台形公式と誤差 [微分積分]
台形公式とその誤差
で近似する計算法を台形公式という。
f(x)が1次以下の多項式(関数)である場合、
が成立する。
f(x)=x²として、の近似値を(1)で求めてみると、
になる。
したがって、この時の誤差は
問題1 a、bが任意の実数のとき、
はf(x)が1次以下の多項式であれば成り立つが、f(x)が2次以上の多項式であると、一般に、成り立たない。
このとき、次の問に答えよ。
(1) f(x)=x²のとき、(A)の右辺の値を左辺の積分の近似値とみれば、その誤差は(b−a)³に比例することを示せ。
(2) 積分を求めるのに、積分の区間0≦x≦1をn個の区間に等分し、各区間ごとに近似式(A)を用い、それらの近似値を加えて出す。このようにして得られる積分の誤差を1/10⁴より小さくするには、nをいくつにすればよいか。
【解】
(1)
だから、
(2) [0,1]をn等分し
とおき、
とすると、(1)より
したがって、誤差は
になる。
この誤差を1/10⁴より小さくすれば良いので、
したがって、n≧41にとればよい。
(解答終)
本当にこの答えが正しいかどうか、自分が過去に作ったプログラム(スクリプト)でn=40、41について計算してみると、n=40のときは誤差が1/10⁴を越え、n=41のとき誤差が1/10⁴より小さくなっていて、n=41が求める答えであることがわかる。
定理1 (台形公式の誤差)
f(x)は[a,b]でC²級とすると、
を満たすξが存在する。
【証明】
とおくと、部分積分を2度用いると
[a,b]で(b−x)(x−a)は非負連続なので、積分の平均値の定理より
を満たすξが存在する。
一方、
だから、これを(B)に代入すると、
(証明終)
定理 積分の(第一)平均値の定理
f(x)が[a,b]で連続、g(x)が[a,b]で非負連続ならば、
を満足するξが存在する。
問題2 f(x)を[a,b]でC²級の関数とするとき、
となることを示せ。
ただし、
とする。
【解】
部分積分より
一方、
となるので、これを代入すると、
(解答終)
さてさて、f(x)=x²、a=0、b=1とすると、
となるので、定理から
となり、先に求めた結果と一致している。
また、この定理から、問題1の(1)の答が
であることがわかる。
ところで、g(x)=1とすると、積分の平均値の定理から
となるξが存在する。
このξの代わりにと、aとbの中点をとって、を次のように近似する。
これを中点公式という。
そして、中点公式も台形公式と同じく、f(x)が1次以下の多項式(関数)であれば、
と等号が成立し、(2)の右辺でを近似した誤差は(b−a)³に比例する。
ここで問題になるのは、台形公式と中点公式のどちらが精度よく計算できるかだ。
試しに、を中点公式で近似すると、
したがって、誤差は
となり、台形公式の誤差の1/2倍になっていることがわかる。
定理2 (中点公式の誤差)
f(x)は[a,b]でC²級とすると、
というわけで、一般に、中点公式の方が台形公式よりも精度よくを近似することができる。
また、
とすると、シンプソンの公式、台形公式、中点公式の間には
という関係が成り立ち、シンプソンの公式は、台形公式と中点公式の剰余校が消えるような重みつき平均になっていることがわかる(※)。
なお、図形的に言うと、台形公式のTの値は下図の台形ABGF、中点公式Mの値はEDGF、そして、シンプソンの公式のSの値は、y=f(x)を2次関数で近似した放物線(青色で示してある)とx軸、直線AF、BCで囲まれた面積を表す。
(※) 定理1、定理2の式中に出てくるa<ξ<bの値は、一般的に異なることに注意。