質点系の力学 第1回 2質点系の力学 [ねこ騙し物理]
質点系の力学 第1回 2質点系の運動
2個の質点が相互作用(内力)だけで運動しているとする。質量m₁、質量m₂の位置ベクトルをそれぞれr₁、r₂とすると運動方程式は
である。
ここで、F₂₁は質点m₁が質点m₂に及ぼす力、F₁₂は質点m₂が質点₁に及ぼす力である。
作用反作用の法則より
が成立するので、(1)と(2)の両辺を加えると、
となる。
この両辺を時間tで積分すると、
ここで、Pは時間によらない定数ベクトルで、この質点系の全運動量である。つまり、全運動量は保存される。
なお、
である。
M=m₁+m₂とし、
によって質量中心または重心を定義すると、
となるから、は2質点の質量が重心に集中した1個の質量の形になっている。これが一定ということは、重心の速度が一定ということである。
さて、(2)式の両辺をm₂で割ったものから(1)式の両辺をm₁で割ったものを引くと、
(3)より、
となる。
ここで、
を定義すると、上の式は
となるので、(8)は質量μをもち位置rで表される1個の質点がF₁₂の力を受けて運動する場合の運動方程式になっている。
また、(4)と(6)から、
となり、(9)、(10)式から2つの質点の位置を定めることができる。
太陽と惑星のようにm₁≫m₂の場合、
となるので、R≒r₁となる。
また、換算質量μは
となる。
このことは、太陽を不動の中心、つまり、原点に設定し、その周りを質量m₂の惑星が回っているように(近似して)計算してよいということを意味しているのであった。
ド・ブロイの物質波 [ねこ騙し物理]
ド・ブロイの物質波
§1 少しだけ相対論的力学
ド・ブロイの物質波の話をするには、相対論的な力学についての知識を有していたほうがよいであろうということで、少しだけ相対論的な力学の数式を紹介。
速さvで移動する物体の質量mは、
になる。
ここで、m₀は物体が静止している、つまり、v=0のときの質量で、cは光の速さである。
運動量pは
エネルギーEは
問題 次のことを示せ。
【解】
(1) (3)式より、
したがって、
(2) (1)式より
だから、
(解答終)
光(量)子は質量は0と考えられている。光子に静止質量m₀を考えるなど無意味とも言えるが、m₀=0とすると、問題の(2)より
pは運動量ベクトルpの大きさ、つまり、
だから、
になる。
だから、光量子は質量を有さないけれど運動量をもっていることになる。
アインシュタインの光量子仮説から、振動数νの光量子は
というエネルギーを持っているので、
という運動量(の大きさ)を持っていることになる。
ここで、λは光の波長で、
という関係がある。
上の(5)式を導くためだけに相対論的力学を引っ張りだしたにゃ。
§2 ド・ブロイの物質波
これまで波だと信じられていた光が粒子ならば、これまで粒子と信じられていたものが波であったっていいじゃないか。
このように考えたド・ブロイは、(5)式に基づき、運動量pをもった粒子は
という波長をもった波(のようなもの)であるという物質波という考えを提唱した。この式をド・ブロイの関係式といい、この波長をド・ブロイ波長という。
そして、この物質波によって、ボーア・ゾンマーフェルトの量子条件に物理的な意味を与えることが可能になる。
水素原子核(陽子)を中心に半径aの円運動を電子がしているとき、ボーアの量子条件は、
であるが、これをド・ブロイの関係式(6)を用いると、
と書き換えることができる。
この式は、右の図のように、波長λの正の整数倍が円周2πaに等しい電子の物質波のみが許されるということを意味している。というわけで、この波は円周上の定常波ということになる。
ウィキペディアの「閉曲面上の定常波」にアニメーションが出ているので、このアニメーションを見てみるといいと思うにゃ。
ド・ブロイの物質波というアイデアによって、ボーア・ゾンマーフェルトの量子条件に物理的意味を与えることができた。
そして、これがシュレディンガーの波動方程式へと発展してゆくのであった。
ボーアの水素原子モデル [ねこ騙し物理]
ボーアの水素原子モデル
仮説1(ボーアの量子条件)
電子はある安定な軌道の上だけを運動し、この軌道を運動するときには光を放出しない。この安定な軌道を半径aの円軌道とすれば、その角運動量の2π倍はプランク定数hの正の整数倍に等しい。すなわち、
仮説2(振動数条件)
上の条件で与えられる1つの安定な軌道(エネルギーE₁)から他の軌道(エネルギーE₂)に電子が移るときだけに、光の吸収、または、放出が起こり、放出または吸収される光の振動数は
から定められる。ただし、E₂>E₁のときは放出、E₂<E₁のときは吸収である。
仮説3
電子が安定な軌道にあるときはニュートン力学にしたがう。
水素の原子核(陽子)から電子に作用する力は、電子と陽子の電荷をそれぞれ−e、e、さらに、電子の質量をmとすると、
である。
電子は原子核のまわりを半径aの円運動をするので、遠心力と静電引力は釣り合わなければならない。したがって、
が成り立つ。
また、電子のもつエネルギーEは
(3)と(4)からvを消去すると、
また、量子条件(1)と力の釣り合いの式(3)からvを消去すると、
これを(5)に代入すると、
となり、nは正の整数だから、電子のもつエネルギーは飛び飛びの値になる。
この値をと書くことにすれば、
になる。そして、この自然数nを量子数という。
n>n'とし、電子が量子数nの(定常)状態から量子数n'の(定常)状態に移るとき、(2)式より
となる。
(9)式を波長λで表すと、
となる。ここで、cは光速度である。
とすると、
となり、水素スペクトルのリュードベリの公式が得られる。
のみならず、(11)式の左辺に電子の質量、電荷、などの物理量を代入し求めた値とリュードベリ定数Rが一致してしまった。
従来のニュートン力学や電磁気学の理論によると、水素原子核のまわりを電子が回ると、電子はその回転数に等しい振動数の電磁波を放出し、あっという間に原子核に落っこちてしまうんだよね。だから、電子は水素原子核のまわりをクルクルいつまでも回り続けることができない。電子は水素原子核のまわりをどうやら回っているらしいということはわかっていたけれど、何故、電子が、原子核に落っこちることなく、そののまわりをいつまでも回り続けられるのかがわからなかった。
そして、ボーアは、量子仮説を水素原子核をまわる電子に適用し、この謎を解決したというわけ。
しかし、ボーアは、何故、角運動量mvaがh/2πの自然数倍になるのかについては説明できなかった。そして、新たな謎を産んでしまった。
ボーアの水素原子モデルは電子の軌道が円軌道の場合にのみ適用できるものである。そこで、より一般の軌道にも対応できるように、ゾンマーフェルトによって、ボーアの量子条件は、
と拡張された。これをボーア・ゾンマーフェルトの量子化条件という。
ここで、は、それぞれ、一般化座標と一般化運動量である。
水素原子の円運動だけを考えるとき、に極座標のθをとれば、その共役な一般化運動量は角運動量mvaになるので、ボーア・ゾンマーフェルト条件は、
となり、ボーアの量子条件と一致する。
拡張したものだから、当たり前といえば当たり前の話!!
光の波動性と粒子性 [ねこ騙し物理]
光の波動性と粒子性
右図に示すように、幅の狭い2つのスリットを通過した光は、距離の違いにもとづく位相差によって、互いに強め合ったり、弱め合ったりして、壁面で明暗のある干渉縞が生じる。
光の波長をλとすると、光路差S₂P−S₁Pが波長の整数倍のところで明い、波長の半分の奇数倍のところで暗い、明暗をもった縞模様ができる。
三平方の定理より
となるので、光路差は
lがx、dより十分に大きいとき、
と近似することができる。
したがって、
(※)
この2重スリットの干渉縞は、光を粒子と考えると説明がつかない。
ヤングの干渉実験によって、光の粒子説は命脈を絶たれ、「光の正体は波である」ということになった、とされている。
§2 光電効果
金属の表面に、光、特に、紫外線を照射すると、金属表面から電子が飛び出すことがある。これを光電効果といい、飛び出す電子を光電子という。
実験結果から、光電効果には次の特徴があることが知られている。
1) 光を強くすると、飛び出す電子の数が増加するだけで、光電子の運動エネルギーは変わらない。
2) 光電子の運動エネルギーの最大値はある光の振動数に関係し、振動数が増加するとともに大きくなる。また、限界振動数があり、それより小さい振動数の光をどんなに強く照射しても、光電子は飛び出さない。
右のグラフから、
といった実験式がすぐに得られと思うのだけれど、アインシュタインが光量子仮説を唱えるまで、誰も光電効果を説明することができなかった。
ちなみに、上の式のWを金属の仕事関数という。
この光電効果という現象は、光の波動説では説明できないんだケロ。
そこでアインシュタインは、「光はhνのエネルギーをもった粒子である」と考え、光電効果を次のように説明した。
光電子の最大運動エネルギーを、光の振動数をν、限界振動数をν₀とすると、
ここで、hはプランク定数。
そして、2つの式を比較すれば、仕事関数Wと限界振動数ν₀の間には、
という関係があることがわかる。
そして、アインシュタインは、この光量子仮説をもちいた光電効果の説明で、のちに、ノーベル賞を受賞することになる。
ヤングの干渉実験によって止めを刺されたはずの光の粒子説が復活し、「光の正体は粒子か波か」という振り出しに戻ってしまった(^^ゞ
そして、(理論)物理学は、混迷の時代へと突き進むのであった。
フェルマーの原理を用いて反射・屈折の法則を導く [ねこ騙し物理]
フェルマーの原理を用いて反射・屈折の法則を導く
次のフェルマーの原理を用いて、スネルの反射・屈折法則を導くすることにする。
フェルマーの原理
2点間の光学的距離を最小にする経路を光は進む
ここで、異なる2点を結ぶ経路Cの光学的距離とは、屈折率nと線素dsをかけたndsを経路に沿って積分したものであり、つまり、
のことであるが、屈折率が一定の場合、屈折率と相異なる2点の経路、つまり、曲線の長さとの積になる。
そして、この経路Cは、オイラー・ラグランジュの方程式
から求められることは、前回、話したとおりである。
しかし、ラグランジュの方程式から経路を求めるのは一般に難しいので、ここでは、微分を用いて経路を求めることにする。
異なる2点、点Aと点Bを結ぶ最短の経路は直線ABなので、真空、または、屈折率が一定の透明な物質(媒質)の中を光が進む場合、光は直線AB上を直進する。
次に、屈折率の異なる2つの媒質が平面境界面で分離され、媒質1中の点Aからもう一方の媒質2中の点Bまで光が辿る経路について考えることにする。
このとき、線分AO、OBの長さは
となるので、光学的距離Lは
となる。ここで、n₁、n₂は、それぞれ、媒質1と媒質2の屈折率を表す。
最小値(極小値)を求めるために、Lをxで微分すると、
極小値をとるとき、dL/dx=0でなければならないので、
右の図から、
となるので、
と、スネルの反射の法則を導くことができる。
ここで、v₁、v₂は媒質1,媒質2における光の速さである。
また、このことから、媒質1と媒質2の屈折率が等しいとき、屈折角はθ₁=θ₂となり、光は直線ABを通ることになる。(実は、この一行は、限りなく、循環論法(^^ゞ)。
反射の場合は、右の図のように、点などを配し、屈折の場合の屈折率をn=n₁=n₂とすれば屈折についての計算をそのまま流用することができ、この結果、
と、スネルの反射の法則を導くことができる。
反射については、微分を使うことなく、初等幾何学の知識を用いて次のように最短経路と反射角を求めることができる。
平面境界面に関して点Bと対象な点B’をとると、OB=OB'だから、
となり、AO+OBの最小値はAB'。
最短経路は直線AB’だからθ₁=θ₂である、と証明することも可能。
ネムネコ、かく考える (量子力学編) [ねこ騙し物理]
ネムネコ、かく考える (量子力学編)
一昨日の8月29日に、原島鮮の初等量子力学に出ていた次の問題と、その解説について紹介した。
問題 波動の式
は、相対論的な力学では
ただし、
が成り立つ。この波の位相速度と群速度を求めよ。
【解】
したがって、
ここで、
となるので、
(解答終)
は古典的粒子類推のvに等しくなるが、位相速度の方は光速度cより大きい。相対性理論に合わないようであるが、φは信号を伝えることができないので矛盾するものではない。
エネルギーEの標準、すなわちエネルギーを0にとる粒子の状態は任意である。ところが、角振動数ωはで与えられるので、ωには不定の定数が存在しているはずである。それゆえ、ωがなまのまま入っている位相速度はこの定数のとり方によって違う値をとってしまう。しかしその違いは物理的な意味があるものではない。これに反して群速度は物理的にははっきりした意味があるので、エネルギーの標準のとり方に無関係な値をもつ。
原島鮮 初等量子力学
そして、この解答だと、|v/c|≪1のとき、非相対論的力学から得られる時の位相速度
と一致しないということにも言及した。
ネムネコが考えるにこの問題と解答はおかしいのではないかという話です。
つらつらと考えてみるに、問題に出ているエネルギーの式は間違っているかもしれない。
にするべきなんじゃ〜ないか。
これならば、|v/c|≪1のとき、
になるので、
となり、非相対論的力学の運動エネルギーと一致する。
相対論的力学のエネルギーEの式を、
とするならば、
となる。
そして、これならば、位相速度が光速度cを越すことがない。(下のグラフを参照)
しかし、物理の専門家がこんなミスをするものだろうか。しかも、原島鮮の初等量子力学(裳華房)と言えば、長年、大学の量子力学の教科書や参考書として使われてきた本(初等と題しているが、量子力学の初学者には何が書かれているか、さっぱり理解できないであろうといわれる、伝説の一冊)であり、間違いならば、誰かがこの過ちを指摘し、訂正がなされていたであろう。
であるからして、ネムネコが間違っているに違いない。
でもなぁ〜、
なので、
と、あらためて定義すると(いかにも数学的。0で割るという算法は認めない。ここは数学のブログだ!!)、|v/c|≪1のときは、
と非相対論の位相速度と一致するだけではなく、v=cのときはになる。また、グラフから明らかなように、位相速度はの範囲に収まり、すべてが丸く収まるんだよね。
エネルギーの定数分の不定という問題点も、エネルギーと静止エネルギーm₀c²との差をとることによって解消できる。
と同時に、原島の諸島量子力学にある
「エネルギーEの標準、すなわちエネルギーを0にとる粒子の状態は任意である。ところが、角振動数ωはで与えられるので、ωには不定の定数が存在しているはずである。それゆえ、ωがなまのまま入っている位相速度はこの定数のとり方によって違う値をとってしまう。しかしその違いは物理的な意味があるものではない。これに反して群速度は物理的にははっきりした意味があるので、エネルギーの標準のとり方に無関係な値をもつ。」
という説明が意味を有さないものになってしまう。
では、という(波動関数、物質波(・・?の)位相速度は、一体、何なのだ?
所詮、物理の素人の戯言。
だから、ここに書いてあることを真に受けないように!!
フェルマーの原理とラグランジュの方程式 [ねこ騙し物理]
フェルマーの原理とラグランジュの方程式
フェルマーの原理を述べる前に、光学的距離を次のように定義する。
点Aと点Bを結ぶ経路Cの光学的距離Sとは、屈折率nと線素dsをかけたndsを経路に沿って積分したものであり、つまり、
で与えられる。
フェルマーの原理
2点間の光学的距離を最小にする経路を光は進む
ところで、
2次元平面上の線素dsは
で与えられるので、
となる。
屈折率nは一般に点の位置(x,y)の関数になるので、n=n(x,y)と表すことにし、
とおくと、
となる。
実際に辿る経路をとし、これから少しずれた経路C’をとの光学的距離の差を求めると、
微分と変分の順序の交換が可能であるとすると、
さらに、δy(x₀)=0、δy(x₁)=0という境界条件を入れて、この積分を計算すると、
最小値のときδS=0となる必要があり、しかも、δyは任意なので、δS=0になるためには、
これは何かといえば、オイラー・ラグランジュの方程式!!
ということで、光の辿る経路もラグランジュの方程式を解くことによって求められるんだケロ。
このことは、かなり誇張を交えて言うと、
ラグランジュの方程式は、単にニュートンの運動方程式であるのみならず、光の運動方程式でもある。
何で、光学的距離が最小となる経路を光が辿るかといえば、自然法則を定めた神さまがケチだったからだにゃ(笑)。
神さま、自然は無駄を嫌うんだケロ。
そして、フェルマーの原理、つまり、最小作用の原理は、こうした神学、形而上学的思想、信念と深く関係があると言われているのであった。
位相速度と群速度 [ねこ騙し物理]
今日、Tastenkastenさんからいただいたコメントの返信で大ポカをしてしまったので、反省と自身の知識の確認のために、波の速度に関して記事を書くことにするにゃ。
位相速度と群速度
角振動数ω、波数kの次の波がある。
位相一定、つまり、
の状態が移動するようすは
であらわされるので、位相速度は
になる。
次に、分散などがあり、波の振動数ωと波数kが少し異なる2つの波の合成について考えると、
と、「うなり」をもった振動になる。
この振幅
は
という速さで伝わることになり、これが群速度である。
ωがkの関数であるとき、群速度は
になる。
――数学とは違って、Δk→0のときΔω/Δkがある1つの値に限りなく近づく、といった細かいことは言わない(^^ゞ――
以上のことをまとめると、
したがって、角振動数ωが波数kに比例するとき、になる。
周波数、つまり、角振動数がすこしだけ異なる2つの波を合成すると、合成された波は下の図に示すように元の2つの波の(位相)速度と異なる波の速度、群速度を持つことになるんだケロ。
次に、位相速度と群速度の関係について考えることにする。
波長をλとすると、
一方、群速度に関しては、
という関係があるので、
という関係式が得られる。
たしか、
という関係式は、重要な式だったはず。
ネムネコが物理を勉強したのは大昔のことなので、このあたりの話はすっかり忘れてしまった。
たまにこうしたことを復習しないと、今回のTastenkastenさんのお便りへの返信のように、大嘘をつくことになってしまうんだにゃ(^^ゞ
勘違いや記憶違いは、誰にもあることだにゃ。だから、今回のことで、ネムネコを責めてはいけないと思うケロ。
そして、
ネムネコが考えるに、
光の位相速度が真空中の光の速さc=3×10⁵km/sを越えることがあること、この場合でも、「(真空中の)光よりも情報を早く伝えることはできない」とする(特殊)相対性理論の仮定(?)が破れないことについては、
ddt³さんが、きっと、実例をあげて、詳しく解説してくださるのではないだろうか(^^)
ハミルトン・ヤコビの方程式 [ねこ騙し物理]
ハミルトン・ヤコビの方程式
始点は同じだが終点が異なる2つの経路1、2があるとする。
経路1によって求められる作用をS₁、経路2によって求められる作用をS₂とする。
このとき作用の差は
ラグランジュの方程式
から、最終行の第1項の積分は0である。
またより、
一般化運動量
を用いると、
今度は、始点と終点を固定し、終点に到達時刻が異なるものとする。
作用Sは
だから、時刻tで微分すると、
また、先の議論で作用Sは一般化座標qの関数でもあったので、
を上の式に代入すると、
ここで、Hはハミルトニアン、
ですが、
を用いてハミルトニアンを書き換えると、
になるので、
これをハミルトン・ヤコビの方程式という。
話を簡単にするために、自由度1の場合について考えるケロ。
このとき、ハミルトン・ヤコビの方程式は、
になるにゃ。
で、量子力学の時間を含むシュレディンガーの方程式は、
ここで、iは虚数単位、はプランク定数hを2πで割ったもの、つまり、
すこし形が違うけれど、ハミルトン・ヤコビの方程式とシュレディンガーの方程式は似た形をしているのがわかるだろう。
シュレディンガーは、どうも、このハミルトン・ヤコビの方程式を参考に、有名なシュレディンガーの波動方程式を使ったらしいんだよね。
(デカルト直交座標以外の座標系における)運動方程式を導いて微分方程式を解くという実用的な観点からすると、ラグランジュの方程式で十分。ハミルトンの正準方程式、まして、ハミルトン・ヤコビの方程式から運動方程式を導き、その微分方程式を解くなんてことは、まず、することはない。だって、得られるのはニュートンの運動方程式(と同等なもの)なんだから、ラグランジュの方程式だけを知っていれば十分。
じゃぁ、何で、大学の理工系の学部で解析力学なんて小難しいものを教えるかといえば、そりゃ〜、量子力学と統計力学を学ぶためだにゃ。解析力学で使う手法、用語が量子力学や統計力学で出てくるので、解析力学は避けて通れない関門、難関なんだにゃ。そして、多くの学生が解析力学で討ち死にするのであった(笑)。
統計力学で必要となるリュービルの定理は紹介していないけれど、ちょっと進んだ微分積分、解析の応用として、解析力学を取り上げてみたにゃ。
お前らに問題8月27日 解析力学編)の解答例 [ねこ騙し物理]
お前らに問題8月27日 解析力学編)の解答例
問題 ハミルトニアンがH=H(p,q)であるとき、ハミルトニアンは時刻によらず一定、つまり、
であることを証明せよ。
ここで、pとqは、それぞれ、一般化座標と一般化運動量である。
【解】
ハミルトンの正準方程式より
よって、
(解答終)
【別解】
前回のポアソン括弧の(3)より
(別解)
別解ではポアソン括弧式を定義に従って計算しているが、これはポアソン括弧の基本的性質なので、としてよい。
余談ですが、
とすると、
ここで、
とおくと、形式的に、①式は形式的に次のようになる。
①や②を物質微分やラグランジュ微分といい、特に、記号、
で表すことがある。