第6回 集積値とワイエルシュトラスの定理 [数列と級数]
第6回 集積値とワイエルシュトラスの定理
§1 集積値
一般項がである数列を考える。
で、この部分列
を考えると、これは、それぞれ、+1と–1に収束する。
この+1や–1のような点を数列の集積値という。
集積値の定義
数列のある部分列がaに収束するならば、このaを数列の集積値という。
問 次の数列の集積値は何か。幾つか。
集積値の定義は次のように言い換えてもいい。
集積値の定義’
aのどのような近傍にも、数列の項が無限に多く存在するとき、このaを数列の集積値という。
aの近傍というのは、ε>0とすると、開区間(a–ε,a+ ε)のことだと思って欲しい。
そして、上の定義は、どのような正の数εをとっても、数列の項がa–εとa+εの間に無数あるということ主張している。
問の(2)の場合だと、集積値は1と0だが、a=1の近傍には、εをどれだけ小さくとっても、
との項が無数に存在する。
同様に、a=0の近傍にもの項が無数に存在する。
たとえば、
とすると、0の近傍には
に等しい項が無数に存在する。
§2 ワイエルシュトラスの定理
定理8 (ワイエルシュトラスの定理)
有界な数列には少なくとも一つ集積値が存在する。
【証明】
有界だからを満たす正の実数Kが存在する。
つまり、
閉区間[–K,K]を二等分して、[–K,0]と[0,K]という閉区間を作ると、このどちらかにの無数の項がある。
かりに[0,K]にあるとして、
として、これをまた二等分する。すると[0,K/2]と[K/2,K]
になって、このどちらかにの無数の項が存在する。
かりに[K/2,K]に無数の項があるとすると、として、これをまた二等分する。
こうした操作を繰り返してゆくと、
という閉区間の減少列が得られる。
すると、
になる。
区間縮小法の原理から、これら閉区間すべてに共通に含まれる一つの数aが存在する。
それで、のなかに含まれる数列の項の中で最も番号が若いものを、に含まれる数列の中で最も番号が若いものをといった具合に、この操作をと無限に繰り返す。
すると、
というの部分列が得られて、①と②より、はaに収束する(※)。
したがって、aはの集積値である。
(証明終了)どして、ワイエルシュトラスの定理を証明したかというと、次回にこの定理を使って、コーシーの収束条件を証明したから。
本によっては、
定理8’ (ワイエルシュトラス・ボルツァノの定理)
有界数列は収束する部分列をもつ。
となっていると思うけれど、定理8を言い換えただけで、同じもの。
(※)
で、区間の幅がだから
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