テーラー展開を使って微分本方程式の初期値問題を解く2 [数値解析]
テーラー展開を使って微分本方程式の初期値問題を解く2
f(x)を級の関数とする。このとき、f(x+h)はxで次のようにテーラー展開が可能である。
特にn=1のとき、
で、これは平均値の定理と呼ばれる。
これから、
となり、f(x+h)をと近似したときの誤差がのオーダー、すなわち、であることがわかる。
また、f(x+h)をxのまわりで1次の項までテーラー展開すると、
となる。
したがって、h≡0のとき、
となり、
と近似したときの誤差がO(h)であることがわかる。
次に、
という常微分方程式の初期値問題について考えよう。
最もシンプルな方法は、
を用い、これを左辺におき、
と近似するものであろう。上述の議論から、
と近似したときの(打ち切り)誤差がh²程度であることがわかる。
と、点列を等間隔hに配置すれば、次の漸化式を得ることができる。
これがオイラー法と呼ばれるもので、オイラー法の局所的な打ち切り誤差はO(h²)、すなわち、h²程度である。
次の常微分方程式の初期値問題
を、h=0.1としてオイラー法で解いてみることにする。
このとき、オイラー法は
となり、
だから、
となる。
初期条件は
となるので、
を用いて、の値を定めることができる。
表計算ソフトを用いてx=2まで計算した結果は次のとおり。
オイラー法を用いて計算を進めるにつれ、厳密解
との誤差が増大してゆくことがわかる。
そこで、テーラー展開を利用して、より精度よく計算する手法を考えることにする。
であるから、合成関数の微分法よりy''は
となる。
一方、y(x+h)のxにおけるテーラー展開を2次の項までとると、
したがって、
これを微分方程式の左辺に代入すると、
となる。
そして、これから、次の漸化式を得ることができる。
この漸化式の局所打ち切り誤差はO(h³)なので、オイラー法よりも精度よく計算できるはずである。
この漸化式を用いて、常微分方程式の初期値問題
の近似解を求めることにする。
このとき、
となるので、
したがって、
h=-0.1として、表計算ソフトを用いて解いた結果は次の通りである。
この表とグラフを見ると――テーラー展開による方法の数値解と厳密解はほとんど一致しているので、このグラフでは同一の曲線に見える――、劇的に計算精度が向上していることがわかる。
この問題の場合、高次微分が
と求められるので、より高精度の
漸化式を得ることができる。
ちなみに、この漸化式の局所打ち切り誤差は。
h⁵の項までとれば、4次のルンゲ・クッタ方よりも高精度に計算することが可能である。
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