第28回 グリーンの定理 [ベクトル解析]
第28回 グリーンの定理
今回も最初は、ガウスの発散定理。
ガウスの発散定理
閉曲面Sで囲まれた領域Vにおいて、ベクトル関数A(x,y,z)の偏導関数が連続であれば、
そして、今回のテーマであるグリーンの定理を、このガウスの発散定理を使って証明するにゃ。
グリーンの定理
閉曲面Sで囲まれた領域Vにおいて、スカラー関数をφ(x,y,z)、ψ(x,y,z)とすれば
【証明】
じっと見つめる。だから、
(1)の右辺は
だから、ガウスの発散定理より
なお、∇・(ψ∇φ)の計算では、∇・(ψA)=∇ψ・A+ψ∇・Aという公式を使っている。
これにA=∇φを代入すれば、
∇・(ψ∇φ)=∇ψ・∇φ+ψ∇・∇ψ=∇ψ・∇φ+ψ∇²φとなる。
(2)は、(1)のφとψを入れ替えると
となり、(1)式と上の式の差をとれば、
(証明終)
実は、グリーンの定理には「平面におけるグリーンの定理」と呼ばれるもうひとつのバージョンがある。
(平面における)グリーンの定理を紹介する前に、領域Dを囲む曲線の向きについてあらためて定義するにゃ。
領域Dの境界の曲線の向き付は、Dの外側の境界に沿っては反時計回り、Dの内部の境界に沿っては時計回りを正の向きとする。
(平面における)グリーンの定理
領域Dとその境界CにおいてP(x,y)Q(x,y)、が連続ならば、
が成り立つ。
【証明】
領域Dが
a≦x≦b,y₁(x)≦y≦y₂(x)
およびc≦y≦d,x₁(y)≦x≦x₂(y)
のどちらでも表せるとする。このとき、
また
よって、領域Dに対して、
である。
一般の領域については、上の図のようにDを分割する。この時、各部分の領域ではそれらを足し合わせれば、右辺は
になる。左辺も境界部分のは消えて
となり、グリーンの定理が成立する。
このグリーンの定理が役に立つのかと言われるとちょっと困る。
理論的には重要な定理なのだけれど、実際のところ、意外に使い道のない定理かもしれない。問題1 ベクトル場をA=(y,−x)とし、曲線Cを原点を中心とする半径1の円とする。このとき次の線積分の値を求めよ。
【解】
平面におけるグリーンの定理より
Dは原点を中心とする半径1の円Cに囲まれる領域なので、
よって、
真面目に線積分するならば、Cは原点を中心とする単位円なので、
また、曲線C上では
よって、
問題2 xy平面の領域Dの面積Aは、Dの境界Cに沿っての線積分として
で表せることを示し、これを利用して半径aの円x=ascost、y=asint(0≦t≦2π)の内部の面積を求めよ。
【解】
P=−y/2、Q=x/2とする。
グリーンの定理より
P=0,Q=x、P=−y、Q=0とし、グリーンの定理を用いれば、この線積分はいずれもになり、xy平面の領域Dの面積Aとなる。
第27回 ガウスの発散定理2 [ベクトル解析]
第27回 ガウスの発散定理2
ガウスの発散定理
空間の領域Vとその境界の閉曲面Sにおいて、ベクトル場Aが連続な導関数をもつならば
である。
ベクトル場Aを次のように成分に分けて書くと
ガウスの発散定理は次のように書くことができる。
で、早速、問題を。
問題1 次の面積分の値を求めよ。
ただし、Sは上半球面:とからなる。
【解】A=xz²i+(x²y–z)j+(2xy+y²z)kとすると
よって、ガウスの発散定理より
で、三次元の極座標
を使うと、
となる。
問題2 閉曲面Sで囲まれた領域Vにおいてスカラー関数をφ(x,y,z)とし、Sの法線方向に対する方向微分係数をdφ/dnとする。この時、次のことを証明せよ。
(1)(2)φが調和関数ならば、
【解】
(1) A=∇φとすると、ガウスの発散定理より
で、
そして、
よって、
(2)φは調和関数なので、
よって、
本や問題によっては、上の問題の方向微分をdφ/dnではなく∂φ/∂nと書いてある場合もあるので、この点は注意が必要。同じもので、表記が違うだけです。
定理というほどのものではないと思うけれど、定理らしいのであげておくにゃ。
定理 スカラー場φとベクトル場Aの共通の定義域内にある任意の領域Vと領域その境界面Sについて
であれば、φ=∇・Aである。
【証明】
ガウスの発散定理より
よって
φ–∇・Aは連続であり、任意のVについて上の関係が成り立つので、φ–∇・A=0である。よって、
(証明終)
これは「連続」かつ任意の領域Vで成り立つので、上の定理が成り立つ。
問題3 閉曲面Sで囲まれた領域Vにおいて、スカラー関数φ(x,y,z)、ベクトル関数をA(x,y,z)とする。
(1) 次のことを証明せよ。
(2) A=∇φ、∇²φ=0ならば
【解】
(1) ガウスの発散定理から
また、∇・(φA)=∇φ・A+φ∇・Aだから
(2)A=∇φとし(1)の式に代入すると
φは調和関数なので∇²φ=0で上の式の第2項は0。
よって、
第26回 ガウスの発散定理 [ベクトル解析]
第26回 ガウスの発散定理
ガウスの発散定理
閉領域Sに囲まれた領域Vにおいて、ベクトル関数A(x,y,z)が連続な偏導関数をもつならば、
である。ただし、nはSの内部から外部へ向かう単位法線ベクトルである。
ベクトル関数の発散を∇・Aではなく、div Aという記号を使ってあらわすならば、①は
となる。
また、ベクトル関数Aをベクトルの成分に分けてとすると、①は次のように書き換えることもできる。
上の式の右辺については、面積分2のところで
になるという話をした。
では、ガウスの発散定理の証明。
【証明】
図のようにVが上の曲面S₂と下の曲面S₁で囲まれているとする。そして、n₂とn₁をそのS₂とS₁の単位法線ベクトルとする。さらにS₂はS₂=φ₂(x,y)でS₁はS₁=φ₁(x,y)で与えられているものとする。DはS₂とS₁の接合面のxy平面上の正射影をDとする。
S₂の各点の法線ベクトルn₂は
と一致するけれど、S₁では向きが違って−n₁になっている。
よって、
同様にして
となり、これらを辺々に足し合わせれば
となり、
である。
この証明なんてわからなくてもいいにゃ。
欲しいのは、ガウスの発散定理だにゃ。
このガウスの発散定理がどれだけすぐれものかというと、次の問題を解くとわかるにゃ。
問題1 Sを原点を中心とする半径aの球の表面x²+y²+z²=a²(a>0)とする。このとき、ベクトル関数A=xi+yj+zkのS上の面積分を求めよ。
【解】
ガウスの発散定理より
ここで、Vはx²+y²+z²=a²で囲まれた領域、0≦x²+y²+z²≦a²、つまり、原点を中心とする半径aの球。
は半径aの球の体積だから、
だから、
問題2 平面x=0、y=0、z=0、x+y+z=a(aは正の定数)で囲まれた三角錐の全表面をSとする。このとき
を求めよ。
【解】
r=xi+yj+zkだから、∇・r=3。
で、ガウスの発散定理から
ここで、Vは平面x=0、y=0、z=0、x+y+z=a(aは正の定数)で囲まれた三角錐。
で、三角すいの体積は、三角形の底面積がa²/2で高さがaなので
よって、
【別解】
面積分を使って真面目に計算するならば、
φ(x,y,z)=x+y+z
とする。
∇φ=i+j+k=(1,1,1)
になるので、単位法線ベクトルnはそして、S上では、z=a–x–yだから
よって、
となり、
この問題のSのxy平面の正射影はx+y+z=aにz=0を代入したもの、つまり、x+y=aとx=0、y=0で囲まれる領域、つまり、
D={(x,y)|0≦x≦a,y=a–x}
ね。
外積を使ってもいいけれど、それはちょっと大袈裟だろう。
行列式を計算しないといけないし、これを書くのも大変だし(^^ゞ
第25回 面積分の計算 [ベクトル解析]
第25回 面積分の計算
簡単な問題を実際に解くことによって、面積分の計算の仕方を説明するにゃ。
問題1 平面2x+2y+z=2が座標軸と交わる3点A、B、Cを結ぶ線分で囲まれた三角形をSとするとき、
f=x²+2y+z–1のS上の面積分を求めよ。【解】
f(x,y,z)のS上の面積分は
で与えられる。
平面の方程式は2x+2y+z=2だからz=2–2x–2y。となり、dS=3dxdy。
また、S上では
なので、
となる。
ここで、Dは曲面Sに対応するxy平面上の領域で D={(x,y)|0≦x≦1,0≦y≦1–x}
問題2 曲面Sは問題1と同じで、原点はその負側にあるとする。ベクトル関数A=yi+zjのS上の面積分を求めよ。
【解】
(解法1)
S上の点の位置ベクトルをr=(x,y,z)とすると、AのS上の面積分
で与えられる。
平面の方程式は2x+2y+z=2だからz=2–2x–2y。だから、曲面S上ではr=(x,y,–2x–2y)となり、
で、S上では
となる。
よって、で、
よって、
最後の積分は、真面目に展開して計算してもよし、t=1–xとおいて置換積分
を使ってもいいにゃ。
(解法2)
φ=2x+2y+z=2とする。これはφの法線ベクトル。
だから、
だから、
となる。
S上では
問題1より、dS=3dxdy。
後の計算は、解法1と同じ。
問題3
を求めよ。だたしSはx²+y²+z²=a²のz≧0の部分で、nの方向は球面の内部から外部へ向かう方向とする。
【解】ベクトル関数Aが
の時、
となる。
だから、問題の積分のベクトル関数は
で、曲面Sはx²+y²+z²=a²、z≧0だから
よって
また、
よって
ここで、x=rcosθ、y=rsinθとおき、2重積分の変数変換をすると
2重積分の計算法 [ベクトル解析]
2重積分の計算法
面積分や体積分の計算をするためには、重積分の計算法を知らないことにはどうにもならないので、重積分の復習をかねて計算の仕方を説明するにゃ。
最も単純なタイプは、有界な長方形領域K
で定義された連続な関数f(x,y)に対する
という重積分。
これは、
と累次化して計算をする。
と計算する場合、
を真っ先に計算するのだけれど、この時、xは定数と考えてyについて積分する。そして、この積分の結果をxについて積分する。
こういうのは具体的な例で実際に計算したところを見たほうがわかりやすいので、次の問題を解いてみるにゃ。
例題1 K=[0,1]×[0,1]のとき
の値を求めよ。
【解】
あるいは、
と計算する。
また、f(x,y)=φ(x)ψ(y)という風に、関数f(x,y)がxだけの関数φ(x)とyだけの関数ψ(y)の積であらわされるとき、
が成立するので、f(x,y)=φ(x)ψ(y)という関数の場合はこれを使って計算しても良い。
例題2 K=[0,1]×[0,1]のとき
の値を求めよ。
【解】
②を使うならば、
①を使うならば、
となる。
どっちの方法で計算してもいいにゃ。
例題2のようなタイプの積分の計算は②を使ったほうが計算は楽になるにゃ。
積分する領域Dが[a,b]×[c,d]のような長方形の領域でない場合があるにゃ。Dが長方形でないほうがむしろ一般的。
こういう集合を縦線集合というけれど、この時は、次のように累次化して積分する。
例題3 D={(x,y)|0≦x≦1,0≦y≦x}であるとき
の値を求めよ。
【解】
Dが横線集合
で与えられている場合は、
と計算する。
例題4 D={(x,y)|0≦y≦1,y≦x≦1}のとき
の値を求めよ。
実は、例題3と例題4は同じ2重積分。違いは、積分する領域を縦線集合として計算するか、横線集合として計算するか、この違い。
問題によっては、縦線集合、横線集合のいずれか一方でしか積分の値が求められないことがある。こういう場合は、縦線集合を横線集合に、横線集合を縦線集合に直して計算しなければならない。つまり、積分の順序を変えるということになる。
重積分も積分なので、次の公式が成り立つ。
さらに、積分する領域DがD₁とD₂に分割できるとき
が成り立つ。
だから、例題1は
そして、②から
よって、例題1の積分の値は、
と計算することもできる。
第24回 面積分2 [ベクトル解析]
第24回 面積分2
曲面S上で定義されたベクトル関数をA(x,y,z)、曲面S上の各点での単位法線ベクトルをnとするとき、面積分は
で定義される。
A・nはn上へのAの正射影であり、
とすれば、面積分は
面積分のところでやったように、曲面Sを微小な部分に分割し、その一つの面積をΔS、単位法線ベクトルをnとする。
このとき、nの成分
はnの方向余弦であり、面積ベクトルnΔSの成分は
で、これを
とおけば、ΔS₁はΔSをyz平面上に正射影して得られるものに正負の符号をになる。
ーーΔS₂はΔSをzx平面上に、ΔS₃はΔSをxy平面上に正射影して得られたものに正負の符号を付けたものーー
nΔSをΔSで表せば、
ΔS₁、ΔS₂、ΔS₃は座標平面上の面積だから、面積分を
と書くことができる。
これは、ndS=dSとおき、ベクトルdSの成分を
としたものと考えることができる。
これは次のように考えることもできる。
曲面Sがr=r(u,v)=(x(u,v),y(u,v),z(u,v))であらわされるとする。このとき、単位法線ベクトルnは
そして、面積素は
だから、面積分は
となる。
で、
とする。
これ、重積分のところでやったヤコビアンだケロ。
ということで、
となる。
よって、
と書くこができる。
重積分のところで、
としたとき、
になるという話をしたけれど、これを使っている。
面積分や体積分の計算は、重積分の計算ができないことには話にならないので、次回は重積分の簡単な復習をやるケロ。
第23回 面積分 [ベクトル解析]
第23回 面積分
一つの閉曲線Cで囲まれた曲面S上で連続である関数をf(x,y,z)とする。曲面Sをn個の微小な部分
に分割し、この分割をΔであらわす。
の面積をとし、の中の任意の点を選んで
を作る。分割を細かくし、Δを限りなく小さくしていった時のS(Δ)の極限値を
と書き、これを曲面S上のf(x,y,z)の面積分という。
曲面r=r(u,v)の面積素は
したがって、
となる。
ここでDはSに対応するuv平面の領域である。ちなみに、
曲面がz=f(x,y)で与えられるときは
となる。
これは、u=x、v=yとおくと、曲面はr=xi+yj+f(x,y)kとなり、
となる。
よって、その外積は
となり、
と直接計算することもできる。
曲面S上の単位法線ベクトルをnとし、ベクトル関数をA(x,y,z)とする。曲面S上の各点においてAとnの内積A・nを作り、そのS上の面積分
をS上のAの面積分という。
S上のAの面積分を
と書いたりもするけれど、これは表記法の違いで同じものを表しているにゃ。
また、ベクトルAの単位法線ベクトルnへの正射影
を用いて
と表記する場合もある。
曲面Sの単位法線ベクトルnは
さらに、面積素dSは
なので、
になる。
ここで、DはSに対応するuv平面の領域である。
添字だと誤解を招くおそれがあるので、簡略表現を使わないならば、曲面S上のAの面積分は
と定義される。
問題 球面の位置ベクトル
で与えられる。このことを用いて球の表面積を求めよ。
【解】
よって、
となり、
第22回 曲面 [ベクトル解析]
第22回 曲面
面積分の話をするためには、どうしても、曲面についての議論を避けて通れないので、面積分に入る前に曲面についての話をすることにしますにゃ。
点Pの位置ベクトルrが2変数uとvの関数であるとき、点Pは一般に曲面をえがく。このとき、
を曲面Sのパラメータ表示という。
①式において、vだけを固定してuを変化させれば、rは曲面S上で一つの曲線をえがく。この曲線をu曲線という。同様に、uを固定してvを変化させれば、rは曲面S上でひとつの曲線をえがき、この曲線をv曲線という。u曲線とv曲線をあわせて座標曲線という。r(u,v)に対応する点をPとすれば、(u,v)を点Pの曲線座標という。
はそれぞれu曲線、v曲線への接線ベクトルである。
曲面S上の任意の点で
であるとする。
曲面r=r(u,v)の上の点P(u,v)において、その点をを通り、2つのベクトルによって決定される平面を点Pにおける曲面の接平面という。接平面に垂直なベクトルを法線ベクトルといい、
を曲線座標(u,v)に対する単位法線ベクトルという。
ベクトルaとベクトルbを隣り合う2辺とする平行四辺形の面積は、
で与えられる。
次の図で示される微小な部分の面積ΔSを考える。
このとき、
と近似できるので、斜線部で示される微小部分の面積ΔSは
になる。
このままでとちょっと見づらいので、
ただし、
それで、これらは曲面r=r(u,v)の第一基本量という。
また、uv平面上の領域Dに対応する曲面の部分の面積Sは
となる。
を曲面r=r(u,v)の面積素という。
問題 曲面の方程式がz=f(x,y)で与えられるとき、曲面積の公式を求めよ。
【解】
u=x、v=yとする。このとき、曲面の方程式は
r=r(x,y)=(x,y,f(x,y))
となる。
よって、
重積分の
第16回 曲面積
のところでも上の公式は求めてある。
曲面には裏と表、内側と外側があるにゃ。だから、法線ベクトルnの向きは2通りあることになるケロ。
で、曲面の法線ベクトルの(正の)向きは、裏から表に向かうものとする。曲面の裏、表の選び方は任意で良いけれど、曲面が空間の有界な領域を囲んでいる場合、空間領域の外へ向かうようにnの向きをとることにする。ちなみに、メビウスの帯には表と裏がないにゃ。こういう曲面は法線ベクトルの向きを決めることができないにゃ。
第21回 線積分2 [ベクトル解析]
第21回 線積分2
以下に定義される滑らかな曲線Cがあるとする。
この曲線上で定義されるベクトル関数(ベクトル場)AのCに沿っての線積分は
で定義される。
前回、ここまで話をしたにゃ。
で、その復習をかねて、次の問題をやることにするにゃ。
問題1 ベクトル関数をA=xi–yjとする。xy平面上で、原点OからP(1,1,0)にいたる放物線y=x²を曲線Cとするとき、Cに沿ってのAの線積分の値を求めよ。
また、x軸上にそって、原点からx=1の点Qにいたり、次に直線に沿って点Pにいたる曲線C’に沿ってのAの線積分の値を求めよ。
【解】
Cに沿っては、y=x²であるから
あるいは、x=tとおくと、y=x²=t²になるので、
や
と計算してもいい。
C'の場合は、曲線を線分OQと線分QPに分けると
となる。
OQに沿ってはy=0なのでdy=0となるので、
QPにそっては、x=1だからdx=0になり
となる。
よって、
この問題1から、一般に、始点と終点が同じであったとしても、積分経路によってベクトル関数の線積分の値は違うことがわかるにゃ。
問題2 スカラー関数φ(x,y,z)を一価関数であるとすると、点Pから点Qにいたる曲線Cに沿っての∇φの線積分は
である。
【解】
よって、
φ(x,y,z)を一価関数とし、点Pから点Qにいたる2つの曲線をC₁、C₂とすれば、上の問題2より
となり、PからQにいたる曲線に沿っての∇φの線積分は、2点P、Qの位置関係によって決まり、PからQにいたる曲線とは関係がない。
また、φ(x,y,z)が一価関数であるとき、閉曲線Cに沿っての積分は0である。
つまり、
となる。
点Pを始点とし終点とする閉曲線Cがあるとする。
で、Pと異なる閉曲線上の点をQとし、図のように、PからQにいたる曲線をC₁、QからPにC₂とする。
このとき、
閉曲線C=C₁+(−C₂)だからだにゃ。
このことが言っていることは、ポテンシャルを有するベクトル関数の線積分の値は、始点と終点のみで決まるということ。そして、閉曲線上でぐるりと一周、線積分すれば、その値は0になるということだにゃ。
そして、ポテンシャルを有するベクトル関数の線積分は、Cが複雑で簡単に計算できないというとき、Cと始点と終点を同じにする(計算が容易な)C'という曲線で線積分の計算をしていいということになる。
たとえば、A(x,y,z)=xi+yiというベクトル関数があるとする。
この関数Aは、
とすると、
になるので、原点を始点とし点P(1,1,0)に至る任意の曲線Cに対して、Cに沿ってのAの線積分の値は
となる。
問題1の2つの曲線に沿って線積分の値を計算して、実際に、こうなるか確かめてみるといいにゃ。
となる。
計算だけれど(^^ゞ
第20回 線積分 [ベクトル解析]
第20回 線積分
2点A、Bを結ぶ(滑らかな)曲線Cがあるとする。Cに沿って測った弧長をsとし、曲線Cの方程式を
として、s=a,bにそれぞれ点AとBが対応しているとする。
また、fを曲線C上で定義されたスカラー関数(スカラー場)とする。
この曲線Cをn個の孤に分割し、この分割をΔであらわす。各曲線の弧長をとし、の任意の点をとし、次の和をとる。
分割を限りなく小さくしてゆくとき、このI(Δ)が極限値Iを持つならば、この極限値Iをスカラー場fのCに沿っての線積分といい、
であらわす。
Cが閉曲線とき、特に
とあらわすことがある。
積分だから、α、βを定数、fとgをスカラー関数とすると、
が成り立つ。
また、曲線CをC₁、C₂に分解したとき、つまり、C=C₁+C₂としたとき、
Cの逆向きの曲線を曲線を−Cとすると
となる。
問題1 Cを(0,0,0)と(1,1,1)を結ぶ直線とするとき、次の値を求めよ。
【解】
曲線Cの方程式は
になる。
よって、
原点と点P(t,t,t)の距離sは
なので、
としてもよい。
向きのついた曲線C:r=r(t)とC上で定義されたベクトル関数(ベクトル場)Aが与えられているとする。さらに、Cの点Pにおける接線ベクトルをtとすると、A・tは曲線C上で定義されたスカラー関数(スカラー場)となるので、この曲線Cに沿っての線積分は
になり、これをベクトル場Aの向きのついた曲線Cに沿っての線積分という。
また、
という関係があるので、
となり、
となる。
これを成分で書き、
とすれば、
となる。
問題2 ベクトル関数を
とする。xy平面上で、原点Oから点P(0,1,1)にいたる放物線に沿ってのAの線積分の値を求めよ。
【解】
x=tとすると、この曲線(放物線)上で、yはy=x²=t²となり、Aは
となる。
また、よって、
【別解】
ベクトルではなく、成分で計算しても良い。
を使うならば、zに関しては0なので無視して、
になるので、
となる。