梁の方程式に至る長い過程 その3 [ddt³さんの部屋]
梁の方程式に至る長い過程 その3
5.梁の微分方程式はどこに?。
梁の曲げの微分方程式の話はどこいったんでしょう?。じつはじつは純粋な梁理論は、梁の曲げの微分方程式なんか扱わないのです。梁の曲げの微分方程式の話は、取って付けた話になります(^^;)。というのは応力(力)ベースではなく、変位(変形量)ベースで考えた方が便利なこともけっこうあるのです。設計業務で変形後の梁の変位量を出したい!(それは変形量から計算できる)という場面は、確実にあります。
じつは変形後に断面がどうなるか?という話も、歪み分布と同じなんですよ。そして発想も超単純。
梁は上面圧縮,下面引張なんだから、断面の上端は左へ変位して上側は縮み,下端は右へ変位して下側は伸びたんじゃない?と単純に考えてみます。微小変形理論でした。「微小入力に対しては、出力は微小入力に比例する」から、図-14のように上下の変位を直線でつないで良いでしょう(D/Lが十分小さいなら)。そうすると変形後の断面と変形前の断面の交点は、変位0の位置です。伸びも縮みもしない位置。これ中立軸ですよね?。だって中立軸はそうやって決めたんだから。
よって上下端がともに右へ、ともに左への可能性は排除されます。もしそうなら直線で上下端の変位をつないだとき、中立軸を通れないからです。超単純に考えたら変形後の断面の形までわかっちゃった(^^)。
次にやっぱり微小変形理論なのです。図-14の断面の傾きもオーバーです。図では変形後の断面は中立軸と目に見える角度を持ってますが、微小変形理論なので変形後も断面は、中立軸とほとんど直交してるはずです。微小変形なので、目に見えちゃいけないのです。
・変形後も断面は直線形状を保ち、中立軸と直交する。
これをキルヒホッフ・ラブの平面保持の仮定といいます。いかにもな「取って付けた仮定」と思えません?(^^;)。キルヒホッフさんは電気回路の電流保存則で有名なキルヒホッフさんです。ラブさんはそのすじでは有名な、ラブ波(表面波)のラブさんです。
変形後の中立軸の形状をy=y(x)とします。それを梁の変形曲線と呼びます。変形後の断面も中立軸と直交するのでした。そうすると図-15に示した微小距離dxで梁を切り出してやると、図-16になります(少々オーバー描写です)。
変形後の断面は中立軸と直交するので、微小距離dxで梁は、厚さDの円弧の一部になります。位置xで中立軸に接する円の半径をr(x)とします。中立軸の長さdxにおける(弧長dxの)円弧の角度は、
従って中立軸から縁端距離d1,d2における弧長は、
(17)と、伸び縮みしない中立軸の長さdxとの差が、距離dxにおける上下面の変形量です。
歪みは変形勾配でしたので、(18)をdxで割ったものが上下面の歪みです。
上下面の歪み差は、
従って図-16における、断面上の歪み勾配は、
になります。これは(12),(13)で算定された歪み勾配aです。
6.曲率による曲線の表現
曲率と曲率半径の正式な定式化はネコ先生の、
https://nekodamashi-math.blog.so-net.ne.jp/archive/c2305520799-1
などをお読みください。ここではddt^3風の曲率と曲率半径の定式化をご紹介し、最後に梁の曲げの微分方程式が、やっと出てきます(^^;)。
まず普通に半径rの円を考えます。
図-17のように半径rの円では、基準ラインからθ回った時の円弧の弧長sは、s=rθなので、円の曲率1/rは、
とすぐに得られます。曲率1/rは、θとsが比例するので円では当然一定で、それが外法線方向の角度を表すθと弧長sの比例定数になってます。
次のように考えたいんです。
・比例関係があれば、対応する微分による一般化がある。
例えば1次関数y=axでは、yはxに比例し比例定数aは一定です。こういう考えは駄目ですか?。
直線ではyの変化率aは場所xによらず一定なので、変化率dy/dxが場所xごとにf(x)と変化するのが、一般の曲線。同様に。
円ではθの変化率1/rは弧長sによらず一定なので、変化率dθ/dsが弧長sごとに1/r(s)と変化するのが、一般の曲線。
ではないだろうか?・・・と(^^;)。この対応は妥当だと思うんですよ。だって(x,y)座標系による曲線の表現は人間の勝手であって、本来は曲線をどのような座標系で表してやっても良く、それによって曲線の形が変わるわけないからです。
そうすると(x,y)系における場所xと、(s,θ)系における場所(?)sとの対応が気になります。曲線のの形がどんな座標系においても変わらないなら、xとsは何らかな意味で、曲線の「同じ場所」を指定する必要があります。こうですよね?。
微分方程式、
は、場所xごとに曲線の進むべき方向dy/dxをf(x)でコントロールするので、ある曲線y=y(x)を定義します。これは1階微分方程式の基本的な考えです。
微分方程式、
は、(s,θ)空間で場所sごとに外法線方向θの進むべき方向を1/r(s)でコントロ-ルし、θ=θ(s)を定義します。図-18からsとxは曲線の同じ場所を指します。外法線方向θは常にその同じ場所で、接線方向dy/dxと直交するので、これは場所x(もしくはs)でdy/dxをコントロ-ルするのと同じです。
(24)は(23)を座標変換しただけものと思えてきませんか?(微妙に違うけど(^^;))。なお曲線の内と外は最初に定義しておく必要がありますが、円にあわせて曲線の凸側を外と定義します。
(24)による曲線の表現は、曲線の自然方程式と呼ばれます。この表現の利点は、座標系に依存しない事です。弧長sは曲線の形だけで決まり、任意の座標系で同じです。外法線方向θの値は基準ラインの方向に依存しますが、(24)で必要なのはその増分dθだけで、これは基準ラインの方向に依存せず座標系と無関係です。そして曲率半径r(s)も座標系に無関係に決まってます。
(24)は確かに理論的には美しいのかも知れませんが、実用的な計算ではやっぱり(x,y)座標がわかりやすいんですよね。それで(24)を(x,y)系へ再翻訳するのです。
です。
dθ/dxを考えると、θ方向は常にy'(x)方向と左回りに直交するので、dθ/dx=dy'/dx=y"(x)。従って、
再び微小変形理論を使うと、(y'(x))2~0かつs~x。よって(24)の微小変形理論での翻訳は、
ちなみに曲率による表現(22)も土木では広く知られており、実際に曲率の概念で「お仕事」する時もあります。
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