第46回 ベータ関数の定積分への応用 [微分積分]
第46回 ベータ関数の定積分への応用
ガンマ関数
ガンマ関数の性質
特に、nが自然数のとき
また、
ベータ関数(Β関数)
ベータ関数とガンマ関数
とくに、m,nが自然数のとき
問1 ベータ関数を利用して、次の定積分の値を求めよ。
【解】
(1)
(2)
だから
また、
したがって、
(3)
さて、
だから、
(解答終)
問2 と置換し、ベータ関数を利用して、次の定積分の値を求めよ。ただし、b>aとする。
【解】
とおくと、x=aはt=0、x=bはt=1に対応し、dx=(b−a)dtになる。
したがって、
(1)はp=2、q=2の場合なので、
(2)はp=2、q=3のときなので、
(3)はp=q=2/3の場合なので、
(解答終)
さて、ベータ関数
は、 x=sin²tと置くと、x=0はt=0、x=1はt=π/2に対応し、となるので、
したがって、
である。
特に、m、nを自然数とすると、
問3 ベータ関数を用いて、次の定積分の値を求めよ。
【解】
(解答終)
第45回 広義積分 その4 ベータ関数 [微分積分]
第45回 広義積分 その4 ベータ関数
定理
(ⅰ) 関数f(x)は(a,b]で連続とする。ある0≦λ<1について、が収束するならば、広義積分は収束する。
(ⅱ) 関数f(x)は[a,b)で連続とする。ある0≦λ<1について、が収束するならば、広義積分は収束する。
【証明
0≦λ<1とする。
(ⅰ)とすると、
であるδ>0が存在する。
(ⅱ) とすると、
であるδ>0が存在する。
0≦λ<1だから、広義積分は収束し、したがって、も収束する。
(証明終)
【証明】
0<c<1とし、
とする。
(1) p≧1のとき、[0,c]では連続なので、は通常の定積分で存在する。
0<p<1のとき、だから、は広義積分。
また、このとき、0<p−1<1であり、
となるので、広義積分が存在する。
(2) q≧1のとき、[c,1]では連続なので、は存在する。
0<q<1のとき、だから、は広義積分。
このとき、0<q−1<1であり、
よって、広義積分は存在する。
(1)、(2)より、p>0、q>0のとき、が存在するので、は存在する。
(証明終)
定義 ベータ関数
p>0、q>0に対して、
とおき、これをベータ関数(Β関数)という。
定理 (ベータ関数の性質)
ベータ関数Β(p,q)は次の性質をみたす。
【解】
(1) x=1−tとおくと
(2) x+(1−x)=1
したがって、
また、
したがって、
(3) だから、
また、
したがって、
(証明終)
さて、m、nが自然数のとき、
が成り立つので、
が成立する。
証明はしないが、
この関係は、m,nが自然数の時だけでなく、p>0、q>0のときにも成立する。すなわち、
第44回 広義積分 その3 ガンマ関数 [微分積分]
第44回 広義積分 その3 ガンマ関数
命題
p>0のとき、広義積分は収束する。
【証明】
とおき、
とする。
(1) p≧1のとき、f(x)は[0,1]で連続だから、は通常の積分。
0<p<1のとき、だから、は広義積分である。
0<x≦1では、だから、
よって、広義積分は収束する。
(2) 任意のp>0に対して
ゆえに、任意のx∈[1,∞)に対して
となる定数M>0が存在し、
である。
よって、広義は収束する。
(1)、(2)より、p>0のとき、広義積分は収束する。
(証明終)
定義 (ガンマ関数)
p>0に対して
とおき、これをガンマ関数という。
定理
ガンマ関数Γ(p)は次の性質をみたす。
特に、自然数nに対して
【証明】
0<s<1<tとすると、
である。
p>0のとき、
だから、
また、
n=1のとき
なので、
(証明終)
2変数関数の広義積分などが必要になるのでここでは示さないが、
である。
問1 次の値を求めよ。
【解】
p>0のとき、
が成り立ち、また、
したがって、
(解答終)
問1より
となるので、次の関係が成り立つことがわかる。
また、
ここでは証明せずに結果だけを示すが、ガンマ関数では、次の関係が成立する。
この関係を用いることで、ガンマ関数Γ(p)はp<0に拡張することができる。ただし、p≠−1、−2、・・・とする。
(5)式を用い、拡張したガンマ関数のグラフは次のようになる。
問2 (5)式を用い、であることを示せ。
【解】
P=1/2とおくと、
(解答終)
問3 の値を求めよ。
【解】
p=3/2とおくと、(5)式より
問1より
だから、
(解答終)
第43回 広義積分 その2 [微分積分]
第43回 広義積分 その2
問1 αを実数とするとするとき、次のことを示せ。
(1) 広義積分が収束するための必要十分条件はα<1である。
(2) 広義積分が収束するための必要十分条件はα>1である。
【解】
α=1のとき、
したがって、広義積分は発散する。
α≠1のとき、
したがって、が収束するのは、α<1のときである。
また、
(解答終)
次に、広義積分の収束・発散の判定で便利な次の定理だけを紹介する。
定理
a、bは実数とする。
f(x)、g(x)は区間I=(a,b](あるいは、[a,b)、(a,b))で連続とする。
(1) が収束するならば、は収束する。
(2) 任意のx∈Iに対して、|f(x)|≦g(x)、かつ、が収束するならば、は収束する。
(3) 任意のx∈Iに対してf(x)≧g(x)、かつ、が発散すれば、も発散する。
上記の定理は、区間が(−∞,b]、[a,∞)、(−∞,∞)である場合にも成立する。
問2 次の広義積分の収束、発散を判定せよ。
【解】
(1) (0,1]で
だから、も発散する。
(2) だから
と拡張すると、f(x)は[0,1]で連続となり、積分可能。
あるいは、0<x≦1のとき
であり、
だから、
広義積分は収束する。
(3)
よって、は発散する。
(4)
よって、発散する。
(5)
よって、収束する。
(6) π/2<xのとき
であり、
したがって、広義積分は収束する。
(解答終)
問3 次の広義積分が収束することを示せ。
【解】
(0,π/2]で
だから、
だから、広義積分は収束する。
π/2<tとすると、
かつが絶対収束する(※)のでも収束する。したがって、も収束する。
(解答終)
(※) [π/2、∞)で
だから、広義積分は絶対収束する。
問4 f(x)を[0,∞)で連続とするとき、次のことが成り立つことを示せ。
【解】
(1) f(x)が有界なので、ある定数Mが存在して、
したっがって、
で、
(3) であると仮定すると、f(x)は減少関数なので、任意のx∈[0,∞)に関してf(x)≧α。
すると、
(解答終)
第42回 広義積分 その1 [微分積分]
第42回 広義積分 その1
関数f(x)は半区間(a,b](または[a,b))で連続で、(または)が存在するとき、広義積分は収束するといい、
で表す。
また、f(x)が開区間(a,b)において連続で、が存在するとき、
と定義する。したがって、広義積分が収束するのは、a<c<bとする、広義積分がともに収束するときに限り、
が成立する。
問1 次の広義積分の値を求めよ。
【解】
(1) 1/√xは(0,1]で連続、かつ、だから、は広義積分。
t>0とすると、
だから、
(2) log xは(0,1]で連続、かつ、であるからは広義積分。
t>0とすると、
よって、
0<t<1とすると、
よって、
0<s<t<1とし、
とおくと、
したがって、
(解答終)
次の定理は、広義積分の定義より明らかであろう。
定理1
関数f(x)は(a,b]([a,b)あるいは(a,b))で連続とする。f(x)の原始関数F(x)が[a,b]で連続、あるいは、連続関数に拡張できる、すなわち、F(a+0)、F(b−0)が存在するならば、広義積分が存在し、
そして、この定理から、たとえば、問1の(1)、(3)は
と、計算してよい。
広義積分の存在定理は、微分積分入門の範囲を逸脱するので、広義積分の存在判定の重要な定理だけを紹介する。
定理2
関数f(x)、g(x)は区間 I=(a,b](あるいは、[a,b)、(a,b))で連続であるとする。
(1) が絶対収束、すなわち、が収束するならば、は収束する。
(2) 任意のx∈Iに対して|f(x)|≦g(x)、かつ、が収束するならば、は収束する。
(3) 任意のx∈Iに対してf(x)≧g(x)、かつ、が∞に発散するならば、も発散する。
定理2の系
関数f(x)、g(x)は区間 I=(a,b](あるいは、[a,b)、(a,b))で連続であるとする。正数M>0が存在し、任意のx∈Iに対し|f(x)|≦Mであるならば、は収束する。
関数f(x)が[a,∞)で連続で、が存在するとき、
と定義し、この極限値が存在しないとき広義積分は発散するという。
同様に、
と定義する。
問2 次の広義積分の値を求めよ。
【解】
(1) b>0とすると、
したがって、
(2) b>0とすると、
したがって、
(3) b>eとすると、
(4) a<bとすると、
したがって、
(解答終)
(4)は次のように解いてもよい。
(4) a<0<bとすると、
である。
したがって、
第41回 定積分と不等式 その2 [微分積分]
第41回 定積分と不等式 その2
問1 シュワルツの不等式
f、gは[a,b]で連続ならば
ここで、等号が成立のはαf+βg=0を満たす定数α、β(α²+β²>0)が存在するときに限る。
【証明】
とおく。
A≠0(A>0)のとき、任意の実数λについて
等号成立は、
を満たすλ₀が存在するときで、このとき、g=−λ₀fである。
A=0、すなわち、f=0のとき、
であり、
(証明終)
(註) [a,b]で定義される関数f(x)、g(x)が、任意のx∈[a,b]に対してf(x)=g(x)であるときf=g、また、f(x)>g(x)であるときf>0と表す。
問2 0<a<bのとき、次の不等式を証明せよ。
【略解】
(1) f(x)=x、g(x)=1/xとおくと、シュワルツの不等式より
(2) f(x)=1、g(x)=1/xとおくと、シュワルツの不等式より
(3) f(x)=√x、g(x)=1/√xとおくと、シュワルツの不等式より
(略解終)
定理
は狭義単調増加で、かつ、f(0)=0とする。
a≧0、b≧0ならば、
等号が成立するのはb=f(a)に限る。
【証明】
はy=f(x)とx=aおよびx軸に囲まれる面積、はy=f(x)とy=bおよびy軸で囲まれた面積。
したがって、
であり、等号成立はb=f(a)。
(証明終)
問3 (ヤングの不等式)
とする。
a≧0、b≧0のとき、
が成り立ち、等号が成立するのはのときに限ることを示せ。
【証明】
a≧0、b≧0とし、とおくと、
また、
であるから、
よって、定理より
等号成立は、
すなわち、のときに限る。
(証明終)
問4 (ヘルダーの不等式)
【証明】
とすると、ヤングの不等式より
これを積分すると、
ゆえに
またはのとき、f=0またはg=0なので、等号が成立する。
(証明終)
無限級数の収束判定への積分の応用 [微分積分]
無限級数の収束判定への積分の応用
問題 n≧2の自然数とするとき、定積分を利用して、次の不等式が成立することを示せ。
【解】
2≦k≦nとする。
(1) k−1≦x≦kとすると、
だから、
したがって、
よって、
(2) k−1≦x≦kとすると、
だから、
したがって、
①の左辺と中辺より
したがって、
また、①の中辺と右辺より
以上のことより
(解答終)
さて、
とすると、
となり、は単調増加数列。
また、問題の(1)より、
なので、は上に有界。
上に有界な単調増加数列は収束するので、
は収束する。
また、
とし、数列を定めると、問題の②より、
が成立し、
と発散するので、
も+∞に発散する。
このように定積分を用いて無限級数の収束判定を行うことができる場合がある。
定理 (無限級数の収束判定)
無限級数
は、0≦α≦1のとき発散し、α>1のとき収束する。
【証明】
後半のみ証明する。
2≦k≦nとする。
α>1のとき、に対して
したがって、
は上に有界で単調増加なので、無限級数は収束する。
(証明終)
問 0≦α≦1の場合について証明し、上の定理の証明を完成せよ。
さて、次に
としたとき、の収束について考えてみる。
したがっては下に有界。
また、
となり、は単調減少数列(級数)。
下に有界な単調減少数列は収束するので、は収束する。
そこで、
とおき、これをオイラーの定数という。
第40回 積分と不等式 その1 [微分積分]
第40回 積分と不等式 その1
定理 f(x)、g(x)は有界閉区間[a,b]において連続、かつ、f(x)≦g(x)ならば、
である。
さらに、f(ξ)<g(ξ)であるξ∈[a,b]が存在すれば、
この定理から、
a<x<bでf(x)<g(x)ならば、次のことが成立する。
問題1 次の不等式を証明せよ。
【解】
(1) 0<x<1/2で
したがって、
(2) 0<x<π/4で0<sin x < xだから、
よって、
(3) 0<x<π/2でだから、
したがって、
ところで、
(解答終)
問題2
(1) すべての正の数xに対して
であることを示せ。
(2) 閉区間[0,1]で正の値をとる連続関数f(x)が条件をみたすとき、不等式
であることを示せ。
【解】
(1) とおくと、
増減表を書くと
x |
0 |
・・・ |
1 |
・・・ |
f'(x) |
|
− |
0 |
+ |
f(x) |
|
減少 |
極小 |
増加 |
したがって、
(2) [0,1]でf(x)>0だから、(1)より
よって、
(解答終)
問題3 積分を使って次の不等式を示せ。
【解】
(1) 0<t<xとすると、
よって
したがって、
(2) x>1とすると、任意のt∈(1,x)に対して
したがって
0<x<1のとき、1/x>1だから、
x=1のとき、等号が成立するので、
(解答終)
問題4 積分を用いて、次の不等式が成り立つことを示せ。
【解】
x>0とする。
n=1のとき、
だから、
n=kのとき
が成り立つと仮定すると、
n=k+1のとき
したがって、数学的帰納法より
(解答終)
第39回 積分の平均値の定理とテーラー展開 [微分積分]
第39回 積分の平均値の定理とテーラー展開
定理1 積分の平均値の定理
f(x)が[a,b]で連続であるとき、
を満たすξが存在する。
【証明】
f(x)が[a,b]で連続なので、f(x)は[a,b]で最小値m、最大値Mをもつ。
m=Mのとき、すなわち、f(x)が定数のとき、(1)が成り立つのは明らか。
そこで、m<Mとすると、
b−a>0で割ると、
したがって、中間値の定理より
を満たすξがa<ξ<bに存在する。
よって、
(証明終)
この定理はさらに次のように拡張することが出来る。
定理2 (積分の第一平均値の定理)
f(x)が[a,b]で連続、g(x)が[a,b]で非負連続のとき、次の関係を満たすξが存在する。
【証明】
g(x)が[a,b]で恒等的に0のとき、(2)が成り立つのは明らか。
そこで、g(x)が[a,b]で恒等的でない、すなわち、とする。
f(x)は[a,b]で連続なので、[a,b]で最小値m≦最大値Mをもつ。
m=Mのとき、すなわち、f(x)が[a,b]で定数のとき、(2)が成り立つのは明らかなので、m<Mとすると、
[a,b]において
よって、
で割ると、
中間値の定理より
よって、定理は証明された。
(証明終)
問1 f(x)が[a,b]でC¹級であるとき、
であることを示せ。
【証明】
積分の平均値の定理より
よって、
(証明終)
問2 f(x)が[a,b]でC²級であるとき、
が成り立つことを示せ。
また、これを利用し、
が成り立つことを示せ。
【証明】
右辺を次のように部分積分すると、
b−xは[a,b]で非負連続なので、積分の平均値の定理より
を満たすξが存在する。
また、
ゆえに、
(証明終)
さらに、
同様に部分積分を繰り返すと、
を得る。
積分の第一平均値の定理より
となるので、
とテーラーの定理を得ることができる。
定理3 (積分形のTaylor展開)
f(x)が[a,b]で級ならば、任意のx∈[a,b]に対して
第38回 定積分の計算2 置換積分 [微分積分]
第38回 定積分の計算2 置換積分
定理 (置換積分)
関数f(x)は区間Iで連続、とする。x=φ(t)が区間JでC¹級であって、かたa=φ(α)、b=φ(β)ならば
【証明】
f(x)の原始関数をF(x)とすると、
この右辺はJで連続だから積分可能。
よって、
(証明終)
問1 次の値を求めよ。
【解】
(1) t=3x²+4とおくと、x=0にはt=4、x=2にはt=16が対応し、dt=6xdxだから、
(2) x=sintとおくと、t=0のときx=0、t=π/2のときx=1で、
また、dx=costdtだから、
(3) 2x−x²=1−(x−1)²だからx−1=sintとおくと、t=−π/2のときx=0、t=0のときx=1で、
また、dx=costdtだから、
(4) x=tantとおくと、t=0のときx=0、t=π/4のときx=1で、
よって
(5) とおくと、x=0のときt=0、x=π/2のときt=1で、
だから、
(6) とおくと、x=0のときt=0、x=π/2のときt=1で、
だから、
(解答終)
もちろん、(4)は
と計算してよい。
問2 f(x)を[−a,a]で連続とする。
f(x)が奇関数(f(−x)=−f(x))ならば
f(x)が偶関数(f(−x)=f(x)ならば
であることを示せ。
【解】
x=−tとおくと、x=−aのときt=a、x=0のときt=0が対応し、dx=−dtだから
f(x)が奇関数のとき
だから、①に代入すると、
f(x)が偶関数のとき
これを①の右辺に代入すると
(解答終)
問3 であることを示して、次の定積分の値を求めよ。
【解】
x=π−tとおくと、
(1)
(2)
(3)
t=cosxとおくと
したがって、
(解答終)
【解】
x=π/2−tとおくと、
である。
n≧2のとき
したがって、
nが偶数のとき
nが奇数のとき
(解答終)