第14回 濃度の和 [集合論入門]
第14回 濃度の和
濃度の定義
α、βを任意の濃度とする。このとき、α=|A|、β=|B|かつA∩B=∅である集合A、Bをとり、その直和A+Bの濃度|A+B|をαとβの和といい、記号α+βで表す。
一般に、α=|A|、β=|B|、A∩B=∅である集合A、Bは無数に存在する。したがって、上の定義が成立するためには、集合A、Bの選び方にかかわらず、|A+B|が変わらない必要がある。選び方によって変わらないことは次のように示すことができる。
α=|A|=|A’|、β=|B|=|B’|で、かつ、A∩B=∅、A’∩B’=∅とする。
|A|=|A’|、|B|=|B'|だから、AからA’、BからB'への全単射f、gが存在する。
とすると、hはA+BからA’+B’への全単射になる。
よって、
例1 任意の濃度αに対し、
である。
|A|=0、α=|B|とすると、A=∅で、A∩B=∅。また、A+B=B+A=B。
よって、
例2
Aを偶数全体の集合、Bを奇数全体の集合とすると、A∩B=∅で、A+Bは自然数全体の集合。
また、
したがって、
例3
また、
よって、
定理 α、β、γ、α’を濃度とすると、次のことが成り立つ。
【証明】
(1) |A|=α、|B|=β、A∩B=∅とすると、
したがって、
(2) |A|=α、|B|=β、|C|=γ、さらに、A∩B=∅、A∩C=∅、B∩C=∅とする。
すると、|A+B|=α+βで、また、
したがって、
同様に、
一方、
故に、
(3) |A’|=α’、|B|=β、A’∩B=∅とし、α≦α’とすれば、|A|=αかつA⊂A’であるAが存在し、A∩B=∅。
ゆえに、|A'+B|=α’+β、|A+B|=α+β。
一方、A+B⊂A’+Bだから
したがって、
(証明終)
(1)は濃度の加法の交換法則、(2)は濃度の加法の結合法則。
さらに、(2)から次のように、括弧を省いた書き方が許される。
例3 任意の無限濃度について
|A|=αとすれば、Aは無限集合。無限集合Aは可算集合Bを部分集合にもつ。このとき、
(A-B)∩B=∅だから
よって、
したがって、
問1 α、β、α’を濃度とするとき、次のことは成り立つか。
【解】
とすると、α<α'。
例3より
また、例2より
したがって、このとき
ゆえに、
は、一般に成立しない。
(解答終)
任意の濃度系に対して、次のような、Iを添字の集合とする集合系を考える。
集合系の和集合の濃度を、濃度系の和といい、
で表す。
例4
【解】
自然数全体の集合をNとすし、任意のn∈Nに対し
とする。
すると、n≠m∈Nのとき
であり、
したがって、
ここで、
よって、
である。
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