第55回 関数項級数 [微分積分]
第55回 関数項級数
空間Iで定義された関数列に対して、その部分和からなる数列が収束するとき、関数項級数
は収束するという。
関数列の極限関数をS(x)とするとき、関数項級数の和といい、このことを
で表す。
すなわち、任意のε>0と任意のx∈Iに対して、ある自然数が存在し、任意のn≧Nとx∈Iに関して、
さらに、コーシーの収束定理より、次の定理を得る。
定理1 (コーシーの収束定理)
区間Iで定義された関数を項とする関数列級数が収束するための必要十分条件は、
任意のε>0に対し、ある自然数が存在し、m>n≧Nである任意の自然数m、nに関して
が成り立つことである。
さらに、関数項級数も関数列なので、関数列と同様に、一様収束を定義することができる。
定義 (関数項級数の一様収束)
区間Iで定義された関数を項とする関数列級数は、その部分和が一様収束するとき、関数項級数はI上で一様収束するという。
すなわち、
任意のε>0に対し、xに無関係な自然数が存在し、任意のx∈Iとn≧Nである任意の自然数nに関して
定理2 (ワイエルシュトラスの判定法)
次の条件を満たす正項級数が存在すれば、関数項級数はIで一様収束する。
【証明】
正項級数は収束するので、任意のε>0に対して、自然数が存在し、
また、条件より、任意のx∈Iと任意の自然nに対してが成り立つので、
よって、
(証明終)
問1 次の関数項級数が実数全体の集合一様収束することを示せ。
【解】
(1) すべての自然数nと実数nに関して
だから、
(2) すべての自然数nと実数xに関して
(解答終)
任意の自然数nに対してがIで連続ならば、もIで連続。したがって、関数列について定理を適用すれば、次の定理が成り立つ。
定理3 (関数項級数の連続)
I上の連続関数列からなる関数項級数がI上で一様収束ならば、はIで連続である。
問2 I=[−1,1]のとき、とする。関数項級数の極限関数S(x)を求め、また、一様収束でないことを示せ。
【解】
x=0のとき、任意のnに対して、だから、
x≠0のとき、初項x²、公比の等比無限級になるので、
したがって、
極限関数が連続でないので、一様収束でない。
(解答終)
定理4 (項別積分)
I=[a,b]上の連続関数列からなる関数項級数がI上で一様収束ならば、
問3 次の関係が成り立つことを示せ。
【解】
問1より、は[0,π]で一様収束し、また、は[0,π]で連続なので、
(解答終)
定理5 (項別微分)
I上でC¹である関数列からなる関数項級数がI上で各点収束し、さらにがIで一様収束するならば、もI上で一様収束し、次の関係が成り立つ。
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