SSブログ

梁の微分方程式に至る長い過程 その2 [ddt³さんの部屋]

梁の微分方程式に至る長い過程 その2

 

 

4.梁理論

 

 断面力から断面応力を算定する段階です。それには梁理論が必要です。

 

 

 

 図-6はあんまり細長くないですが、細長い棒と思って下さい。棒という用語も正確ではないのですが、とりあえず棒と言っときます(^^;)。上から鉛直荷重を受ける細長い棒は、図示したように上面側が縮み(圧縮状態で)、下面側が伸びて(引張状態)で「曲がる」ことが経験的に知られています。もっとも微小変形理論ですので、目に見えない程度の曲がりです。でも目に見えないと絵にも描けないので、図-6はオーバーに描いてます。

 もう一つ経験的にわかってるのは、図のy方向の変形は無視できるです。(3)からわかるように物体のバネ定数はバネの長さが小さければ小さいほど大きくなります。図-6y方向を支えるバネは、棒の長さLに比較して棒の深さDが小さければ小さいほど、相対的にx方向のバネより格段に強い訳です。ここからy方向の変形は無視します。もっとも大きい/小さいを言うためには、基準スケールを決めなければなりません。それで「相対的に」と言ったのですが、鉛直荷重で潰れた棒なんて、見た事ありませんよ(^^)

 あと図-6x-y軸に直交する紙面直交方向のz軸があります。ありますが、紙面奥行き方向の状態は一様と仮定します。何故なら奥行き方向の荷重は考えてないからです。

 以上まとめれば図-6の棒は、一次元のxだけで各部の状態が決まる一次元部材です。これを線材と言ったりします。

 

 図-6の断面状態を考えます。図-6は長手方向(x方向)の挙動だけを考えれば良いので、水平方向のバネの集まりである図-3でモデル化できます。単純な棒の伸び縮みと違うのは、断面の高さ方向yによって伸び縮みの具合が変化する点です。上は圧縮,下は引張ですから、図-3に準じてモデル化すれば、

 

 

みたいになるでしょう。図-7に対応して、応力-歪み関係(6)を考慮すれば、断面上の歪み分布は、

 

 

 

みたいになるはずです。ここで引張歪みの値を正と決めます。圧縮歪みの値は負です。理由は、図-2でバネを伸ばす力Fを正にするのが普通だからです。バネが伸びるとは、バネは引っ張られてるって事です。

 そして物理現象に関する暗黙の仮定を使います。全ての物理現象は連続でした。断面上の歪み分布は、上は圧縮で下は引張です。すなわちε(y)は断面上で負から正に変化する連続関数です。中間値の定理より、圧縮でも引張でもない(縮みも伸びもしない)、ε(y)0の位置があります。その位置での材料の変形は0です。その位置を中立軸と呼びます。

 中立軸がなぜ必要かというと、断面応力を算定するのに必要な断面2次モーメントの計算のために、欠かせないものだからです。

 そして物理現象に関する暗黙の仮定を、もう一回使います。「微小入力に対しては、出力は微小入力に比例する」を。さっき言ったように、大きい/小さいを言うためには基準スケールを決める必要があります。では設計計算の目的はなんでしょう?。

 

 

 

 それは構造系全体の任意の位置に発生する応力が、材料強度を越えない事を確認するのが目的です。目的は構造系全体なんですよ。つまり基準スケールは構造系全体です。図-4や図-6の橋長Lです。それに対して図-6のDが十分小さければ、それは設計計算の目的にとって微小と言えます。なのでD/Lが十分小さければ、図-9の近似で十分だろうとなります。具体的なイメージは図-5です。橋全体を一目で見渡せるくらい遠目で見てる状態です。図-5くらい細長ければ(D/Lが十分小さければ)、図-9の近似でもOKという気はしませんか?(しないかも知れない(^^;))。

 歪みは単位長さあたりのバネの伸び(縮み)でした。バネが伸びたり縮んだりするからには、断面に力が作用してるはずです。図-78は図-5の左部分系に対応するものなので、断面に作用する力は右部分系に由来する断面力です。左部分系は、断面力M,S,Nと支点反力R1に支えられて荷重P1に対抗するのでした。

 歪みに弾性係数Eをかければ応力です。応力と断面力の関係をつかむために、図-3のように断面上で一様に力Fで引っ張られてる状態を考えます。応力歪み関係(6)に断面積Aをかければ、

 

h2-009.png  (9)

 

でなけりゃいけませんよね?。だってσF/Aで定義したんだから。そしてFは軸力Nですよね?。この関係は図-7でも同じですよね?。違いは、図-9のように断面上の応力分布が直線変化するだけです(^^)

 

h2-010.png  (10) 

 

σ(y)=Eε(y)ε(y)a(ye)は、断面上での歪みの(応力の)直線変化を表します。aeは未定定数です。単位面積当たりの力の密度が応力なんだから、それを面積で積算すれば軸力Nになるという式です。ここで断面形状を表す領域Rは、

 


 

 

・・・となったりするんですよ。だから2重積分なんです(^^;)。未定定数eは中立軸の位置を表します。yeε(e)a(ee)0だからです。図-10のT型断面では、上側のz方向の幅が広いので、中立軸位置は上側に引っ張られます。

 断面力の算定結果より、今はN=0でした。(10)でN=0とし整理すれば、

 

  (11)

 

 中立軸位置の算定結果である(11)の結果は、y方向の重心位置を計算する式と同じです。従って中立軸は、断面重心を通ります。ちなみに(11)の分子を、断面1次モーメントと言います。y1乗の積分だからです。

 同様に、曲げモーメントMに対応する断面応力の積算をとれば、未定定数aを決定できます。Mは回転力でした。従って対応する積算は、σ(y)による力のモーメントです。

 ここで注意すべきは、σ(y)による力のモーメントを計算する際の回転中心の取り方です。さっき静止物体の回転中心はどこにとってもOKよ、と書きました。そして図-9も静止物体には違いないのですが、図-9のように断面が傾くという事は、現在の位置まで断面が回転したという事です。その間は静止物体ではありません。図-9は、断面が動き終わった変形後の状態という訳です。

 

 

 図-9は歪み分布(x方向の伸び縮みの変形勾配の分布)なので、図-9から断面が傾く(回転する)というイメージをつかめない人もいると思います。これについては次節で再論するので、とりあえず図-9のように断面が回転すると思って下さい。

 

 でも知りたいのは、断面を動かした力のモーメントです。よって本当の回転中心を選ぶ必要があります。それは明らかに中立軸です。とすれば、y軸の原点を中立軸位置にとるのが、最も便利です。

 

 

 

 図-11の座標系で、σ(y)=Eε(y)=E・ay。よってσ(y)による力のモーメントは、

 

  (12)

 

 (12)左辺のの符号は、図-11の応力分布σ(y)が左回りの回転力を定義するので、左辺全体の符号が正になるように決めてます。これによってMの正方向と一致します。

 歪み勾配aの表式の分母は、断面2次モーメントと言われ記号Iで表します。y2乗の積分だからです。

 

h2-013.png  (13)

 

 IはInertia:イナーシャのIです。よって断面上の応力分布は、中立軸位置を原点にとると、

 

h2-014.png  (14)

 

となります。

 

 

zu-12.png 

 

 (14)より断面上の最大引張応力と最大圧縮応力は、断面の上下縁です。これらの値を材料強度と比較することになる訳です。そこで中立軸から上下縁までの距離を縁端距離と呼び、図-12のように表す事も多いです。縁端距離d±を使えば(14)は、

h2dummy.png

 

となるので、計算に便利なように断面係数を、

 

h2-015.png  (15)

 

で定義しておきます。断面力計算から出てきた曲げモーメントに断面係数をかければ、速攻で最大/最小応力という仕掛けです(^^)

 

 以上は、構造系に水平力が働かず、軸力N=0が前提でした。この状態を純曲げ状態と言います。図-6に示すように、鉛直荷重でただ曲がってるだけだからです。ただ曲がってるだけの状態で断面に作用する回転力だから、Mを「曲げモーメント」と呼びます。土木の命名規則は、モロかマンマです(^^;)

 水平荷重だけが作用すれば、純引張(圧縮)状態です。その取り扱いは図-3で、たんなるバネの伸び縮みです。これも図-5のスケールで、D/Lが十分小さければそれで良いよね?、という発想です。

 そういう訳で(14)で表される曲げモーメントMに関連する応力は、曲げ応力と言われます。一方σ=N/Aで与えられる軸力に関連する応力は、軸応力と言われます。曲げ応力と軸応力が両方働いたらどうするか?。じつは足すだけなんですよ(^^)。いちおう根拠はあります。

 

  ・2つ以上の微小入力がある時、その出力はそれぞれの微小入力に比例した結果を足すだけ。

 

 上記は多変数関数の全微分に対応する意味になります(私見では)。以上が純粋な梁理論の全てです。厳密には純曲げ状態にある線材を梁(Beamといい、純引張(圧縮)状態にある線材を棒(Barといいます。

 

 ・・・ええとここで、せんだん力Sはどうするの?って思いません?。じつはせんだん力は、梁理論では扱えないのです。せんだん力は図-5に示すように、図-6y方向の力です。ところが梁理論ではまっさきに、y方向の変形は無視すると決めたのでした(^^;)。しかし変形はなくとも、せん断応力はあります。それがないと物体は釣り合えないからです。それで、

 

zu-13.png

 

で・・・良いんじゃねっ?・・・となりました。これを平均せん断応力といいます。この発想は軸応力と同じです。軸応力もふと気づけば、「平均」軸応力ですよねぇ~(^^;)。曲げ応力についてだけ少々詳しく評価するのは、水平荷重の効果は鉛直荷重の効果に対してかなり小さく(構造系が横に長いから)、軸応力は曲げ応力よりだいぶ小さいのが現実だからです。またx方向のバネは、y方向のバネより圧倒的に弱いからです。このような前提が成り立つのは、D/L1/51/10以下と言われています。

 


nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。