第52回 留数定理の定積分への応用 [複素解析]
第52回 留数定理の定積分への応用
これまで長々と述べてきた留数と留数定理を使うと、初等的な微分積分で求めることが難しい(実関数の)定積分を比較的簡単に計算できたりする。
数学科を除く理工系の多くは、留数と留数定理を使って定積分の値を求めるために複素解析を勉強すると言ってもいいんじゃないか。このために長々と複素解析を勉強する。そして、多くの大学で、留数(定理の)定積分への応用で複素解析(の講義・授業)が終了する(^^)
留数とは、孤立特異点αを中心とする関数f(z)のローラン展開が
であるととき、−1次の項の係数のことであり、
となる。
そして、留数定理とは、次のようなもの。
定理(留数定理)
関数f(z)が単一閉曲線Cを境界とする領域に有限個の孤立特異点を持ち、これら以外では境界Cも含めて正則であるとき、
とおさらいしたところで、今回の本題に入りますにゃ。
定積分の計算への応用
留数定理の定積分への応用には幾つかタイプがありまして、その代表的なものを幾つか紹介するにゃ。
タイプⅠ
ここでf(X,Y)はX,Yの有理関数。
と置くと、
となり、[0,2π]は単位円周|z|=1に移るから、
となる。だから、この定積分は|z|<1にある極の留数を計算して求めることができる。
このタイプの定積分の実例は前回出し、計算したのだけれど、改めて一つ問題を解いてみるにゃ。
問題 次の値を求めよ。
【解】
とすると、
になるにゃ。
とするにゃ。
f(z)の極を求めるために
を解くにゃ。この2次方程式の解をα、βとし、
とすると、|z|<1の内部にある極はαのみとなる。そして、これは1位の極。
z=αにおけるf(z)の留数を求めると、
となるので、留数定理より
これを①に代入すると、
となる。
この結果を使うと、すぐに
も出てくるにゃ。
―――何故、だろうか(^^)―――
タイプⅡ
f(z)は複素平面の上半平面(Imz≧0)で有限個の極を除いて正則であり、実軸上に極を持たず、かつとする。
原点を中心とする十分大きなをとり、半円をかき、それと線分で囲まれた領域にがすべて入るようにする。線分を、半円周をとし、これを合わせたものをCとすると、留数定理より
仮定より、であるから、任意の正数εに対して十分大きなをとると、
となる。で、Rをより大きな値にとると、
よって、
となる。だから、
特に、f(x)が偶関数のとき、
このタイプの積分として、次の問題を解いてみるにゃ。
問題 次の積分の値を求めよ。
【解】
被積分関数
はタイプⅡの条件を満たしている。
留数定理から
となる。
この問題に関しては、
となるので、
と計算することもできる。
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