正則関数による写像 [複素解析]
正則関数による写像
領域Dで定義された関数w=f(z)により、D内の曲線
は、一般に、w平面の曲線
にうつされる。
特に、fがDで正則で、Cが滑らかな曲線ならばfによるCの像であるΓも滑らかな曲線になる。
C₁、C₂をz₀を通る滑らかな曲線とし、Γ₁、Γ₂をw=f(z)によるそれぞれの像とする。z₀におけるC₁、C₂の接線のなす角がw₀=f(z₀)におけるΓ₁、Γ₂の接線のなす角に向きを含めて等しいとき、w=f(z)はz₀において等角写像という。
定理
w=f(z)がz₀において微分可能、かつ、とする。このとき、w=f(z)はz₀において等角写像である。
【証明】
点z₀をとおる2つの滑らかな曲線をC₁、C₂とし、とする。
とおくと、仮定よりf(z)は微分可能だから
である。
また、だからz₁をz₀の十分近くにとるととすることができるので、
これより
偏角をとって
一方、
だから、
(証明終了)
したがって、のときはz₀において必ずしも等角写像ではない。
例 とすると、n=1のときはz平面の全点で等角、n≧2のときはz=0以外で等角である。
なぜならば、n=1のとき、つまり、f(z)=zのとき、
であり、n≧2のとき
となり、z=0のときにf'(0)=0になるから。
たとえば、n=2のとき、原点を通る直線はw平面上の直線にうつされ、実軸となす角度がcから2cに変わる。
だけれども、定理より、w=f(z)が正則な関数であれば、となる点z₀以外での等角性は保証されるので、fが定数関数でなければ、ほとんどの点で等角写像である。
問1 次の場合について、w=f(z)による写像が等角でないようなz平面上の点を求めよ。
【解】
(1) とおくと、。
よって、
(2) とおくと、
したがって、f'(z)=0は
よって、z=±1。
(解答終)
問2
による円|z|=cの像を求めよ。
【解】
おとくと、
よって、|z|=r=c=1のとき、
0≦θ<2πの範囲でθを変化させると、−1≦u≦1となりり、w平面の実軸上の|u|≦1の線分にうつる。
z≠1のとき、r=cとおくと、①より
また、cos²θ+sin²θ=1だから、
の楕円にうつる。
(解答終)
複素関数と1次変換 [複素解析]
複素関数と1次変換
複素平面上の点集合Sの各点zに1つの複素数wが対応するとき、wをzの複素関数といい、w=f(z)で表す。このとき、zを独立変数、wを従属変数といい、Sをこの関数の定義域という。また、zとwのそれぞれの実部、虚部を分けてと書くと、w=f(z)は、実変数x,yの2つの実変数関数が与えられることと同等である。
関数w=f(z)が与えられたとき、変数zの値を表す複素平面をz平面、変数wの値を表す複素平面をw平面という。このとき、この関数は定義域Sに含まれるz平面上の点集合S’をw平面上の点集合へうつす写像と考えられ、をによるS'の像という。
a、b、c、dを複素数の定数とするとき、
の形の有理関数を1次関数という。これによって与えられたz平面からw平面への写像を1次変換という。
1次変換は、
c≠0のとき
c=0のとき
と変形されるから、1次変換は次の3つのタイプの1次変換の合成写像。
ⅰ) w=z+α (平行移動)
ⅱ) w=αz (原点まわりの回転と相似変換の合成写像)
ⅲ) (単位円|z|=1に対する反転と実軸に対する対称変換の合成写像)
とすると、
だから、点zの写像と同じ複素平面上に求めるには、原点Oと点zを結ぶ半直線上にとなる点z₁をとり、実軸に関するz₁の対称点をとればよい(補足参照)。
したがって、z平面の原点を中心とする半径ρの円|z|=ρは、w平面上の原点を中心とする円|w|=1/ρにうつされ、また、z平面上の原点を通り実軸と角φをなす半直線arg z=φは、w平面上の半直線arg w=−φに写される。
問 w=1/zにより、z平面の直線x=cとy=c(c≠0)はそれぞれw平面上のどのような点にうつされるか。
【略解】
z平面上の直線x=c上の点を(c,t)とし、w=1/zによってうつされるw上の点をz=u+ivとすると、
tを消去すると、
したがって、x=cは、実軸上の点を中心とする半径に円うつされる。
同様に、y=cは、虚軸上の点を中心とする半径の円にうつされる。
(解答終)
問の結果から、一次変換w=1/zによって、原点を通らない直線は原点を通る円に、逆に原点を通る円は原点を通らない直線にうつされることになる。
複素平面上の点zを極形式で表すと
したがって、
また、このことから、原点を中心とする半径ρ>0の円|z|=ρは、1次変換によって
つまり、原点を中心とする半径1/ρの円にうつされることがわかる。
【特別寄稿】 コーシーの積分公式の周辺 2 [複素解析]
【特別寄稿】 コーシーの積分公式の周辺 2
複素平面をz=x+iyで表します(i²=−1)。
複素積分∫dz/zを調べるために、まずdz/zを計算します。dz=dx+idyです。
ですが、分子分母にx-iyをかけて分母を実数化します。です。
ところでx/r²ってなんでしょう?。
ですよね?(^^)。
同様に、
です(^^)。
ここで内積をac+bd=(a,b)・(c,d)と書く事にして、上記2つを使うと、
と書ける事がわかります。
複素積分は線積分です。積分路Cの接線線素ベクトルは(dx,dy)になります。(dy,-dx)は、それを右に90°回転させたものです。Cを閉曲線とすれば、すなわち外法線線素ベクトルです。(dy,-dx)=ds。
いま勾配を∇=(∂/∂x,∂/∂y)、歪勾配を∇'=(∂/∂y,-∂/∂x)で定義し、Cを領域Rの境界とすれば、
になります。ガウスの発散定理から、r=0を除いて、
div・∇=∇・∇=Δであり、div・∇'は直接計算すれば、
になります(∇'は2次元のrotです)。
従ってr=0を含まぬ任意の領域で
なので、Rがr=0を含む場合でも、Rを半径εの円に取り直すのが可能とわかります。
dcをCの線素として、ds=(cosθ,sinθ)dcの形に表すと、
と書けます。C上ではr=ε(ε≠0)に注意し、
になる事に気づければ、
が得られます。εは任意でした。
よってε-δ論法で、Rにr=0を含めた時も、
が言えます(rotのdivは0が言えた)。
そういう訳で、
になります。
ところが前回の話から、は、
を満たすのでした。
従って、
となります(Rがr=0を内点として含む場合)。
「デルタ関数がいたぁ~!」と、自分は勝手に大喜びしました(^^;)。
を導くだけです。div(1/z)はデルタ関数なんだから、こんなの明らかに違いないと、喜び勇んで計算にかかりました・・・(^^;)。
(投稿 ddt³)
【特別寄稿】 コーシーの積分公式の周辺-1 [複素解析]
【特別寄稿】 コーシーの積分公式の周辺-1
コーシーの積分定理と積分公式から、以下を導けます。複素平面をz=x+iyで表すとして、
(1) z=0を外点とする任意の領域Rで、
ただし∫dzはRの境界C上の複素積分。
(2) z=0を内点とする任意の領域Rで、
(3) z=0で形式的に、1/z=∞。
これを見た時「デルタ関数の積分だ!」と思ったものでした(係数2πi)。というのは、複素関数を実と虚部の成分関数でf(z)=u(x,y)+iv(x,y)と書けば、複素(線)積分はガウスの発散定理で、実質は実の領域積分に直せるからです。
数値計算を(間違って?(^^))仕事にし、物理数学と渋々直面した人は、必ず1回はグリーン関数法を経験します。グリーン関数法は、グリーンさんがグリーンの公式を使って線形偏微分方程式の便利解法として開発したものです。
領域Rで定義される線形偏微分方程式を表す線形作用素をLとし、Lf(x,y)=g(x,y)はRの境界Cで境界条件Bを満たすとします。ここでf(x,y)は未知関数,g(x,y)は既知関数です。C上でBを満たし、Rで、
を満たすG(x,y,ξ,η)がグリーン関数です。δ(ξ,η)は(ξ,η)に特異点を持つデルタ関数。Gが見つかれば、線形作用素Lには解の重ね合わせが効くので、
でf(x,y)を計算できます。∫dξdηはRで行います。
ところが境界条件Bを満たすグリーン関数をみつける計算の方が、Lf=gを解くよりよっぽど難しいなんて事態は、よく起こります。そこで出来るだけ簡単なグリーン関数を使用して、境界条件のずれは数値的に合わせようとグリーン関数法を現代っぽくアレンジしたのが、境界要素法です。
Lとして一番普及してるのは、非圧縮性渦無し完全流体と静電場の支配方程式に現れるラプラシアン
です。Δに対するグリーン関数は、
と書けます。とりあえずδは原点に特異点を持つとしますが、任意の位置に特異点を持つ場合は、上式の解を平行移動するだけです。境界要素法では出来るだけ簡単なグリーン関数を使いたいので、普通はφを等方的とし境界条件は付けません。この条件を付けたグリーン関数を、ラプラス方程式の基本解と呼びます。
等方的なφとすれば極座標に移った方が便利なので、Δをで書き変えます。
※等方的なのでの項は0になる。
δ(0)はr=0以外では0です。従って実質的には、r≠0で、
を解けば良い事になります。これは線形常微分方程式です。解の公式を適用し、
を得ます。AとBは積分定数。非圧縮性渦無し完全流体でも静電場でもφはポテンシャルですので、B=0に選べます。Aの決定にはデルタ関数の性質を使います。
∫dxdyは、原点を内点として含む任意の領域Rで行います。再びδの性質から、r≠0ではδ(0)=0なので、Rとして半径εの円が可能です。∫Δφdxdyはそのままでは積分できないのでガウスの発散定理を使い、円周上の線積分ε∫dθに直します。θ=0~2πです。そうするとφ(r)の具体的形から、
が得られて、2πA=1よりA=1/(2π)になります。
すなわちラプラス方程式の基本解は、
です。δが(ξ,η)に特異点を持つ場合は、とします。
(1)~(3)はデルタ関数の実用的な定義と言えますが、(1)~(3)のかわりに、基本解φがラプラス方程式、
を満たす事を、デルタ関数の定義にも出来るはずです。
(執筆 ddt³)
以上は、ネムネコ・ファミリーのddt²さんの「ねこ騙し数学」への投稿記事です。
見やすいように若干数式に手を入れました。
なお、δ関数とは
という特殊関数のこと。
物理学者のディラックが提案した関数。
一様流中に置かれた円柱まわりの流れとダランベールのパラドクス(背理) [複素解析]
一様流中に置かれた円柱まわりの流れとダランベールのパラドクス(背理)
で与えられる流れの、|z|=aのまわりの流れを考える。
|z|=aだから、これは原点を中心とする半径aの円で、この円周上の点は
とあらわすことができる。
したがって、この円周上における複素速度ポテンシャルは
であり、円周方向の速度は
になる。
半径aの円周上の流れ関数はΨ=0で一定だから、流線はこの円周と一致しており、円周方向の速度しか持っていない。
念のために、とおくと
これにr=aを代入すると
となり、同じ結果が得られた。
ここで、は、それぞれ、半径方向の速度、(反時計回りの)円周方向の速度である。
ここからは、流体力学の知識を借りる。
気体のように密度ρの小さい流体は位置エネルギーを無視することができるので、ベルヌーイの式はとなる。
ここで、pは半径aの円(柱)上の圧力、は無限遠点での圧力。
よって、
円のx方向の圧力はpcosθだから、y方向の圧力はpsinθだから、この円にかかっているx方向、y方向の力、
となり、この円(柱)には力が働かない!!
つまり、速度が一様な流れの中に置かれた円柱の抵抗は0という、それはそれは”有り難い”結果が得られる。
これを、ダランベールの背理(パラドクス)という。
円柱だけではなく、球でも同じ結果が得られる。流体力学が、まったく役立たずで、かつて、「(数)学者のお遊び」と呼ばれたのも道理だにゃ(^^)
第62回 複素数関数の2次元流れへの応用 [複素解析]
第62回 複素数関数の2次元流れへの応用
平面上の点(x,y)における流体の速度ベクトル
とし、流体の密度をρ、時刻をtとすると
が成立する。
密度ρが一定のとき、連続の式はとなる。
さらに、流れが渦なしの条件
を満たすとき、前回示したように
である速度ポテンシャルφが存在する。
ここで、
とおき、
となる流れ関数Ψを導入すると、これはコーシー・リーマンの関係になるので、複素関数f(z)は正則で、微分可能であるなる。
つまり、
そして、このように定義された複素関数f(z)を複素速度ポテンシャルという。
Ψ=一定の曲線の勾配(Ψ=一定の曲線の法線ベクトル)は
だから、速度ベクトルVとの内積を取ると
となり、Ψ=一定の曲線は速度ベクトルと平行である。
つまり、Ψ=一定の曲線は流線である。例1 一様な流れ
複素速度ポテンシャルがの場合、
だから、φ=Ux、Ψ=Uyとなる。
また、
だから、u=U、v=0となり、x軸に平行な速度一定の流れということになる。
例2
複素速度ポテンシャルがの場合は、
したがって、φ=x²−y²、Ψ=2xy。
そして、複素速度は
だから、速度のx成分u=2x、y成分v=−2yとなる。
したがって、流線の方程式は
ということになる。
――流れ関数Ψ=2xy=一定の曲線と上で求めた流線の方程式は一致していることがわかる!!――
流線の接線は流れの速度の方向と同じなので、この流れはx軸とy軸を壁とする流れを表している。
例3
とおくと
また、
また、
だから、この流れは原点と点zを結ぶ(半)直線と平行で、流線は原点を通る放射線群である。
速度ベクトルの大きさは
だから、速さは原点からの距離に反比例する。
また、原点を中心とする半径Rの円Cに流れ込み、そして、流出してゆく量、湧出量Qは、
で、半径に関係なく一定である。
m>0のときは吹き出し、m<0のときは吸い込みである。
とおくと
流線(流れ関数Ψ=一定)上の点をPとすれば、∠OPa=θ₁−θ₂=一定だから、流線は原点Oと点aを通る円弧となる。
また、等ポテンシャル線はr₁/r₂が一定だからアポロニウスの円である。また、
だから、点aに強さmの吹き出し、原点に強さmの吸い込みがある場合と考えることもできる。
第61回 2次元のベクトル場 [複素解析]
第61回 2次元のベクトル場
成分(u,v)のベクトル関数Aが平面上の各点(x,y)に対応しているとする。
また、平面上の基本単位ベクトルをi、j、この平面に垂直な基本単位ベクトルをkとする。このとき、ベクトル場Aから次のスカラー場とベクトル場が定義される。
さらに、スカラー場φが与えられているとき、次のベクトル場が定義される。
問1 の発散と勾配を求めよ。
【解】ベクトル関数Aのx成分、y成分をそれぞれu、vとすると、
だから、
(解答終了)
問2 次の問いに答えよ。
(1) 次の等式が成立すことを示せ。(2) φ=x²+2xy+y²とするとき(1)の等式が成り立つことを確かめよ。
【解】
(1)
(2)
(解答終了)
点(x,y)の位置ベクトルをrであらわせば、平面上の曲線はパラメータtのベクトル関数r=r(t)で、その接線ベクトルは微分drで表される。すなわち
である。
かりに、ベクトル場内の、ある曲線上の任意の点における接線がベクトル場Aに平行であるとする。
このとき、が成立する。そして、⑤式によってその曲線が与えられる。
おそらく、何を書いてあるかわからないと思うので、ベクトル解析の故郷というべき流体力学を例に説明することにする。
ぱっと一本、曲線を引く。この曲線上のすべての点における接線(の方向ベクトル)が、運よく、たまたま、曲線上のすべての点で、その点における風向き、流れの向きと平行であるとき、この曲線を流線という。
流れの速度ベクトルの成分を(u,v)とすると、この曲線、流線の方程式は電磁気学の電場だとこの曲線は電気力線である。
恒等的にrot A=0が成立するベクトル場Aを非回転、渦なしという。
このとき、ベクトル場AはA=grad φとなるφをもつ。
何故ならば、閉曲線Cで囲まれた領域をDとすると、グリーンの定理(ストークスの定理)より
そして、曲線Cを右図のように分解すると
の値は道筋によらない。
そこで、
と定義すると、
となるからである。
A=grad φであるとき、φをAのポテンシャルという。φ=c(一定)の曲線を等ポテンシャル線(3次元ならば等ポテンシャル面、曲線)という。等ポテンシャル線φ=cをパラメータtで
であらわせば、これをtで微分すると
である。したがって、φの勾配grad φと等ポテンシャル線φ=cとは直交する。
何故ならば、
だから。
また、div A=0となるベクトル場を管状場という。
管状場でかつ渦なし場のとき、したがって、φは調和関数である。
複素数を用いて極座標における速度、加速度を求める [複素解析]
複素数を用いて極座標における速度、加速度を求める
平面上を移動する動点Pの時刻tにおける位置ベクトルをrとすると、速度ベクトルv、加速度ベクトルaは次式で与えられる。
平面の基本ベクトルを、また、時刻tにおける点Pの座標を(x,y)とすれば、
となるので、
である。
速度ベクトルと加速度ベクトルをとあらわせば、
から、
複素数zは、その実部をx、虚部をy、さらに虚数単位をi(i²=1)とすると、z=x+yiで表される。
そして、横軸に実軸、縦軸に虚軸をとると、複素数z=x+yiは右の図で示される。右図を見ると、複素数が平面ベクトルと同等のものであることがわかると思う。
この手法を用いれば、
と速度ベクトル、加速度ベクトルを簡潔に表現できる。
右図に示すように、原点Oと点zと結ぶ線分と実軸のなす角度(反時計回りを角度の正の向きとする)θ、原点Oと点zとの線分の長さを
で定義することにする。
そうすると、zの実軸の成分x、虚軸の成分yは
となる。
つまり、
となる(極形式)。
これをオイラーの関係
で書き換えると、
となる。
これをtで微分すると、
ここで、記号「・」はtによる微分
をあらわす。
は大きさが1でと方向が同じベクトルと考えることができる。
また、
ベクトル(cosθ,sinθ)とベクトル(−sinθ,cosθ)の内積を取ると
となり、は直交している。
そして、その大きさはで1。
も大きさが1だから、互いに直交する単位ベクトルを元にした座標系を作ることができる。
この新たな座標は何かといえば、対応規則からあきらかなように、極座標!!
そこで、
をもう一度見なおすと、速度ベクトルvの基本ベクトル方向の成分は、基本ベクトル方向の成分はということになる。
そして、速度ベクトルvをさらに微分すると、となることから、
以上のことをまとめると、
極座標における速度、加速度のr方向、θ方向の成分は
ここでは、が直交していることを内積を使って示したが、
だから、はを90°、π/2(rad)回転させたものであることはあきらか。
あの積分、∫₋₁¹(1/x)dxに立ち返る [複素解析]
あの積分に立ち返る
再び、次の積分に戻る。
何も考えずに、不定積分の公式に使えば
このような答案を試験の際に書くと、大学の先生は、決まって、「広義積分を理解していない」、「公式の濫用だ」と声高に叫ぶ。
そこで、ならばと、複素関数の積分の知識を使って次のように解いてみることにする。
実数で定義される1/xという関数を、次のように、複素数に拡張する。
Zは複素数(全体の集合)で、Z−{0}は、複素数から0だけを取り除いたもの。
そうすると、f(z)は0以外の複素平面上の全ての点で正則になる。
そこで、積分の経路を下図のように複素平面上にとることにする。
円弧ABCは半径1の円弧、円弧DEFは半径ε>0の円弧。
そうすると、円弧ABCと線分CD、円弧DEF、線分EAで囲まれた曲線の内部でf(z)は正則だから、この積分路にそった積分の値は0になる。つまり、
積分
は実軸に沿っての積分だから
になる。
ところで、円弧ABCは半径1の円の半円だから
とおくと、
円弧DEFは半径ε>0の半円だから
とおくと
したがって、(1)の積分は
となる。
つまり、
大学の先生が声高に「公式の濫用」と叫ぶ公式⑨がよみがえる(^^ゞ
これまで、複素積分の定積分の応用でやってきたタイプⅡ、タイプⅢ、ジョルダンの補助定理、さらに、
といった積分の値を求めるとき、大学の数学の先生は、自身、⑨の公式と同じ手法をを使っておきながら、⑨の公式だけを声高に非難する(^^ゞ
この手法が胡散臭い(?)ことを知っていながら、確信犯的に⑨の公式(と同じ手法)を使って講義を受けている学生達を幻惑することが多いのだから、なお、質(たち)は悪くて、その罪は重い。万死に値すると言ってもいい(^^ゞ
⑨の能力を過信しすぎだケロ。⑨にそんなことがわかるはずがないにゃ。⑨の能力を舐めてはいけないにゃ。ないことをあることに、あることをないことにし、禁則、タブーを平気で犯すのが⑨であり、その上をゆく⑨³なのだから。
高木貞治の『解析概論』(岩波書店)には次のように書いてある。
(註:一部編集)ε、ε’は独立である。
たとえば、[−1,1]内でx=0において1/xは不連続でここでε=ε’とすれば
となるけれど、は0であることを意味しない。
それは
であるべきだが、この極限は存在しない。故には無意味である。それは収束しない(発散する)。
上記においてが存在しなくても、もしも独立変数ε、ε’の間に特別の関係を付けるならば上の例のように極限値が存在することもある。特にε=ε’とするときの極限値をCauchyはの主値(value principle)と名づけた。Cauchyは虚数積分の考察(解析函数論の前身)において、そのような極限値に遭遇したのであった。現今でも、文献において、積分の主値なる語が上記の意味で、かりおり、用いられる。
(3)の極限が存在しないことは、たとえば、ε=2ε’とすれば、(3)の値はlog2となり、log1、つまり、0とは違った値になる。ε、ε’の0への近づき方によって極限値が異なってしまい、極限値が1つの値に定まらないことから明らか。
第58回 留数定理の定積分への応用 問題編3 [複素解析]
第58回 留数定理の定積分への応用 問題編3
タイプⅢ
f(z)は複素平面の上半平面Imz≧0で有限個の極を除いて正則であり、またはとする。
このとき、
f(x)が偶関数のとき
f(x)が奇関数のとき
問題1 次の定積分を求めよ。
【解】
とおくと、f(z)は偶関数、
で、上半平面にもつ極は1位の極z=iaのみ。
留数を求めると、
したがって、(2)より
(解答終了)
この問題は、上の公式を使わずとも、次のように計算することができる。
【別解】
とおく。だから
だから、
右の図の積分路に沿って積分をすると、積分経路内にある極はz=iaだから、留数は
したがって留数定理より
また
だから、
(別解終)
問題2 a>0、b>0のとき、次の定積分の値を求めよ。
【解】
(1)とおくと、f(z)は奇関数で、上半平面に1位の極z=iaをもつ。
また、
留数を求めると、
したがって、(3)より
(2)
とおくと、これは奇関数。
また上半平面に2位の極z=iaをもち
したがって、留数は
(3)式より
(解答終了)