お前ら、この問題を解け(10月⑨日)!! [テンソル入門]
問題 次の2次曲面はどのような曲線か、判別せよ。
本日10月9日の「第10回 テンソルの2次曲面」と前回の「第9回 対称テンソルの続き」の内容を理解していれば、こんなものはすぐに解けるはずだ。
と言うよりも、この問題の答は、この2つの記事のどこかに書いてある(も同然)。
ネムネコは、お前らの数学的能力をまるっきり信じていないから、ヒントを出すにゃ。
対称行列を用いると、問題の(1)、(2)の2次形式は次のように書き換えることができる。
したがって、次の対称行列の固有値(主値)と固有ベクトル(主方向)を求めればよい。
そして、この行列の固有値と固有ベクトルは既に求めてあり、固有値λ₁、λ₂、λ₃に対応する固有ベクトルの方向に新たにx'、y'、z'軸を設定すれば、(1)、(2)の2次曲線は
となる。
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第10回 テンソルの2次曲面 [テンソル入門]
第10回 テンソルの2次曲面
テンソルの成分を係数とする次の二次形式を考える。
ここで、
とおくと、
したがって、
であるが、
よって、
となる。
は対称テンソルだから、2次形式の係数を対称テンソルの成分と考えることができる。
したがって、を対称テンソルとするとき、2次方程式
は
となり、この方程式があらわす2次曲面をテンソル2次曲面という。
はテンソルであるから、上式の左辺の値は直角座標軸の変換によって変わらない。座標におけるテンソルの成分をとすると、
したがって、におけるテンソル2次曲面の方程式は
である。
テンソルの主方向に軸をとり、その主値をT¹、T²、T³とすれば、は
となる。したがって、テンソル2次曲面の方程式は
となる。
このときの座標軸をテンソル2次曲面の主軸という。
T¹、T²、T³のいずれも正のとき、
とおき、さらにをと置き換えると、(2)式は次のようになる。
したがって、このとき、テンソル2次曲面は楕円面になる。
特に、a=b=c、すなわち、T¹=T²=T³のとき、球面になる。
また、T¹>0、T²>0、T³<0のとき、
とおくと、
となり、一葉双曲面になる。
T¹>0、T²<0、T³<0のとき、
とおくと、
となり、二葉双曲面になる。
問 次の2次曲面はどのような曲面か。
【解】
(1) この2次方程式をあらわす対称テンソルの成分は
したがって、固有方程式は
よって、主値をT¹=3、T²=T³=−2とおき、この主値に対する主方向に座標軸をx'、y',z'をとれば、方程式2x²−2y²−z²+4zx=1は
となる。
したがって、これは二葉双曲面である。
(2) 対称テンソルの成分は
したがって、固有方程式は
となる。
この3次方程式の解は2、3、6。
そこで、主値をT¹=2、T²=3、T³=6とし、この主方向にx'、y'、z'軸をとると、
よって、この曲面は回転楕円面である。
(解答終)
テンソルの問題の解答例 [テンソル入門]
ddt³さんから、
問題
cを実数の定数とし、任意のベクトルxに対して、次式で関数T(x)を定義する。
(1) 実定数cは2階のテンソルか?
(2) テンソルTの座標系O-x₁x₂x₃に関する成分を求めよ。
の回答を頂いたので紹介するにゃ。
ddt^3です。
これは基本を理解しないと答えようがない、良問と思えました。良問には目がないので(←たいてい全く面倒臭くない)、試回答をあげます。ネコ先生の流儀には合わないかも知れないですが・・・(^^;)。
問題1
実定数cは2階のテンソルでしょうか?
c(x+y)=cx+cy, c(ax)=a(cx) (1)
が、
T(x+y)=T(x)+T(y), T(ax)=aT(x) (2)
という形をしている以上、スカラーcは定義から2階のテンソルです!。
ちょっとおかしいなぁ~と思いながらも、定義に従って全てを判断するのが、公理的な数学の作法(^^;)。
でもスカラーは0階のテンソルだよね?。ちょっとおかし過ぎるんじゃない?。たぶんネムネコ先生は、そこを考えろと仰っておられるのだ。
でもcとTに関する先の事実は変わらないから、ここはスカラーcと同一視できる(x,yに対する作用が同じ)2階テンソルCtがあるに違いない。
テンソルの姿を知る一番手っ取り早い方法は、基底に関するテンソルの表現を書き下す事だ。何故なら、基底に関するテンソルの作用が決まれば、線形条件(2)から任意のベクトルに対する作用が決まるから。特に普通に欲しいのは、座標系O-x₁x₂x₃についてのテンソルの表現だ。
座標系O-x₁x₂x₃の基底を(),i=1~3とする。テンソルCtで変換された基底を、()としよう。テンソル記法を使うと定義(1)から、
は明らかだ。は、クロネッカーのデルタ。
・・・そうか、Ct=cEであったか(←問題2の答え)。
ここでEは単位行列。
(1)のcの後には必ずEがいて、それを省略しただけよと、思えば良い訳ね。
・・・と一人で納得(^^)。
(以上)
そうなんですよ、一見すると、実定数c(スカラー)は2階のテンソルのように見えるんですよ(^^)。
もし、cが2階のテンソルであるとすれば、
任意のベクトルxに対して
が成立するので、
となる。これはどう考えてもおかしい。
だって、テンソルTの座標系O-x₁x₂x₃に関する成分は
といった形で与えられるんだから。でも、スカラーcは大きさだけしかもっていないから、これを行列の形で与えることはできないからだにゃ。
また、実定数cはベクトル(の部分集合)を定義域に持つベクトル値関数ではないから、
「空間内の任意のベクトルxに対して値が定まり、その値がベクトルである関数T(x)があるとする」
という2階のテンソルに必要な条件を満たしていない。
だから、実定数cがいくら線形条件を満たしているからといって、2階のテンソルになることはない。
(2)に関しては、
テンソルTの座標系O-x₁x₂x₃に関する成分を
さらに、
とすると、
となる。
一方、上の式の左辺は
となるので、この係数を比較すると
となる。
また、
とすると、
となり、
となり、条件を満たしている。
テンソルを行列と同一視し、
これが任意のベクトルxで成り立つので、
といった解答を作ることもできるだろう。
クロネッカーのデルタを用いて解答を作るならば、
とおき、ベクトルyの成分をとすると、
これが任意のベクトルの成分について成り立つのだから、
この計算は、実質、成分に関して行列の計算を行っていることと同じ。
何故ならば、
とすると、この行列の計算は、
で定義されているのだから。
なお、クロネッカーのデルタを行列で表現すると、
クロネッカーのデルタは、単位行列Eと深い関係があるのであった。
テンソルのワンポイントゼミかも お前ら、この問題を解け!! [テンソル入門]
外積の計算法がわかりませんとは言わせない。
何故ならば、⑨であるお前らがこの計算に困らないようにと、ネムネコは、テンソルの第0回目に外積の計算法を紹介しているからだ。
e₁、e₂、e₃をそれぞれx軸、y軸、z軸の基本ベクトルとし、ベクトルA、Bが
であるとき、外積A×Bは
である。
ということで、お前らに問題。
問題
であるとき、外積A・Bを求めよ。
つまり、
となることを計算して確かめろって言ってんだ。
そして、この計算を真面目にした奴は、とある事実に気付くハズだ。
この3つは、どれも、テンソル入門の第9回の問の(1)に出ていた主方向(固有ベクトル)ではないか!!
外積A×Bは、ベクトルAとBを隣り合う2辺とする平行四辺形の面積
の大きさを持ち、AからBへ右ねじを回したときのネジの進行方向の向きをもったベクトルで、AとBと垂直である。
だから、AとBが与えられているとき、このように外積を用いて、AとBに垂直なベクトルを求めることができるのであった。
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第9回 対称テンソルの続き [テンソル入門]
第9回 対称テンソルの続き
をテンソル、λを固有値、を固有ベクトルとするとき、固有方程式は次のようになる。
テンソルが対称テンソルのとき、上の固有方程式の解はすべて実数である。そして、重複解の個数により、主方向は次のようになることが知られている。
(ⅰ) 固有方程式の解T¹、T²、T³がすべて異なるとき、対称テンソルの主方向は3つ存在し、それぞれが垂直である。
(ⅱ) 固有方程式の解T¹、T²、T³の解が2つ等しいとき、T¹≠T²=T³とすれば、 T¹に対応する主方向に垂直な方向はすべてテンソルの主方向である。
(ⅲ) 固有方程式の解T¹、T²、T³が全て等しいとき、任意の方向が主方向である。
そして、3つの主方向の方向に座標軸の向きをとり、その主値をT¹、T²、T³とすれば、対称テンソルの成分は
となる。
問 つぎのテンソルの主値と主方向を求めよ。
【解】
(1) 固有方程式は
したがって、固有ベクトルをとすると、
λ=1のとき、②式、③式より
したがって、この主方向は
λ=2のとき、②式よりv¹=0。①より、v³=−v²。
したがって、この主方向は
λ=4のとき、②、③式より、
となるので、このときの主方向は
(2) 固有方程式は
したがって、
λ=4のとき、
になるので、このときの主方向は
λ=1は重根なので、上で求めた主方向に垂直なベクトルを主方向に取ることができる。
そこで、に垂直な
を一つ選ぶ。
さらに、残りの1つである、に垂直なベクトルを求めるために外積を用いると
したがって、
λ=4のとき、
λ=1のとき、
(解答終)
お前らに いざこと問わん problem!! [テンソル入門]
お前らに次のことを問うにゃ。
テンソルの第1回目に(2階の)テンソルを次のように定義した。
テンソルの定義
空間内の任意のベクトルxに対して値が定まり、その値がベクトルである関数T(x)があるとする。
関数Tが、任意のベクトルx、y、任意の実数aに対して、つぎの線形条件
を満たすとき、Tを(2階の)テンソルという。
cを実数の定数とし、任意のベクトルxに対して、次式で関数T(x)を定義するケロ。
すると、
となるので、Tはテンソル。
xはベクトルだから、cxはベクトル。
となるので、線形条件(1)も満たしている。
では、聞くにゃ。
問題1
実定数cは2階のテンソルでしょうか?
問題2
(2)式で定義されるテンソルTの座標系O-x₁x₂x₃に関する成分を求めよ。
第8回 対称テンソル [テンソル入門]
第8回 対称テンソル
をテンソル、をベクトルとする。
対称テンソルについて
となる零ベクトルでないベクトルと数λが存在するとき、ベクトルの方向を対称テンソルの主方向、λをその方向の主値という。
(1)式より
となるので、
ベクトルは零ベクトルでないので、ベクトルの成分は同時に0にならない。
よって、
でならなくてはならない。
λに関する3次方程式(3)を特性方程式(固有方程式)、その解を固有値、(1)または(2)式で得られる零ベクトルでないベクトルを固有ベクトルという。
性質1 対称テンソルの固有値はすべて実数である。
【証明】
を対称テンソルとする。
特性方程式(3)の解の1つをλ、それに対応する固有ベクトルをとすれば、
λを複素数、をその共役複素数とし、(4)の両辺の共役複素数をとれば、
(4),(5)の両辺にそれぞれを掛け、i=1,2,3とおき、それを加えると、
だから、
したがって、(6)と(7)の左辺は等しくなり、
v¹、v²、v³は同時に0でないから、
したがって、となり、λは実数である。
(証明終)
性質2 対称テンソルの異なる固有値に対する固有ベクトルは互いに直交する。
【証明】
(3)の異なる解をλ₁、λ₂に対する固有ベクトルをとすると、
2式の両辺にを掛けて、i=1,2,3とおいてそれぞれ加えれば、
だから両辺の左辺は等しく、
よって、とは直交する。
(証明終)
性質3 対称テンソルの主値をT¹、T²、T³とすると、
である。
つまり、これらはスカラー(不変量)である。
【証明】
固有方程式を展開すると
この方程式の解をT¹、T²、T³とすると、
上の2つの方程式の係数を比較すると、
(証明終)
したがって、対称テンソルは
とおくと、
と変形することができる。
10月6日のテンソルの問題の解答(?)例 [テンソル入門]
問題 をテンソル、をベクトルとするとき、次が成り立つことを示せ。
(1) はスカラーである。
(2) 2次形式の値は直角座標の変換によって変わらない。
【略解】
(1) とおけば、これはベクトル。
したがって、これはスカラーである。
(2) (1)より、これはスカラー(不変量)。よって、直角座標の変換によって値は変わらない。
(略解終)
ちなみに、をベクトルとするとき、
がスカラーになることは、次のように証明すればよいだろう。
直角座標の変換によって
になるとする。
となり、直角座標の変換によって値は変わらない。
よって、
はスカラーである。
ベクトルuとvを、直交座表系O-x¹x²x³から直交座表系O-x'¹x'²x'³に
と書き換えただけで、uとvそのものが変わっているわけじゃ〜ない。
uとvの大きさ、そして、この2つのベクトルのなす角θは変わっていないのだから、どの直交座標系であろうが、
は不変!!
したがって、アタリマエのことを言っているに過ぎない。
そして、幾何的にアタリマエのこのことを、代数的に証明したということになる。
ということで、空間中にどのような直交座標系を設定し、それをもとにuとvを
と表し、これをもとに、その内積u・vを
と計算してよいということになるんだにゃ。
なお、⑨を用いてベクトルuとvの内積を計算できるのは直交座標系のとき。たとえば、x¹、x²、x³軸が互いに直交していない(斜交)座標系ではこうはならないので、この点は注意。
お前らにテンソルの問題を [テンソル入門]
お前らにテンソルの問題を1つ。
問題 をテンソル、をベクトルとする。次のことを示せ。
(1) はスカラーである。
(2) 2次形式の値は直角座標の変換によって変わらないことを示せ。
ではあるが、ヒントを与えよう。
【ヒント】
とおくと、これはベクトル。
つまり、
となる。
第7回 テンソルとベクトルの1次関数 [テンソル入門]
第7回 テンソルとベクトルの1次関数
ベクトルの成分がベクトルの1次関数
によって表されるとき、ベクトルはベクトルの1次ベクトル関数という。
すなわち、
問題1 をテンソル、をベクトルとすれば、
はベクトルである。
【解】
とおく。
直角座標の変換によって、がになるとする。
に、
を代入すると、
ゆえに、はベクトルである。
(解答終)
問題2 9個の数の組とするとき、任意のベクトルに対し、つねに
がベクトルならば、はテンソルである。
【解】
とおく。
直角座標の変換によって、がになるとすれば、
ところで、
また、の両辺にを掛け、j=1〜3について加えれば、
よって、(3)は
(2)と(4)より
上式は任意のベクトルについて成立するので、
よって、はテンソルである。
(解答終)
したがって、
任意のベクトルについて
がベクトルであるとき、9個の数の組はテンソルである、とテンソルを定義することができる。
問題3 をテンソル、をベクトルとすれば、
はスカラーである。
【解】
とおくと、はベクトル。
よって、
したがって、はスカラーである。
(解答終)
がベクトルであるとき、 がスカラーであることは、第5回の問題1で示してある。