第10回 有限交叉性 [位相入門]
第10回 有限交叉性
集合Aの部分集合族Aは、Aに属する有限個の集合について、常に
であるとき、有限交叉性をもつという。
定理 位相空間について、次の2つの条件は同値である。
(1) 位相空間はコンパクトである。
(2) の閉集合の族Fが有限交叉性をもてば、常にである。
【証明】
(1)⇒(2)
位相空間の閉集合の族Fに対して、開集合の族を
で定義する。
もし、
であれば、ド・モルガンの法則より
となり、Xの開被覆になる。
はコンパクトだから、有限の開集合を選んで
とすることができる。
ド・モルガンの法則を改めて適用すると、
となりFが有限交叉性をもつことと矛盾。
よって、有限交叉性をもてば、である。
(2)⇒(1)
逆に、Xの任意の有限交叉性をもつ閉集合がをみたし、Xがをコンパクトであることを示す。
UをXの開被覆とすると、
より、
となるので、
はXの閉集合からなる集合族。
(2)の対偶をとると、
のとき、あるを選んで、
とすることができる。
ド・モルガンの法則を用いると、
よって、はXの開被覆であり、はコンパクト。
(証明終)
参考までに、
チコノフ(Tychonoff)の定理
チコノフ(Tychonoff)の定理
位相空間の族において、各がコンパクトであることと、直積空間がコンパクトであることとは同値である。
2019-03-19 15:00
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コメント(2)
閉被覆の有限交叉性も、コンパクト空間の一番流布してる定義すなわち、
・任意の開被覆が有限被覆を持つとき、コンパクト.
も、この前のハイネ・ボレルの定理もフレシェ・フィルターを使うなら、じつはみ~んな同値なんですよね?(一般位相論では(^^))。
※ 直積空間への拡張(チコノフの定理)は、まっオマケようなもんで(^^;)。
※ それよりも局所コンパクト空間のコンパクト空間への埋め込みの方が面白い。
さらにコンパクト集合を実数直線に代表される普通の距離空間で考えると、まず実数直線の局所コンパクト性は、実数の連続性と同値になる。また実数直線におけるコンパクト集合とは、有界閉集合の事だ。典型的には有界閉区間だ。そしてそれは、初等的な微積分の全ての連続・微分可能な関数の定義域の基本となる。
以上のような数々の事実を、一般位相論は実数直線などの具体的表象に戻ることなく証明してしまう。だから一般位相論は頭の体操である。それが「抽象化の力」であり、ものすごい威力だと思うし、しかも現実の役にも立つ。
しかしだからこそ、一般位相論は純粋な純粋数学のための基礎だとも思う(^^;)。
それをやりたいか、やりたくないかは?、あなた次第(^^)。
by ddtddtddt (2019-03-19 18:57)
コメント、ありがとうございます。
チコノフの定理は、選択公理や整列可能定理、ツォルンの補題などとほとんど同じものだと言われてますからね〜。
だから、定理というよりは、むしろ、公理に近い(^^)
抽象度が高い数学ならばともかく、3次元程度のユークリッド空間に関する数学(解析学)ならば、こんなものは必要ないですね。
by nemurineko (2019-03-25 00:07)