」を使うならば、例えば、次のようになるのでしょう。
【ε‐δ論法を用いた解答例】
a∈[0,∞)の任意の実数とする。
ε>0を任意の正数とする。
a=0のとき、自然数Nの値にかかわらず、
が成立し、は0に収束する。
a>0のとき、
である自然数Nをとれば、
したがって、はx∈[0,∞)の各点で0に収束する。
(以下略)
(解答終)
n>1/aのとき(右図参照)、、
任意のε>0に対して、
にすればいいわけだにゃ。
この不等式をと解くと、
になる。
だから、1/aεよりも大きな自然数Nを選べば、
になる。
なのですが、このNは
という2つの条件を同時に満たさなければならないので、この条件を同時に満足するように、
とする。
で、n>1/aやN>1/aとするというのは、右の図のように
となるのを避けるため。
n>1/a、または、N>1/aにとれば、
となり、n≧Nではは減少列になる。
関数列、数列だから、自然数nは、εやaにあわせて、いくらでも大きく取れるからね〜。
解答のaは、xにしても良かったんだけれど、理解を容易にするために、あえてaにしたにゃ。
xだと変数というイメージがどうしてもつきまとうし、aを取り出した時点で、aは一つの値、点として固定されるので、このことを強調するためにaとしました。
言い忘れたけれど、
一様収束の判定のところで、
x=1/nのとき、いかなるε>0をとっても、
となるので、関数列は一様収束でない
という解答もありです。
何故、こうなるかというと、一様収束の定義
を否定すると、
となり、これが一様収束でないことの定義になるから。
これを人間語に訳すと、
「ある正数ε>0があって、全ての自然数Nに対して、
とすることができる、自然数nと定義域Dに属する点xが存在する」
とかになりますかね。
そして、これが、関数列は一様収束でないことの定義になる。
x=1/n、ε=1のとき、この条件を満たしているから、は一様収束でないと結論できる。
これを使うと、次の関数列が一様収束するかどうかの判定を簡単に行うことができる。
問題
は、x≧0に属する全ての点xでf(x)=xに収束することを示せ。
また、これは一様に収束するか答えよ。
【略解】
よって、x∈[0,∞)の全ての点xでf(x)=xに収束する。
x=1/√nのとき、
となるので、この関数列は、一様に収束せず、各点収束である。
(解答終)
もちろん、
よって、一様収束でない
としてもよい。
なお、このとき、自然数nはある1つの値に固定されていることに注意。
x≧0のとき、x²/nには上限はないから、こうなるにゃ。
宿題 次の関数列はx≧0の各点で収束するが、一様に収束しないことを示せ。
関数列の収束の復習 [数列と級数]
関数列の収束の復習
そして、xの値を1つに固定すると、関数列は数列となるので、極限を定義することができ、この数列の場合、n→∞の極限をとると、
となる。
この関数列のように、定義域全ての点で関数列が収束するとき、各点収束するという。
さらに、
という関数を定義すれば、
と表すことができる。このような関数f(x)を関数列の極限関数という。
関数列と関数f(x)に対し、任意のx∈Iを固定するときに極限が存在し、
を満たすとき、f(x)をの極限関数といい、はfに各点収束するという。また、Iを収束域という。
これをε-δ論法で書けば、次のようになる。
任意のx∈I、ε>0に対して、ある自然数N(x,ε)が存在し、n≧N(x,ε)であるすべての自然数nについて
を満たすとき、f(x)をの極限関数といい、はfに各点収束するという。また、Iを収束域という。
ここで、N(x,ε)としているのは、自然数Nの値がxとεの値で決定されることを示す。
たとえば、上述の(1)の関数列の場合、
x=0のとき任意のε>0に対して、
が成立するので、N(0,ε)=1にとればよい。
x=1のときにも同様で、N(1,ε)=1にとればよい。
対して、0<x<1のとき、
両辺の対数をとると、
したがって、
に定めれば、
任意のε>0に対して、
とすることができる。
ではあるのですが、xが1に近づくとつれてN(x,ε)を限りなく大きく取らなければならなくなる。
ここで、記号[x]はガウス記号で、xを越さない整数のことである。
(注)
εの値によっては、
は負の整数になることがある。
したがって、
とすべきだが、ここでは、εは1に対して十分小さい正の数としている。
次に、0<a<1とし、
このとき、0≦x≦aである任意のxについて、
である。
x=0のときは、前回同様にN(0,ε)にとればよい。
0<x≦a<1のときは、
となるが、前回とは違って、このN(x,ε)は青天井ではなく、
という上限が存在する。
だから、
任意のε>0に対して、xの値に無関係に、N(x,ε)を(3)式の値にを定めることができて、
とすることができる。
このように、xの値によらずにN(x,ε)を定められるとき、N(ε)と表すことにする。
任意の正数ε>0に対して、ある自然数N(ε)が存在して、任意のx∈Iとn≧N(ε)であるすべての自然数nについて、
このことは、
と同値である。
最初の例の場合、
つまり、 の場合、
となり、n→∞のとき、これは0に近づかないので、一様収束ではない。(下図参照)
対して、0<a<1で、の場合、
となるので、一様収束ということになる。(下図参照)
なお、安直な判定法は、
が連続であるのに、極限関数f(x)が不連続ならば一様収束ではない
というものがある。
連続な関数から構成される関数列が一様収束ならば極限関数f(x)は必ず連続であるが、この逆は必ずしも成立しないので注意が必要。
たとえば、
関数列
は、極限関数f(x)=0に各点収束し、また、f(x)=0は連続であるが、[0,∞)で一様収束ではない。
無限級数の収束・発散の判定2 [数列と級数]
無限級数の収束・発散の判定2
前回にひき続いて、無限級数の収束・発散の判定について話をする。
その下準備として、次の問題を解くことにする。
問題1 次のことを示せ。
【解】
(1) 0<tのときであるから、x>0とすると
とすると、
よって、f(x)は、0<x<1のとき減少、1<xのとき増加となり、x=1のとき極小(最小)。
したがって、
である。
よって、x≧1のとき、
また、
したがって、ハサミ打ちの定理より
(解答終)
y=xは、y=log(1+x)の(0,0)における接線だから、x>0のとき、
でも、もちろん、OK!!
(右図参照)
さらに、「log(1+x)は上に凸の関数だから」というオマジナイを唱えれば、申し分なし!!
(2)は、ロピタルの定理を使えば、
と簡単に求められるが、このブログは、極力、ロピタルの定理を使わないという方針。
では、本題!!
問題2 次のことを示せ。
(1) は収束する。
(2) は収束する。
(3) は発散する。
【解】
(1) 問題1の(1)より
である。
したがって、
は単調増加で、は収束するので、は収束する。
(2) 問題1の(2)より
また、
だから、は単調増加数列で、かつ、
は収束するので、も収束する。
(3)
である。
したがって、
よって、は発散する。
(解答終)
無限級数の収束・発散 [数列と級数]
無限級数の収束・発散
高校のとき、
という無限級数が発散することを示す次のような証明を見て、深く感動した。
【無限級数(1)が発散することの証明】
ゆえに、(1)は発散する。
(証明終)
感動するのと同時に、「こんなうまい証明法は絶対に思いつかない」と、自分の才能のなさを痛いほど思い知らされた。
【別証】
0<k<x<k+1とすると、
k=1,2,・・・,nとし、(2)を足し合わせると、
n→のときlog(n+1)→∞だから、
よって、(1)は発散する。
(別証終)
(3)式の左辺と中辺のnをn−1に変え、さらに両辺に1を加えると、
したがって、
ここで、
とおくと
となり、は下に有界な単調減少数列だから、(4)は0以上1未満のある数に収束する。この極限値をCとすると、
そして、この数CをEulerの定数という。
問1 次の級数が収束することを示せ。
別証のように、積分を使ったダサい証明法は嫌だというヒトは、
という不等式を利用すると、
この両辺に1を加えると・・・。
もう、答を書いたようなものだが。
証明できなかったヒトは、数学的帰納法を使って
を証明する。
過去に何度も大学入試に出題された問題だケロ。
なお、次の関係が成立することは言うまでもないだろう。
ところで、無限級数(6)はいったいどんな数に収束するのだろうか。
1より大きく2以下であることは確かであるけれど謎である(^^)。
問2 次の級数は、a≦1のときは発散し、a>1のとき収束することを示せ。
問3 次の級数の収束・発散を判定せよ。
【解】
(1)
よって、発散する。
(2)
よって、発散する。
(解答終)
別証のように積分を使って解くこともできるだろうが・・・。
マンデルブロ集合と充填ジュリア集合 [数列と級数]
マンデルブロ集合と充填ジュリア集合
カオスやフラクタルの話が出たので、フラクタル図形の代表的なマンデルブロ集合について少しだけ話すことにするにゃ。
フラクタル図形とは、「いかなる部分も全体に似ている図形」くらいの意味。
マンデルブロ集合とは、
で与えられる複素数列が発散しないという条件を満たす複素数全体cがつくる集合のこと。
とすると、
となるので、x₀=y₀=0を計算の出発点として、これをもちいて順次計算することができる。
実は、マンデルブロ集合Mは
と定義することもできるのだが・・・。
ここで、
である。
それはそれとして、十進Basicにマンデルブロ集合を描くブログラムがあったので、それを用いて計算してみた結果は次の通り。
同じく十進BasicにすこしオシャレなCGを描くブログラムがあったので、それを用いてお絵かきしたものは次の通り。
次のサイトに、マンデルブロ集合を描くスクリプトがあるので、色々と遊んでみるといいと思うにゃ。
http://azisava.sakura.ne.jp/mandelbrot/script.html
YouTubeにある次の動画を紹介するケロ。
ジュリア集合とは、漸化式
で与えられる複素数列が発散しない初期値z₀全体の集合のこと。
十進Basicに充填ジュリア集合を描かせるプログラムがあるので、それを使って描かせた図形は次の通り。
お前らに質問(5月12日) 数列の極限 [数列と級数]
お前らに質問!!
問題
で与えられる実数の数列があるとする。
この数列が収束するような初項x₁の範囲を求めよ。
ノーヒントじゃ辛いかもしれないので、ヒントを幾つか与えることにする。
(1)式で与えられる数列が極限値αをもつならば、
したがって、極限値の候補は−3,1,2。
x₁=−3のとき
x₁=1のとき、
x₂=2のとき
さらに、おまけとして、グラフを。
Rを実数全体の集合とし、
で定義されるとすると、このグラフから
で与えられる数列の極限値は、どれも、方程式
の解、すなわち、RからRへの写像fの不動点になっていることがわかる。
ここまでヒントを与えたのだから、それぞれの極限値、すなわち、−3、1、2に収束する、x₁の範囲を求めろよな。
−3に収束するx₁の範囲、1に収束するx₁の範囲、2に収束するx₁の範囲を求めろって言ってんだ。
――表計算ソフトなどで、初期値の値x₁を変えて20項くらいまで計算すれば、この答はすぐにわかる!!――
そして、できることならば、その条件のとき、その極限値に収束することを証明する。
できた奴は、コメント欄に解答を書いて、ネムネコのところまで送るケロ!!
のとき
のとき
答を教えたようなものだ。
画像元:YouTubeの上の動画
追加問題
とすると、−3<f(x)<2となり、関数fは開区間(−3,2)から(−3,2)への写像となる。
さて、この写像fは縮小写像だろうか。
ちなみに、
とする。
0<c<1であるcが存在し、すべてのx,y∈Xに対し、
が成立するとき、fを縮小写像という。
無限乗積2 収束の条件 [数列と級数]
無限乗積2 収束の条件
定理1 無限乗積が収束するための必要十分条件は、任意の正数ε>0に対して適当なを定めることができて、であるすべての整数n、kに対して
である。
【証明】
必要性:もしが収束すれば、0に等しいは有限個しかないので、ある番号から先ではである。そこで、すべてのnに対してと仮定する。
とおくと、仮定より
であるPが存在する。よって、n=0,1,2,・・・に対して
となる正数Cが存在する。
また、Cauchyの定理より、任意のCε>0に対して、適当なが存在して、のすべてのn、kに対して
が成立する。
だから上式をで割ると、
十分性:仮定より、ε=1/2に対して適当なmを選べば、n>mであるすべてのnに対して
ここで、
とおけば、
したがって、が存在すればその極限値は0ではない。
次に任意のε>0に対して、であるを定めれば、であるすべてのn、kに対して
よって、Cauchyの定理から収束し、その極限値は0ではない。ゆえに、は収束する。
(証明終)
定理1でk=1とすれば、
となり、
したがって、無限乗積が収束するとき、
でなければならない。
と書くことにすると、次の定理が成り立つ。
【証明】
とおくと、
が存在するので、上式の右辺の極限値も存在し、
となる。
定理1より適当なを選べば、であるすべてのn,kと0<ε<1に対して
のとき、Log zを1の近傍で展開すれば
【解】
は収束するから、は(絶対)収束する。したがって、は収束する。
(解答終)
定理4 のとき、無限級数と無限乗積は同時に収束または発散する。
【証明】
が収束するための必要条件はであるから、ある番号から先はと仮定してよい。
ならば
この不等式はのときも成立するから、は同時に収束または発散する。
またの代わりにを置き換えれば
となるから定理3よりは同時に収束または発散する。
(証明終)
無限乗積が収束するとき、は絶対収束するという。
定理5 絶対収束する無限乗積は収束する。
無限乗積1 [数列と級数]
無限乗積の定義
三角関数の半角公式
を繰り返して用いると、
0<x<πならば、
だから
したがって、
ゆえに
特に、x=π/2のとき
このように無限個の数を掛けあわせたものを無限乗積という。
数列が与えられたとき
を無限乗積といい、をその第n項、
をその第n項までの部分積という。
いま仮にであるとすると、
となり、
また、
とすると、
となり、各項が0でないのに無限乗積が
となってしまう。
そこで、次のように無限乗積の収束と発散を定義することにする。
[Ⅰ] すべてのが0でなく、
となるPが存在するとき、無限乗積はPに収束するといい
と書く。
また、のとき、無限乗積は零に発散するという。
が存在しないとき、は発散するという。
[Ⅱ] の中に0に等しい物が有限個あり、それらの項を取り除いた残りの無限乗積が[Ⅰ]の意味で収束するとき、もとの無限乗積は零に収束するといい、
と書く。除外した残りが(0に)発散するときは、は零に発散するという。
[Ⅲ] の中に無限個の0に等しい物があるときは、は発散するという。
問1 次のことを示せ。
【解】
よって、
問2 はともに発散することを示せ。
【解】
したがって、は発散する。
したがって、は0に発散する。
(解答終)
問3 次の関係を示せ。
ただし、
【解】
したがって、
(解答終)
秘密の定理 [数列と級数]
秘密の定理
定理
閉区間[a,b]で定義された連続関数からなる関数列が一様有界で、連続関数f(x)が収束するならば、
が成立する。
一様有界とは、
となる定数Kが存在すること。
この定理がどれほど強力かというと、次の問題が簡単に解けてしまう。
問 次の値を求めよ。
【解】
(1)
よって、は一様有界。
また、
となるので、上の定理から
(2)
よって、は一様有界。
また、
したがって、
(3)
したがって、は一様有界。
また、
よって、
(解答終)
(1)くらいならば、0≦x≦1のとき、
したがって、
ここで、
となるので、ハサミ打ちの定理より
と解くことができるけれど、(2)、(3)はこのように簡単に解くことはできない。
しかも、[a,b]で連続な関数からなる関数列が一様収束ならば一様有界なので、一様収束の関数列に対してもそのままこの定理を使うことができる。
宿題 次の値を求めよ。
(ヒント)
この問題は、
に気づけば解けるが・・・。そして、ロピタルの定理を使えば・・・。
とすると、
したがって、・・・。
一様収束の復習 [数列と級数]
一様収束の復習
区間Iで定義された関数からなる関数列がx∈Iの各点で関数f(x)に収束するとき、すなわち、
であるとき、関数列はI上でf(x)に各点収束するという。
例1
この関数列は、
に収束する。
そこで、
と定義すれば、
となる。
ところで、は0<x<1で0に収束するので、任意のε>0に対して
したがって、任意のε>0に対して、正の整数を選ぶと、x∈[0,1]で
となる。
ここで[x]はガウス記号で、xを越さない最大の整数である。
一般に、区間Iで定義された関数列がf(x)に収束するとき、例1のように、(1)式の正の整数Nはεだけでは定まらず、点xで異なる。しかし、点xに無関係にNがεだけで定まるとき、つまり、であるとき、はf(x)に一様収束するという。すなわち、
任意のε>0に対し、N(ε)を十分に大きく選べば、∀n>N(ε)と∀x∈Iに対し
であるとき、関数列は関数f(x)に一様収束するという。
例2
は0に一様収束する。
よって、任意のε>0に対して、にとれば、∀n>Nと∀x>1に対して
となり、0に一様収束する。
一様収束する関数列に関しては、次の定理が成立する。
定理
を[a,b]で連続な関数列とする。[a,b]上でがf(x)に一様収束するならば、
例3 a>1とすると、
は、[1,a]上では0に一様収束する。
したがって、定理より
実際、左辺を計算してみると、
問題
のとき、次の問に答えよ。
(1) が一様収束することを示せ。
【解】
(1)を微分すると、
したがって、x=1/nのときに極大、かつ、最大になり、
したがって、任意のx≧0に対して
また、
だから、ハサミ打ちの定理より
である。
ε>0、さらに、とすると、
したがって、任意のεに対して、にとると、∀n>Nに対して
となるので、は0に一様収束する。
(2) 定理より、
(解答終)
ところで、例1の
は、0に各点収束するけれど、一様収束ではない。
しかし、
また、の極限関数
の定積分
となり、
が成り立つ。
つまり、が[a,b]で連続な関数で、関数列が一様収束しなくても、
が成り立つ場合がある。