第8回 一様連続 [微分積分]
第8回 一様連続
区間Iで定義された関数f(x)が次の条件を満たすとき、f(x)はIで一様連続であるという。
任意のε>0に対して、あるδ>0が存在し、である任意のx、yに関して、
例1 f(x)=xは、実数全体の集合Rで一様連続である。
何故ならば、任意のε>0に対して、δ=ε>0とすれば、
であるから。
例2 は、実数全体の集合Rで一様連続である。
となるので、任意のε>0に対して、δ=ε>0にとれば、
例3 f(x)=x²は閉区間[0,1]で一様連続である。
よって、任意のε>0に対して、δ=ε/2と定めれば、
例4 は一様連続である。
よって、任意のε>0に対して、δ=ε>0とすれば、
となり、f(x)は一様連続である。
これらの例を見ると、関数f(x)がIで連続ならば、f(x)はIで一様連続と思われるかもしれないが、これは一般に成り立たない。
関数f(x)が区間Iで一様連続の定義を論理記号を用いて表すと、
であるから、これを否定した
つまり、
あるε>0があって、δ>0をどんなに小さくしても、
となるxとyが存在する
がf(x)がIで一様連続でないことの定義である。
例5 実数全体の集合Rで定義された関数f(x)=x²はRで一様連続でない。
任意のδ>0に対して、1/n<δとなるような自然数nをひとつを定め、
とすると、
となる。
一方、
となるので、δ>0をどんなに小さくしても、2より大きな点x、yが存在する。
よって、f(x)=x²はRで一様連続でない。
例6 開区間(0,1)で定義されるf(x)は(0,1)で一様連続でない。
任意のδ>0に対して、1/n<δとなる自然数nを一つ定め、
とすると、
また、このとき、
よって、δ>0をどんなに小さくしても、1≧になる点x、yが(0,1)に存在する。
したがって、f(x)=1/xは(0,1)で一様連続でない。
具体的な関数f(x)の一様連続性を証明することは一般に難しいので、無証明で次の定理を紹介する。
定理
有界閉区間[a,b]で連続な関数f(x)は、[a,b]で一様連続である。
例4はこの例である。
定理
関数f(x)、g(x)がI上で一様連続、かつ、α、βが実数ならば、αf(x)+βg(x)はI上で一様連続である。
【証明】
α=β=0のときは明らか。
αとβがともに0でないとする。
f(x)、g(x)はI上で一様連続なので、任意のε>0に対して、あるδ₁>0、δ₂>0があって、
だから、
δ=min{δ₁、δ₂}とすると、ならば、
よって、αf(x)+βg(x)はI上で一様連続である。
(証明終)
関数の連続の時と異なり、関数f(x)、g(x)がI上で一様連続であっても、関数f(x)g(x)はI上で一様連続とは限らない。
f(x)=xは実数全体の集合Rで一様連続であるが、f(x)=g(x)=xとすると、関数f(x)g(x)=x²はRで一様連続でないことからこのことを確かめることができる。
定数K≧0が存在し、任意のx,yに対して、
が成り立つとき、関数f(x)はリプシッツ連続であるという。
問題 関数f(x)がリプシッツ連続ならば、一様連続であることを示せ。
【略解】
K=0のときは明らか。
K>0のとき、任意のε>0に対して、
とすれば、
よって、f(x)がリプシッツ連続ならば、f(x)は一様連続である。
問 次の関数はリプシッツ連続か。
問 次の関数はリプシッツ連続か。
【解】
(1) x,y∈[0,1]とすると、
したがって、リプシッツ連続である。
(2) x,y∈[1,∞)とすると、
したがって、リプシッツ連続である。
(3)
だから、
したがって、リプシッツ連続である。
(解答終)
(1)のf(x)=x²は、有界な区間であれば、一様連続かつリプシッツ連続であるが、有界でない区間、たとえば、[0,∞)といった半無限区間では一様連続でもリプシッツ連続でもない。
(2)のf(x)=1/xについては、a>0のとき、半無限区間[a,∞)で一様連続かつリプシッツ連続であるが、(0,1]や(0,∞)の場合、f(x)=1/xは一様連続でもリプシッツ連続でもない。
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