[一階線形微分方程式の求積公式] [微分方程式の解法]
[一階線形微分方程式の求積公式]
高校生だった頃、なぜ微分方程式が解けるのか無性にマイブームになった時期がありました(^^)。原因は、ニュートンの運動方程式が微分方程式問題を定義すると気づいたからでした・・・。
微分方程式y'=yは次のように解きますよね?。ここで「解く」とは求積法の意味で、数値解法は解くうちに入れません。
疑問に思ったのは次の点です。
微分方程式y'=yは、未知数としてy'とyの2つを持ってます。でも方程式としての条件はy'=yの一個だけです。そして連立方程式の発想に従えば、未知数の数に等しいだけの条件数がなければ、答えは「不定解」になるはずです。これは一般的な方程式の条件数の話なので、微分方程式でも同じはずです。
しかし上記の場合、任意の積分定数は付くものの、y(x)の具体的形が定まります。また任意の積分定数は、微分には定数分の不定性があるという微分構造に由来するもので、微分方程式y'=yが不定解しか出せないからではありません。
疑問:
微分方程式y'=yが確定した解を出せるなら、条件式は2本必要では?。
2本のうち一本はもちろんy'=yそのものです。ここで普通の代数的な連立方程式の発想で行くと、不足のもう一本は、y'=F(y)となる未知の関係です。これがどんなものかは、とりあえずわからなくても、y'=F(y)を使った結果は予想できます。
y'=F(y)をy'=yに代入してy'を消去するんですよ!。代入した結果のF(y)=yをyについて解けば、y=y(x)がわかるという仕掛けになります。しかしy'=F(y)、すなわち関数とその導関数を関係づける一般的な条件Fはないはずです。それでもy'=F(y)を使ったとおぼしき段階は、さっきの求積法をたどると、余りにもあからさまです。
もちろん「やったなこのやろぉ~!」の部分ですよ(^^;)。そこでy'が消去されてますから。
そこで何をやったかを反省すると、要するに次の関係式を使ったんですよね?。 (ですね。 ネムネコの呟き(^^ゞ)
これは合成関数の微分公式です。なので微分方程式y'=yの求積法とは、結局こういう事ではないのですか?。
・・・という連立方程式なんですよね。上記一段目からy'/y=1を作って後は順番に代入して行けば、y=A
exが得られます。ポイントは下から2番目の「合成関数の微分公式の逆」で、それがy'を消去します。上記「連立方程式」の実質の条件数は2で、未知数はyとy'の二つです(^^)。
ここまでで言いたかった事は、要するに微分方程式が、
[左辺:微分公式の結果]=[右辺:既知関数] (1)
という形をしてるなら、「求積可能」という事です。ところで微分公式は合成関数の微分公式だけではありませんよね?。四則演算に対応してあと4つあります。
定数倍の微分公式は、明らかに積の微分公式に従います。商の微分公式の導出には、積の微分公式と合成関数の微分公式を使うので、積および合成関数とは独立な微分公式です。よって(1)の形で求積可能な微分方程式の基本形とは、和,積,商に関する微分公式に由来するものです。
次にyを未知関数,fを自由に設定できるパラメータ関数と考えます。これと(1)の形を考慮すると、和の微分公式には利用価値がありません。和の微分公式で求積できる微分方程式は、dy/dx=f(x)の形のふつうの積分計算です。
従って、(1)の形で求積可能な微分方程式の基本形でトリビアルでないものは、積,商に関する微分公式に由来するものになります。ここでは積の微分公式を扱います。
積の微分公式を次のように変形します。
最後の結果の右辺は、fは自由に設定できるパラメータ関数である事に注意すると、非定数係数の線形微分方程式の形をしてますよね!(^^)。
という訳で、それと(非定数係数の)線形微分方程式を連立させましょう。
上記のおいて、下段の積分方法は左辺に書いてあります。fかけて積分してfで割ればOKなんですよ!。それでy(x)が求まります。上段が下段と同じものであれば、今の積分方法を上段にも使えます。だったら、自由に設定できるパラメータfを適切に定めて、上段左辺と下段右辺が同じになるようにしましょうよ!。
ですよね?。パラメータfを定める条件は、なんと変数分離形じゃないですか!(^^)。
です。ここでf(x)は、f'/f=p(x)を満たせば何でも良いので、積分定数は0としました。この結果を戻すと、
なので、上段を下段に「代入」し、
となります。後は明らかじゃないですか(^^)。
ここにAは積分定数で、最後の結果が非定数係数でもかまわない一階線形微分方程式の形式解です。
ちなみに商の微分公式に関して同様な事をやると、クレーローの微分方程式系列なんかが出てくる気がします。確認した事はないんですけど(^^;)。
(執筆:ddt³さん)
ネムネコの補足・蛇足
微分方程式の不定積分を用いた求積法には、つねに、ある種の胡散臭さ、やましさと言ったようなものがあるように思う。
たとえば、
ddt³さんが取り上げた次の微分方程式がその好例だろう。
高校で変数分離法を習って以来、わたしを含めて多くのヒトは無反省に、機械的に、変数分離法を用いて次のように解くのではないだろうか。
ここで、
とおけば
という結果が得られる。
しかし、すべての実数xに対して、y=y(x)=0という定数関数は、微分方程式(1)の一つの解なんだよね〜。
そして、この場合、(2)あるいは(3)で、数学の禁則、ゼロ割りが発生してしまう。
だ・か・ら、
変数分離法で①を解く場合は、y=0という定数関数を除外し、「y≠0のとき」という「おまじない」を唱える必要がある。
そして、y=0という定数関数を除外した場合に得られる解(4)の任意定数CをC=0としたときものと、除外したy=0という定数関数とたまたま一致し、y=0は(4)の形に表せるので、(4)が微分方程式(1)であるとまで、きちんと書かないといけないんだよね〜。
「そんなことはわかりきったとことだから、いちいち、書かないのだ」と主張するヒトがいるかもしれない。
しかし、このことは、本当にそんなにわかりきったことだろうか。
では、次の微分方程式の場合はどうなるだろうか。
y≠0、1とすると、
y=0、1という定数関数は微分方程式(5)の解であることは明らかだろう。
C₁=0とおけば、確かに、定数関数y=1は(6)の形で表せる。しかし、C₁にいかなる値を与えても定数関数y=0にはならない。
そこで、一般解(6)で表わせないので、y=0を特異解と呼ぶことにしよう。
しかし、世の中そんなに甘くない。
の両辺に−1をかけると、
さてさて、(6)と(7)は同じものだろうか。
今度は、C₂=0のとき、y=0となる。
C₂≠0のとき、C₂で右辺の分母分子を割れば、
は、(6)と似た形になるけれど、C₂にいかなる値を与えようと、y=1にはならない。
そして、今度はy=1が特異解になってしまう。
微分方程式(5)の一般解が(6)と(7)の2つあるというのも考えてみれば妙な話で、一般解という概念そのものの根拠が揺らいでしまう。
この詮索はさておき、
計算の仕方で微分方程式の一般解(の形)が変わってしまうことがあることを知っていたケロか?
例えば(5)に関しては、y=0と1は特殊解ですかね?。特異解と十分呼びたくなりますけれど、y=0と1は微分方程式(5)を満たし、しかも正則関数で、その上これらは(5)の不動点だし(^^;)。
もとの微分方程式を満たし任意定数を一個だけ含むものが「一階微分方程式の一般解」というのが公式見解ですよね?。それは(8)もそうなのだけれど、先のように考えれば、y=1は最初から「特殊解」に分類される。
公式見解にいっぱい文句を言いたがるddt^3ではありますが、今回はy=0と1を最初に特殊解に分類し(だってもともと不動点なんだから、微分計算に載せる方が不自然)、(6)を一般解とするのが「平和だなぁ~」・・・と思いました(^^;)。
by ddtddtddt (2018-05-21 18:20)
コメント、ありがとうございます。
一般解を定義し、それに従って説明しようとすると、奇妙なことが次々と起こる。だから、微分方程式から一般解を追放しろ!!
私は、大学生の頃に、この提案を稲葉三雄の「微積分の根底を探る」という本で知りましたが、何でも山中提案というそうです。
「この山中提案に従って微分方程式の本を新たに書いたところ、以前、書いた微分方程式の本より売れなかった」と、稲葉三男は「微積分の根底を探る」の中で嘆いております(笑)。
こういう過激な強硬論もあるということで(^^)
by nemurineko (2018-05-21 19:48)