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微分方程式よもやま話8 オイラー法とピカールの逐次近似法。そして、微分方程式の解の一意性定理 [微分方程式の解法]

微分方程式よもやま話8 オイラー法とピカールの逐次近似法。

 

そして、微分方程式の解の一意性定理

 

 

§1 オイラー法

 

オイラー法とは、次の一階常微分方程式の初期値問題を

  yomo8-001.png

を、次の漸化式を使って逐次的に(1)の(特殊)解の近似解(数値解)を求める方法である。

  yomo8-002.png

特に、計算領域に配置されている格子点の間隔が

  

と等間隔の場合、(2)式は次の式のように非常に簡単に表すことができる。

  

 

このオイラー法を用いて、次の微分方程式の初期値問題を解くことにする。

  

計算する領域は0≦x≦aとし、これをn等分に分割し、計算に使用する格子点のx座標を次のように与えることにする。

  

そして、に対応する近似解の値をとすると、オイラー法による(4)式の漸化式は次のようになる。

  yomo8-003.png

特に、k=n、すなわち、における

  

である。

(5)式のn→∞における極限をとると、

  

となり、(4)の厳密解である

  

と一致する。

 

yomo8-tab-001.pngさてさて、a=1とすると、

  

となる。

  

になることを高校で習ったと思う。

(7)式のn1510、・・・、10万まで与えた計算した結果は次の通り。

高校で習った

  e=2.71828(フナ・ヒト・ハチ・ヒト・ハチ)

まで正確に計算するためにはnを10万までとらないといけない(笑)。

(7)式は非常に収束が遅く、精度の高い計算をするためには、nを非常に大きくとらなければならない。

そして、このことは、オイラー法で微分方程式の初期値問題を正しく解くためには、計算区間の分割数nを大きくとらなければならない、すなわち、格子点の間隔hを細かく取らないとならないといけないことを意味している。

 


 

 

§2 ピカールの逐次近似法

 

ピカールの逐次近似法は、微分方程式の解の一意性定理を証明する際に使用される手法で、数値計算の現場で実際に使用されることはないのですが、オイラー法とよく似た逐次計算法なので、紹介することにする。

 

ピカールの逐次近似法とオイラー法の違いは、ピカールの逐次近似法では変数を使うのに対し、オイラー法は数値を使って、微分方程式(1)の初期値問題を解くというところ。

 

ピカールの逐次近似法

f(x,y)が連続であるとき、

  

により、関数列を作ると、この極限関数y(x)が微分方程式y'=f(x,y)の解になる。これをピカールの逐次近似法という。

 

微分方程式(4)の初期値問題を、ピカールの逐次近似法を用いて解いてみる。

  

そこで、n→∞として(10)の極限をとると、

  yomo8-007.png

厳密解と一致する。

 

さて、次の微分方程式の初期値問題をピカールの逐次近似法を用いて解くことにする。

  

ここで

  

とおく。

  

よって、

  

したがって、

  

ここで、この解を−∞<x<∞と延長するならば、

  

(^^)

 

実は、

  

なんだけれど・・・。

でも、

  yomo8-008.png

ということにすれば、ここはクリアーできるに違いない。

 

そして、このピカールの逐次近似法は、微分方程式の解の一意性定理の証明に用いられる手法。

つまり、微分方程式の解の一意性定理は、微分方程式の

  

を保証してくれないのであった。

 

§3 微分方程式の解の一意性定理

 

ピカールの定理 (1階常微分方程式の初期値問題の解の一意性定理)

一階常微分方程式

  yomo8-009.png

について、f(x,y)

  

であって、

  yomo8-010.png

を満たすとき、y(x₀)=y₀をみたす解y=y(x)

  yomo8-011.png

において、ただ一つ存在する。

 

 

あまりうるさいことを言わなければ、

Df(x,y)の偏導関数が連続であるとき、解の一意性が証明される。また、連続でないと、微分方程式の解の一意性は必ずしも保証されない。

 

(13)の左辺をyについて偏微分すると、

  

y=0のとき上の偏導関数は存在せず、D=R×R=R²にすると、(13)の解の一意性は保証されなくなる。

実際は、初期値(x₀,y₀)を与えても微分方程式(13)の解が一つに定まらないから、ピカールの定理を満たさないのだけれど・・・。

 ――ピカールの定理は、あくまで微分方程式の解が一つに定まるための十分条件にすぎず、この条件を満たさない場合でも解が一つに定まることがある。――

 

微分方程式

  

も、

  

となるので、上の微分方程式の定義域に原点(0,0)を入れると、「本当に(14)の解は一つですか。そう断言していいのですか」とイジメられる(^^

 

では、どうしたらいいのか。

「微積分の根底を探る」で展開されている稲葉三男の提案にしたがうならば、

少なくとも微分積分の範囲では、

微分方程式は

  

と、連結する集合(切れていない、穴ボコの開いていない集合。たとえば、開区間や閉区間などの区間)で定義されるべきで、微分方程式と同時に定義域を明示するべきだとなる。

これならば、解の一意性は保証される、一般解が、y=Cxと1つに定められる。

そして、

yomo8-graph-006.pngddt³さんがおっしゃるように、矛盾しないように、あらたな点などを加えて、矛盾しないよう、うまく、微分方程式の解(の曲線)をつなげばよい。

すなわち、右の図のように、原点Oを新たに加えることによってD₁={(x,y)|x>0,y>0}D₂={(x,y)|x<0,y<0}を一つの集合とし、D₁で定義される微分方程式の解y₁=C₁xD₂定義される微分方程式の解y₂=C₂xの中から

  yomo8-020.png

となるものを選び、D₁∪D₂∪{(0,0)}上で定義されるy=Cxをその(一般)解とする。さらに、D₁∪D₂∪{(0,0)}の補集合の奴まで加えことによって、定義域をとするy=Cxを微分方程式(14)の解を構成する、

みたいな話(^^ゞ

 

 


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